【最終回】GAの2018年展望と、これからも分析に取り組むあなたに衣袋教授が伝えておきたいこと
連載の最終回だ。Web担当者Forumでアクセス解析やGoogleアナリティクスの記事を多数執筆してきたが、今回をもっていったん終了する。次の連載は予定していない。本当に最後だ。長らくお付き合いいただいた皆さんにお礼を申し上げる。
さて最終回は、2017年を総括するとどういう年だったのかを簡単にまとめ、そのうえで2018年のGoogleアナリティクスを占い、分析どのように向き合っていくべきかを考えてみよう。
- 2017年のGoogleアナリティクス総括
- 2018年のGoogleアナリティクス展望
- これから分析に臨むあなたに必要な4つの心構え
- いったい何をどう学んでいけばいいのか?
2017年のGoogleアナリティクス総括
2017年のGoogleアナリティクスを総括して4つのキーワードにしてみた。スイート製品群まで範囲を広げている。個々の更新情報については前回の記事で振り返りを行ったので参考にしてほしい。
- スイート製品群の統合進化
- セッション分析からユーザー分析へ
- 機械学習の導入
- モバイルファースト
それぞれについて少し説明を加えておこう。
①スイート製品群の統合進化
2017年はスイート製品群への統合が進んだ年だったといえる。スイート製品群についてはGoogleアナリティクスの範囲を超えるため今までは解説してこなかったが、画面左上にある「アカウント」>「プロパティ」>「ビュー」のプルダウン(図1赤枠部分)をクリックすると、図2のような画面が表示される。
図2には、次のようなボタンが用意されている。
- 他のスイート製品群への移動できるボタン群(図2赤枠部分)
- スイートポータル(スイート製品群全体を管理する場所)へ進むためのボタン(図2青枠部分、図2はこのボタンをクリックした画面)
- スイート製品群を管理するための「組織」を管理する画面へ進むためのボタン(図2緑枠部分)
このスイート製品群関連へのリンクなどを中心とした上部ユーザーインターフェースの基本構造が2017年でできあがったように思う。
②セッション分析からユーザー分析へ
「セッション分析からユーザー分析へ」という流れについては、前回紹介した更新情報の「ライフタイムバリュー」レポートや「ユーザー」指標のリリースなどが該当する。
2016年までにも存在したアトリビューション分析やコホート分析、User-ID機能なども含め、セッション視点からユーザー視点で分析できるようなレポートは多数あったが、Googleアナリティクスでもユーザー視点での分析がほぼ成熟の域に達した感がある。
③機械学習の導入
こちらも外せないのが、機械学習だ。前回紹介した更新情報の「セッションの品質」レポートや「Intelligence」機能のリリースなどが該当する。
AdWordsでも広告運用の自動化が進んでいるが、そちらと連携した動きに加えて、Googleアナリティクスでも質問に答えたり、簡単な分析コメントを出したりしてくれる「Intelligence」という機能が独自に出てきた。
④モバイルファースト
最後は「モバイルファースト」だ。これはグーグル全体の基本的な姿勢のようだが、Googleアナリティクスでもその片鱗が垣間見える。先ほど紹介した「Intelligence」機能のリリースなどはアプリ版のGoogleアナリティクスで先行リリースされるなど、新機能はモバイル環境でいち早くリリースされる傾向がある。
2018年のGoogleアナリティクス展望
2017年を総括したうえで、2018年のGoogleアナリティクスを占うキーワードは下記の5つにしてみた。
- ①グローバルサイトタグの混沌
- ②機械学習が実践フェーズへ
- ③モバイル対応
- ④スイート製品群の統合の成熟
- ⑤モーダルウィンドウの浸透
こちらもそれぞれについて説明を加えておこう。
①グローバルサイトタグの混沌
