顧客ひとりひとりに寄り添う「One to Oneマーケティング」の最新事例
購買活動がデジタル化し、企業は売上を高めていくために、「データ」をもとに顧客を深く知り、最適な顧客体験を提供していくことが求められる。しかし「既存客の育成に課題を感じつつも、忙しくて手が回らないという声をよく聞く」と語るのは、ビッグデータ活用/デジタルマーケティングサービスを提供するブレインパッドの林氏だ。
主にBtoCビジネスにおける「データドリブン」なマーケティングのポイントはどこにあり、それらを支えるマーケティングオートメーション(MA)などのツールはどう使えばよいのか。
「Web担当者Forum ミーティング 2017 春」において、林氏は「マーケティングオートメーションを活用し、顧客ロイヤルティを向上させる~デジタルマーケティング最新事例のご紹介~」と題し、事例を交えて紹介した。
人材紹介のインテリジェンス、DVD・ゲームのゲオといったBtoC企業はマーケティングオートメーションをどのように活用しているのか。
One to Oneマーケティングの目的は、顧客生涯価値の最大化にある
顧客の属性データのみならず、Web閲覧行動や購買行動に関するデータなどから、企業は顧客を「より深く」知ることができるようになった。
こうしたデータを活用し、「データドリブンなマーケティングを行いたい」というマーケターは多いだろう。林氏は、顧客ひとりひとりに最適なアプローチを行い、売上を高めていく「One to Oneマーケティング」が実現できる環境が整ってきたと述べた。
One to Oneマーケティングの概念は20年以上前から提唱されていましたが、昨今の技術革新により、何万人、何百万人というお客様に対しても、ひとりひとり異なるアプローチが可能になってきました
One to Oneマーケティングの目的は、顧客生涯価値(LTV)の向上にある。顧客のライフステージごとに適切なアクションを行い、企業と顧客の関係性を構築、ロイヤリティを高め、優良顧客化することで、LTVを最大化していくことが可能になる。
しかし、実際にOne to Oneマーケティングを行うのは簡単ではない。「特に、BtoC領域では、顧客ニーズが多様化し、ニーズの変化も早い」からだ。また、顧客を知るためのデータも、行動データ、デモグラフィックデータなど多種にわたり、量も膨大になっている。
林氏は、顧客を知るためのデータを次の3つに分類した。
- オフラインデータ ―― 顧客リストや商品マスター、購買履歴、クーポン利用区分など
- オンラインデータ ―― Web閲覧履歴や、メールの反応データ、位置情報など
- 外部データ ―― ソーシャルメディア、パブリックDMP、あるいは各種統計データなど、自社以外のデータ
これらのデータを駆使し、実店舗を含めたあらゆるチャネルで統合された顧客体験を提供していくことがポイントとなる。そのためには、
- 誰に(ターゲット)
- 何を(オファー)
- いつ(タイミング)
- どのように(チャネル)
という要素を適切に組み合わせる必要がある。
この一連のマーケティング活動の組み合わせを、林氏は「シナリオ」と呼ぶ。シナリオは、たとえば、次のようなものだ。
ECサイトに会員登録した顧客に、サイトの使い方を案内する「Welcomeシナリオ」
会員登録したが、商品を購入しなかった顧客に、フォローを行う「Web閲覧フォローシナリオ」
このほかにも、購買、カートドロップなど、顧客の行動に基づく複数のシナリオがあり、これを見込顧客、新規顧客、通常顧客、優良顧客などのセグメント別に組み合わせていくのです
MAツールや、プライベートDMPを組み合わせた「One to Oneマーケティング」2つの事例
実際に、One to Oneマーケティングを行う際には、MAツールや、プライベートDMPなど、様々な機能を備えたツールを組み合わせながら実行していくことになる。林氏は、実際の事例をもとに、こうしたツールの「使いどころ」についても解説した。
事例 1 インテリジェンス(人材紹介サービス)
1つ目の事例は、人材紹介サービスを手がけるインテリジェンスのケースだ。
