【レポート】Web担当者Forumミーティング 2026 春

もうCMS選定で失敗しない! 先が見えない時代のエンタープライズCMS選定の極意とは

マーケティングを加速させる「攻め」と、ガバナンスや安定運用を支える「守り」の最適なバランスをトランスコスモスとハートコアが解説

野本 纏花[執筆]

7:05

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急速なAIの進展やデータ活用の高度化などにより、Webサイトの果たす役割は「名刺代わりの会社案内」から、「直接的な事業成果を生み出すマーケティング基盤」へと大きく変化している。この変化をいち早く感じ取り、Webサイトのリニューアルを検討する企業が増える一方、「先が見えない中で、どうやってCMSを選定すればいいのか」と頭を抱える担当者も少なくない。

「Web担当者Forum ミーティング2026 春」に、トランスコスモスの横山由佳氏と、ハートコアの栗山元一氏が登壇。エンタープライズ企業のCMS選定に欠かせない、マーケティングを加速させる「攻め」とガバナンスや安定運用を支える「守り」の最適なバランスの取り方についてディスカッションした。

(左)トランスコスモス株式会社 エンジニアリング統括本部 テクノロジー第二統括部 兼 CX事業統括 デジタルプロデュース事業本部 マーケティングテクノロジー統括部 副統括部長 横山 由佳氏 (右)ハートコア株式会社 CX営業本部 営業本部長 栗山 元一氏
(左)トランスコスモス株式会社 エンジニアリング統括本部 テクノロジー第二統括部 兼 CX事業統括 デジタルプロデュース事業本部 マーケティングテクノロジー統括部 副統括部長 横山 由佳氏、(右)ハートコア株式会社 CX営業本部 営業本部長 栗山 元一氏

コンテンツを更新するだけではもったいない! CMSは何のためにあるのか

エンタープライズ企業のWeb担当者がCMSを選定する場合、「承認フロー」「権限管理」「更新のしやすさ」が重視されることが多い。最近では、これに加え、「内製化」を希望する声が増えている。

だが、デジタル時代の総合商社として数々のエンタープライズ企業のビジネスを支援するトランスコスモスの横山氏は、「このような“守り”一辺倒になるのは危険です」と警鐘を鳴らす。

いまやWebサイトは「会社案内のWeb版」ではなく、リード獲得や顧客育成、さらにはクロスセルまでも担う「マーケティングの中枢」になっている。にもかかわらず、いまだCMSをWebページの更新ツールとしてしか活用できていない企業は多い。

会社全体で見れば、MAもCDPも広告ツールも導入済みなのに、それぞれ別の部署が管理しているため、データが分散してしまっているケースは非常に多い。このような状態では、マーケティングの担当者が何か施策を打とうとするたびに、システム部門の協力を仰いでCMSを改修する必要があるため、施策のスピードが落ちてしまいます(横山氏)

では、バラバラのツールにデータが分散するのが問題なのであれば、あらゆるマーケティングの機能がひとつのパッケージになったオールインワンのCMSなら良いのだろうか。その考え方にも横山氏は疑問を投げかける。

オールインワン型のCMSには、もちろんいいところもあるが、エンタープライズに対応したCMSは選択肢が限られているし、高額の費用がかかるのがネック。組み合わせで最適化する発想に切り替えてもらえると、選択肢がぐっと広がるはずです(横山氏)

これに対し、国内シェア10年連続No.1のCMS「HeartCore」を提供するハートコアの栗山氏は、「CMSはデジタルマーケティングにおいて顧客体験とデータのハブであるべきです。HeartCoreは、CMSのベースとなるコンテンツ管理の堅牢性は担保しつつ、その他の領域はサードパーティのツールを組み合わせながらご利用いただく『DXP(デジタルエクスペリエンスプラットフォーム)』の思想で設計しています」とアピールした。

攻めの視点:施策数の上限はCMSの運用性で決まる

では、攻めのCMSに必要な要件とは何だろうか。

横山氏は、最も大切なものとして「マーケティング担当者が自走できる“運用性”」を挙げた。施策のスピードを落とさないためには、エンジニアを介さずにコンテンツを編集・公開できる、ノーコードorローコードのCMS環境が求められる。

そしてもうひとつが「外部サービスと“連携しやすいこと”」だ。MA・CDPなどの連携タグや、広告のコンバージョンタグといったタグの設置をマーケティング担当者が自分でできる仕組みがCMSにあるかどうかは事前に必ずチェックしておきたい。

そのうえで、マーケティング担当者が描いたシナリオを自ら設定に落とし込み、A/Bテストやパーソナライズなどの施策を実行して、効果検証しながら改善を繰り返す「自走サイクル」を回していく。これを実現するには、CMS単体で完結しない発想を持っておくことが重要だ。

さらに横山氏は、「“コンテンツ制作のスピード=施策のスピード”という考え方を持ってほしい」と付け加えた。承認フローを厳しくしすぎると、コンテンツの公開までにかかる時間が長くなり、施策のスピードは落ちる。施策数の上限はCMSの運用性で決まるのだ。

