複雑な「除外セグメント」を1つのフィルタ内で間違えずに設定するGAマスターのコツとは?(第86回)
Googleアナリティクスのセグメントを紹介するこのコーナーだが、ここ数回は、実はちゃんと理解するのが難しいセグメント設定を解説している。前回は1つのフィルタで「複数条件を満たす場合の設定(AND)」と「どれか1つでも条件満たす場合の設定(OR)」について解説した。
今回は、「1つのフィルタの中での除外設定」について解説する。
「1つのフィルタ」には下記の3パターンがある。それぞれの場合ごとに順番に説明していこう。
- チェックボックスで条件を指定する形式
- プルダウンや値を記述するなどで条件を指定する形式
- 最初にユーザーベースのフィルタかセッションベースのフィルタかを選択して、条件を指定していく形式
フィルタの単位について詳しく知りたい方は、フィルタ評価の仕組み前回の記事を参照してほしい。
「①チェックボックスで条件を指定する形式」では、除外指定はできない
チェックボックスは複数の条件を「OR」で指定する機能だ。「新しいセグメント」を作成するときに出てくる設定画面の1つである「ユーザー属性」分類(図1赤枠部分)の画面を見てみよう。
- レポート画面の上部にある「+セグメント」のエリアをクリックする
- 左上にある「+新しいセグメント」をクリックする
- 「ユーザー属性」(図1赤枠部分)を選択する
「年齢」あるいは「性別」(図1青枠部分)などが、この条件指定をチェックする形式に該当する。
除外する指定をチェックする機能ではないので、除外条件を指定する手段は用意されていない。チェックボックスになっているディメンションで除外条件を指定したいときは、最後に解説する「条件」分類の画面で設定しよう。
「②プルダウンや値を記述するなどで条件を指定する形式」では、除外式を選択する
次は「②プルダウンや値を記述するなどで条件を指定する形式」である。図2は「テクノロジー」分類の画面(図2赤枠部分)だ。
たとえば、「『オペレーティング システム』が『Windows』以外のセッション」を抽出するセグメントを設定したいときは、「オペレーティング システム」「完全一致しない」「Windows」と指定(図2青枠部分)する。除外条件式としては、
- 完全一致しない
- 含まない
- 先頭が一致しない
- 最後が一致しない
- 正規表現に一致しない
- 次のいずれでもない
といったように、多数のマッチタイプ(図2緑枠部分)が用意されているので、ここから最も指定方法が簡単なものを選択すればよいだろう。
ただし、マッチタイプの最後の「次のいずれでもない」(図2黒枠部分)を選択した場合の条件指定方法は不明だ。プルダウンの右側にある記述欄に何らかの方法でいくつか除外条件を列挙するのではないかと推察して、複数の候補をカンマで区切ってみたり、空白を入れてみたりしたが、どのようにすれば動作するのかわからなかった。
「いずれの条件にも該当しない」と指定したい場合は、「正規表現に一致しない」を選択したうえで、図3赤枠部分のように列挙すれば「NOR」条件(否定論理和、いずれにも該当しないこと)指定は実現できるので、困ることはないのだが。
ちなみに「次のいずれか」(前出図2茶枠部分)も同様に指定方法は不明だ(こちらは「OR」条件を取り上げた前回触れるべき話題だった)。
「③-1 最初にセッションベースのフィルタを選択して、条件を指定していく形式」で、正しく除外指定するには?
