MAツール導入から180日で成果を出す! 自社運用でマーケティング効果を最大化するポイントとは
国内企業でもマーケティングオートメーション(MA)ツール導入が進んでいる。その一方で、「活用したものの運用が難しい」「できると思っていたことが実現できない」など運用に挫折した声も聞く。
「Web担当者Forumミーティング 2018 秋」に登壇したSATORI マーケティング営業部 グループ長の相原 美智子 氏は、「MAツールはマーケティングを全て自動化してくれる魔法の箱ではない」と語る。MAツールを使って、代理店に頼らずに「180日で結果を出す」ために導入前に知っておくべきポイントについて、相原氏が自社事例を交えて解説した。
MAツールは「導入して終わり」ではない
登壇した相原氏は、MAを取り巻く市場環境として「2018年には365億円の市場規模という統計数値もあり、米国に比べて規模は小さいものの、急成長している」と述べた。
こうした急成長の背景には、顧客の購買行動における「非対面チャネル」の重要性が挙げられる。ガートナーの調査結果(※1)では、2020年までに、顧客の購買プロセスの85%はWebなどの「非対面チャネル」が担うとの予測もあり、Webサイトに来訪した「顔の見えない」潜在顧客を母集団にして、いかにして見込顧客に育成していくか(商談化率を高めていくか)が重要だと認識されてきているのだ。
この1年を振り返っても、実際にMA導入、運用を開始した企業が増えていると相原氏は述べる。しかし、その一方で「メール配信ツールとしてしか活用できていない」「スコアリングが難しい」といった声を聞く機会も増えたという。
こうした“MA難民”が増えている状況について、相原氏は「実は、MAツールは導入しただけで課題が解決するのではなく、運用を見越した事前の準備が必要だ」と説明する。
多くの企業では、「名刺管理が個々人に依存している」「営業活動が属人的」「そもそもリードが足りない」「やみくもにテレアポを行っている」などの課題があると思う。こうした課題を解決するために、せっかく費用を投下してMAツールを導入したのに、使いこなせなかったということがないようにするには、以下に挙げるポイントが重要だ。
※1Gartner Predicts, Gartner Customer 360 Summit 2011
※SATORI株式会社調べ
短期間で成果を出すためのステップ
- 自社の課題と目的を明確にし、ツールで実現できることを明らかにする
- 予算とKPIを明確にして、小さな成功体験を重ねる
1. 自社の課題と目的を明確にし、ツールで実現できることを明らかにする
最初のステップとして、MAツールで実現できることを整理する必要がある。すなわち、MAが担う領域は、次のような顧客に対し、さまざまな手法を組み合わせてコミュニケーションを図り、商談につなげていくことである。
- 自社サイトに接点のない匿名顧客
- 自社サイトに接触したが、お問い合わせ(個人情報を登録する)前の匿名顧客
- お問い合わせ(個人情報登録)後の実名顧客
そして、案件化(商談化)した後の見込顧客を管理するのがSFAツールといったすみ分けになる。この関係を整理すると下図のようになる。
こうしたツールの特性を理解しないまま選んでしまうと、自社にとってオーバースペックなツールを選んでしまうケースがあるので注意が必要だ。
2つ目のステップは、自社のターゲット像である顧客を知ることだ。
たとえば、自社の商品やサービスに興味がある見込顧客にはどんどん商品やサービスの説明を行うことが有効だが、現段階では興味関心度の低い「そのうち客」に売り込んでも、かえって敬遠されてしまう。
相原氏は、以下のようにコミュニケーション対象を4象限に分けることを推奨する。
見込み度の軸として『そのうち客』『今すぐ客』を、そして、パーミッション度の軸として『匿名顧客』『実名顧客』を設定して4象限に分けます。このうち、Dの象限が最も数が多いですが見込み度は低いです。これを徐々に温めていき、相手も特定でき、興味関心も高いAの見込顧客に引き上げていくことが、マーケティングのプロセスということになります(相原氏)
そして、4象限ごとに例えば以下のような大まかなペルソナを定めておく。
- A:商談中の「顔のわかる」顧客
- B:上司に言われてツール導入を検討中の部下がWebで情報収集をしている
- C:展示会で会って名刺交換をした実名顧客
- D:なんとなく情報収集している匿名顧客
こうすることで、自社にあったMAツールが見えてくると思うと相原氏は述べた。ちなみに、SATORIでは最もホットなA象限の見込顧客数を1とした場合、おおむね以下のような分布になっているという。
- A象限:1
- B象限:35
- C象限:70
- D象限:380
相原氏によれば、「当社のマーケティング施策の特性上、展示会などのイベントで名刺を収集した実名顧客(C象限)が多い特徴があり、検索サイトからの流入などで、今すぐ度が高いものの匿名状態のB象限の匿名顧客の多さもポイントだ」という。そのB象限に対するコミュニケーションがMAの使いどころということになる。
