スマホでサイトの使い方はどう変わる? 「セグメント」機能でスマホとPCの訪問を比較する[第30回]
ここ数年でスマートフォンが普及し、モバイル環境からWebサイトを利用する割合が急激に増えている。その割合はサイトによって異なるが、スマートフォンからの利用が5割を超えるサイトも今や珍しくない。今回はそんなモバイル環境からの利用状況を確認し、ユーザーの利用実態に切り込んでいこう。ここでは、パソコンとモバイルの訪問を比較するために「セグメント」機能を利用する。
前回はサイト全体の平日と休日や時間帯による利用パターンを調べ、ユーザーのサイト利用実態を探った。サイトの問題点を分析する前に、まずはこうした現状把握をしてユーザーの利用シーンをしっかりつかむことから始めるのがよいだろう。
- 「パソコン」「スマートフォン」「タブレット」3つのデバイスの種類を知る
- セグメントを設定して利用状況を比較する
まずはサイト全体のモバイル端末の利用割合を確認する
まずはサイト全体のモバイル端末からの利用割合を確認しよう。図1は標準レポートの[ユーザー]>[モバイル]>[サマリー]レポートだ(図1赤枠部分)。「デバイスカテゴリ」というディメンションでスマートフォンなどデバイスの区別を確認できる。
「デバイスカテゴリ」ディメンションには「desktop」「mobile」「tablet」という3つのカテゴリ名が確認できる(図1青枠部分)。これがそれぞれ「パソコン」「スマートフォン」「タブレット」に対応している。このレポートを見れば、それぞれの機器からの訪問(セッション)がどのくらいあるのかがわかる。
- desktop(パソコン)
- mobile(スマートフォン)
- tablet(タブレット)
図1の例では「desktop」すなわちパソコンからの利用が7割を超えていることがわかる(図1緑枠部分)。これはモバイル比率が低い方だが、サイトによっては図2の例のように「mobile」(スマートフォン)のセッションが6割を超え、「desktop」が3割未満(図2赤枠部分)となっているサイトもある。
「desktop」「mobile」「tablet」という3分類はどのようにして判別されているのだろうか。さまざまな機器は、サイトを見るときにHTTPリクエストを送信している。その際にサーバーへ送信するユーザーエージェント情報にもとづき、この3分類の判定をしていると考えられる。
デスクトップとスマートフォンで差があるのはどこか?
それではこのレポートのフルのデータを細かく見てみよう。たとえば仕事向けの込み入った内容が書かれているサイトであれば、モバイル環境からアクセスする場合は「通勤や昼休みなどのすき間時間に、簡単な確認程度に利用するのではないか?」と想像できる。
この場合、パソコンからの利用に比べてスマートフォンからの利用は平均セッション時間やページ/セッションなどの数値が小さくなると考えられる。図3を見てみよう。
「desktop」(図3赤枠部分)を「mobile」や「tablet」(図3青枠部分)と比較すると、確かに直帰率も相対的に低く、サイト内での閲覧時間は長く、閲覧ページ数は多くなっていることがわかる。直帰率が低いということは、1ページだけで帰らずに複数のページを見ているということだ。先ほどの想像が正しかったことがわかる。
ただし、必ずしもモバイル環境からの訪問の質が低くてコミュニケーションの密度が薄いとは限らない。一般的な商品を扱っているeコマースサイトでは「mobile」における購入率が「desktop」と遜色ないサイトもあり、モバイル環境からの利用が極めて重要な位置付けになっている場合もある。自分のサイトにおいてモバイルからの利用がどれだけ重要なのかはきちんとチェックしておこう
セグメントを使ってデバイスごとの利用時間帯の違いを見る
次に、時間帯別の訪問を「mobile」と「desktop」に分離して見てみよう。まず[ユーザー]>[サマリー]レポートを表示し(図4赤枠部分)、平日のとある日を選択し(図4青枠部分)、グラフ表示の単位を「時間別」にする(図4緑枠部分)。
すると、その日の時間帯別のセッション(訪問)の状況が見られるようになる。ここに「セグメント」機能を使って、デバイス別の利用実態を明らかにしていこう。
セグメントとは、各種レポートのデータを分割表示する機能で、たとえば新規ユーザーとリピーター別に表示して、その違いを明らかにすることで、成功あるいは失敗要因を絞り込んでいくような分析方法の1つだ。