同社の転職サービス「DODA」では、顧客の希望する職種や転職のタイミングがそれぞれ異なることから、よりひとりひとりにパーソナライズされたマーケティングを展開することにした。
その手段として、プライベートDMP「Rtoaster」と「Probance」を導入し、複数のデータベースや行動履歴データを一元管理。Webサイトや広告、メールのパーソナライズとメール配信の自動化に着手した。
たとえば、来訪者が閲覧したページに関連のある情報を、「この企業を見た人はこの企業も見ています」のようにレコメンドするようパーソナライズすることや、初めてサイトに来訪した人にはサイトの使い方やFAQページのメニューを表示する、といった具合だ。
こうしたパーソナライズした施策の結果、求人への応募数が最大で1.8倍に増加した。
事例 2 ゲオ(DVD、ゲームソフトのレンタル、販売、買取など)
2つ目の事例は、DVD、ゲームソフトのレンタル、販売、買取などを手がけるゲオの取り組みだ。
複合メディアショップ「GEO」で扱うゲームや映画といった商材は、顧客の趣味・嗜好が強く反映される。また、タイトル数も多いため、「好みに合致した商材をお客様に訴求する」ことが課題だった。
店舗への来店時間は、顧客によってある程度パターン化されている。そこで、機械学習を用いて顧客の来店時間を予測、さらに、レコメンドする作品は、顧客の趣味・嗜好を分析した結果、最適なタイトルをおすすめする工夫がなされた。
来店予測時間の3時間前にメール送信するよう、これまで手動で行っていたメール配信の運用を自動化し、アプリのプッシュ通知も併せながら来店促進を図ったところ、メールの開封率は1.5倍に向上した。
また、海外TVドラマの無料レンタルキャンペーンを実施した際には、クーポン配付の対象者を、利用頻度から「反応が高いと思われる」顧客に限定。対象顧客の1か月間のレンタル利用金額を2.5倍に向上させつつ、クーポン利用が殺到して、在庫が品薄状態になってしまわないような配慮がなされた。
ソーシャルリスニングからマーケティングや新商品開発を行った事例も
さらに、ソーシャルメディアのつぶやきを傾聴、分析することで、マーケティング施策に活用したソーシャルリスニングの事例もある。
米国のヨーグルトのブランド「Chobani」(チョバーニ)では、主力のギリシャヨーグルト市場が拡大し、競合参入で競争が激化した背景から、ソーシャルリスニングの分析プラットフォーム「クリムゾンヘキサゴン・フォーサイト」(Crimson Hexagon ForSight)を導入。ツイート分析を行った。
ツイート分析から、投稿者のセグメント分析を行ったところ、一般的なツイッターユーザーと比較して「子育て」「母親になる」などのキーワードが商品名とともにつぶやかれていることがわかりました
そこで、Chobaniでは、「子育て世代が、一つのターゲットになる」と考え、子育て世代の女性に向け、「Chobani Tots and Chobani Kids」という新ブランドを立ち上げた。
さらに、「食べ方」の特徴をツイートから分析し、「料理にヨーグルトを使う」「何かの追加でヨーグルトを食べる」傾向があることをつかんだ。
特に、朝食にグラノーラと一緒にギリシャヨーグルトを食べるユーザーが多いことがわかりました。そこで、Chobaniは、新たにグラノーラ入りの商品を開発、発売したのです
このように、ソーシャルメディアのデータを用いた顧客インサイト分析によるマーケティングや新商品開発の実例が紹介された。
我々の会社は、データ活用・分析に強みがある。スモールスタートから徐々に効果を最大化し、投資対効果を最適化するお手伝いが可能だ
と林氏は述べたうえで、次のようにセッションを締めくくった。
どういうデータなら最も効果が出るかという点から提案、実際に、施策を通じて効果を出すところまでトータルにマーケティングのお手伝いをすることが可能です。データドリブンなマーケティングについて課題をお持ちの企業は、ぜひ、お気軽にご相談ください
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