コンバージョンAPI・アドバンスドマッチングとは:AI時代の広告効果「CV計測の誤差」ゼロが鍵
デジタル広告業界はいま、大きな変革期を迎えています。
プライバシー規制の強化、メディア・プラットフォームの断片化、AIによるさまざまな影響。このような背景の中で、広告主が正確なコンバージョン計測を行い、広告パフォーマンスを維持・向上させるために注目すべき技術が、「コンバージョンAPI」と「アドバンスドマッチング」です。
この記事では、両者の基本的な仕組みから、2025年最新のアップデート、ChromeのサードパーティCookieの方針転換による影響の有無、さらに両方導入すべきか、という実践的な視点まで、わかりやすく整理していきます。
コンバージョンAPIとは?
コンバージョンAPI(Conversion API:CAPI(キャピ)と称されることも多い)は、ユーザーがサイトやアプリ上で「購入」や「会員登録」などの行動をした際、その情報を自社サーバーから広告プラットフォームへ直接送信する仕組みです。
従来は「ピクセルタグ」と呼ばれる仕組みで、ブラウザを通じてユーザー行動を計測していました。しかし近年は、Cookie規制やブラウザによるトラッキング防止機能の影響で、取得できないデータが増加。その結果、本来計測されるはずだったコンバージョンが欠損し、広告の最適化や効果測定に支障が出るようになってきています。
そこで、より正確にデータ送信できる手段として注目されている技術が「コンバージョンAPI」です。「広告主のサーバー」と「広告プラットフォームのサーバー」間で直接データ送信することで、データの欠損を防ぎ、広告の効果をより正確に把握できるようになります。

コンバージョンAPIの主な特徴
コンバージョンAPIの主な特徴は、以下の通りです。
- 広告主のサーバーと広告プラットフォームのサーバー間で、直接データ通信を行う
- Cookie制限やブラウザによるトラッキング制限の影響を受けない
- 広告の計測精度が高まり、最適化に貢献
- 広範なイベント(購入、登録、カート投入、リード送信、アプリ内アクション)に対応
コンバージョンAPIは、広告の計測精度の向上やデータ欠損を防ぐ点で効果的ですが、導入や運用には一定以上の技術的知識とリソースが必要になります。とはいえ、近年では複数の広告プラットフォームに対応した統合ソリューションも登場しており、専門エンジニアが社内にいない組織でも、外部ツールや支援サービスを活用することで、導入のハードルを大きく下げることが可能になっています。
アドバンスドマッチングとは?
アドバンスドマッチング(Advanced Matching)は、ユーザーが入力した「メールアドレス」や「電話番号」などの情報を、広告プラットフォームに送信する際にハッシュ化(暗号のように変換)し、その情報をもとに広告プラットフォーム側のユーザー情報と照合する仕組みです。
この仕組みにより、広告配信の精度が上がり、コンバージョンの計測もより正確になり、オーディエンス(広告配信対象のユーザー)も増やすことができます。
この仕組みは、広告のプラットフォームごとに呼び方が異なり、「アドバンスドマッチング」「詳細マッチング」「拡張コンバージョン」などがありますが、基本的にはどれも同じ技術を指しています。

