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SEOでは1位ではなく2位を狙うべき? 強調スニペット関連アップデートの影響をデータで分析(前編)

グーグルで強調スニペットに表示されたURLはその検索結果の一覧に表示されなくなったことで、結果として検索トラフィックが減少しているというデータがある。
筆者の見解はすべて筆者自身のものであり(ありそうもないことだが、筆者が催眠状態にある場合を除く)、Mozの見解を反映しているとは限らない。

グーグルの検索結果に、ある変更が加えられた。2020年初頭に起きたその変更とは、「強調スニペットに表示されたURLはその検索結果の一覧には表示されないようにする」ものだ。

このアップデート以降のSERP(検索結果ページ)におけるCTRなどのデータを調査したところ、「単に強調スニペットの扱いが変わっただけでない、さまざまなユーザー行動」と「そうした事実をもとにした、2020年のSEOで意識すべきポイント」が見えてきた。

この記事は前後編の2回に分割している。まずアップデート後のさまざまな検索データを分析とともに紹介し、まとめとして、ビジネスに価値あるSEO施策を続けるためのポイントを紹介する。

すでに気づいている人もいるかもしれないが、2020年初頭のグーグル検索アップデートは、SEO施策の世界を変えた。グーグルは1月22日、「SERPで強調スニペットを獲得したURLを同一SERP内には重複して表示しないようにする」という変更を行った。

強調スニペットを獲得したページの通常のオーガニック検索結果が2ページ目のトップに追いやられたという報告がある。個別のケースで確認できるが、さらに詳しく調べてみることにする。

あるウェブページが重要性を増して強調スニペットを獲得したら、その検索結果内に同じページを重複して表示することはもうしない。これで検索結果はスッキリするし、ユーザーは関連性のある情報を見つけやすくなる。強調スニペットは、検索結果に表示される10件のウェブページのうちの1件としてカウントされる。

これはつまり、強調スニペットは今後、「ポジションゼロ」ではなく「真の検索首位」という位置付けになるということでもある。

※ポジションゼロ

このアップデートまでは、強調スニペットに採用されたURLは、検索結果1ページ目(多くは最初の3~4件)で表示され、それに加えて上部にも強調スニペットで表示されるといった形で、検索結果で「二度おいしい」扱いを受けていた。

読者やMozにとってこれが何を意味するかについてはすでに説得力のある論考があるので、おさらいが必要な人には、同じ説明をここで繰り返すのを控えて、ドクター・ピートの記事を紹介しておこう。

このアップデートで何が起きたのか ―― それを知るにはデータ!

僕はSEO業界に長くいるので、大きな変更(ポジションゼロの削除など)があった場合、上司やクライアントはビジネスにとってそれが何を意味するかを知りたがることもわかっている。こうした状況でSEO担当者に答えられるのは、次の2つに限られる。

  • 自ら確認できること
  • オンラインで他の人が報告していること

今回、アップデートから4週間ぶんほどのデータを調べた。具体的なトレンドを観察して、すべてのSEO担当者がするべき最終的な提案をするのに、30日という期間だけでは十分ではない。しかし、経時的に観察する価値のある急激なトレンドの変化を明らかにするには十分な時間だ。SEO担当者にとって他者を出し抜く唯一の方法は、互いに目にしているトレンドを共有することだ。互いのデータや理論を共有しなければ、誰もがすぐ目の前にあることしか見えなくなってしまい、それはたいていの場合、全体像ではない。

そこで、ポジションゼロなき後の世界に関する議論をさらに進める取り組みとして、僕たち97th Floorは、1月22日以降の強調スニペットについて、変化前と変化後の実例を3000件近く調べることで、目の前のトレンドを明らかにする作業に着手した。

