ユーザー行動分析に効く! シーケンスの使い方②――特定の参照元の順番で訪問した人を調べよう(第89回)
「シーケンス」は、ユーザー行動の順番を条件指定することのできるセグメントの分類だ。前回は「セッションベース」のフィルタを利用した場合について解説した。今回は「ユーザーベース」のフィルタを利用した場合を取り上げる。
「ユーザーベース」のフィルタを利用すると、複数のセッションをまたいで特定の行動をサイト上でしたユーザーを抽出するセグメントを作成できる。たとえば次のようなものだ。
- 「リスティング→自然検索」ユーザー
- 検索連動型広告からの訪問(セッション)があり
- その後、自然検索からの訪問(セッション)があった
- 「キャンペーン初期接触→自然検索でトップページ流入」ユーザー
- あるキャンペーンのランディング ページから閲覧を開始していて
- その訪問(セッション)が集計対象期間の最初の訪問で
- その後、自然検索からの訪問でトップページから閲覧を開始した
- 「ユーザー登録→メルマガ登録」ユーザー
- ユーザー登録をした訪問(セッション)があり
- その後、メルマガ登録をした訪問(セッション)があった
今回は、設定手順の例として、上記3つのセグメント設定を解説する。
「リスティング→自然検索」ユーザーを抽出するセグメントの作り方(「ユーザーベース」のシーケンスの基本形)
冒頭の例1つ目に示した、
検索連動型広告からの訪問(セッション)があり、その後、自然検索からの訪問(セッション)のあったユーザー
を抽出するセグメントだ。
具体的には、
- 検索連動型広告からの訪問(セッション)があり
- その後、自然検索からの訪問(セッション)があった
という行動を行ったユーザーを抽出する。
セグメント新規作成画面で「シーケンス」分類(図1赤枠部分)を選択する。
フィルタを「ユーザーベース」にするか、「セッションベース」にするかは、「フィルタ」「含める/除外する」(図1青枠部分)の右横にあるプルダウンで選択できる(図1緑枠部分)。
今回のように「ユーザーベース」のフィルタを作りたい場合は、ここで「ユーザー」を選択する。
「フィルタ」「含める/除外する」「ユーザー」(図1赤枠部分)の右横の「シーケンスの開始」のプルダウンからは「すべての接点」を選択(図2青枠部分)する。
その下の「ステップ1」は「メディア」「完全一致」を選択し、「cpc」を入力(図2茶枠部分)して、検索連動型広告からの訪問という条件を指定する。
続いてその下の「ステップを追加」(図2緑枠部分)をクリックし、プルダウンから「の次のステップは」(図2黒枠部分)を選択する。
次にその下の「ステップ2」では、「メディア」「完全一致」を選択、「organic」を入力(図2紫枠部分)して、自然検索からの訪問という条件を指定する。
あとはセグメントの名前を付けて保存(図1黒枠部分)すれば、「検索連動型広告からの訪問(セッション)があり、その後、自然検索からの訪問(セッション)のあったユーザー」を抽出するセグメントのできあがりだ。
「シーケンスの開始」の設定とは?
「シーケンスの開始」と書いてある右横にあるプルダウン(図3赤枠部分)は、
- すべての接点
- 最初の通過地点
という選択肢があり(図3赤枠部分)、デフォルトでは「すべての接点」が選択(図2青枠部分)されている。
「最初の通過地点」は、最初の訪問(セッション)のこと
「ユーザーベース」のフィルタの場合、「最初の通過地点」(図3青枠部分)の意味は、集計対象期間中の最初の訪問(セッション)を意味すると考えてよいだろう。
ただし「ステップ1」の条件指定項目に、セッション系(参照元など)でなくヒット系(ページなど)を選択した場合は、最初の訪問の最初のヒットを指定することを意味する。前回も触れたが、最初の訪問の最初のヒットは、基本的にランディング ページを意味することになることに注意しよう。
なお、「ヒット」(「イベント」や「トランザクション」など)についてご承知でない方は、まずこちらの記事を参照してほしい。
「すべての接点」を選ぶと、どのセッションでも対象になる
一方、「ユーザーベース」のフィルタの場合、「シーケンスの開始」のプルダウンで「すべての接点」を選択(図2青枠部分)すれば、ステップ1の条件は集計対象期間内のどのセッションでも対象になり得る。「最初の通過地点」よりも条件が緩くなるということだ。
「ステップ1」の条件指定項目に、セッション系(参照元など)を選択した場合は、「集計対象期間の任意のセッション(訪問)」の条件を指定したことになるし、ヒット系(ページなど)を選択した場合は、「集計対象期間の任意のヒット」の条件を指定したことになる。
「の直後のステップは」の設定とは?
