ここがよかった!ここがスゴイ! 後藤真理恵の企業SNS活用事例ピックアップ

「なんだか感じがいい」と思われる“ライバル・競合・好敵手とのSNSコミュニケーション術”とは?

ブランド単体への好感を、業界や地域全体の「感じのよさ」へ広げていきましょう。

後藤真理恵(コムニコ)[執筆], なとみみわ[イラスト]

7:05

当連載では、企業・団体のSNS担当者のみなさんにお役立ていただけそうな良質なSNS活用事例をピックアップし、「どこが優れているのか」「なぜ話題になったのか」などをやさしく解説していきます。

企業・団体のSNS投稿やSNS施策のなかでも、比較的最近の事例や再現性のある事例を取り上げ、お忙しいみなさんでも数分で読めてSNSアカウント運用の参考にしていただけるような記事を目指しています。

競合とSNSでどう絡む?

「ライバル・競合・好敵手」とうまくからむことで、両社ひいては業界の認知拡大や好意度向上などにつなげることができた事例を当連載で紹介してから、約3年が経ちました。

参照元:「攻撃しない!」「じゃれあわない!」企業アカウントがライバル企業とSNSでからむコツとは | ここがよかった!ここがスゴイ! 後藤真理恵の企業SNS活用事例ピックアップ | Web担当者Forum

当時、海外に比べ日本では、SNSで「相手企業をけなす・攻撃する」「自社商品が競合に比べいかに優れているかを派手にアピールする」といったストレートな競合比較はあまり好まれないと解説しましたが、その傾向は今もあまり変わっていないようです。

今回は、競合を「敵視・攻撃」することなく、ユーモアや歓迎の気持ち、敬意を通して「このブランド、なんだか感じがいい」「この業界、いい雰囲気だな」と思わせていた好事例をご紹介します。

【J-AIRとANA】- リスペクトし合える関係性を見せる

5月27日、JALグループの航空会社J-AIRのX公式アカウントは、自社の機長が福岡空港内の店舗で買い物をしている様子を投稿しました。具体的な店名が一目ではわからないよう、投稿画像はトリミング・投稿文では店名の一部が伏せられていましたが、ANA系列店舗「ANA FESTA」であることはあきらか。「そこにしか置いてない商品がありますもんね」と競合系列の店舗の品ぞろえを認めていた点が好印象です。さらに「隣の芝は青く見える?」のダブルミーニングに気付いたファンもおり、総じて好意的なコメントが返信欄に多く寄せられました。

6月5日、ANAグループXアカウントは、引用ポストでJ-AIRの投稿に反応しました。

「J-AIR様のポストを拝見し、ANA FESTAメンバー一同とても喜んでおります」と謝意を伝えつつ、「We are under the same sky」で締めくくるという粋な返信に、両社のファンが心を打たれたようです(以下は返信の一部)。

  • お互いにリスペクトし合える競合関係、すばらしいですね
  • 所属は違えど同じ空を駆ける者同士、企業の垣根越えた交流素敵でした

あきらかに競合関係である2社が、相手企業に対する「敬意」を伝え合うことで、気まずさを感じさせないコミュニケーションが実現した事例といえるでしょう。

ちなみに、ANAグループ公式からの引用ポストに対しJ-AIR公式がさらに返信していました。「(ANAに)迷惑をかけたらマズいと思い、弱気な写真になってしまいました」とあることから、仕込みなしの投稿だったことがうかがえます。

【ダンロップとミシュラン】- 相手の文脈に寄り添う会話のセンス

3月16日、ある一般ユーザーが「2人目の子の脚の肉付きがダンロップのキャラクターみたいに付いてきてて可愛い」と画像付き投稿をおこないました。しかしその画像はダンロップのキャラクターではなく、競合メーカーの1つ「ミシュラン」のキャラクター(ビバンダム ※通称:ミシュランマン)だったのです。

3月17日、ダンロップ公式Xアカウントは引用ポストで反応しました。

多くは語らず、「どことは言えないけど、うちの子じゃない。」と書かれただけのポストですが、返信欄は大変な盛り上がりを見せました。一般ユーザーの勘違いやダンロップ公式の反応が「おもしろい!」と共感を集めたことだけが理由ではありません。ダンロップ公式アカウントは日頃からフォロワーとのコミュニケーションを大切にしているため、同アカウントと絡みたいユーザーが集まってきて「大喜利化」したのでしょう。