「グローバルサイトタグ」とは、新しいユニバーサルアナリティクスのトラッキングコードのことで、「gtag.js」版がすでに「管理」画面で正式版として表示されている(図3赤枠部分)。グローバルサイトタグについては開発者向けサイトでひと通りの解説があるが、実装の報告を行っているブログの解説なども少なく、公式サイトも含めてまだまだ「正しい情報」の情報量が圧倒的に少ない。
ユニバーサルアナリティクスのトラッキングコードがリリースされたときも、しばらくして「早く移行しないと前のバージョンは使えなくなる」といったデマが流れたが、今回もさまざまなデマや不正確な情報が多く流れることが容易に想像できる。「グーグルのパートナー企業ですら、不安をあおったような記事を書いたりセミナーを行ったりするかもしれない」と考え、注意深く正しい情報をもとにして慎重な判断をしてほしい。
②機械学習が実践フェーズへ
期待を含めてだが、2018年は機械学習によるアドバイスなどが実践的に使えるように急速に進展するのではないだろうか。AdWordsではすでに、「手動で施策を行うより自動化で任せた方が成果が出る」といった話もよく耳にするようになってきた。
GoogleアナリティクスでもQ&Aや分析コメント機能の提供が始まっており、機械学習を活用した機能は加速度的に学習し、精度が高まっていくはずだ。データ分析はディメンションや指標などの基本用語と数字だけで十分に学習することが可能と思うので、「Intelligence」機能が日本語対応されるかどうかにかかわらず、分析分野で急速に賢くなっていくのではないだろうか。
③モバイル対応
ここでいう「モバイル」はさまざまなことを含んでいるが、2018年もモバイル環境や技術が変化するスピードは速いことが予想される。グーグルは当然、そのモバイル環境や技術に引き続き素早く対応していくだろう。AMPなどに対応した計測、ITP対応、アプリ計測、さまざまな動きがあると考えられる。
④スイート製品群の統合の成熟
2017年にスイート製品群の統合が急速に進展したが、2018年はスイート製品群の完成度が上がる成熟局面になっていくという予想だ。細かな改良で、Googleアナリティクスを含む製品群がよりシームレスに使いやすくなっていくことが想像される。
⑤モーダルウィンドウの浸透
まず「モーダルウィンドウ」について説明しておこう。モーダルウィンドウとは「ウィンドウの子ウィンドウとして生成されるサブ要素のうち、ユーザーがそれに対して適切に応答しない限り、制御を親ウィンドウに戻さないユーザーインターフェース」のことだ。
言葉だけだと伝わりづらいと思うので、つい最近変更になった「ユーザー管理」を例にして説明しよう。「管理」画面の「ユーザー管理」はアカウント、プロパティ、ビューの3つのレベル(図4赤枠部分)でそれぞれ設定することができる。
アカウントのユーザー管理をクリックしたのが図5だ。
親ウィンドウの前を覆うようにして子ウィンドウ(図5赤枠部分)が広がり、ここで何らかの作業や操作を終了するか、「×」ボタン(図5青枠部分)をクリックしないと元の親ウィンドウには戻れない。この画面操作でブラウザの「戻る」ボタンをクリックしても、思うとおりには動作しない(ブラウザによって動作が違うかもしれないが)。
Googleタグマネージャでは全面的にこのモーダルウィンドウが適用されたが、Googleアナリティクスではまだあまり導入されていない。グーグルは以前からユーザーインターフェースの細かい調整を継続的に実施しており、そのときどきの流行なども取り入れていることを考えると、2018年も細かいユーザーインターフェースの変更が頻繁にあるのではないだろうか。
これは今までもそうだったが、「集計内容が変わる」などの根源的な変更とは異なり、表層的な変更ともいえるので、使っていくうちに慣れるしかないとあきらめよう。
これから分析に臨むあなたに必要な4つの心構え
