GA4×サチコ×Looker Studioで可視化! 現場で使われる“ダッシュボード”の作り方
Google Search Console(以降、Search Console:サーチコンソール)は便利なツールではあるものの、なかなかそのデータを活用しきれていない、活用したいがデータの加工などがやりにくいという悩みをよく聞く。SEOの分析、モニタリングツールの「Amethyst(アメジスト)」を提供するJADEの郡山 亮 氏が「Web担当者Forum ミーティング 2023 秋」に登壇。
無料ツール「Looker Studio(ルッカースタジオ)」を使ってSearch Consoleのデータを徹底活用し、現場で使われる、定点モニタリングしやすいダッシュボードをつくる方法を紹介した。
Search Consoleの扱いづらさをカバーするLooker Studio
Search Consoleはさまざまなことができるツールだが、今回は検索パフォーマンスの検索結果レポートに絞って紹介した。Search Consoleはクエリやページごとの評価が可能だが、扱いづらい点がある。郡山氏は、Search Consoleの管理画面を操作した時の制限を、次のように指摘する。
- 管理画面上で取得可能なデータ数(行数)が1,000行まで
- クエリ×ページのようなクロス集計を表形式で出力できない
- 「指名検索」「非指名検索」に分類するような「データのグループ化」ができない
- 集計設定の保存ができず、共有や定点観測がしづらい
Looker StudioをSearch Consoleと接続して使うと、これらの制限をカバーして、集計・視覚化の選択肢を広げられます。
Looker Studioは無料で利用できるにもかかわらず、非常に多くの機能が利用できます。有償版のLooker Studio Proもありますが、今回は無料版で活用する方法を紹介します(郡山氏)
以下は、Search Consoleの管理画面の操作とLooker Studioの機能を比較したものだ。先ほど挙げたSearch Consoleの制限をLooker Studioがカバーしていることがわかる。
では、Search ConsoleのデータをLooker Studioで活用するために、どのように接続するのだろうか? Looker Studioは、Search Console APIを介して接続することで、集計が可能になる。
- 図版の注釈リンク:
Search Analytics | Search Console API | Google for Developers
検索パフォーマンス レポート - Search Console ヘルプ
『Search Consoleのプロパティ(サイト)ごとの集計』『ページ(URL)ごとの集計』の2種類のデータと接続できますが、初心者には、『ページ(URL)ごとの集計』をおすすめします(郡山氏)
Looker Studioにアクセスするとホーム画面が表示され、次図のようにテンプレートが選択できる。「Search Console Report」というテンプレートが用意されているので、使ってみるとイメージがつかみやすい。ゼロからつくる場合は、「空のレポート」を選んで「Search Console」を選択すればよい。
決まった指標を定期的に観測する「定点モニタリング分析」をしやすくするためのポイント
現場で使われるダッシュボードに必要なのは、まずは決まった指標を定期的に観測する「定点モニタリング分析」だ。ここからは、定点モニタリング分析をしやすくするためのポイントが紹介された。
「計算フィールド」を使って、独自のディメンション/指標を作成する
1つ目のポイントは、「計算フィールド」を使って、独自のディメンション/指標を作成することだ。計算フィールドは、データを加工したり、計算したりするための機能。郡山氏が「計算フィールドがあることがLooker Studioを使う理由」というほど計算フィールドは重要な機能になる。
ディメンションとは、文字列で保存するデータのことで、URL、日付、クエリなどが該当する。指標は、表示回数、クリック数など数値化・集計されたデータのことである。独自のディメンションと指標を組み合わせることで、グラフ化、集計が行える。複数のディメンションを組み合わせたクロス集計も可能だ。
たとえば、次図のように、記事IDからLP(Landing Page)のURLをパターンに分けてグループ化する。さらに、商品や製品を含むクエリ、含まないクエリなど、クエリをグループ化して分析する。これにより、指名検索を獲得しているLPグループを特定したり、LPグループ・クエリグループごとのインプレッション数の差などを分析したりできるようになる。「ページ数が多いサイトほど、分類してまとめるのが有効」と郡山氏は述べる。
