Cookie規制下で「見えなくなったCV」をどう取り戻すか? デジタル広告のCV計測精度をあげる方法!
Cookie規制などで計測環境が変化し、デジタル広告のCVがきちんと計測できていないケースが発生している。そこで、CVの計測精度をあげるための要点を解説する。
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Cookie規制などによって計測環境が変化し、きちんとCVが計測できていないケースが発生している。そこで、「Web担当者Forum Meeting 2026 春」に、アユダンテの春山勇悟氏が登壇。本講演は、「a2i(アナリティクスアソシエーション)」とのコラボ企画である。Cookie規制下で「見えなくなったコンバージョン(CV)」をどう取り戻すか、CVの計測精度をあげる方法を解説した。
デジタルマーケティングを取り巻く環境変化と計測課題
春山氏はまず、デジタルマーケティングを取り巻く環境変化として、「プライバシー規制の強化」と「ブラウザによるトラッキング制限」の2つがあると説明した。
【プライバシー規制の強化】
- GDPR(General Data Protection Regulation)等、世界的なプライバシー規制の強化
- 国内におけるCookie・広告IDの取り扱いに関するガイドライン整備
- 個人情報・行動履歴データの取得・利用に対する社会的な監視・期待の高まり
【ブラウザによるトラッキング制限】
- サードパーティCookieの段階的な廃止・制限
- AppleのITP(Intelligent Tracking Prevention)等によるファーストパーティCookie有効期限の短縮・制限
- トラッキングドメインやスクリプトをブロックする仕組み(アドブロッカー)の強化
プライバシー規制の強化については海外に比べてゆるいものの、ブラウザによるトラッキング制限は、日本でもかなりの影響がある。今回のセッションで取り扱うのは、主に後者になる。
アドブロッカーの影響
アドブロッカーは、リクエスト先が広告・計測ベンダーの場合に通信を停止する仕組みで、世界ではほぼ「3人に1人」が利用しているとされている。日本での利用率は世界水準に比べれば低いものの、約15.8%が使っている。また、春山氏の実感では、EC系では5〜10%程度、求人系では20%を超えるケースがあり、利用率は業態によって上下しているという。
ブラウザによるCookie規制_ITPの影響
日本においてより影響が大きいのが、AppleのITPなどブラウザでのCookie制限だ。なかでも、iPhoneユーザーが多いため、モバイルにおけるSafariブラウザのシェアが高い。このSafariではサードパーティCookieが使えないうえ、ファーストパーティCookieも制限されている。
なお、ITPはSafariだけが対象と思われがちだが、Apple公式の「WebKit(ウェブキット)」を採用しているiOSブラウザにも影響が及ぶ。
ITPでポイントになるのはファーストパーティCookieの発行元である。次図のように、ファーストパーティCookie の発行方法には、「JavaScriptによるもの」と「サーバーによるもの」がある。
Google タグ マネージャーを使って広告媒体のタグを発火させる場合は、JavaScriptによる発行になる。このJavaScriptで発行されるCookieは、まずは参照ドメインが既知かどうかをみて、既知であれば、参照元やURLパラメータの条件によって寿命が短縮される。
たとえば、自然検索による通常の流入でもユーザー識別に使うCookieなどの有効期間は最長7日間に制限され、広告クリック時に付与される識別子付きURL経由の流入では、最長24時間となる。長期間にわたるユーザー行動の計測が難しくなるため、データ欠損がおこり、CVの計測数に影響を与えることになる。Google広告のCookieだけでなく、条件を満たすと「すべてのJavaScript Cookie」が24時間に短縮されるため、広告の評価期間が実質1日になれば、比較検討期間の長い商材ほどCVが見えにくくなるわけだ。
計測データの欠損が怖いのは、レポートの数値と実際の成果がずれるだけではない。春山氏は、欠損によって管理画面と実態の乖離が起きると、実際には成果があがっている広告にもかかわらず、「成果の出ていない広告」と誤認し、機械学習が歪む点だと述べた。結果として、本来CVを獲得できたはずのユーザーへの配信が弱まり、機会損失につながる。だからこそ、「広告成果を最大化するためには正しいデータ」を渡す必要があるという。
計測データ欠損への対応方法
計測データの欠損への対策としては、次図のように、「計測精度の回復」と「Cookie以外のシグナルの拡充」というアプローチがある。
計測精度の回復方法1_Google タグ ゲートウェイ
計測精度の回復として、春山氏はGoogleタグ ゲートウェイとサーバーサイドGTM(Google タグ マネージャー)を提示した。
従来のブラウザ計測では、Googleタグが発火すると外部ドメインへ、計測リクエストが直接送信される。しかしGoogleタグ ゲートウェイでは、Googleタグの読み込みや一部の計測リクエストを、自社ドメイン経由で送信する。送信先を外部ドメインではなく自社ドメイン配下へ切り替えることで、ファーストパーティ配信にする仕組みだ。そこで、アドブロッカーがGoogle系ドメインをブロックするケースでも影響を受けにくくなる。ただし、現時点では「一部リクエストがGoogleドメインのまま」残る場合がある点には注意が必要だ。
なお、Google タグ ゲートウェイの実装方法は、次図のように大きく3つある。
計測精度の回復方法2_サーバーサイドGTM
