パソコンからとスマホからのトラフィックを比較するセグメントを作成する(第2回)
スマホなどモバイル環境とPC環境とを分けて、比較しながらアクセス解析したい
最近多くのクライアント企業でよく聞くのは、モバイルからのWebサイト利用が増えているという話だ。eコマースサイトでも取り扱い商材によっては、モバイルの方が、利用や購入が多いということもある。
モバイルからのWebサイト利用シーンは、パソコンのそれとはずいぶん違うことは容易に想像できる。
移動中に見ているのであれば、利用時間帯に違いがあるだろうし、じっくり時間を掛けて見ている余裕もないだろう。であれば、
- 訪問別ページビュー(1訪問あたりの平均ページビュー数)は相対的に少ない
- 滞在時間も短い
といったことが考えられるだろう。
パソコンとモバイルからをごちゃ混ぜにしたWebサイト利用をざっくり把握しても、ユーザー体験に近づくことは難しいだろう。そこでモバイル環境からの利用を分離するセグメントが必要になるわけだ。
モバイルからの利用が数%にとどまっているサイトではあまり必要性は感じないかもしれないが、モバイルからの利用が一定割合以上含まれるサイトであれば、つねにこのセグメントを掛けてデータを見ることが、今後ますます重要になっていくことは間違いない。
そこで今回は、モバイル環境からの利用状況を把握するためのセグメントの使い方を説明する。
標準レポートを使って利用環境別のデータを比較するには?
まずはセグメントを使わず、標準で用意されているレポートを使って、単純に利用環境別に主要指標を比較してみよう。[ユーザー]>[モバイル]>[サマリー]レポート(図1)を見ればよい。
- 画面上部グローバルナビゲーションの[レポート]をクリックする
- 画面左側にあるメニューで、[ユーザー]をクリックする
- メニューが開くので、[モバイル]、[サマリー]を順にクリックする
「デバイスカテゴリ」というディメンションで、「desktop」「mobile」「tablet」という3分類がある(図1赤枠部分)。これがそれぞれ、パソコン、スマートフォン、タブレットからの利用を意味する。それぞれの訪問ベースの割合(図1青枠部分)は簡単に確認できるので、このデータは時系列でも定点観測しておくのがよいだろう。
「mobile」にはガラケーは含まれない
モバイル計測について補足しておくと、モバイルサイトといっても大きく2種類ある。「ガラケー」用サイトとスマートフォン用サイトだ。いわゆる「ガラケー」と言われている旧来型の携帯電話端末からは、専用の携帯用サイトを見ることになるが、スマートフォンからはPCサイトを見ることになる。
Google アナリティクスの計測もこの2種類のサイトでは、データ収集は別の方法になる。
「ガラケー」用サイトの計測は、標準のアナリティクスの計測方法(JavaScriptとクッキー)とは異なるので、Googleアナリティクス上に別のプロパティで計測することになるだろう。よって、PCサイトの計測における「mobile」とは、スマートフォンからの利用を意味することになる。
モバイルとPCなど利用環境別のデータをセグメントを使って比較するには?
では次に、実際のデータにセグメントを掛けてみよう。
まず多くのレポートの左上にある[v]のようなマーク(図2赤枠部分)をクリックする。
これまでに自作のセグメントを作成したことがない場合は、標準で用意されているセグメント22個が表示される(図3)。
これら22のセグメント中に、パソコン、スマートフォン、タブレットからの利用に関連するセグメントがすでに4つほど用意されている。図3青枠部分がそれだ。
- タブレット トラフィック
- タブレットとPCのトラフィック
- モバイル トラフィック
- モバイルとタブレットのトラフィック
前述したとおり、モバイルとはスマートフォン(iPhoneを含む)と読み替え、PCはパソコン(ノートパソコンを含む)と読み替えればよい。
タブレット、PC、モバイルという3つの項目の組み合わせで4種類がデフォルトで用意されている。しかし、「タブレット」「モバイル」はそれだけのトラフィックを見るセグメントがあるのに、「PC」のトラフィックだけを見るセグメントは用意されていない。
素直に「PCのトラフィック」というセグメントがあれば、「タブレット トラフィック」「モバイル トラフィック」「PCのトラフィック」の3つのセグメントで比較するというのが、単純でわかりやすいだろう。そこで「PCのトラフィック」というセグメントをまず作成してしまおう。
「PCのトラフィック」セグメントを新規作成する
セグメントの新規作成は、セグメント機能の左上にある「+新しいセグメントを作成」(図3緑枠部分)をクリックする。
すると図4のようなセグメントの新規作成画面になるので、ここでセグメント名(図4赤枠部分)とセグメント内容(図4緑枠部分)を設定すればよい。