セグメント機能はレポートの左上のエリアにある。図4黒枠部分をクリックするとセグメントの画面が表示されるので(図5)、まずは「すべてのユーザー」をクリックしてこのセグメントを外そう(図5赤枠部分)。
そして「モバイルトラフィック」をクリックしてこのセグメントを選択する(図5青枠部分)。この「モバイルトラフィック」がいわゆるスマートフォンによる訪問を表していて、デバイスカテゴリを「mobile」に絞ったセグメントになる。
ないセグメントは自分で作成する
続いて、比較用に「パソコンからの訪問を絞り込むセグメント」を設定したいが、デバイスカテゴリが「desktop」のセグメントは標準で用意されていないので「+ 新しいセグメント」(図5緑枠部分)をクリックしよう。
表示されたセグメントビルダーの「テクノロジー」(図6赤枠部分)をクリックしたのが図6の画面だ。この画面ではさまざまな条件を指定して、絞り込むセグメントを自由に作成できる。
「デバイス カテゴリ」の項目の行のプルダウンから「完全一致」を選択し、その右の入力項目に「desktop」と記入する(図6青枠部分)。そしてセグメントの名前を「PCトラフィック」などわかりやすい名前を入力して(図6緑枠部分)「保存」しよう(図6黒枠部分)。
これでパソコンからの訪問だけに絞り込む新しいセグメント「PCトラフィック」が新規に作成され、かつ、表示しているレポートにも適用される図7。セグメントが適用されていると、レポート上部にそのセグメント名が表示され(図7赤枠部分)、レポート部分にもセグメントごとにグラフや数値が表示される。図7では2つのセグメントを適用しているので、折れ線グラフが2つ表示されている。
どうだろうか。すべてのセッションをまとめていた図4と比較すると、よりユーザー行動を鮮明に想像できないだろうか? オレンジ色の折れ線がパソコンによる訪問だ。昼休みの12時台と帰宅時の17時台にピークがあり、午後の訪問が比較的多めだが、午前中も9時くらいから翌0時台くらいまで一定の訪問がある。日中は職場から訪問しており、夜は自宅から訪問していると読み取れる。
一方、青色の折れ線はスマートフォンからの訪問だ。朝は6時~7時ごろから立ち上がり、まさに起きた瞬間からサイトを利用し始めることがわかる。そのまま途切れることなく利用され、学校や職場などでもスマートフォンを持ち歩きながら使っているということが読み取れる。昼休みの12時に一度ピークを迎えた後は、自由時間の多くなる夜にかけて利用が増え、22時台のピークに向かっていくといった具合だ。
このように、複数のセグメントを表示して比較すると、簡単にユーザーの利用状況の傾向をつかむことができる。前回の「複数の期間を比較する」方法と同様によく使う機能なので、覚えておこう。
なおモバイル環境からは以下のようにさまざまな情報へのアクセス方法があるので、計測方法も含めて少し整理しておこう。
- フィーチャーフォン(ガラケー)向けのWebサイト
- スマートフォン向けのWebサイト
- スマートフォン向けのアプリ
1つ目のフィーチャーフォンは、スマートフォンが普及する前はモバイルの主流だった。パソコンとは異なる種類のブラウザが実装されていたので専用のサイトを作らなければならず、Googleアナリティクスの計測も特殊な方法が必要だ。パソコン向けとは「異なるサイト」という扱いで、レポート画面も違う。
本稿で話をしている前提は、2つ目に該当する。スマートフォンは基本的にはパソコンと同様な仕組みのブラウザなので、パソコン向けとモバイル向けのWebサイトをGoogleアナリティクスで一緒に計測できる。パソコンとの違いは画面サイズが小さいという点だ。
3つ目に挙げたスマートフォンアプリ内のユーザー行動をGoogleアナリティクスで計測することもできるが、それは通常のウェブサイト計測とは別の仕組みなので、その計測のための実装方法やレポートされる項目も異なる。なおGoogleアナリティクスとは別のFirebase Analyticsという計測ツールもGoogleは提供している。
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http://xfusion.jp/train.html
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