インタビュー

これからのWeb担当者に期待される役割とは何か――元花王のWeb担・本間充さんに聞く(前編)

Web担当者がこれから、会社のビジネスの中核で活躍するために果たすべき役割とは何か? 新編集長・四谷志穂が聞いた。
アビームコンサルティングのコンサルタント・本間充氏とWeb担当者Forum新編集長・四谷志穂(撮影:武居厚志)

Web担当者Forumが立ち上がって12年、Web担当者を取り巻く状況は大きく変化してきた。

当初の担当領域はPC向けの企業Webサイトだけだったのが、スマートフォンが爆発的に普及したことによって、スマホ向けのWebサイト、オウンドメディア、Twitter、Facebook、Instagram、スマホアプリなど、面倒を見なくてはならないチャネルの数が増えてきた。

仕事の内容も変化した。Webサイトの制作、運用だけでなく、デジタルチャネルを使ったマーケティングや広告にまでコミットすることが求められることも多くなっている。

そうした状況で、Web担当者は今、どういう課題を抱えているのか? Web担当者に求められる役割はこれからどのように変化していくのか? Web担当者Forumはどうすればもっと役に立てるのか?

1995年というインターネットの黎明期から、花王でWeb担当者、デジタルマーケティングを担当し、現在はアビームコンサルティングのコンサルタントである本間充さんに、Web担当者Forum新編集長の四谷志穂が話を伺った。

Web担の読者ってどういう人?

四谷: 編集長をやるにあたって、一番の悩みは、「今、Web担当者Forum(以下、Web担)の読者ってどういう人だろう」ということです。

本間: 読者像がわかりにくくなっている?

四谷: そうなんです。Web担当者の本当のニーズに応えられていないのではないか、と。

本間: Web担が開設された12年前より、Web担当者の仕事の範囲が広がっているんだろうね。企業において、Webやデジタルがカバーする範囲が広がっているし、重要度を増している、とも言える。

四谷: 確かに。昔はWebサイトだけだったのが、Twitter、Facebook、Instagram、アプリなど、チャネルの数も増えてきています。

本間: 同時に、読者層も広がってきた。コアな読者であるWebマスター、Web担当者、デジタルマーケターに加えて、Webやデジタルを専業としない会社や部署の人まで広がってきているよね。

四谷: そう思います。

本間: この20年間、Web担当者は一生懸命デジタルを勉強して、デジタル領域内でいろいろな施策をやってきました。しかし今は、その技術やスキルを、デジタル以外の領域にどうやって織り込むのか。それを考える段階になってきている。

四谷: ですね。

本間: でも、何から始めたらいいのか、どうやって進めたらいいのか、みんな悩んでいるんだと思う。書店のビジネス本の棚を見ても、個別のテクニック解説のような本は多いけれど、Webやデジタル全体を俯瞰しながら仕事を進めていくべきポジションの人向けの本は、全然ないんだよね。そこが、これからのWeb担に期待されている部分だと思う。

四谷: あ、確かに。現実には仕事として存在しているのに、それをこなすための解説本はほとんどないという状況は、12年前のWeb担開設時と似ているかも。

本間: つまり、今は「Web担当者」のあり方を再定義する時期なんだと思うんですよね。

自分の技術やスキルを、デジタル以外の領域でどう活かしていくかを考える段階にある(本間氏)

Web担当者のあり方を再定義すべき

四谷: やはり、そうですよね。名付け親の初代編集長・安田さんをして、「今となっては、対象読者を狭めすぎた……」と言っているくらいですから。

本間: 今までのWeb担当者は、「Webメディアを作る人」でしたが、これからは、「Webの考え方を知っている人」と置き換えるべきではないでしょうか。今、Web担当者に求められているのは、Webサイト制作や改善のノウハウだけではなく、Webの技術や考え方をベースに、ビジネスにコミットしていくことだと思うんです。たとえば、MA(マーケティングオートメーション)って、まさにそう。

四谷: そうですね。

本間: MAが行っていることは、本来はド本流のマーケターがやるべきことです。本来自分たちでやるべき仕事を、なぜマーケターはWeb担当者に頼みに来るかというと、社内で一番、知ってそうに思えるから。

四谷: ちょっと意外。本流のマーケター人には、そう見えるものなんですか?

本間: そうですよ。事実、Webのどこでお客様のCookie情報を取り、どこでコンバージョンさせるかといった、インターネット空間上でのカスタマージャーニー設計は、Web担当者の方が長けているじゃないですか。

四谷: 確かに。

本間: トラディショナルなマーケターは、コンバージョンは自分の手元では起こらないんです。たとえば、FMCG(Fast Moving Consumer Goods。日用消費財)や飲料メーカーは製造業なのであって販売業ではない。

四谷: 店頭でコンバージョン(購入)を起こさせることは本来の自分たちの仕事じゃないから、ノウハウがないってことですよね。

本間: そう。ただ、そういう会社であっても、Web担当者は、Webサイト上にサンプル応募画面や、メールマガジンの申し込み画面を設計する中で、業務の中でコンバージョン設計をしているから、トラディショナルマーケター以上に、コンバージョンを知っている人と言うことができる。

四谷: コンバージョンのさせ方を知っている人、と思われているんですね。

本間: そう。トラディショナルなマーケターからすると、社内のWeb担当者は良いサポーターに見える。だからこそWeb担当者は、これまで自他ともに認識されてきた役割を自ら変えなくてはいけない

四谷: どういう風に変えるのでしょうか?