<関数を使う>
計算フィールドでLPやクエリを分類するには、「関数を使う方法がおすすめ」と郡山氏は話す。
CASE関数、IF関数を使えばページを分類できます。また、COUNT関数を使ってクエリ数のカウントが可能です。
このページはどのくらいのクエリから流入しているのか、新しいLPのクエリが既存のLPと重複していないか、あるいは新しいクエリを獲得できているのかといったことがすぐにわかります。記述例として、シンプルなものと正規表現を使ったものを3つほど紹介します(郡山氏)
CASE WHEN Landing Page = 'https://example.com/' THEN 'トップ' WHEN Landing Page IN ('https://example.com/columns/') THEN '記事ページ' WHEN Landing Page IN ('https://example.com/site') THEN 'サイト概要' END
「完全に一致する」「含む」条件で定義できるので、比較的簡単に設計することが可能です。
CASE WHEN REGEXP_match(Landing Page,'https://example.com(/$|/\\?)') THEN 'トップ' WHEN REGEXP_match(Landing Page,'https://example.com/columns/\\d+.*') THEN '記事ページ' WHEN REGEXP_match(Landing Page,'https://example.com/columns/(category|tag).*') THEN '記事カテゴリ・タグ' WHEN REGEXP_match(Landing Page,'https://example.com/(site|privacy).*') THEN 'サイト概要' END
CASE WHEN REGEXP_MATCH(Landing Page,'https://example.com/($|\\?.+)') THEN 'トップページ' WHEN REGEXP_MATCH(Landing Page,'https://example.com/columns/(\\d){1}($|\\?.+)') THEN '記事ID:1~9' WHEN REGEXP_MATCH(Landing Page,'https://example.com/columns/1(\\d){1}($|\\?.+)') THEN '記事ID:10~19' WHEN REGEXP_MATCH(Landing Page,'https://example.com/columns/2(\\d){1}($|\\?.+)') THEN '記事ID:20~29' ELSE 'その他' END
<四則演算を使う>
計算フィールドでは関数を使わなくても、四則演算による集計もできる。集計するデータによっては、足し算・引き算・割り算・掛け算で簡単に計算した結果を表示できるため、初めての方はこちらから試してみるとよいだろう。
講演では詳細な設定方法は割愛されたが、「まずは自分のサイトのデータを加工して、簡単な関数を使って基本的な分析から試してほしい」と郡山氏は話した。
<サイト全体の動向を把握する例>
活用方法としては、次図のように、LPグループやクエリグループごとのインプレッション数の推移を線グラフにすることで、全体の動向を把握する例が紹介された。
LPのグループ、クエリグループなどを作成して、どのグループでインプレッションを多く獲得しているのか、CTR(Click-Through Rate)はどれくらいかなどを分類することで見やすいレポートを作成できます(郡山氏)
なおGA4(Google アナリティクス 4)には、コンテンツを分類できる「コンテンツグループ」というカスタムディメンションがある。これは1つのURLごとに評価するのではなく、URLパターンによって記事ページ、会社概要ページなどと分類して評価できるものだ。「GA4でコンテンツグループを使っている場合は、Looker Studioでも同じように計算フィールドで分類するとよい」と郡山氏は語った。
サイトごと/チームごとに必要なデータを視覚化する
定点モニタリング分析をしやすくするためのポイントの2つ目として、サイトごと/チームごとに必要なデータを視覚化(ページ化)することが挙げられた。その例が、次図になる。
(01)は、クエリグループAのインプレッション/URLクリック数の推移。(02)はクエリグループAの平均順位/CTR推移。(03)はクエリ別のインプレッション/URLクリック数/CTR推移である。
