Webマーケティングやアクセス解析の現場(Web担)で、非常によく見かける言葉の誤用、それが「母数(ぼすう)」です。
「今回のキャンペーンの母数を増やそう」
「アンケートの母数が少なすぎて参考にならない」
といった使い方をしていませんか? 実はこれ、すべて間違った日本語です。
マーケティングやデータ解析のプロとして知っておきたい「母数」の本来の意味と、正しい言い換え表現をまとめました。
「母数」ではなく「分母」や「サンプル数」
多くの人が「全体の数」や「集計対象の数」という意味で「母数」という言葉を使っていますが、統計学において「母数」は全く違う意味を持ちます。
- ✕ 誤った認識: 母数 = 分母、全体の数、データ量
- ◯ 正しい認識: 母数 = 母集団(調査対象の全体)の特徴を表す統計的な定数(平均や標準偏差など)
少し難しく聞こえますが、要するに「母数」は「データの個数(件数)」のことではありません。
なぜ誤解が生まれたのか?
おそらく、割り算の「分母(ぶんぼ)」の「母」という字と、全体の数を表す「母集団(ぼしゅうだん)」の「母」という字が混ざってしまい、「全体の数 = 母数」という勘違いが定着してしまったと考えられます。
よくある誤用パターンと正しい言い換え例
Web担の現場で飛び交いがちなNGワードを、正しい表現にブラッシュアップしましょう。
パターン1:全体のPVや会員数を増やしたいとき
- ✕ NG:「広告を打って、サイト訪問者の母数を拡大しよう」
- ◯ OK:「広告を打って、サイト訪問者の総数(または全体数)を拡大しよう」
パターン2:CVR(成約率)などの計算の「分母」を指すとき
- ✕ NG:「CVRを計算するときの母数は、アクセス数とユニークユーザー数のどちらですか?」
- ◯ OK:「CVRを計算するときの分母(または分母となる数値)は、アクセス数とユニークユーザー数のどちらですか?」
パターン3:アンケートやテストの回答数が少ないとき
- ✕ NG:「今回のA/Bテストは、まだ母数が足りないから判断できない」
- ◯ OK:「今回のA/Bテストは、まだサンプルサイズ(またはデータ数・回答数)が足りないから判断できない」
※統計学では、サンプルの個数のことを「サンプル数」ではなく「サンプルサイズ(または標本の大きさ)」と呼ぶのがより正確です。
プロならば正しい用語を使おう
社内だけのカジュアルな会話であれば「母数」でも意味は通じるかもしれません。しかし、データサイエンティストや専門のデータアナリスト、社外のコンサルタントなどと会話する際に「母数」を誤って使っていると、「この担当者は統計やデータの基本がわかっていないな」と信頼を損ねてしまうリスクがあります。
レポートの作成やミーティングの際は、ぜひ次の言葉に言い換えてみてください。
- 全体の数と言いたいとき ⇒ 「全体数」「総数」
- 割り算の下側と言いたいとき ⇒ 「分母」
- 集まったデータの件数と言いたいとき ⇒ 「サンプルサイズ」「データ数」
正しい言葉選びで、説得力のあるWebマーケティングを推進していきましょう!
