「今すぐ客」「そのうち客」の理解から始めるマーケティングオートメーション
近年注目を集めている「MA(マーケティングオートメーション)」だが、実際にきちんと理解できている人は少ないのではないだろうか。だが、MAは新規顧客の開拓にも繋がるので、きちんと理解をしておいた方が良い。
「ネットショップ担当者フォーラム2017 in 大阪/Web担当者Forumミーティング2017 in 大阪」でSATORIの植山氏が、「マーケティングオートメーション導入170社から見えた、すぐに結果の出る最新活用Tips 7」と題して、MAの意義について具体的な実践例を交えながら解説した。
MAとはつまり「顧客開拓+仕組み化」
現在39歳の植山氏は約20年の職歴のほとんどをIT業界に費やしている。もともとは大手ポータルサイトでCMS開発に従事するエンジニアだったが、その後自身もマーケティング活動に従事するように。2015年9月設立のSATORIで代表取締役を務める。
植山氏はこれまでの経歴を振り返りながら、次のように話す。
エンジニアとして、おもに大手企業向けのマーケティングツール開発に長く携わっていたが、その一方で自分たち自身の製品のマーケティングはヘタだった。「医者の不養生」ではないが、その時の経験をもとに、中小企業の皆さんに向けた製品開発に取り組んでいる
植山氏らが提供するMAツール「SATORI」は現在170社に導入されている。その顧客の多くが抱える共通の悩みとして、
社内にマーケティング担当者が1~2名しかいない
予算が潤沢ではない
というものがあるという。そういった状況下でいかに成果を挙げられるのか。設立約2年の中小企業であるSATORI株式会社自身もまた、MAツールの「SATORI」を使って営業・マーケティングを実施。そこでの実体験を製品開発へと反映させている。
MAを語る上で、最重要キーワードだと植山氏が指摘するのは次の2つだ。
- そのうち客
- 今すぐ客
これは文字通りの意味で、「今すぐ客」はB2B領域であればおおむね3か月以内に購買にいたるとみられる客を指す。
「そのうち客」は、「今すぐ客」以外全般を意味する。
では、そもそもMAとはなんなのだろうか。植山氏はズバリ「顧客開拓+仕組み化」と定義する。一般にMAといえば、Webサイトへの訪問履歴などをもとに顧客を「スコアリング」し、そのスコアの高い客を「今すぐ客」としてあぶり出すための技術とされている。
しかし植山氏はそのうえで「仕組み化」が重要だと指摘する。
今すぐ客を毎月・毎年といった単位で“継続的”にあぶり出せてこそ、MAが初めて成功したと言える。それが(一過性ではない)仕組み化(植山氏)
「キラーコンテンツを作れ」 その真意は?
つづいて植山氏は、次の図を示した。
MAの実践にあたって、
- そのうち客を増やす
- そのうち客を活性化
- 今すぐ客をあぶり出す
の3ステップを用意し、それぞれをオンライン(Web上での行動)とオフライン(展示会・セミナーなど)の概念と織り交ぜる事で、ベストプラクティスが浮かびあがってくるという。
そこで土台となるのが顧客データベースだ。当然、あらゆる業界で利用されているが、MAでは「顧客のオンライン・オフラインでの行動を一元的に管理する」点が特徴である。
たとえば、住宅展示場への来場記録があるとして、その来場前・来場後にWeb上でどのような行動をしているか、そこまでまとめて考えられるのがMAだ(植山氏)
顧客データベースをもとに、さらにスコアリングを掛け合わせることで「今すぐ客」はあぶり出せるはず。しかし、単純にページビュー(PV)が多いから「今すぐ客」だ……とはいかないのもまた実情だ。
植山氏はPV以上に「キラーコンテンツ」を意識すべきだとアドバイスする。実際、「SATORI」の現Webサイトでは
- 機能紹介
- ご利用料金
- 導入事例
- 他社との比較
- 資料一覧
- セミナー
といったページを(グローバルメニューに)用意しているが、このうち「他社との比較」をキラーコンテンツと位置付けている。
ここでいうキラーコンテンツとは、顧客の「購買意欲を計るためのコンテンツ」という意味でもある。
たとえば法人客が課題解決のために何らかの製品を購入するとして、最初期は市場に多数存在する製品の情報を集めようとする。しかし、その段階を経ると、導入にあたって上司を説得するための材料が必要になってくる。
つまり「他社との比較」ページの情報を求めるようになり、よって「今すぐ客」であると考えられる。それがわかれば売り手は電話営業などのアクションを起こせる……という訳だ。
