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3月のGoogleコアアップデートが、メディアやアフィサイトをいかに虐げたか、調査レポート【前編】

3月のコアアップデートが正式に完了した今、何がわかっているだろうか。45日間にわたって実施されたこのアップデートを観察してわかったことやその結果を、大きく4つにまとめた
この記事の内容はすべて筆者自身の見解であり(ありそうもないことだが、筆者が催眠状態にある場合を除く)、Mozの見解を反映しているとは限らない。

グーグル史上最も重要なアップデートの1つだった2024年3月のコアアップデートは、正式な提供開始から45日後の4月19日に完了したことが正式に発表された。グーグルの狙いは、3月のコアアップデートとスパムアップデートを同時に実施することで、各種システムをアップデートすることに加えて、次のものを減らすことにあった:

  • 低品質で役に立たないコンテンツ
  • 特定の種類のスパム

グーグルはさらに、新たな種類のスパムポリシー違反として、「サイトの評判の不正使用」を2024年5月5日以降に有効にすることを示唆した。

こうした複数の要素からなるアップデートは、次に挙げるさまざまな理由から、SEOおよびマーケティングコミュニティの多くの人が長く待ち望んでいたものだ:

  • 直近のアップデートによるトラフィック激減の復活 ―― 悪名高い2023年9月のヘルプフルコンテンツアップデートと最近実施されたその他のグーグルアルゴリズムアップデートを経てトラフィックが減ってしまっていたサイトオーナーがいた。彼らは、3月のコアアップデートで何らかの揺り戻しが起こり、トラフィックが増加することを期待していた。

  • 低品質な検索結果の低減 ―― グーグルの検索結果にスパム、ハッキングされたコンテンツ、低品質な情報が入り込んでいるという報告が増えており、特に人工知能(AI)で生成されたコンテンツの拡散がこれに関わっていた。

  • 予告されていた改善 ―― 検索結果の品質や改善の機会に関するさまざまな苦情やフィードバックに対し、グーグルはこれらの問題に対処するための大きな変更を予定していると何度も示唆していた

3月のコアアップデートが正式に完了した今、何がわかっているだろうか。

この記事では、45日間にわたって実施されたこのアップデートを観察してわかったことやその結果を、大きく4つにまとめた(一部はアップデートが始まる前から起こりつつあったトレンドだが、今回のアップデート導入中にはっきりしたものだ):

2023年3月コアアップデートに関してわかったこと4つ

アップデートの結果①
SEOのトラフィックとビジビリティの主な勝者はReddit

3月のコアアップデートとそこに至る数か月間の最も重要な結果の1つは、SEOにおけるRedditのビジビリティが急速に向上したことだ。

※Web担編注 Redditは英語圏を中心に人気の掲示板サイト。

この大幅な上昇は2023年秋に始まっており、グーグルによる「Hidden Gems(隠れた宝石)」アップデートの発表と密接に結びついていた。Hidden Gemsアップデートの目的は、検索結果でフォーラムやディスカッションといったコンテンツのビジビリティを高めることだった。

reddit.comのビジビリティが2023年秋から急上昇している

Redditのオーガニックトラフィックは、多くの種類のクエリやカテゴリで激増している ―― たとえば、健康、金融、商売、製品レビュー、成人向け、AI、著名人、その他のトピックなどだ。

またグーグルの検索結果では、Redditに対して複数のサイトリンクが表示されることが多いため、次のようにオーガニック検索結果1件がReddit内のURL最大8件にリンクされることもある。

検索結果内でRedditに対するリンクがさらに多く表示されることも

グーグルとRedditは先ごろ、提携拡大も発表している。RedditのAPIに直接アクセスしてAIのトレーニングに利用するために、グーグルがRedditに年間6000万ドル(約94億円)を支払うという。この提携の一環として、グーグルは「Redditの情報がコンテンツとしてより目立つように表示されやすくする」ことになる。これは、検索でSERP機能「ディスカッションとフォーラム」の表示が増えるということだと思われるが、グーグルは明言していない。トム・カッパー氏の調査結果はこの仮説を裏付けるもので、SERP機能のディスカッションとフォーラムにおけるRedditの結果は、1年前と比べれば0.1%から1.3%に増加している。