順番の条件を指定するプルダウン(図4赤枠部分)で、「の次のステップは」の代わりにもう1つの「の直後のステップは」(図4青枠部分)を選択すると、「ステップ1の条件」の直後に「ステップ2の条件」にも合致したユーザーを抽出することになり、順番を指定する条件がより厳しくなる。
各ステップの条件項目にセッション系(参照元など)を選択した場合は、
- 「ステップ1」のセッション条件を満たし、かつ、直後のセッションが「ステップ2」のセッション条件を満たしているユーザー
だけが抽出される。ヒット系(ページなど)を選択した場合は、
- 「ステップ1」のヒット条件を満たし、かつ、直後のヒットが「ステップ2」のヒット条件を満たしているユーザー
だけが抽出される。つまり途中で寄り道というか、別のセッションやヒット(ページビュー、イベント、トランザクションなど)が挟まらない厳しい条件になるということだ。
ステップ1とステップ2に同じページを指定するとどうなるか?
いくつかテストして上記のセグメントの動作を確認してみたが、少し意外だったのは、「ステップ1とステップ2に同じページを指定(図5赤枠部分)し、かつ、『の直後のステップは』を選択したセグメント」(図5)の設定だ。
このように指定すると、同じページを連続して閲覧したユーザーが抽出できるはずなのだが、こんな意味があるとは思えない集計をきちんとしてくれるのだろうか。やってみると、
- 同セッションで同じページを連続で閲覧したユーザー
- 直後のセッションのランディング ページが、直前のセッションの離脱ページと同じ(セッションをまたいで同じページを連続して閲覧)だったユーザー
を正しく認識して抽出してくれた。
「キャンペーン初期接触→自然検索でトップページ流入」ユーザーを抽出するセグメントの作り方
冒頭の例2つ目に示した、
あるキャンペーンのランディング ページから閲覧を開始した訪問(セッション)が集計対象期間の最初の訪問にあたり、その後、自然検索でトップページから閲覧を開始した訪問(セッション)のあったユーザー
を抽出するセグメントだ。
具体的には、
- 検索連動型広告からの訪問(セッション)があり
- その後、自然検索からの訪問(セッション)があった
という行動を行ったユーザーを抽出する。
このシーケンス条件のセグメント設定は図6のとおりだ。
条件設定の詳細については、1つ目の設定例の解説を参照してほしい。
ポイントだけ解説しておこう。
ステップ1:集計対象期間内の最初のセッションを指定したいので、「シーケンスの開始」は「最初の通過地点」を選択する(図6赤枠部分)。
ステップ2:2つのセッション条件を掛け合わせて設定(図6青枠部分)する。
ステップ2のように、1つのステップの中で条件を重ね合わせるには、「AND」ボタン(図6緑枠部分)を利用すればよい。
「ユーザー登録→メルマガ登録」ユーザーを抽出するセグメントの作り方
冒頭の例3つ目に示した、
ユーザー登録をした訪問(セッション)があり、その後、メルマガ登録をした訪問(セッション)のあったユーザー
を抽出するセグメントだ。
具体的には、
- ユーザー登録をした訪問(セッション)があり
- その後、メルマガ登録をした訪問(セッション)があった
という行動を行ったユーザーを抽出する。
このシーケンス条件のセグメント設定は図7のとおりだ。
条件設定の詳細については、1つ目の設定例の解説を参照してほしい。
この例のポイントは、2つの順番しか指定しないため、「シーケンスの開始」は「すべての接点」を選択(図7赤枠部分)し、各ステップでは「セッションベース」の目標達成を指定(図7青枠部分、図7緑枠部分)しているところだ。
ステップ1とステップ2はそれぞれ目標完了数が1以上(指定は「0より大きい」だが)、つまり別々にコンバージョンした訪問(セッション)の順番を指定しているということになる。おそらく同じセッションで目標1の後に目標2を達成しても、そのユーザーはこの設定では選択されないと思われるので注意が必要だ。
もしその場合も該当ユーザーを抽出したいのであれば、ヒットベース、つまりそれぞれの目標完了ページを各ステップで指定すればよい。「ページ」「完全一致」「thanks.html」といった具合に、それぞれの目標ページを各ステップに指定するのだ。
シーケンスを他の条件と重ね合わせることもできるし、まだまだ複雑なバリエーションは多数ある(もちろん複雑な条件は作成できない場合もある。あらゆることができるわけではない)。
いずれにしても「ユーザー」「セッション」「ヒット」といった条件指定する単位と、「ユーザーベース」のセグメントなのか、「セッションベース」のセグメントなのかで大きく変わってくる。
やはり絵を描きながら(第84回、第86回、第87回などを参照)抽出したいセグメント条件を正確に記述するようにしよう。
そして設定が正しいのか、別の方法で数値を確認するなども心掛けることをお勧めする。
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