AI活用に不可欠な構造化データをCMS内に整備

ここで栗山氏は「CMSにおけるAI活用についてはどう考えれば良いか」と横山氏に問いかけた。

いまの時代、AIでコンテンツの自動生成やタグ付けの自動化、改善提案などができるのは当然です。しかし、それよりも私が重要だと思っているのは、「AI活用に不可欠な構造化データを、CMS内できちんと整備できること」です。CMSで構造化データを整備して、データ連携基盤と組み合わせることが、あらゆるAI活用の土台となるのです(横山氏)

「AIを活用した次世代CMS」を開発ロードマップのメインテーマに掲げ、AI検索機能やコンテンツのサジェスト・要約機能、AIO施策などのAI関連機能が実装されたHeartCoreは有力な候補の一つになるだろう。

守りの視点:導入前に必ずチェックしておきたい3つのポイント

これからのCMSには攻めの視点が必要だと述べてきたが、とはいえエンタープライズ企業ではガバナンスやセキュリティといった「守りの視点」も絶対に外すことはできない。誰が何を編集できて、誰が承認するのか。「権限モデル」と「ワークフローの設計」の2つが肝になる。

権限モデルやワークフローの設計をあとから変えるのは大変なので、最初にしっかりと決めておくことが大事です。加えて、将来的なグローバル展開を見据えているなら、多言語対応や組織拡張への耐性についても、CMSの選定時から考慮に入れておきたいところです(横山氏)

もうひとつ、CMS選定において見逃しがちなのが、初期見積もりに含まれない「隠れたランニングコスト」である。たとえば、PVが増えたら追加費用が発生するようなCMSで大規模なキャンペーンを打つと、翌月の請求額に驚くことになる。あるいは、ベンダー都合で強制的にバージョンアップされるCMSでは、バージョンアップのたびに検証費用やカスタマイズ機能の改修費用がかさむ点にも注意が必要だ。

運用開始後、どんな時に費用が発生するのか。ランニングコストのシミュレーションは忘れずにしておく必要があります(横山氏)

CMS設計の工夫次第で、攻めと守りの両立が可能に

「エンタープライズ企業がCMSを選定する場合、攻めと守りのどちらを優先すべきか」と尋ねた栗山氏。これに対し、横山氏は「『攻め』と『守り』は、決してトレードオフではない」と強調する。

「コア(コンテンツ管理・権限モデル・ワークフロー)は堅牢に、マーケ施策は疎結合で」という設計の工夫によって、何かしらのマーケティングツールを追加で導入したくなった時でも、コアには手を入れずにAPI連携だけで済むようになり、「攻め」と「守り」を両立できるというわけだ。

実際の現場では、「CMSそのものではなく“設計思想”と“運用モデル”を選んでください」と伝えています。CMSを「どんな設計で・誰が・どう運用したいのか」を先に決めることで、自然と自社に合ったCMSが絞られてくるはずです(横山氏)

3つの問いから始めるエンタープライズCMS選定の第一歩

ここまで、エンタープライズ企業にとって理想的なCMS選定について考察してきた。攻めと守りのバランスを取りながら、いま欲しい機能だけではなく、先々を見据えた選定を行う重要性は理解できただろう。

とはいえ、CMSを「どんな設計で・誰が・どう運用したいのか」といきなり言われても、「そんなことがわかっていたら苦労していないよ」と言葉に詰まる企業も多いのではないか。

そこで横山氏は、実際のCMS選定の現場でクライアントに投げかける3つの問いを明かした。

  1. Webサイトは何のためにありますか?
  2. 将来的にやってみたいマーケティング施策はありますか?
  3. CMS運用に割ける社内のリソースは?

1. Webサイトは何のためにありますか?

最初に、事業KPIとWebサイトの役割を明確にする。リード獲得が目的なのか、ブランディング目的なのか、会員サービスの入口なのか。ここを曖昧なままにしておくと、あとで「こんなはずじゃなかった」という事態に陥りやすくなる。

2. 将来的にやってみたいマーケティング施策はありますか?

次に、マーケティング施策の将来像を描いてもらう。2〜3年後に何をやりたいかを考えてみるといいだろう。近い将来、何かしらのマーケティングツールと連携したいのであれば、CMS選定の段階から見込んでおいたほうが、後々の追加費用や手戻りが少なくて済むからだ。

3. CMS運用に割ける社内のリソースは?

最後に、導入後の運用イメージを共有する。運用は内製にするのか、それとも外部委託にするのか。カスタマイズまで任せられるエンジニアが社内にいるのか、あるいはマーケティング担当者だけで自走するつもりなのか。自社のリソースを把握することで、運用できるCMSの現実解を見出しやすくなる。

自分たちが何を求めているのか、要件や優先順位、絶対に外せないポイントなどを、あらかじめ言語化しておくことが大切。変化の激しい時代だからこそ、いまの最適解ではなく、変化に耐えられるCMSを選ぶ視点を忘れないでほしい(横山氏)

最後に栗山氏は、「CMSは使い続けながら育てていくものです。選定の最初の一歩を踏み出せずに迷っている方は、ぜひお気軽にご相談いただけたらと思います」と語り、講演を締めくくった。

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