「自社の力で」MA運用を成功させ、マーケティングの効果を最大化させる3つのコツ
マーケティングオートメーション(MA)というキーワードが注目を集めて久しい。様々なMA活用事例が報じられる一方で、導入に失敗した、導入したものの運用に挫折した、使いこなせずに解約した、という声も多く聞かれる。
MAの効果を最大化するには3つのポイントがある
と語るのは、MAツールベンダーとして約150社の導入実績があるSATORIの高橋氏だ。人手やコストを過度にかけることなく、また代理店にも頼らずに、自社内でMAを導入して運用を成功させるための実践的なコツを「代理店に頼らずに効果を出す! マーケティングオートメーション導入・運用のコツ」と題し、「Web担当者Forum ミーティング 2017 春」で紹介した。
MAの効果を最大化するための3つのポイント
まず高橋氏は、なぜ「代理店に頼らずに」MAの導入効果を出すことを重要視するかについて、次のように話した。
MA導入を検討している企業は多いと思いますが、当社の実績での比較では、興味深いデータがあります。
当社のMAツールを導入していただいたお客様を「当社との直接取引」と「代理店・パートナー経由」に分けてみると、直販で導入いただいたお客様に比べ、代理店・パートナー経由で導入されたお客様は、解約率が2倍以上高いという結果が出ています
こうした解約率の違いの背景について、高橋氏は次のような点を挙げる。
MAツール自体がここ2、3年で台頭してきたため、まだ歴史が浅く、代理店自身が運用・活用して効果を出したケースがそれほど多くない
そのため、ユーザー企業側で運用イメージがつきにくく、MAをどのようにマーケティング業務に活かすべきか、わかりにくいのだ。
高橋氏は、SATORI社自身が、自社のマーケティングを通じて蓄積したノウハウを「効果を最大化するための3つのポイント」として紹介した。
- ポイント1 導入、利用の目的が明確であること
- ポイント2 導入から運用までの期間が長すぎないこと
- ポイント3 投資を適切にすること
それでは、それぞれのポイントを詳述していこう。
ポイント1 導入、利用の目的が明確であること
MAで効果を出すには「導入、利用の目的を明確」にするところから始める。
マーケティング施策を行ううえで、目的を明確にするのは重要だ。たとえば、「売上増加」という目的があるからこそ、施策の立案や、優先順位付けができる。高橋氏は、「売上増加」をマーケティングの目的とした場合の施策の優先順位付け(因数分解)のポイントについて解説した。
“因数分解”のコツは、量と質をかけ合わせることです。たとえば、売上増加が目的であれば、新規顧客の獲得か、既存顧客へのクロスセル、アップセルを増やして売上を増やすかに分解されます。さらに、新規獲得のなかでも、商談件数増(量)、商談勝率の改善(質)という風に、量と質に分けてブレイクダウンしていきます
大事なのは、この因数分解を必ず社内で行うという点。というのも、「個々の項目は、社内事情を踏まえて判断することが求められ、特に、優先順位付けは経営判断に関わる部分でもある」からだ。
因数分解が終わったら、実際の施策の立案、実行に移っていく。オフライン、オンライン施策を活用したリード獲得、商談化率の改善にもMAが本領を発揮する。高橋氏は、「新規商談の増加」に着目したユースケースとして、オフラインとオンラインそれぞれの施策やそのあとの商談化率の改善におけるMA活用のポイントを、事例を交えて紹介した。
- オフラインでのリード獲得施策
- オンラインでのリード獲得施策
- 商談化率の改善(質の改善)
1. オフラインでのリード獲得施策
ひとつ目の事例は「オフライン施策」だ。BtoB企業でリード獲得を目的にオフラインのイベントや展示会に定期的に出展する企業は多いだろう。ここで、「イベント参加者=リード獲得数の増加」のためのポイントとして、高橋氏は次の3点を挙げる。
1-1 クリエイティブ準備
1-2 リード獲得
1-3 アフターフォロー
「1-1 クリエイティブ準備」は、来場者に目を引く、受け取ってもらいやすいものを準備することだ。
イベント会場では多くの企業が来場者に声をかけます。そこで、当社では、A4資料が持ち運びやすく、普段使いもできるようなトートバッグや、タブロイド判の小さな冊子に、マーケティングに関する最新情報を企画、編集して掲載したものを配付しています
次に、「1-2 リード獲得」は、会場で名刺情報を収集する際になるべく時間や手間をかけない工夫が必要だ。
当社では、バーコードリーダーを活用しています。来場パスに記載されたバーコードをリーダーで読み込んで、来場者に負担をかけることなく、名刺情報を収集します。実際のイベントでは、社員だけでなく、アルバイトなど外部の手を借りて実施しています
そして、「1-3 アフターフォロー」は、競合他社よりも早く、お客様にコンタクトを取ることだ。そして、ここでMAツールが威力を発揮する。リード情報をMAツールに蓄積して、すぐにメールを送ることができるからだ。
展示会会場で、「資料が欲しい」と来場者に言われたときに、その場で渡すのではなく、「このあと、メールでお送りしてよろしいでしょうか」と聞いて、名刺情報を収集します。MAツールには、メール文面のテンプレートと自動的にメールを送信できるシナリオを用意しておき、お客様のアドレス獲得後、すぐにメールを送るような運用にしています
2. オンラインでのリード獲得施策
ふたつ目の事例は、「オンラインのリード獲得施策」である。たとえば、資料ダウンロードページを用意し、コンテンツをダウンロードした来訪者をリードとして登録する企業は多いだろう。その際のポイントは次の4点となる。
