Google Site Search終了を契機に考える「サイト内検索」の重要性とベストな乗り換え先
Googleは、企業向けに有料で提供しているサイト内検索サービスの「Google Site Search」を2018年3月末に終了することを発表している。そのため、自社Webサイトで同サービスを利用している場合は、他のサービスへ乗り換えなければならなくなる。
「Web担当者Forumミーティング 2017春」でビジネスサーチテクノロジの光安氏が「Google Site Searchが終了へ、2018年までにサイト内検索の見直しを」と題して語った、サイト内検索の重要性と、乗り換え先の選定に潜む「ある危険性」の中身とは?
「サイト内検索」の重要性をおさらい
現代のネット社会における「検索」の重要性は、改めて指摘するまでもない。光安氏は「検索エンジンを使わずに、目的の情報をインターネットから探し出すことができるでしょうか? 」と言及。今や、民間企業が提供する検索サービスが社会のインフラとなっていると言っても過言ではない。
ただ、その検索も「Web検索」と「サイト内検索」ではやや意味合いが異なる。
Googleに代表されるWeb検索は、サイトへ顧客を誘導する役目を担う。また、SEO/SEM等の集客施策の為にどんなキーワードで来訪されたかを把握することは多くの企業で実施されている。
対して、サイト内検索は文字通り対象サイト内限定の検索手段。サイト訪問者が「検索サービスで目的のサイトに辿り着く」ためではなく「サイト訪問後に本当に欲しい情報を手に入れる」ために利用する。ここでサイト運営者側は検索キーワードを把握し自社サイトの潜在的なニーズを確認できることに加えて、IPアドレス、ゼロ件ヒットキーワードなどの各種データもより詳細に取得できる。このため、ユーザーが何を欲しているか、Web検索よりさらに踏み込んだ分析が行えるわけだ。
光安氏が所属するビジネスサーチテクノロジは、サイト内検索技術を専門とする企業だ。中核製品は純国産のサイト内検索エンジン「WiSE(ワイズ)」をASP/SaaSで提供する「probo(プロボ)」。これまで、約700社に導入されているという。
GoogleやYahoo!の検索結果のSSL化で「検索キーワード(流入キーワード)」の把握が難しくなった
Web検索における検索キーワードの取り扱いについては、2015年頃から風向きが変わりつつある。国内の検索エンジン大手であるGoogleとYahoo!が相次いでサービスのSSL化(https化)を実施。検索エンジンからサイトへの移動の際、どんな検索キーワードが用いられたか、サイト運営者が把握しにくくなってしまった。
GoogleとYahoo!の検索では、ユーザーが入力したキーワードの情報が、アクセス解析ツールの画面上に「not provided」と表示され、参照できなくなっている(参照記事)。
ユーザーのプライバシー保護のための検索エンジンの常時SSL化による検索キーワード暗号化ではあるが、サイト運営者への影響は大きい。
通販サイトも企業サイトも「サイト内検索」の重要性は変わらず
利用可能なWeb検索キーワードが激減したことで、サイト内検索から得られる情報の価値がさらに増した。この情報の重要性を示すものとして、光安氏は、あるデータを示した。それは、通販サイトにおけるコンバージョン率の比較データだ。
ビジネスサーチテクノロジの調べによれば、サイト内検索を利用していないユーザーに比べて、サイト内検索を利用したユーザーの方のコンバージョン率が約3%~8%高い傾向にあるという。これは、サイト内検索という行動がユーザーにとっての目的買い時に使われることが多く、更に言うと、サイト内検索を利用するユーザーは購入意欲の高いユーザーと定義付けることができる。
対して、商品販売を直接の目的としない企業サイトは、コンバージョン率のような分かりやすい指標はない。そこで「認知向上」が目標となる。そのためのカギが、次の2つだ。
- 来訪する頻度を増やす
- 関連情報の閲覧数を上げる
しかし、単に情報をWebサイトに載せただけでは話は終わらない。顧客、メディア、求職者、投資家などあらゆる属性のユーザーにサイトを訪れてもらい、なおかつ目的とする情報を見てもらってはじめて、認知向上に繋がる。そして、情報を見つけるための手段の一つとして重要なのがサイト内検索というわけだ。