データと手法

すぐに知見を得たい人は、ここを飛ばしてもらっても構わない。個人的には情報がどういった背景によるものかを把握しないのは、おすすめしないが。

今回、発見をもたらした手法の概要について少し説明しておく。

使用したツールは、主に次の2つだ。

  • Google Search Console(GSC)
  • STAT

トラフィックのデータという観点では、GSCよりGoogleアナリティクスの方が多くを得られる。しかしGoogleアナリティクスには検索以外のさまざまなトラフィックのデータが含まれるため、実際のキーワードに起因するトラフィックを確認するには限界がある。そのため、僕たちはGSCを利用して、特定のページに対する特定のキーワードのクリック率(CTR)を調べた。

さらにGSCのデータとSTATのデータとあわせて扱った。これにより、対象のキーワードについて、次の両方の正確なデータを日別に調べた(どちらもSTATの用語だ):

  • グーグル基本順位(Google Base Rank) ―― ユニバーサル検索結果(マップ・ニュース・画像など)を除外した、リスト内での順位

  • グーグル順位(Google Rank) ―― ユニバーサル検索結果(マップ・ニュース・画像など)を含んだ、検索結果全体での順位

調査するべきキーワードはたくさんあるが、分析したキーワードはすべて(STATで調べて)グローバルMSV(月間検索ボリューム)が5000件を超えるものにした。それよりも検索ボリュームが少ないキーワードでは、統計的有意性を示すほどのデータは得られなかったからだ(ごく一部の例外を除いて)。

キーワード難易度スコアはすべてMozによるものである点にも注意する必要がある。

もちろん、僕たちが関心を持っていたSERPは、以前に強調スニペットを含むものだけだった(そうでなければ変更前後の状態を正確に把握できない)。それによってさらにキーワードを絞り込んだ。

結果として、最終的に分析したキーワードは2773件だった。

さらに、明確なストーリーを伝えているキーワードに絞り込み、100件ほどのキーワードを手作業で詳しく分析した。時にはキーワード1件(というより30日ぶんのSERP)を分析するのに数時間かかることもあった。

後述する調査結果は、主にこれら100件のキーワード分析によるものだ。

それから、これは言うまでもないことかもしれないが、僕は97th Floorのクライアントのデータを保護することに最善を尽くしているため、ここで紹介したデータに関係するウェブサイトについて不利になる情報を公開するようなことはしない。97th Floorはクライアント数百社のGSCアカウントにアクセスでき、そのほぼすべてについてSTATでキーワードを追跡している。

要するに、僕は最適なデータと知見を共有するよう尽力しているが、そのためにクライアントのプライバシーを犠牲にすることはない、ということだ。

調査結果は、予想に反する結果に

さて、厳選した100件のキーワードに関してグーグル検索関連のデータを調査した結果は――予想に反するものだった。

そのデータを見て、ぼくは次のように考えるようになった:

SEOでは1位ではなく2位を目指すことを検討する必要があるかもしれない

こうしたことを言ったSEO担当者は、僕が史上で初めてではないだろうか。

ポジションゼロがSERPでの役割を失ったという@dannysullivanのツイートを見た人はいる?

この記事の最大のポイントは、6年前に強調スニペットが登場してから初めて、SEO担当者は強調スニペットに合わせた最適化をやめることを検討するべき状況になっているかもしれない、ということだ。

「ポジションゼロ」というものは、もう存在しない。強調スニペットとグーグルの1ページ目の両方に同じURLが表示されることはなくなる。このことは、SEO担当者に即座の、そして長期にわたる影響を及ぼす。次の記事では、これまでに分かっていることや、初期の取り組み、そしてSEO担当者ができることを紹介している。https://hubs.ly/H0mHK9P0

これが間違っていたとは今でも思わないが、実際に調査から得られた知見は、そう単純なものではなかった。

こうした調査にみなさんが期待するのは、おそらく「明確でわかりやすい結果」だろう。しかし今回のデータ分析によって僕が発見した事実は、もっと微妙なニュアンスをもつストーリーだった。

ポジションゼロ消滅の謎を明らかにする最善の方法は、この調査の個々の結果を個別の教訓として周知させることだ。そこで、以下に調査結果を順不同で示す。

長年にわたるスニペットの勝者は、CTRとトラフィックが減少している

ポジションゼロなき後の世界に関する最も明確な事実は、これだろう:

強力な強調スニペットを獲得し続けてきたウェブサイトは、クリック数が減少し続ける。

たくさんの検索ボリュームが期待できるキーワードで強調スニペットの獲得を何年も追求してきたSEO担当者にとって、これは衝撃的な事実かもしれない。

次の図で示したキーワードは、僕たちがあるクライアントのために数年前に構築したページで使用しているものだ。そのページは、公開以来強調スニペットをほぼ独占していた。このキーワードのグローバル検索ボリュームは7万4000件、難易度スコアは58で、平均CPC(クリック単価)は38.25ドルだ。これはクライアントにとって、かなり収益性の高いキーワードおよび位置付けと言っていいだろう。

点線がアップデート前、実線がアップデート後

僕たちは、1月22日の発表の前後2週間にわたって、Google Search Consoleでこのページにトラフィックをもたらしているこの1つのキーワードのCTRを解析した。2週間以上前にさかのぼって解析したいのはやまやまが、そうすると、新年のトラフィック件数と重なるため、データが台無しになってしまう。

ご覧のように、これら2つの期間において、インプレッション数と平均順位はほぼ変わっていない。

  • 総インプレッション数: 3万7300 → 3万8600
  • 平均順位: 4位 → 4.1位

しかし、1月22日のポジションゼロ廃止直後の2週間には、CTRとその後のクリック数が劇的に減少した。

  • 平均CTR: 4.7% → 3.6%
  • 総クリック数: 1770 → 1390

2020年の残りの期間もこの傾向が続いたら、このキーワード1件の強調スニペットの変化によって、2020年にはクリック数が9880件減少することになる。

この1つのキーワードに過ぎず、このページで使われているすべてのキーワードではない。これに平均CPCを当てはめて計算すると、1年間で得られるクリック価値の逸失は37万7910ドルに相当する(広告で集客していた場合のコスト換算)。

確かに、これはキーワードの件数やCPCの誇張によってもたらされた大げさなシチュエーションだが、この調査で何度も明らかになった原則に変わりはない。それは、次のようなものだ:

長期にわたって強調スニペットの位置を占めてきたブランドは、ポジションゼロに変更があった直接的な結果として、CTRとトラフィックが減少している。

スニペットが2件ある場合、最初のスニペットのCTRは低下する

さらにもう1つ、おもしろい発見があった。それは、強調スニペットが2件ある場合のユーザー行動だ。

通常の検索結果でスニペットが2件表示されるのは、雪男(イエティやビッグフット)と遭遇するぐらいまれなことだが、ないわけではない。

こうしたSERPに関して、次のような発見があった:

強調スニペットが2件ある場合、最初のほうのクリック数は減少する。

なんとなく納得いくかもしれないが、実際の数字を見て僕たちは唖然とした。この現象に遭遇したすべての場合において、2件目のスニペットがあると、1件目の強調スニペットはCTRを50%超も失っていることがわかったのだ。

CTRが激減

この図はグローバル月間検索ボリュームが4万500件のこのキーワードに関するものだ。月曜日には唯一の強調スニペットとしての地位を占めており、火曜日も(2件目の強調スニペットが登場したことを除けば)SERPに変化はなかった。

この小さな変更によって、CTRは次のように変化した。

  • CTR: 9.2% → 2.9%

このキーワードは、その後の期間においても様の傾向が続いている。月曜日と水曜日は強調スニペットが1件だが、火曜日、木曜日、金曜日は強調スニペットが2件あった。

CTRはその後も低迷

この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編となる次回も、今回に引き続きこの調査から得られた意外な結果とそこから得られる教訓を紹介する。→後編を読む

用語集
CPC / CTR / Googleアナリティクス / SEO / SERP / SERPs / インプレッション / オーガニック検索 / クリック率 / スニペット / ユニバーサル検索
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