2-1 ペルソナを緩める
2-2 クリエイティブ準備
2-3 Webで露出
2-4 アフターフォロー
この中で、2-1はMAで対象にすべき顧客のポイントである。
オンラインでのリード獲得というとつい「すぐにでも注文をくれそうな見込み客を探したい」となりがちだ。大事なのは、MAで対象とすべき見込み客は「今すぐ客」ではなく「そのうち客」であり、これが「ペルソナを緩める」という意味だ。
当社のようなMAベンダーの場合、MAツールの導入を検討している企業は『今すぐ客』となります。一方、マーケターや、Web担当者など、情報収集目的で当社のWebサイトを来訪するお客様は、『そのうち客』に分類されます
ターゲットは広く設定することがポイント。BtoB商材でニッチになればなるほど「そのうち客」の獲得が重要になると高橋氏は述べる。
そして、Webを通じてコンテンツを露出し、獲得したリードに対して、MAを活用してコンタクトを取っていくのだ。例として、動きがあるために強く目をひく、自社Webサイトの中の「ポップアップ」という手法や、外部のサイトへユーザーを追いかけていくリターゲティング広告、さらには自社のWebサイトではなく外部のWebサイトを来訪しているユーザー、オーディエンスデータへアプローチしていくという手法もある。
資料をダウンロードした見込み客へのアプローチとして、たとえば、最終的にセミナーに誘導するようなステップメールをお送りします。資料のダウンロード先URLを記載したメールや、個別のお礼メッセージなど、段階的なコミュニケーションにMAツールが活躍するのです
3. 商談化率の改善(質の改善)
3つ目の事例は、「商談化率の改善(質の改善)」にMAを活用する事例だ。見込み客は情報収集のなかで、営業に会って話を聞きたいというタイミングが必ず訪れる。そこで、最適なタイミングでアポイントを取るための改善が有効な施策となる。
その際のポイントは次の3点だ。
3-1 キラーコンテンツ準備
3-2 該当顧客を検知
3-3 商談アポイント獲得
「3-1 キラーコンテンツの準備」については、「お客様がアポイントを欲しているタイミングで見ることの多い」コンテンツを見つけることが大事だ。
当社の場合、営業にヒアリングした結果、導入を真剣に検討している顧客から、「比較表が欲しい」といわれることが多いことがわかりました。そこで、Webサイトに「他社との比較」というコンテンツを作り、グローバルナビゲーションの見やすい位置に配置して、クリックしやすくしています
そして、実際にキラーコンテンツをクリックしたユーザーは、「今すぐ客」として検知される。過去に名刺情報を登録した見込み客であれば、MAツールから社内に通知が飛ぶ仕組みだ。これが「3-2 該当顧客を検知」にあたる。こうして、お客様に対し、アポ担当のインサイドセールスが最適なタイミングで電話をかけることで、「3-3 商談アポイント獲得」数の増加につなげていくのだ。
また、「今すぐ客」が自社のWebサイトを必ず訪れているわけではない。自社以外の外部のWebサイトにキラーコンテンツがあることがわかっていれば、その場合でもタイミングを検知できる仕組みを整えておくことも勝ちパターンの一つとなるだろう。
MAの役割は「そのうち客」から「今すぐ客」を計画的に生み出すことにある。そこで、さらに、スピーディな運用開始、さらには投資対効果の最適化に向けたポイントが紹介された。
ポイント2 導入から運用までの期間が長すぎないこと
できれば、プロジェクトスタートから約1カ月で本番運用を開始してほしい
と高橋氏は述べる。そのためにはポイント1で示した因数分解にあるように「目的を明確に」することはもちろん、「評価指標を先に決めておく」ことが重要だ。
ポイント3 投資を適切にすること
上述したケースの紹介でもわかるとおり、マーケティング施策にはMAツールだけでなく、さまざまなリソースが必要だ。そこで、マーケティングプラン全体の中で、どこでMAを活用するかを明確にすることが、投資対効果を高めるためには重要だ。
たとえば、30日間のイベント施策の場合、準備期間を2か月とし、その間にツール導入に50万円、イベントでの人員の予算、さらにツール作成のクリエイティブ、露出の予算が必要になる。これらの予算に対し、獲得したリード件数に対応したリード獲得単価が、成果として見えてくる。
全体の中で、MAが担う部分がどこかを明確にし、投資を的確に行ってもらいたい
と高橋氏は呼びかけた。
MAツールの選び方、4つのポイント
高橋氏は、MAツール(ベンダー/代理店・パートナー)の選び方として、次の4つのポイントをアドバイスした。
- 目的への合致
どんな目的で導入するか、目的にあった機能を比較し、使いやすさ、習得しやすさも検討する。
- 拡張性
マーケティングプランのロードマップに沿っているかどうか、機能拡張の頻度や、他ツールとの連携などを検討する。
- 信頼性
サポートやセキュリティ性など、信頼できる会社かどうかを検討する。
- マーケティングノウハウ
自社がマーケティングに取り組んでいるかどうかも検討ポイントとなる。
最後に
本講演で紹介した内容は、SATORI社自身、もしくはSATORIを利用するユーザー企業が実際にSATORIを利用して実現している事例だ。
単体でこれだけのことを実現できる「SATORI」というツールに興味が湧いた人へ、SATORI社では毎週、「マーケティングオートメーションSATORI紹介セミナー」を行っている。
セミナーでは「MAの活用イメージを持っていただくための、デモを交えたノウハウ」を解説しているとのことで、事例からMA運用の実践的なコツを知りたいWeb担当者やマーケターは参考になるだろう。
ソーシャルもやってます!