「③最初にユーザーベースのフィルタかセッションベースのフィルタかを選択して、条件を指定していく形式」は、「セッションベース」と「ユーザーベース」に分けて解説しよう。まずは簡単な「セッションベース」のセグメントからだ。
「セッションベース」のセグメントとは、フィルタ条件を「セッション」「含める/除外する」とした場合に該当する。今回は除外条件なので、フィルタ条件が「セッション」「除外する」(図4赤枠部分)の場合ということだ。
図3で指定した条件は、ふつうの考え方で表現すると「WindowsでもMacintoshでもない」なのだが、条件指定をする場合は「『WindowsあるいはMacintosh』以外(除外する)」のようにする。
この「『オペレーティング システム』が『WindowsあるいはMacintosh』以外のセッション」を抽出するセグメントの設定を、「条件」分類の画面で実現しようとすれば、図4のように「OR」条件(図4青枠部分)を選択して、除外したいオペレーティング システムの条件を2つ記述(図4緑枠部分)すればよい。
このとき、「WindowsでもMacintoshでもない」のだからと、うっかり「AND」(図4茶枠部分、図5赤枠部分)を選択しないように気をつけよう。図5はわざと「AND」を選択してみた(図5赤枠部分)例だ。
同じセッションで異なるオペレーティング システムから同時に利用することは論理的にないので、「AND」条件に合致するものは存在しない。そしてその存在しないものを「除外する」のだから、除外されるのは0%、つまり100%選択することと同義だ(図5青枠部分)。つまり絞り込みがいっさいされない、意味のないセグメントになってしまう。
複雑な除外条件を指定するときのコツ
除外するというややこしい設定を施す場合は、頭であれこれ考えず、すぐに絵を描いてみることをおすすめしたい。今も学校で教えてくれるのか知らないが、図6のようなベン図というものを書いてみよう。
このケースでは、全体のセッションが5,147(図6上部の黒字部分)で、その内訳は、
- Windowsからの訪問が3,311セッション(図5青字部分)
- Macintoshからの訪問が942セッション(図5赤字部分)
- その他が894セッション(図5緑字部分)
となっている。図5のケースでは「青い丸」と「赤い丸」は交わることはない。したがって、この2つの丸の、
- 「AND」条件は0セッション
- 「OR」条件は単純合計で4,253(3,311+942)セッション
- 「NOR」条件(条件設定は図4、範囲は図6網掛け部分)が894セッション(図4黒枠部分、図5緑字部分)
になるという具合だ。
除外条件が重なる場合はどうなるか?
図6では2つの条件が交わることのない場合だったが、次に2つの条件が重なる場合についても見ておこう。
図7は「『「ランディング ページがトップページ」(図7赤枠部分)、あるいは(図7青枠部分)、「メディアがorganic」(図7緑枠部分)だったセッション』を除く」(図7茶枠部分)という指定になっていることがわかるだろう。
ベン図でそれぞれのセッション数も加えて描いたものが図8で、
- 「ランディング ページがトップページ」のセッションが829セッション(図8赤字部分)
- 「メディアがorganic」のセッション」2,089セッション(図8青字部分)
となる。
- 「AND」条件は277セッション
- 「OR」条件は単純合計で2,641(2,089+829-277)セッション
- 「NOR」条件(図7黒枠部分、図8緑字部分)が2,506セッション
実際に、
- 2つの条件が交わる部分は277セッション
- どちらかに該当するセッションを除いた範囲は2,506セッション
なので、「AND」「OR」「NOR」すべて辻褄があっている。
さて、ここで条件を少し変えて、「『ランディング ページがトップページ』かつ(図9青枠部分)『メディアがorganic』だったセッションを除く」という指定にしたのが図9だ。図8のベン図で言えば、赤丸と青丸が交わった部分の277セッションを除いた残りが対象のセグメントということだ。
全体5,147セッションから277を差し引くと4,870(5,147-277)セッションとなり、図9の概要表示にあるセッション数(図9黒枠部分)と合致する。
「除外する」フィルタと、「AND」あるいは「OR」との組み合わせだけでも、頭ですぐに想像するのは困難だ。しかも、誤った設定をしてもおそらく気付かない。ぜひベン図を描いて、どのような条件を指定したいのかを目で確かめながら設定しよう。
「③-2 最初にユーザーベースのフィルタを選択して、条件を指定していく形式」で、正しく除外指定するには?
最後は、「ユーザーベース」のセグメントで「除外する」を利用した場合だ。
ユーザーベースのセグメントの場合は、セグメント条件の単位が「ユーザー」「セッション」「ヒット」と3つから選択可能で、組み合わせなども複雑になるが、図10のような「ユーザー」「セッション」「ヒット」の3階層構造を描き、条件に該当する「ユーザー」がどの範囲になるのかを、考えながら条件設定しよう(ユーザーベースのセグメントの基本は、前々回の解説を参照していただきたい)。
また前回記事の「「③-2 最初に『ユーザーベース』のフィルタを選択して、条件を指定していく形式」における「AND」「OR」の使い方」の項目で解説した以下の注意点も、あわせて気をつけて設定するようにしよう。
- 「ヒット」単位で「AND」指定するセグメントには注意が必要
- 同じヒットタイプ同士(イベントとイベント)の「AND」は無効
- 異なるヒットタイプ同士の「AND」は有効
追記(2016/02/04)
「次のいずれでもない」(図2黒枠部分)を選択した場合の条件指定方法が、読者からの指摘で判明した。「次のいずれか」(図2茶枠部分)も同様に指定可能だ。
「次のいずれでもない」をプルダウンから選択すると、右の入力ボックスのところに「改行で区切ることができます」と薄く表示される(図11赤枠部分)。
「『オペレーティング システム』が『WindowsあるいはMacintosh』以外のセッション」を抽出するセグメントの設定は、図12赤枠部分のように確かに改行で列挙することで実現できた。
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