本間: 「Webで得た知見をマーケターに伝えつつ、彼らがWebの特性を下敷きにした施策を考えられるように、情報を提供できる人」になっていくべきだと思います。

Web担当者はコンバージョンのさせ方を知っている人と見られているんですね(四谷)

「人を混ぜる」「知識を混ぜる」をムーブメントに

四谷: そうなると、経営層が判断するような要素を採り入れた、プロジェクト全体のグランドデザインが必要になってきますよね。これからのWeb担当者には、奥谷孝司さんや森岡毅さんのようなトップマーケター的な能力が求められるということでしょうか。

本間: いや、必ずしもそうではありません。いきなりプロジェクトを立ち上げたり、リーダー選んだりをする必要もなくて、まずは断片化されたみんなの知識を、いったん机の上に広げる。Web担当者も、「Webに関して知っていることを全部話します」という姿勢で臨まなくてはいけない。

四谷: 全員フラットな状態で話し合うということですね。

本間: ここで大事なのは、決して、「Webのこと知らないくせに……」といった態度を取ってはいけないということ。Web担当者しか知らないことがあるということは、マーケターしか知らないこともあるということ。フラットに、かつ積極的に、お互いの持っている情報、知識を交換するべきだと思います。

四谷: それを踏まえて、Web担当者はどう動けばいいんでしょうか。

本間: 「デジタルVSアナログ」といった対立構造はよく耳にする話題ですが、実のところ、そう煽っていたのは、Webやデジタルの担当者の方かもしれないよ、と思うんです。過去10年ぐらいを振り返ってみてほしいんだけど、「デジタルシフトしないと、アナログは生き残れない」みたいなセリフ、聞いたことありませんか?

四谷: ……覚えがありますねぇ。

本間: アナログとデジタルは、本当は対立する相手ではなく、共存する間柄なんです。だからこそ、Webやデジタルの側から「10年ぐらい前からずっと、デジタル対応の必要性を煽りすぎました。ごめんなさい。でもこれからは一緒にやっていきましょう。よろしくお願いします」と言うべきなんです。

四谷: その溝を埋めていくためには、どうしたらいいんでしょう?

本間: 手近なところから、「混ざる」練習を始めてみては。トラディショナルなマーケターがオフラインから得ている購入データと、自社で保有するデジタルデータを繋いだら、新しいお客様像が見えるかもしれない。そんなシンプルなところから、スモールスタートするのがいいんだと思う。

四谷: いいですね。

本間: 「混ざった方がいいよね」というムーブメントが、ほんのちょっとでも社内で起きれば、変わっていくと思うんだよね。

社内でまずは小さく混ざる練習を始めてみては(本間氏)

専門屋と専門家は違う

四谷: いろんな人に混ざって、Webやデジタルのことを、あまり詳しくない人に話すのは、結構大変そうな感じもします。

本間: 最近つくづく思うのは、「専門屋」と「専門家」は違うということ。専門屋は、いわゆる専門バカなので、専門用語でしか説明ができない。専門家は、専門用語に頼らず、相手に合わせて平易な言葉で説明ができる

四谷: なるほど。

本間: 一流の専門家は、自分の仕事を門外漢の人にも説明ができるんですね。だから、幅広くサポーターを集められる。これからのWeb担当者は、専門用語を使わずに、マーケターと会話が成り立つように話す練習をしなくてはいけないと思います。今はPM(プロジェクトマネジメント)を、コンサルティングファームやSIerに外注することが多いですが、それは社内に通訳もいない、共通言語もないから、外注せざるを得ないということあるのでしょう。

四谷: 情報システム部とマーケティング部の間を取り持つ人間がいない、と。

本間: 同じ会社の人間なのに、ビジネス用語でしか話せない人と技術用語でしか話せない人しかいない。その双方を理解して通訳できる人間がいない状況って、不健全ですよね。専門用語での会話は、わかっている者同士の中では気持ちいいけど、それでは世界が閉じてしまう。狭い世界で泥縄状態にならないためにも、日常的に、自分たちがやっていることを専門家としてわかりやすく説明できるようにしておくべきだと思います。

四谷: Web担当者には、その心がけが足りない、と?

本間: あえて、少し厳しい言い方をしますが、足りないと思う。Web担当者がやってきたことをきちんとマーケターに説明できれば、「ありがたい、ためになる」って言われるはずなんですよ。それによってもっと、社内でビジネス寄りの話ができるようになる。トラディショナルマーケターたちはWebに対して大きな期待をしています。それをWeb担当者たちはもっと理解するべきです。

四谷: 期待されているよ、と。

本間: これからのWebはもっと、ビジネスに寄った、高次元のサービスになっていくはずです。しかもそれは、会社がビジネスの中核として期待するプラットフォームであることは間違いない。そのためにもWeb担当者はもっと、ビジネス的な思考、言語を理解しなければいけないと思います。

後編に続く

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