より具体的には「『他社との比較』のページを180日以内に2回見たユーザーがいた場合、営業担当者に自動通知する」といった運用を「SATORI」で行うことができるという。
「購買意欲を計るためのコンテンツ」は、業種や取扱製品によっても異なるが、完成後はWebサイトの目立つ場所に提示したり、ターゲティング広告などでより多くの目に触れるようにしたりすることも重要だと植山氏は指摘する。
「Webサイト構築では、PVの多い順にグローバルメニューなどを作るのが一般的。ただそれらは『潜在顧客』のためのページであって、少数の『顕在顧客』向けの情報がまったくないサイトもある」とも補足した。
また、Webサイトを訪問する客の大多数は匿名である。そういった客の中にも「今すぐ客」はいると考えられるので、ブラウザーのCookieなどを元にキラーコンテンツの閲覧状況を把握し、表示コンテンツを差し替えたり、プッシュ通知、個人情報登録をポップアップで促したりするなどの施策を行うことは有効だ。
展示会で訪れる客は「今すぐ客」ではない、大半が「そのうち客」だ
短期的な成果には繋がる可能性が低いが、「そのうち客」を増やすこともMAでは重要視される。ただその際に、「そのうち客」の想定をあえて絞り込む必要はない。
「ニッチな製品だから、『そのうち客』なんて、ウチには最初からいない」という声をよく聞くが、その場合我々は視野・範囲を広げる(より専門的には「ペルソナを緩める」)ことで、将来のお客様を増やしましょうとアドバイスしている(植山氏)
「SATORI」製品で考えた場合、MAツールを今まさに購入しようとしている客だけを闇雲に探すのではなく、周辺領域であるマーケティングやWebの担当者をまるごと「そのうち客」と捉えておく。人事異動や社会情勢の変化で、こういった客が後にMAに携わる可能性は当然あるからだ。
となると、展示会に出展したり、イベントを開催する意義も当然変わってくる。
展示会に足を運ぶお客様は大半が「そのうち客」。情報を求めにくるのです。そこで「今すぐ客」に製品パンフレットを用意しても、手に取ってもらいづらい。では何を用意すればよいのか。マーケティング製品だとしたら、事例集、ハンドブックなどがそれにあたる(植山氏)
また、展示会は数百社が出展するため、ブースで名刺交換をした来場客に対し、いち早くフォローのメールを送ることもアピールに繋がるようだ。
「そのうち客」の活性化には共催セミナーが有効
上記のように展示会に取り組んで、「そのうち客」の顧客リストを最大化した次に取り組むべきは「リードナーチャリング」だ。「そのうち客」が「今すぐ客」へとシフトするように、どんなコミュニケーションをとっていくのか。この動きもやはり重要になっていく。
「無料セミナー」はリードナーチャリングの代表例だ。実際開催する際には、複数の事業者との共同開催とすることで「売り込みのためだけのセミナー」という性質を弱めつつ、さらに「営業なし」を宣言するも大事。そこで興味を持ってくれた客に対し、少人数のセミナーへ別途招待したり、商談を打診したりしていくのが基本的な流れとなる。
意外と重要なのが「セミナーで喋りすぎない」。どうしても力が入ってしまうかもしれないが、そこを堪えてまずは80点分だけ喋り、残り20点を次のセミナーで語る。ステップを踏む事が重要(植山氏)
講演後に回収するアンケートについても、内容の満足度を重視せず、次回セミナーや商談にどれだけ繋がったかを目標にするのも重要だ。
無料セミナーに相当する施策をオンラインで展開したい場合は、メディアに「記事広告」を出稿するのが適しているという。
またバナー広告については、閲覧した顧客の関心はもちろん、タイミングなどにも左右されるため、クリック率を高めるのは容易ではない。植山氏も「バナー広告は正直出してみないと(成果が)わからない。」と率直に認めている。ただ、それでもA/Bテストをひたすら繰り返すことが重要としており、SATORIでは常時20種類近いデザインを試しているという。
導入企業170社の事例から発見したTipsを活用しよう
このように、MAで簡単に成果を出すには、
- そのうち客を増やす
- そのうち客を活性化する
- 今すぐ客をあぶり出す
ということを考えてMAツールを活用することだ。
MAツール「SATORI」導入企業170社の事例から発見したTipsは、新規受注を増やしたい、効率的な営業・マーケティング活動をしたい人には大いに参考になるだろう。
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