リリー・レイのXへの投稿によると、SERP機能のディスカッションとフォーラムは時間の経過とともに増加している(トム・カッパー氏のデータより)
ディスカッションとフォーラムに関するSERP機能は2023年末から急増しており、その代わりにニュース関連のSERP機能は徐々に減っている(画像出典

ただし、グーグルは、次のように述べている

Redditとの契約に、検索でRedditのコンテンツを上位に表示する取り決めは断じて含まれていなかった

オーガニックのビジビリティとトラフィックが激増した理由が何であれ、結果に変わりはない。それは、インターネット上のほぼすべてのサイトにとって、SEOの観点からRedditが主要な競合相手になったということだ。

Mozのデータによると、オーガニックにおけるRedditの最大の競合相手はYouTube、Instagram、Facebookで、検索結果に表示されるキーワードは3420万件に上る。

オーガニックにおけるRedditの最大の競合相手(出典Moz Pro)

しかし、あらゆる種類のコンテンツでRedditの順位が急上昇したことは、はるかに多くのサイトが検索でのビジビリティをめぐってRedditと競合するようになったことを意味する。

次に示すグラフは、共通のキーワードと(SISTRIXによる)総合的なビジビリティインデックスのスコアの観点から、次の比較をしたものだ:

  • Redditのビジビリティ
  • カテゴリの異なるいくつかの著名なウェブサイトのビジビリティ(Forbes、The New York Times、ESPN、The Home Depot)

グラフでは、ピンク色の丸に囲まれた要素が対象サイトで、それ以外は競合サイト。いずれのグラフでも、全体的なSEOのビジビリティや共通のキーワードの最大件数で、Redditが上回っていることがわかる。

Forbes(経済雑誌)のビジビリティ競合調査。Redditは右上の青い丸の要素
ビジビリティインデックスにおけるThe New York TimesとRedditの比較
The New York Times(日刊新聞紙)のビジビリティ競合調査。Redditは右上の青い丸の要素
ビジビリティインデックスにおけるESPNとRedditの比較
ESPN(スポーツ専門チャンネル)のビジビリティ競合調査。Redditは右上の茶色い丸の要素
ビジビリティインデックスにおけるThe Home DepotとRedditの比較
The Home Depot(住宅リフォーム・建設資材・サービスの小売りチェーン店)のビジビリティ競合調査。Redditは中央少し左の上部にある茶色い丸の要素

加えて、3月のコアアップデートを含む最近のアップデートで「トラフィックとビジビリティを大幅に失った多くのサイト」と「トラフィックが大幅に増加したRedditのカテゴリ」には共通点が見られる。

たとえば、エンターテインメントやゲームコンテンツのサイトに対応するRedditのカテゴリは/r/movies/r/anime/r/switchなどだ。また、製品レビューのサイトに対応するRedditのカテゴリは/r/buyitforlifeといった具合だ。

アップデートの結果②
ニュースサイトやアフィリエイトサイトのビジビリティが低下

SEOのビジビリティとトラフィックでRedditが急上昇した一方、別の主要カテゴリのサイトは大幅に低下した。

具体的には、ディスプレイ広告やアフィリエイトリンクでマネタイズしている数千件の情報サイト(多くの人気ニュースサイトやメディアサイトを含む)だ。これらのサイトには、たとえば次のものがある(下記は完全なリストではなくその他の情報コンテンツも低下している):

  • ニュースや出版社のウェブサイト
  • 製品レビュー
  • 旅行やレシピのブログ
  • 歌詞のウェブサイト
  • エンターテインメントやゲームのニュース
  • 噂やレビュー

相関関係が因果関係を意味するわけではないことに注意してほしい。そのため、広告やアフィリエイトリンクがSEOの問題を引き起こす唯一の原因というわけではない。しかし、「マネタイズ戦略をディスプレイ広告やアフィリエイトリンクに依存している情報サイト」と「3月のコアアップデートに起因するトラフィックの減少」には、有意な相関関係があるように見える。

