【レポート】Web担当者Forumミーティング 2017 Spring

マル秘10個のやるべきWebマーケティング施策――サイト最適化への道

Webはもうカタログではない――パーソナライズが当たり前の時代のマーケティング術
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すでに、万人にひとつのWebコンテンツを見せる時代は終わっている。

神野 純孝氏
株式会社ジゾン
製品戦略部
部長
神野 純孝氏

株式会社ジゾンの神野氏は、「マル秘10個のやるべきWebマーケティング施策を一挙公開 顧客経験マネージメント(CXM)を使ったサイト最適化への道」と題した講演を、「Web担当者Forum ミーティング 2017 春」で行い、パーソナライズされたWebサイトの開発、そしてWebマーケティングについて、最新の動向を解説した。

今後必須となるWebマーケティング10カ条

Webはもうカタログではない

と、神野氏は講演冒頭で切り出した。ここでいうカタログとは、印刷された紙のカタログを想像するとわかりやすい。老若男女、紙のカタログは誰が見ても常に同じ内容だ。

しかし、現代のWebは違う。1つのページをとってみても、閲覧する1人1人の状況に合わせて、表示する内容を変えている

これが「すでに当たり前になっていること」――その前提でマーケティング施策を実行する必要があるとし、次の10個の具体例を挙げた。

講演で例示された10カ条。この9つにもう1つ「AI」が加わる

1. コンポーネント化

Webの構築法は過去も現在もHTMLが中心であるが、その中身や構造は大きく変貌した。特に閲覧者によって表示内容を変えるには、HTMLで記述される内容を細かくパーツ化(コンポーネント化)しておくことが重要となる。そのうえで、必要に応じてそのパーツの組み合わせを変えていく。

1つのページをHTMLだけでベターッと書けばいい時代ではありません(神野氏)

2. テンプレート化

前述のコンポーネント化とも関わるが、パーツの組み合わせをあらかじめテンプレートにしておくことで、ページの開発・運用効率が向上する。

3. マルチエントランス

Webの誕生初期、URLを手打ちでWebサイトを特定していたころの訪問者は、まずトップページを閲覧していた。それだけにWeb開発の責任者はトップページの美しさにこだわり、当然コストもかけていた。

しかし、ネット検索がこれだけ普及した時代に、どれだけのユーザーがそのトップページにたどり着くのだろうか? 神野氏は次のように指摘する。

有名な製品をお持ちの企業の場合、(検索エンジンから製品ページを直に訪れるため、企業の)トップページを訪れるのはユーザーの2割程度

さらに続けて、神野氏は次のように断じた。

トップページの作り込みはもはや「Web担当者やその上司の自己満足のレベル」だ

検索によって、ユーザーはトップページを経由せず、自分が求める情報のページを直接訪問する。すべてのページが、サイトへの入り口ページ(エントランス)になる可能性があることを理解して、ページ構成を決める必要がある。

4. ユーザーの最適化

今回のセミナーの本旨とも言える部分だ。Webサイトを訪れるユーザーは、その属性(年齢・性別・勤務会社・職種・趣味など)が1人1人バラバラだ。

それゆえに神野氏は次のように解説した。

「(ユーザーをひとくくりにして)サイトの中から必要な情報を見つけてください」というのは無理がある。今はもう(ユーザーがわざわざページを丹念に見て目的のものを)「探さない時代」だ

特に若年世代は、検索で訪れたページの中身を“フィーリング”で判断し、ものの1秒程度で離脱するケースすら多いとされる。そういったユーザーにとっても、わかりやすいページ作りを目指さなければならない。

5. 回数で最適化

該当ユーザーがそのページを何度訪問しているかも重要なポイントだ。これを判別すれば「初めての方へ」というような表記をカットすることもできる。たとえばB2B製品の販売サイトの場合、ユーザーによっては選定から実際の購入まで1年かかるケースがある。これを見越して営業提案をかけることなどが想定される。

6. デバイスごとに最適化

マルチデバイス対応と混同しがちだが、実際には違う。「ある1つの情報をPCでもスマホでも見やすいように表示を調整する」のではなく、「デバイスに応じて優先表示する内容を変える」ことだ。ホテル予約サイトであれば、PCサイト利用時は数週間後~数か月後の予約、スマートフォンサイトでは当日~数日後の予約に使われると考えられる。つまり、表示すべき情報の優先度も変わってくる。

7. スコアリング

ユーザーの属性、サイト内の振る舞いについてスコア(得点)をつける。仮にB2Bサイトの場合ならば、決裁権のある部長が訪問したら50点、稟議書を書くであろう一般従業員には10点、業界研究のための就活生にはマイナス100点を設定する。

また、サイト内フォームで問い合わせをしたら20点、価格表を見たら10点といった得点づけをする。こうやってユーザー個別にスコアを管理し、実際の売上動向などをからめて分析することで、見込み客を判別する。いわゆる「リードナーチャリング」とも呼ばれる手法だ。

8. ソーシャル連携

B2C企業に限らず、B2B企業にとっても重要。なぜなら、SNSを通じて、ユーザー属性の取得・判別が効果的に行えるからだ。

9. 運用者の知恵

スコアリングやソーシャル連携によって、潜在顧客の発掘などはかなり容易になってきた。ただし、それでも神野氏は次のように指摘する。

最終的には、その企業・業界などに関する深い知識が重要になってくる

長年そのビジネスに携わっていれば、いわゆる“勘”は誰にでも身につくもの。その勘を無視して統計だけ信じても上手くいかない。知識を付加できるシステム構成にしておかなければもったいない

10. AI

今まさに進化の途上にある。神野氏は次のように苦言を呈する。

数年前に「レコメンデーションエンジン」と呼んでいた製品が、機能そのままで「AI」になっていたりする

しかし、期待感は大きいという。特にロングテールな製品のマーケティングにおいては、数千~数万の個人向け製品のすべてそれぞれに精緻な販売戦略を策定することが事実上不可能なため、ここをAIに任せるという発想だ。

ソーシャル連携で訪問者の詳細な情報を把握せよ

今後のWebマーケティングの方向性として、神野氏が特に重要と指摘するのは「相手が誰を知ること」だ。これに尽きるという。高度なマーケティングツールを使わなくても、無料のGoogle アナリティクスでも訪問者の性別や世代は判別できるため、最低でもこのレベルの情報は取得すべきだとアドバイスした。そのうえでソーシャル情報などを活用すれば、ユーザーの業種などもわかる。よって、各種施策の効率も向上する。

ユーザー属性などをより重視したこのマーケーティング概念は「CXM(Customer Experience Management )」と呼ばれる。アメリカの調査会社のForresterが提唱したもので、IBMでは「CXA(Customer Experience Analytics)」と呼称するなど、やや対応が分かれているが、概念としてはほぼ共通という。

神野氏によればCXMは米国の著名サイトで導入が進んでおり、今後中小企業への波及が待たれる状況。各種調査でもCXMへの投資意欲の高まりが期待されていることがわかる。

ジゾンのウェブサイトではCXMを導入済み。たとえば、サイト内の「MySQL」の情報ページを閲覧したユーザーに対し、トップページに大きく表示される画像をMySQL関連のものに差し替える対応を行っている。

また、旅行情報サイトのデモでは、たとえば「伏見稲荷」とページ内検索したユーザーに対し、京都関連の情報をトップページのオススメ記事一覧に表示した。

最後に神野氏は次のように強調し、訪問者の分析が極めて重要であることをあらためて指摘した。

今回紹介した10個の施策のうち、かなりの部分がGoogle アナリティクスを使えば今すぐ無料で実行できる。タダでできるのにやらない手はない

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