そして3月19日、ミシュランタイヤ公式アカウントが引用ポストで反応し、「保護者です。うちの子がお邪魔しました」とお迎えに現れました。

ダンロップ公式の投稿文脈を理解し、ミシュランも自社製品を「うちの子」と表現している点が好印象を与えています。また、ミシュランタイヤ公式もユーザーとのコミュニケーションに力を入れているアカウントのため、返信欄がやはり盛り上がりました。

ダンロップ公式も「親御様! お迎えありがとうございます。」と反応。こちらはミシュランの「保護者」に表現を合わせている点が巧み、かつ好印象です。

競合ブランド同士の絡みである以上、本来なら返信欄も製品の比較や優劣の話に流れやすい場面なのに、この一連の投稿ではそれがなく、「大喜利と称賛の場」となりました。これは、両アカウントが「説明し過ぎなかったこと」「おもしろくしようと力まず、軽やかに返し合ったこと」に尽きます。多くのユーザーに好感を持たれる「感じのいい会話」の参考にしていただければと思います。

【書泉グランデと近隣の大型書店】- 主語は常に「街全体」

3月19日、三省堂書店 神田神保町本店が4年ぶりにリニューアルオープンし、話題を集めました。神田神保町の文房具店、映画館、レコード店、飲食店などさまざまな公式アカウントが歓迎や祝福の思いをSNSに投稿し、三省堂書店公式アカウントも「リポスト」でそれらに応えていました。注目すべきは、三省堂書店の競合書店からも、温かい投稿がされている点です。

近隣の大型書店の1つである神保町書泉グランデの公式Xアカウントは、祝福投稿とは別に、「書泉からこっそり4年間定点観測してたのをダイジェストにしました」と、力作動画を投稿していました。

この愛とリスペクトあふれる投稿には、多くの好意的なコメントが集まりました。両書店だけでなく「神田神保町」という街への好感も高まったことがわかります(以下は返信の一部)。

  • 同じ街にあり本を通しての同士という関係、神田・神保町っていい街ですね
  • ご近所愛とリスペクトを感じます こういうニュース大歓迎です
  • 三省堂に行く者は必ず書泉にも行く 書泉に行く者は当然三省堂にも行く神保町の書店はすべてが知の毛細血管で心のインフラなので

書泉グランデは三省堂書店を競合として意識させるのではなく、神田神保町という本の街のにぎわいをいっしょに盛り上げる仲間として扱っています。以下の投稿にある「来いやー! もっとー  神保町ー 飛んで来いー」のフレーズ、そして近隣の競合書店の写真からも「(うちの店だけじゃなく)神保町に来て!」という思いがあふれています。

書泉グランデの「自店の宣伝で終わらせない」視点は、書店に限らず、商業施設や観光地、商店街、もちろん各業界にも応用しやすい考え方です。個店どうしで顧客を奪い合うように見せるより、「この街に行くと楽しい」「回遊したくなる」と感じてもらえたほうが、結果的に各店の利益や業界発展にもつながります。自己満足ではなく、街全体や業界全体の価値向上・好意度向上につなげるSNS活用事例として、ご参考になれば幸いです。

まとめ

今回紹介した事例に共通していたのは、「勝とうとしすぎていない」点です。J-AIRとANAは相手への敬意で、ダンロップとミシュランは相手の文脈に合わせる会話のセンスで、書泉グランデは街全体を主語にする視点で、競合との関係をポジティブに見せていました。とくに日本では、「競合を蹴落とそう、言い負かそう」とするのではなく、両社の関係性そのものを魅力的に伝える発想が大切です。ブランド単体への好感を、業界や地域全体の「感じのよさ」へ広げていきましょう。

みなさんが競合他社とSNSで接触するときにまず大事なのは「SNSの運用目的(例:好意度向上、来店意欲向上 など)を見失わないこと」です。その上で以下ポイントにも留意してみてください。

  • 敬意やユーモアで対応する
  • 自社を上げたり相手企業を下げたりしない
  • 業界や地域を主語にする
  • 単発投稿ではなく想定される返信や引用まで含めて「会話」として設計しておく

競合とやり取りすること自体に価値があるのではなく、「競合とのやり取りを見たユーザーにどう感じてもらえるか/どう行動してもらえるか」が重要です。日ごろから準備を整えておき、チャンスが来た際にはぜひチャレンジしてみてはいかがでしょう。

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