このパターンは、過去数年にわたってこれらの種類のサイトに影響を及ぼしてきたより重要な傾向に沿っており、その影響はここ数か月で強まっている。下のグラフにあるアルファベットの「A」は、3月のコアアップデートの開始時点を示す。これら6件の人気ニュースサイトのビジビリティが次第に低下していたことを示している。しかし、過去9か月を振り返ると、この低下はより大きな傾向の一部にすぎない。

人気ニュースサイト6件のビジビリティが次第に低下していたことを示すグラフ。
データ対象サイトは「nytimes.com」「businessinsider.com」「forbes.com」「time.com」「usatoday.com」「theguardian.com」

2023年9月のヘルプフルコンテンツアップデートも、アフィリエイトリンクや広告でマネタイズしている情報サイトに特に大きな影響があったようだ。

2023年9月のヘルプフルコンテンツアップデートは情報サイトに影響を与えた。
データ対象サイトは「a-z-animals.com」「collider.com」「screenrant.com」「hadviser.com」「movieweb.com」「bobvila.com」

次に示すグラフは、2024年3月のコアアップデートの結果、SEOのビジビリティが変化したカテゴリ全体の数字を示している(SISTRIXによるビジビリティインデックスの数値に基づく)。これを見てわかるように、「ニュース&メディアパブリッシャー」のカテゴリは減少幅が最も大きく、このカテゴリの全ドメイン名151件を合わせるとビジビリティは461ポイント低下した。

SISTRIXによるカテゴリ別ビジビリティ全体の変化
※Web担編注 カテゴリ名は同一名が複数あったりSimilarwebのカテゴリにないものもあったりするが、Similarwebの日本語カテゴリ名を参照しながらオリジナルに忠実に日本語訳した

SISTRIXのビジビリティインデックスでは、Googleニュース(トップニュースを含む)やGoogle Discoverのビジビリティがカウントされていないことに注意する必要があるが、これらの低下は、3月のコアアップデート開始時点でサイトが表示されていた順位との比較であり、グーグルの1ページ目に表示されるオーガニックリンク内のニュースおよび情報サイトのビジビリティが大幅に低下したことを示している。

次のグラフは、サイトが広告を利用しているかどうかを識別するツールBuiltWithを使用して調査したものだ。「3月のコアアップデートによる勝者と敗者のカテゴリ」ごとに、「各カテゴリで広告を利用しているサイトの割合」を把握できるようにした。カテゴリの「絶対数・勝者」と「絶対数・敗者」は、獲得または追加されたビジビリティの変化の合計で増加・減少に分けている。「割合・勝者」と「割合・敗者」は、3月のコアアップデートの開始から終了までの平均変化率で増加・減少を分けている。

カテゴリ別ドメインごとの広告を示すグラフ

BuiltWithによると、全体としてビジビリティが最も低下したカテゴリである「絶対数・敗者」のうち、広告を使用しているとラベル付けされたサイトの割合は79%で、次が「割合・敗者」の75%だった。

それに対し、「絶対数・勝者」では広告使用サイトが66%、「割合・勝者」では56%に留まった。最大の勝者となったカテゴリは主に2つある。次の2つだ:

  • Eコマース & ショッピング ―― Amazon(ビジビリティ+531ポイント)とeBay(+51ポイント)の増加が大きな原動力となった

  • コンピュータエレクトロニクスと技術 ―― Instagram(+208ポイント)、Reddit(+155ポイント)、Facebook(+84ポイント)、X(+78ポイント)を含む

3月のコアアップデートで絶対数が最も多かった勝者
3月のコアアップデートでビジビリティ増加の絶対数が最も多かった勝者サイト

この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編となる次回は、筆者が挙げている4つの傾向のうち前編で説明できなかった残りの2つを紹介する。(後編は7/8公開予定)

用語集
API / Discover / Facebook / Instagram / SEO / SERP / アフィリエイト / インデックス / オーガニック検索 / クエリ / サイトリンク / ディスプレイ広告 / ドメイン名 / フィード / リンク
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