【レポート】Web担当者Forumミーティング 2018 Autumn

485製品のマーケティングツールを網羅した「カオスマップ」、今後注目の4ジャンルとは?

異なるツールを組み合わせる“テクノロジースタック戦略”を誰が担うのか?
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MA、CRM、プライベートDMP、Web接客――デジタルマーケティング領域では、新しいサービスが日々生まれている。どの会社が新しいサービスを立ち上げたのか? 定番だったあのサービスがどうリニューアルしたのか? 把握するだけでも一苦労だ。

Web担当者Forumミーティング 2018 秋」に登壇したアンダーワークスの田島氏は、そういった状況を解決する第一歩として同社が制作・公開した「カオスマップ」について、どんな背景と狙いがあるのか解説した。

日本で使えるマーケティングツールを網羅した「カオスマップ」

田島学氏
アンダーワークス株式会社 代表取締役 田島学氏

アンダーワークスは2006年創業。おもにデジタルマーケティングのコンサルティングを手がける企業だ。田島氏自身、マーケティング領域を主軸にした各種デジタルテクノロジーに詳しいが、それでもその種類・数の多さに面食らうという。

そこでアンダーワークスでは、2017年10月、「マーケティングテクノロジーカオスマップJAPAN」を初めて制作した。広告、ソーシャル、ECなどのジャンル別にマーケティング製品を徹底的に羅列。カラフルな配色もあいまって、このマップを見れば市場の概況、競合製品などを簡単に把握できる

マーケティング分野のカオスマップは、もともと米国のスコット・ブリンカー氏の手によって制作されている。ただし日本未上陸のサービスも多数掲載されているため、田島氏らアンダーワークスでは独自に日本版を制作したという訳だ。

この日本版カオスマップは1年で数千ダウンロードを記録。好評だったことに加え、その後1年でサービスの改廃も多数あったことから、2018年11月には2018年版が公開された。掲載テクノロジー数は12分野485種類。本家カオスマップとは異なり、国産製品も多数収録されている。

「マーケティングテクノロジーカオスマップJAPAN」2018年版の概要

2年目のカオスマップから浮かび上がる「数字」

日本版カオスマップは2年目を迎えたが、1年目と比較することでさまざまな傾向が浮かび上がってきたという。まず掲載数は272から485へ増えており、1.8倍になった計算だ。2017年版制作時は掲載数をやや絞ったとしているが、それでも「探せば探すだけ新しい製品が見つかる状況」だと田島氏は補足する。

ジャンル別の増減を比較すると、「MA」は15件から1.7倍の25件へと増加した。

もともとEメール配信ツールだったものが、MAツールになるというケースが非常に多い(田島氏)

他にも「接客/チャット」が8件から14件(1.8倍)、「企業データ」は3件から8件(2.7倍)に増えた。また、2017年版の3%にあたる7件のサービスが終了。「AdWords」から「Google 広告」のように、名称を変更したサービスは9%(25件)、ロゴ変更も26%(70件)が実施した。

前年版から掲載サービス数は大幅に増加。なんと4分の1のサービスがロゴを変更していた

ロゴの色については田島氏いわく“都市伝説”があり、青を選ぶ企業が多いのだという。「業界の通説として、ブランドのロゴが緑や黄色だとサービス終了が速いと言われているためか、青にするところが多い」のだとか。他にも「コンペに最後に残りやすいのは青のロゴ、赤のロゴの2社」との説がまことしやかに話されているそうだ。

カオスマップの注目の4ジャンルをピックアップ

田島氏はカオスマップの中から注目ジャンルを4つピックアップし、それぞれ詳しく解説した。

その① データマネジメント/CDP

メール、CRM、Web、アンケートなどのデータはこれまでバラバラに管理されてきた。しかし顧客との接点が多様化する中で、チャネルをまたぎつつ顧客を補足したいといったニーズが高まっている。

この分野では「プライベートDMP」「DWH(データウェアハウス)」などの概念がすでによく知られているが、今後はさらに「CDP(Customer Data Platform)」も加わっていきそうだという。

バラバラだった顧客データを1つのプラットフォームにまとめるのが「プライベートDMP」「CDP」の狙い

その② 外部企業データ/ABM

帝国データバンク、東京商工リサーチの2社は企業信用情報の調査機関としてよく知られる。マーケターであればこの2社から売上高・従業員数などの情報、つまり「スタティックデータ」を購入し、自社製品の売り先として適当かどうかなどを判断する。

これに対し、米国で注目されているのが「インテントデータ」。各社のWeb閲覧傾向を分析することで、たとえば「A社は次に何を買いそうか」を分析し、そのデータを販売するサービス。日本でも今夏ごろからサービスを提供する企業が出てきた。

不特定多数の中から見込み客を見つけ出すMAに対し、あらかじめ顧客をターゲティングして深掘りする「ABM(Account Based Marketing)」にも関連する要素だ。

インテントデータの概要。MAで見込み客をあぶり出すのではなく、Web閲覧履歴などから「買ってくれそうな企業」を見つけてしまう

その③ プライバシーデータ

5月に施行されたGDPR(EU一般データ保護規則)は、Cookieなどによる個人情報取得に厳密なルールが設けられ、また罰則規定もあることから、企業のWeb運用に大きな影響を与えている。GDPRはあくまでヨーロッパのルールだが、日本企業であっても英語表記のサイトを運用している場合などには制限を受ける

国・政府による個人情報保護の動きは相次いでおり、米国カリフォルニア州でも2020年1月から同様の法律が施行予定。これらに対処するマーケティングツールの需要も高まると考えられる。