そのうえで2018年、Googleアナリティクスを利用した分析にどう臨んでいくべきかをまとめよう。結局は当たり前の話になるのだが、下記の4つだ。「Googleアナリティクス」という枠を取っ払った「データ分析を活用するための心構え」でもある。
- ①正しい知識の収集と習得(情報リテラシーを持て)
- ②仕組みの理解を(リサーチリテラシーを持て)
- ③設計を練り、諸設定の準備を(用意周到にして待て)
- ④成果に結びつく分析を(分析もROIの意識を持て)
①正しい知識の収集と習得
2018年の展望の「①グローバルサイトタグの混沌」の解説でも述べたが、正しい情報に触れるように注意することはもちろん、公式情報でも100%うのみにすることなく、実際にテストするような慎重な姿勢で臨んでいただきたい。それはトラッキングコードのカスタマイズしかり、集計仕様しかりだ。残念なことだが、最終的には「自分が見たり、やったりしたこと以外は信用するな」ということだ。
情報というものは、「誰が」「どういう文脈で」「どのレベル向けに」話をしたのか、あるいは書いたものなのかを見極めなければいけない。この連載もそうだが、初級者が対象の書き物の場合、正確性よりもわかりやすさを優先して90%くらいの精度で表現することは頻繁にある。
②仕組みの理解を(リサーチリテラシーを持て)
仕組みの理解については、次の3つ目を行う前提になるので、ここもしっかり押さえておきたい。Googleアナリティクスなどのツールを使う場合は、「そのツールがどのように動作しているのか」の仕組みをきちんと理解していないと使いこなせない。長く付き合うつもりのあるツールなら、表面的な操作方法だけでなく、じっくり腰を据えて一から仕組みを学んでいただきたい。
③設計を練り、諸設定の準備を(用意周到にして待て)
3つ目の「設計を練り、諸設定の準備を」は、2018年の展望の「②機械学習が実践フェーズへ」にも関連する。今後機械学習の賢さが増してくると大事になってくるのは、学習させるデータの量と質だ。
まず量でいえば、アクセスのあまりないサイトは自分のサイト特有の動作を学習できないので不利になるだろう。そして質を担う部分としては、「精度の高いデータを収集すること」の重要性がより増してくるということだ。具体的には、次のような諸設定にかかわる部分の準備だ。
- 適切なコンバージョン(サイトのゴール)の設定
- URLの正規化
- 分析のためのページのグルーピング
- 集客チャネルのグルーピング
もっと上流の話をするならば、提供している商品やサービスそれ自体、Webサイトであればその商品やサービスにかかわるあらゆる情報(コンテンツ)の準備といったものまで含んで「精度の高いデータを収集する準備」をきちんとしておこう。
④成果に結びつく分析を(分析もROIの意識を持て)
誰もGoogleアナリティクスを使うのが目的で仕事をしているわけではないだろう。売上を上げたり費用を削減したりして事業の利益を上げていくために、その施策のヒントを発見するために、データを活用しようとしているはずだ。つまり分析にかける時間やコストも、成果との費用対効果を考えて行っていただきたい。
Googleアナリティクス研究家である私の場合は、Googleアナリティクス自体が仕事の対象なので、Googleアナリティクスのほぼすべての機能やレポートを見て回り、テストし尽くすのだが、普通の人はごく一部のレポートだけ見れば十分だ。
「これこれを改善したい」といった目的から、「そのためにはこういったデータが役に立つはずだ」「すると見るべきレポートはこれだろう」という具合に考えていけばよい。常に分析にかける時間・コストと成果の費用対効果(分析ROI)を意識してもらいたい。
振り返ってみると、この10年筆者の言っていることは一貫して変わっていないと思う。大事な原則の1つひとつは、難しいことを言っていない。これを拙速にやらず「地道に継続してやるかどうか」「実行するかどうか」でしかないと思っている。ぜひ実行していただきたい。
いったい何をどう学んでいけばいいのか?