3つ目のステップは、ターゲットに近い匿名顧客と接点を持つためのコンテンツの制作だ。相原氏は、MAが効果をあげやすい領域として「BtoB商材」「BtoC向けの高額な商材」などの、検討期間が長く、セールスがクロージングを担当する2つのビジネスモデルをあげる。
SATORI社においても、当社商材への認知はもちろん、国内におけるMAの認知も低かったため、2015年の創業時はWebサイトへのアクセスが少なかった。そこで、ターゲットを明確にし、集客するためにコンテンツマーケティングに着手、「SATORI マーケティングブログ」を開設した。
企業のマーケティング担当者向けに、役に立つ記事を執筆、公開することで、匿名ユーザーの情報を蓄積していき、これをナーチャリングして実名化、商談化につなげていくのです(相原氏)。
このように書けば簡単だが、実はコンテンツを継続的に制作するのには体力がいる。内製で担当者が執筆する場合も、外部のライターに発注する場合も、コンテンツ制作の予算が必要だという点に留意することが重要だ。
2. 予算とKPIを明確にして、小さな成功体験を重ねる
相原氏は、予算と評価指標などの体制づくりについても詳説した。
MAを運用していくためには、ツール導入以外にも多くのリソースが必要になる。リード獲得のためにイベントや展示会に出展する際は、出展費や人件費が必要だし、ターゲットユーザーのいるメディアから自社サイトにユーザーを呼び込むためにはメディアへの出稿費用が必要だ。
こうした、ツールに関連する広告費などの予算も見積もっておき、MAツール導入の予算に組み込んで社内稟議にかけることが必要だと相原氏は説明する。
そして、KPIの明確化だ。一般的なKPIには「商談創出数」「マーケ部門から創出した商談の受注率やLTV」「資料請求や来場者数などのCPA、CPO」「メールの開放率」「セミナーやキャンペーンの申込数」「匿名ユーザーの実名転換率」「(実名・匿名の)獲得リード数」などがある。
SATORIのとあるクライアント企業では、営業の「平均受注単価」「リードタイム」「受注率」などをSFAから算出し、その営業目標を達成するために必要な商談数を算定して、マーケ部門の目標を決めているという。
こうしたKPIの明確化、設定も、MA導入に際して考える必要があるポイントだ。そして、ゴール(KPI)が決まったら、そこに至るための具体的施策が定まる。
SATORIの場合は新規の匿名顧客のリストを大量に集めることと、年間100の受注を得ることがKPIでした。そのためには、受注の10倍にあたる1,000の商談を作る必要があり、そのためにホットな実名リードを作る必要があります。そこでセミナーをオフラインコンテンツとして挟み、実名リードの母数を約10倍の20,000人~30,000人にするという目標を立て、その10倍にあたる300,000の匿名リードをWebで獲得するために、コンテンツを量産することになりました(相原氏)
このように、いきなりMAツールを導入しても効果があがるものではない。導入前にやるべきことを明確化し、一つ一つ課題を解決することが、結局は近道なのだ。
相原氏は、マーケ部門の施策づくりのポイントとして、「ユーザーの興味関心に合わせて、CVさせるポイントを作っていく」ことを挙げた。
たとえば、匿名の「そのうち客」から実名の「そのうち客」に転換するために、関連資料のDLや、定期的なメルマガ配信、セミナーへの誘導といったCVポイントを用意する。
そして、実名リードに転換できた後は、MAツールでリードナーチャリングを行い、ホットに転換したタイミングでアラートが飛ぶように設定し、「今すぐ客」向けのセミナーなどへ誘導し、ホットな商談が生まれるようナーチャリングをしていく。
相原氏は、MAツールを導入して「180日で結果を出す」ために、ぜひツールベンダーに対し以下のことを聞いて欲しいと呼びかけた。
- 本当にその金額で自社で計画している施策ができますか?
- サポートはどうですか?
- マニュアルは日本語ですか?
- ノウハウはありますか?
- トライアルできますか?
SATORIでは、自社開発したMAツールを、実際に自社のマーケティングに組み込んだ経験から、匿名リードから商談を生むノウハウを蓄積してきた。
こうしたツールベンダーだからこそわかるノウハウを動画などにまとめている。「SATORI」を導入した企業は、導入後の運用でつまずきやすいメール設定の仕方やデータの見方、Webサイトでのプッシュ通知の出し方などのポイントを、対面セミナー参加や動画、利活用のための資料を見て学ぶことが可能だ。
また、ユーザー会も頻繁に開催している。導入企業同士で横のつながりを作り、運用ノウハウを共有することで、自社の課題解決の参考にもなる。
また、カスタマーサクセスプログラムプログラムも充実している。カスタマーサクセスチームが、導入後に自社運用が軌道に乗るまでを伴走してくれるほか、「ウェルカムミーティング」など、MAツールの使い方をハンズオンでサポートするプログラムも用意している。
相原氏は「MAツールは導入してからが始まり」だと述べ、導入前に無料トライアルができるのであれば、ぜひ活用して、操作性や自社の想定している施策が本当に実施できるツールなのか自分の目で確かめてほしいと会場に呼びかけ、セッションを終了した。
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