サーバーサイドGTM(sGTM)は、計測データを一度自社サーバーで受け、必要に応じて加工・削除したうえで各プラットフォームへ送る。つまり、送信データをサーバー側でコントロールできる。Google以外(Meta/TikTok等)にも拡張でき、ブラウザ以外(アプリ/CRM(Customer Relationship Management)等)からのデータも集約できる。
自社サーバーからCookieを発行することで、ITP環境下でもGA4(Google Analytics 4)なら最大400日、広告計測で90日程度まで計測データの保持が可能になる。さらにCRM/POS(Point of Sales)のデータをsGTMに取り込むことで、オフラインCVを広告最適化に使える点もメリットになる。
「Google タグ ゲートウェイ」と「サーバーサイドGTM」、それぞれの強みと注意点
「Google タグ ゲートウェイ」と「サーバーサイドGTM」を比較すると、どちらにも強みはあるが、春山氏は、「Googleの通信を改善したいだけなら、Google タグ ゲートウェイが始めやすい」と話す。Cloudflare(クラウドフレア)環境で要件が合えば数クリックで導入でき、既存GTMの改修も不要で、費用もかからない。ただし、対象はGoogle製品が中心で、データの加工・削除や他媒体連携、Cookie延命といった基盤整備までは担えない。
媒体横断のデータ制御やCookie延命まで含めて再設計するならsGTMが必要になるが、その場合はサーバー運用やコストも論点になるため、プラットフォーム選定(マネージド活用を含む)とセットで考えるべきだと、春山氏は語った。
要するに、Google タグ ゲートウェイは「アドブロッカーで止められるリクエスト」を減らすアプローチであり、ITPによるCookie寿命短縮そのものを直接解消するものではない。一方のsGTMは、送信元からのデータを自社サーバーで受けることで送信データを制御できるだけでなく、Cookieの発行元をサーバー側へ寄せる選択肢ももてる。そのため、アドブロッカーとITPの双方に手を打ちやすい。欠損要因がどちらに寄っているかで、取るべき打ち手も変わってくる。
sGTMの導入判断で現場が詰まりやすいのは「サーバーをどこに立てるか」だ。春山氏は、従来主流だったGoogle Cloudは従量課金で見積もりが難しく、インフラ運用の担当者も必要になりがちだと述べた。これに対し、アユダンテが提供しているsGTM専用ホスティングサービス「Stape(ステイプ)」を紹介し、料金がサブスク型で見通しやすいこと、インフラ運用をマネージドできることを利点としてあげた。
Cookie依存を薄めるファーストパーティデータの活用
計測精度を回復したうえで、次に重要になるのがCookie以外のシグナルだ。春山氏はファーストパーティデータを「顧客との直接接点で得たデータ」と定義した。たとえば、次のようなデータだ。
- 購買履歴、閲覧履歴、会員登録情報、問い合わせ情報など
- メールアドレスや電話番号など、個人を識別しうるPII(Personally Identifiable Information)
Cookie規制が強化される中、正確なマーケティング効果測定やパーソナライズされた広告配信のシグナルとして重要性が高まっている。なかでも広告の文脈では、メールアドレスが最も重要で、続いて電話番号が大切になる。
ただしファーストパーティデータを活用する際の前提は厳格で、「使う前にユーザーの明示的な同意」が必要であり、プライバシーポリシーの改定も含めて法務・専門家への確認が必須だと強調した。ここが曖昧なまま技術実装だけを進めるのは危険だ。
広告におけるファーストパーティデータの活用方法
活用の基本は、顧客データを「ハッシュ化」して広告プラットフォームへ送信し、広告主側データと媒体側データとを突き合わせることで、識別精度を高めることにある。注意点としては、ハッシュ化しても個人情報扱いが外れるわけではない点、そして媒体ごとに入力フォーマットが異なる点がある。
セッションでは、Googleの拡張コンバージョン(Safariブラウザの場合)が例として取り上げられた(次図参照)。
Safariで広告Cookieが24時間で消えても、CV時にハッシュ化メールを送ると、媒体側で「広告クリック時のユーザー」と「CV時のユーザー」を同一として推定でき、欠損CVの補完につながる。ここで鍵になるのは、広告のクリック時とCV時で同一アカウント(同一メール)として紐づく設計にしておくことだ。
計測基盤を見直すための3つの視点
今回のセッションで示されたのは、広告成果の鈍化を単純に配信設定やクリエイティブの問題として捉えるのではなく、その手前にある「計測基盤の劣化」に目を向ける必要があるということだ。
プライバシー規制やブラウザ制限、アドブロッカーの影響でCVが欠損すれば、成果レポートの数字がずれるだけでなく、広告の機械学習そのものが誤った方向へ進みかねない。だからこそ今求められるのは、次の3つの視点だ。
- 欠損を減らす:計測リクエストの欠損を抑える
- Cookie以外のシグナルを増やす:ファーストパーティデータを活用する
- 自社に合う方法を選ぶ:要件・体制に合わせて最適解を選択する
つまり、欠損の原因を見極めたうえで、計測を回復できる部分は技術で補い、残る部分はファーストパーティデータで埋めていく、という発想だ。そして、自社の要件や体制に合った方法を選ぶことが重要になる。
実務の順番としては、まずは自社でどれほど計測欠損が起き得るのかを把握することが出発点になる。そのうえで、アドブロッカー起因の欠損にはGoogleタグ ゲートウェイのような送信経路の見直しを、ITP起因の短命CookieにはsGTMのような基盤整備を検討する。
そして最終的には、同意取得を前提にPIIを活用し、Cookieだけに頼らない計測と最適化の体制へ移行していくことが重要になる。見えなくなったCVを取り戻す取り組みは、単なる計測改善ではなく、これからの広告運用を立て直すための基礎工事ともいえるだろう。
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