Cookieによる個人情報収集は、法制化によってルールが大幅に変わりつつある

その④ AI(機械学習)、音声

バズワード化したきらいすらある「AI」だが、田島氏はそれでも機械学習に関するソリューションは今後も増えていくと展望した。

また、スマートスピーカーについては「来年2019年はまだまだだろうが、3年後には重要な顧客接点となる可能性が十分ある」と述べた。

機械学習に関するソリューションは今後も増え続ける/音声が新たな顧客接点に

大手ベンダーが新興マーケティングテクノロジー会社を買収する理由

講演の後半では、「マーケティングテクノロジー入門」と題して、業界の将来展望などが解説された。

調査会社のForresterは、米国におけるマーケティングテクノロジーの市場規模は2020年に15兆円に達すると予測している。一般論として、米国のマーケティングテクノロジー市場は極めて大きく、世界全体の55~60%を占めるとされている。つまり、この数値を倍にすれば、世界市場が30兆円規模に迫ると考えられる。

またGartnerの2012年の調査では、米国企業の売上に占めるマーケティング費用の割合は12%とされている。このマーケティング費用の内訳を見ると最も高いのが人件費で28%、その次はマーケティングテクノロジーで27%となる。計算すると、企業の売上の3.2%がマーケティングテクノロジーの投資ということになる。同調査では、IT部門におけるテクノロジー投資が売上の3.4%となっており、これはほぼ同じ水準だと言える。

米国企業のマーケティング投資動向

一方、大手ベンダーによるマーケティングテクノロジー企業の買収も盛んだ。9月にはAdobeがMAで著名なマルケトを買収。またセールスフォース・ドットコムはビジネスインテリジェンスのDatoramaを傘下に収めた。

“Single Vendor Suites”──CRMでもMAでも広告でもABテストでも、1社でオールインワンのパッケージになったマーケティングツールを売りたい。そういう思想で恐らくは動いているのだろう(田島氏)

この“Suites”の方向性は、SAPやオラクルなどのソフトウェア企業が数十年に渡って推し進めてきた。これがマーケティングテクノロジーの世界にも波及しているという。

大手ベンダーによるマーケティングテクノロジー企業の買収が広がっている

“Suites”よりも“Best of Breed”が主流に?

対して、Suitesとは逆の発想が“Best of Breed”である。1つのベンダー製品で統一せず、さまざまなツールを組み合わせて全体最適を図っていこうという考えだ。

SuitesとBest of Breedのどちらかいいのか。これは、マーケティング関連のカンファレンスでも常に議論されている。ただ、あくまで私個人の意見ではあるが、企業の多くはBest of Breedを選択しつつあるようにみえる(田島氏)

「Suites」と「Best of Breed」の違い

この論拠の1つが、ベンダーロックイン(囲い込み)への懸念が企業の間で高まってきているというものだ。特にクラウド型のサービスの場合、最終的なデータの所有権があいまいで、客とクラウド運営側のトラブルに発展しかねないという声は根強い。

加えて、すでに多くの企業が数多くのベンダー製品を使い分けており、1つのサイトに平均20以上のマーケティングテクノロジー関連のJacascriptタグが埋め込まれてしまっているとの指摘もある。

ベンダーロックインへの懸念が広がっている

カオスマップが示唆するとおり、マーケティングテクノロジーは爆発的に増加している。結果、Google Analyticsなどの一部を除くと、「あらゆる企業が高確率で使っているマーケティングツール」もまた存在しない、極めてロングテールな状況も生まれている。

一方、各テクノロジーの連携は容易になっている。APIの公開がそもそも進んでいるだけでなく、近年は第三者が“コネクター”を提供する例が広がっており、コーディング不要・ID認証といった程度の手間で各ツールを繋げられる状況にもなった。

マーケティングテクノロジーはロングテールな市場でもある

「テクノロジースタック戦略」を誰が担う?

このように、異なるテクノロジーをBest of Breedで組み合わせるのは簡単になった。そして、その組み合わせのレシピは「テクノロジースタック」と呼ばれる。この分野で最先端をいくのはCisco Systems(シスコシステムズ)で、内訳を毎年外部へ公開しているのだという。

アンダーワークスでも1年半ほど前から、顧客と共にテクノロジースタック戦略に取り組む例が増えている。

今までは「メールをなんとかしたい」「営業にCRMを入れたい」などの個別のツール単位で相談を受けていた。しかし今後は、将来的にどんなマーケティングをしたいか、その方針を戦略として策定しようという考えの企業が増えている(田島氏)

しかしテクノロジースタック戦略は未開の領域だけに、社内で誰が指揮をとるかも課題になっている。既存のCMO(Chief Marketing Officer)では、マーケティングに精通していたとしても、それを支えるIT技術については必ずしも明るくないケースがある。また、情報インフラ面の責任者のCIO(Chief Information Officer)では最新マーケティングの動向を追いきれない。

このため米国では、CMTO(Chief Marketing Technology Officer)、CDO(Chief Digital Officer)を新設する例が多くなっている

テクノロジースタック戦略を進めるには、専任担当者選びも課題

CMTO/CDOのもとで働く従業員の質も課題だ。広告、営業などの経験はもちろん、実際のシステム開発に落とし込むにはエンジニアの知識も必要になってくる。中途人材の採用ハードルも自ずと高くなってくる。

アンダーワークスのような独立したコンサルティング企業は、いわば外部の「目利き役」として、テクノロジースタック構築に寄与できると田島氏はアピール。カオスマップともども、専門家の知恵を是非頼ってほしいと呼び掛け、講演を終えた。

幅広い人材を社内登用・中途採用だけで集めるのは大変。コンサルティング会社を是非活用すべきという
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