なお、Looker Studioは1ページで完結するのではなく、ダッシュボード内にいくつかのページを複数配置して、それぞれのページにアクセスするように設定できる。
たとえば、サイトの概要をつかむページ、チームや目的ごとのページをつくって、必要なフィルターや計算フィールドを適宜つくるのがおすすめです(郡山氏)
独自の指標を使って「効果測定・仮説検証ができるレポート」を作成する
Looker Studioは、独自の指標を使って「効果測定や仮説検証ができるレポート」を作成することもできる。「効果測定や仮説検証など状況に合わせた分析についても、Search Consoleの管理画面よりも、Looker Studioのほうがやりやすい」と郡山氏。次図は、横軸をインプレッション数、縦軸をCTR、バブルのサイズをクリック数にして散布図にしたものだ。
この図を左右上下に分割した時、どの位置づけにあるページのCTRが高く、どこのページが課題を抱えているのか、どういう期待値が持てそうなのかといったことがわかる。
わかりやすい、扱いやすいデータにいつでも誰でもアクセスできるようにする
定点モニタリング分析をしやすくするためのポイントのまとめとして、郡山氏は次のように話した。
Looker Studioでダッシュボードをつくる際には、『Search Consoleの管理画面を単独で使うよりも、わかりやすい、扱いやすいデータにいつでも誰でもアクセスできるようにすること』を目指すとよいでしょう。そうすれば、いろいろな部署の人がダッシュボードを利用する習慣がつくれると思います(郡山氏)
作成したダッシュボードを社内に浸透させるには?
しかし、自信を持って公開したダッシュボードでも、ほかのメンバーからアクセスされないということがある。そこで、Looker Studioの機能を駆使するなどして、社内に周知、浸透させるヒントが紹介された。
配信のスケジュールを設定して、メールでPDFを配信する
1つ目は、Looker Studioのデフォルトの機能である「配信のスケジュール」を使って、毎朝、月初めなどに指定ページのPDFをメールで送信する方法だ。メーリングリストを作成して送信するようにすれば、関係者全員に送信できる。そもそもダッシュボードの存在を知らない、ダッシュボードのURLがわからない、アクセスする権限がないといった他部署メンバーにも実績を知らせることが可能な方法だ。
Slackの特定チャンネルに転送する
Looker Studioからのメールが届いたらSlackの特定チャンネルに転送する方法も有効だ。Google Apps Scriptを扱える人が社内にいる場合は、Looker Studioから届いたGmailを自動的にSlackの特定チャンネルに転送するように開発するとよい。
実績に影響する出来事をグラフと一緒に見られるようにする
さらに郡山氏は、「Search Console以外のスプレッドシートなどのデータもLooker Studioと接続することで、ダッシュボードにアクセスすればいろいろなデータを確認できるというポジションを獲得してほしい」という。たとえば、スプレッドシートに記したサイトの更新(開発案件のリリースやデザイン変更など)のスケジュールやGoogleのコアアップデートの日付を、グラフと一緒に表示すれば、何が数値に影響したのかがわかるようになる。
GA4とSearch Consoleのデータを統合する
また、郡山氏は、「GA4とSearch Consoleは相性がいいので、Looker Studioで2つのデータを統合するとより詳細な分析もできる」と話す。データの統合はLooker Studioで利用する機能の中でも難易度が高いもの。必須ではないが、活用できると分析できる幅が広がるため、練習する価値がある手法だという。GA4のランディングページや日付などのディメンションとSearch ConsoleのDateやLanding Pageをキーにして統合すると下記のような集計ができるようになる。
講演では手順の詳細は割愛されたが、異なるデータソースのグラフを選択して「データ統合」をクリックすれば、パターンが一致していれば統合できる。
最後に郡山氏は次のように話し、講演を締めくくった。
GA4の管理画面からは、GA4ならではの指標とSearch Consoleならではの指標をずらりと並べて見ることができません。Looker Studioで統合してみるとおもしろい分析ができますから、試してみてはいかがでしょうか(郡山氏)
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