アドバンスドマッチングの主な特徴
アドバンスドマッチングの特徴をまとめると、以下の通りです。
端末やブラウザをまたいだ計測が可能に
スマートフォンとパソコンなど、複数のデバイスを使うユーザーの行動を一人のユーザーとして認識し、つながった行動データとして計測できます。コンバージョン計測の精度向上
ユーザーが入力したメールアドレスや電話番号などをもとに、ブラウザのHTMLタグを経由して、広告プラットフォームの登録情報と照合することで、より正確に「誰がコンバージョンしたか」を把握できます。オーディエンスデータの蓄積がしやすくなる
一致したユーザー情報をもとに、オーディエンス(広告配信対象)のリストを強化でき、リターゲティングや類似オーディエンスの精度も向上します。クロスドメイントラッキング(複数のドメインにまたがった計測)が可能に
これまで、同じサブドメイン内でしかユーザー行動やコンバージョン計測ができませんでしたが、アドバンスドマッチングを使えば、異なるドメイン間のユーザー行動も計測が可能になります。
コンバージョンAPIとアドバンスドマッチングの違いと役割
コンバージョンAPIもアドバンスドマッチングも、広告効果の計測精度向上を目指して導入される技術ですが、それぞれ仕組みと主な用途に違いがあります。
- コンバージョンAPIは、サーバー経由でイベント全体を正確に送信する仕組み
- アドバンスドマッチングは、ユーザーが入力する情報を使ってマッチング精度を補完する仕組み
コンバージョンAPIはより包括的な計測基盤であり、アドバンスドマッチングはブラウザベースの計測を強化する補完的な役割といえます。
両者は役割が異なるため、どちらか一方ではなく、両方を併用することで最大の効果を発揮します。
違いを表に整理すると、次のとおりです。
項目 | コンバージョンAPI | アドバンスドマッチング |
---|---|---|
データ送信経路 | サーバー → 広告プラットフォーム | ブラウザHTMLタグ → 広告プラットフォーム |
対象アクション | 購入、登録、リード送信、アプリイベント等全般 | 主にフォーム送信や購入完了ページ |
主な目的 | コンバージョンイベントを正確に送信 | ユーザー入力情報を使ってマッチング精度を補完 |
技術要件 | サーバー開発・設定が必要 | タグマネージャーなどで設定可能 |
耐ブラウザ制限 | 非常に強い | ある程度耐性あり |
オーディエンス蓄積効果 | 間接的に貢献 | 直接的に貢献(リスト母数増加) |
プライバシー対応 | ハッシュ化+同意管理必須 | ハッシュ化処理が基本 |
主なプラットフォームごとのコンバージョンAPI・アドバンスドマッチング対応状況
各広告プラットフォームは、プライバシー時代に対応するため、それぞれ独自にコンバージョンAPIやアドバンスドマッチングに相当するソリューションを提供しています。機能の使用料などはかかりませんが、プラットフォームごとに個別に設定する必要があります。
プラットフォーム | コンバージョンAPIに相当する機能 | アドバンスドマッチングに相当する機能 |
---|---|---|
Google 広告 | コンバージョンAPI | 拡張コンバージョン |
Meta広告 | コンバージョンAPI(CAPI Gatewayなど導入支援ツールもあり) | 詳細マッチング |
LINE広告 | コンバージョン API | 詳細マッチング |
Yahoo!広告 | コンバージョン API | 詳細マッチング |
TikTok広告 | イベントAPI | アドバンスドマッチング |
Pinterestアド | コンバージョン API | エンハンスドマッチ |
LinkedIn広告 | コンバージョン API | Insightタグのマッチング強化機能 |
X広告 | コンバージョンAPI | Xピクセルでの設定機能 |
AI時代の広告運用に欠かせない
「コンバージョンAPI」と「アドバンスドマッチング」
2025年現在、多くの広告プラットフォームはAI主導型の自動最適化へと大きく舵を切っています。
Google 広告の「P-MAX(Performance Max)」、Meta広告の「Advantage+」
TikTok広告の「Smart Performance Campaigns」などがすでに導入・活用され、人の手を離れた機械学習ベースの広告運用が標準になりつつあります。
この新時代において、「AIに与えるデータの質と量」が広告成果に大きく左右します。
学習期間を早く抜けるカギは「正確なデータ」
AI主導型キャンペーンには、広告の配信開始直後に「学習期間(Learning Phase)」が存在します。これは、AIが最適なターゲットやクリエイティブを見極めるために、コンバージョンデータを集める期間です。
通常、Meta広告では「1週間に50件以上」、Google 広告でも非公式ながら「月に30件以上」が学習の目安とされています。この学習期間を早く、確実に抜けることが、安定的なパフォーマンス向上の第一歩となります。
しかし上述の通り、プライバシー強化やブラウザ制限の影響で、通常のピクセルタグだけでは、コンバージョンの一部が正しく計測できない事態が増えています。ここで決定的な役割を果たすのが、コンバージョン APIとアドバンスドマッチングなのです。
この2つを組み合わせることで:
- コンバージョンの計測漏れを防ぎ、正しい学習データ量を担保できる
- 学習期間を通常より短縮できる
- 早期に最適化されたターゲティング配信ができる
という大きなメリットが得られます。
つまり、AIにとってコンバージョンは「燃料」のようなもので、コンバージョンAPIとアドバンスドマッチングは、この燃料を「豊富に、正確に、途切れなく」供給するためのインフラだと言えるでしょう。
両方導入すべきか?
結論から言えば「コンバージョンAPI+アドバンスドマッチングは両方導入すべき」です。
カバー範囲が違うため
コンバージョンAPIは、サーバー側で送信されるイベント全般をカバーできます。つまり、ピクセルタグでは対応できないオフライン購入も共有できます。一方、アドバンスドマッチングはブラウザベースのデータ欠損を埋める役割を担います。リスクヘッジになるため
コンバージョンAPIは、「ネットワーク接続の問題」や「ページの読み込みエラー」などのピクセルタグが機能しない場合でも、各イベントを補完できます。プラットフォーム各社も両方の設定・利用を推奨している
Google、Metaはいずれも「コンバージョンAPIおよび+拡張マッチング情報あり」の併用を推奨しています。
これらの理由から、両方を組み合わせることで、最大限の計測精度と広告パフォーマンス改善が実現できるのです。
ChromeのサードパーティCookie方針転換でも導入すべきか?
こちらも「導入すべき」です。
Googleは2025年4月23日、「ChromeでのサードパーティCookieの管理方法は、現在のアプローチを維持する」と発表しました。
これにより、予定されていた「サードパーティCookie専用の新たな選択プロンプトの導入」は見送られ、当面、Chrome上でサードパーティCookieが引き続き利用できることになりました。
この電撃的な発表の直後、業界内外でさまざまな憶測や議論が巻き起こり、対応を進めてきた企業やプラットフォームは、急速な戦略の見直しを余儀なくされました。一方、広告主や広告代理店からは「コンバージョンAPIはもう導入しなくていい?」といったコメントも散見されました。
しかしながら、実際は既にCookieレスは相当進んでいます。AppleのITP(Intelligent Tracking Protection)の影響でiOSデバイスやSafari・Firefoxでは、サードパーティCookieを使った計測はほぼ不可能となっています。特にスマートフォンやタブレット経由での購入や登録が多い業種の企業は確実に対策はすべきでしょう。

上記だけでもコンバージョンAPIやアドバンスドマッチングを導入するための十分な理由となりますが、ネットワーク接続の不具合やブラウザの読み込み遅延など、予期せぬ問題はいつ発生してもおかしくありません。キャンペーン運用に大きな影響を及ぼす重要なシグナルデータであるため、欠損を防ぐための万全な対策を講じることが不可欠です。
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