その重要性は数値でも裏付けられている。ビジネスサーチテクノロジのサービスを導入している企業のサイトを分析したところ、サイト内検索を利用したユーザーのページビュー(PV)が平均15.4であったのに対し、サイト内検索を利用していないユーザーのPVは5.41にとどまった(1人あたり、PC版)。直帰率もサイト内検索利用者のほうが低かった。通販サイトと同様、企業サイトでもサイト内検索を使ってもらうことが「認知向上」という最終目標に繋がる。
有償の「Google Site Search」終了、自社のサイト内検索に競合他社の広告が……
このように重要性の高いサイト内検索だが、そのための仕組みに最近動きがあった。
サイト内検索を実現するためのツールとして、Googleが企業向けに提供していたのが「Google Site Search」だったのだが、2017年3月31日で新規受付を終了。また、サービス自体も2018年4月1日までに完全停止され、無償版に移行することが発表されたのだ。
Google Site Searchは有償だったが、サービス終了後は代替となる無償サービス(Googleカスタム検索エンジン)に切り替わる。ただ、光安氏は次のように警告する。
無償になることは歓迎という方もいるかもしれないが、実は大きな落とし穴がある
その理由は、サイト内検索結果に表示される広告だ。有償のGoogle Site Searchは検索連動広告がそもそも表示されなかったが、サービス提供が継続される無償サービスは広告表示が大前提なのだ。
自社サイトでサービスや製品等に関連したキーワードでサイト内検索するホットなユーザーほど、競合他社の広告が表示されてしまう。集客にかけたコストやそれまでのブランド体験を一気に毀損するリスクがある(光安氏)
移行先サービスを探すうえでのポイントは?
では、Google Site Search以外の別サービスへ移行するうえで、どんなポイントに注意すべきだろうか。光安氏は次の4つを挙げる。
- 移行が簡単に行えること
- 広告・ロゴの表示がないこと
- 検索結果の並び順やデザインの調整が可能なこと
- 検索キーワードの確認と継続した改善が行えること
これらを満たすのが、同社が4月5日に発表したproboの「Google Site Search マイグレーションプラン」という。
マイグレーションプランは、Google Site Searchと同様、検索対象となるページにJavaScriptを貼り、デザイン(CSS)を調整するだけで導入が完了する。当然、広告もない。
光安氏が特にアピールしていたのが、サイト内検索の結果を自社ドメインで表示できる点だ。
Googleは最近、サイトの常時SSL化をしないとWeb検索の順位を下げると発表している。ただ、多くの企業のサイト内検索は、サブドメインで検索結果を表示している。つまり企業サイト本体と、サイト内検索の結果表示サイトの両方をSSL化しなければならず二重にコストがかかってしまう。(マイグレーションプランであれば)SSL化にも余計なコストをかけずに対応できる(光安氏)
また、近年は1つの企業が商品ブランドサイト、口コミサイト、通販サイトなどを異なるドメインで複数同時に運用するケースが多い。このため、マイグレーションプランでは最大10ドメインまでの横断検索、あるいは検索結果の出し分けに対応。将来の拡張にも十分耐えられるとしている。
管理系の機能も充実させた。検索キーワードの把握は当然として、日別・時間帯別検索数もチェックすることができる。また「ゼロ件ヒット」にも対応できる。わずかな文字間違い・表記ゆれのせいで検索結果0件となったサイト内検索クエリーを見つけ出し、代替キーワードを設定するなど、さまざまな対策ができるようになる。
光安氏は「2018年3月にはGoogle Site Searchが終了します。ぜひ、この機会にサイト内検索について、今一度考えてみてほしい」とコメント。Web検索からの訪問者を、自社や関連ブランドの“ファン”になってもらうための1つの手段として、サイト内検索を有効活用すべきだと訴えた。
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