セグメント名は、たとえば「PCのトラフィック」と入力する(図4赤枠部分)。
セグメント設定内容の指定は、図4緑枠部分のように「デバイス カテゴリ」というディメンションの項目が「desktop」であるセグメント条件を指定して[保存](図4黒枠部分)すればよい。
- 「条件」(図4青枠部分)をクリックする
- 「訪問」を選択する(図4緑枠部分)
- 「含める」を選択する(図4緑枠部分)
- 「デバイスカテゴリ」を選択する(「ユーザー」>「デバイスカテゴリ」)(図4緑枠部分)
- 「完全一致」を選択する(図4緑枠部分)
- 「desktop」と入力する(図4緑枠部分)
設定を保存すると、今作成したセグメントが新しく登録されている(図5赤枠部分)。青枠部分をクリックすると、「リスト」という一覧形式で表示される。
それほど難しい設定ではないので自分でもこのセグメントを簡単に作成できると思うが、下記をクリックすれば、自分のGoogle アナリティクスに取り込むことも可能だ。
このセグメント機能の画面で該当セグメントをクリックすれば、新しく作成したセグメントも標準で用意されているセグメント同様に選択できる。前出の図5は、今作成した「PCのトラフィック(図5赤枠部分)」「モバイル トラフィック(図5では見えていない)」「タブレット トラフィック(図5緑枠部分)」の3つを選択した状態になっている。
セグメントを選択すると、選択されたセグメント名が上部に並ぶ(図5黒枠部分)ので、この状態で左下の[適用]ボタン(図5茶枠部分)をクリックすれば、現在表示しているレポートにこのセグメントを適用できる。
時間別訪問数のグラフに、3つのセグメントを掛けてみる
冒頭に「利用時間帯に違いがあるだろう」と書いたので、たとえば[ユーザー]>[サマリー]レポートで、ある平日を選択、時間別にグラフ表示を選択(図6赤枠部分)したうえで、この3つのセグメントを掛けてみたのが図6だ。
このサイトでは、タブレット トラフィック(図6緑色の折れ線)が量的には少ないので、この3つのセグメントの中では傾向がはっきりとは読み取りにくいが、仮説どおり利用時間にはそれぞれ特徴を見出すことができる。
スマートフォンはつねに身近に携帯していることを考えると、モバイル トラフィックは、通勤時間帯はもちろん、職場で勤務中にも、家でくつろいでいる時間にも、すべての時間帯で比較的にフラットに利用されていても驚かないだろう。
一方PCのトラフィックは、昼休みのピークと夜のピークの2つの山が顕著に見えるが、朝にはピークがないといった特徴が見て取れる。
皆さんのサイトではどんな利用がされているだろう。同じような傾向が見れるサイトもあれば、異なるパターンの閲覧傾向があるかもしれない。
他にもこのセグメント軸で見たいレポートは沢山あるだろう。
- スマートフォンからのアクセスの場合に見られているコンテンツに特徴はあるのか?
- 集客チャネルに大きな違いはあるだろうか?
- コンバージョンの有無にも違いが見られるのではないだろうか?
サイトによって関心事は異なると思うので、気になったものはひととおり見ておくのがよいのではないだろうか。
ページごとに、PCトラフィックとモバイルトラフィックの寄与度を比較する
たとえば図7は[行動]>[サイト コンテンツ]>[すべてのページ]レポートで、PCのトラフィックとモバイル トラフィックの2つのセグメントを掛けたケースだが、ページビュー数のランキングの順位は、スマートフォンからの閲覧とパソコンからの利用では当然違いがある。
図7赤枠部分は、2番目のページの「ページの価値」の指標だ。これを見ることでコンバージョンした訪問時に寄与したページを知ることができる。PCのトラフィックでは40円だが、モバイル(スマートフォン)のトラフィックは0円である。つまり、スマートフォンからの訪問の際には、このページを閲覧することが、コンバージョンには結びついていないということになる。他にもこのサイトでは、逆にPCのトラフィックではページの価値がゼロのページももちろんある。それぞれ、なぜなのだろうという理由は追求すべきだろう。
図7の出力形式は目的に応じてソートしやすいわけではないし、セグメント数が3つ以上あると一覧性も低くなる(図7は2つのセグメントしか掛けていないが、それでも直感的にわかりやすいとは言い難いだろう)ので、ピボット形式で表示できるとよいのだが、残念ながらピボット表示形式を選択(図8赤枠部分)して、デバイス カテゴリと組み合わせることができない。
エクセルなどのファイルに出力してデータを見やすく加工したい場合は、図8のようにセカンダリ ディメンションにデバイス カテゴリを指定(図8青枠部分)するとエクセルなどでの作業がしやすくなるのではないだろうか。
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