最後に、具体的にどのようにGoogleアナリティクスを学んでいったらよいのか、レベル別に簡単に整理しておこう。
始めたばかりの人は
ゼロから始めるレベルの人の場合は、まず自分のブログなどGoogleアナリティクスの実装を自由にできる場所を作って、とにかく始めてみること。並行してGoogleアナリティクスの(超)初心者本を2~3冊買って、そこで紹介されているような代表的レポートの読み方を学んで、まずは毎日のように数字に親しんでほしい。
筆者はすべてのGoogleアナリティクス本を読んでいるわけではないので、具体的な推奨はできないが、初心者本かどうかは、実際自分で手に取ってパラパラめくり、最低でもまえがきや目次、最初の数ページ、途中の数ページを読んでみて、自分のレベル感に合致しているのかを判断しよう。
初級を脱出したい人は
データを見ることに慣れ、自分のブログなどで少しずつトラッキングコードのカスタマイズなども試みるようになってきたら、その時点で少しまとめて学ぶのがよいだろう。Googleアナリティクス初心者本を2~3回読み返して、内容がスラスラと問題なく頭に入ってくるようになればよい。
あとは本連載の記事一覧から、気になったタイトルの記事を読んでいくのがよいだろう。興味を持てないことは、むやみに詰め込まない方がよい。まずは自分の関心事から少しずつ、知識を無理なく増やしていくのがよいだろう。
- 衣袋教授の新・Googleアナリティクス入門講座 コーナーの記事一覧
https://webtan.impress.co.jp/l/10937
企業で先輩に教わりながら「Googleアナリティクスを使えるようになれ」と言われている人も、このあたりのレベルに相当するだろうか。「わからないことがあったら検索をする」という習慣は悪くはないが、検索だけでは結局系統的に学ぶことができず、情報が不連続になる。初心者レベルであっても、「何でも検索に頼る」という方法は、あまりおすすめしたくない。もし疑問がどんどんわいてくるようであれば、それは「次のレベルに移行している」と考えた方がよいだろう。
中級レベルをしっかり確保したい人は
事業者としてGoogleアナリティクスを利用する立場で、ある程度「この人に聞けばGoogleアナリティクスは大体わかる」あるいは「リーダーとして主導しなければいけない」レベルになりたいのであれば、基本的な用語や主要なレポート、機能、活用方法を把握しておく必要があるだろう。
このレベルを効率よく学ぶにはGoogleアナリティクス初級~中級クラスの本を2~3冊繰り返し読むのがよいだろう。最終的には以下の木田さんの書籍を読破し、リファレンス(事典)的に常に手元に置いておくのが望ましい。
- 『できる逆引き Googleアナリティクス 増補改訂2版』(木田和廣著、432ページ、2017年11月17日発売)
https://book.impress.co.jp/books/1116101153
一般的なことではなく、個別の事情で誰かに相談しなければならないという状況になったなら、「Googleアナリティクス 公式コミュニティ」で質問するか、安価な定期コンサルに指導を仰ぐというのも手だ。しかし、情報が少ないGoogleタグマネージャの話や急いで解決しなければならないといった事情なら仕方ないが、何でもかんでもこういう無償のコミュニティに頼ることはおすすめしない。人にばかり頼っていると、自分で考える習慣がなくなり、学ぶ力が低下していくからだ。
- Googleアナリティクス 公式コミュニティ
https://www.ja.advertisercommunity.com/t5/Google-%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%AF%E3%82%B9/ct-p/Google_Analytics
さらなる上級者を目指したい人は
上級者にお手本はない。まずは先ほど紹介した木田さんの本を何度も読み、すべてを正しく理解し、人にもわかるように説明できるようになることを目標にしよう。訓練する場として最適なのは、先述した「Googleアナリティクス 公式コミュニティ」だ。ここで質問者ではなく、回答者として立ち回ろう。
このコミュニティでは、よくある初級の質問から、意味がわからない質問、高度な技術的質問まで、さまざまなQ&Aが飛び交っている。回答者の視点で公式コミュニティに参加することで、自分の知らないことがないか、自分の知識はどのあたりが不足しているのかを認識することができるだろう。
あとは自分で勉強会やセミナーを企画して、講師を呼んで聞きたいテーマで話をしてもらうとか、個々に情報交換できる人のネットワークを構築していくしかない。自ら進んで情報提供活動をしていこう。情報提供していれば、自然と情報は集まってくるだろう。
Googleアナリティクス情報を漏らさずに把握しておきたいのであれば、筆者が配信している週刊のメルマガ(無料)で十分だろう。
- Googleアナリティクスに関するメールマガジン「週刊GAF」
http://gaforum.jp/mail
筆者が定期的に実施している講座は4つある。「本を読まずに、Googleアナリティクスをまとめて教えてほしいとい」った場合には、こうした集中講座(有料)を受講するという手もある。
- アクセス解析全般を集中的に学ぶ講座(丸2日)
- Googleアナリティクスを集中的に学ぶ講座(丸2日)
- ユニバーサル アナリティクスをGoogleタグマネージャで実装講座(丸1日)
- Googleアナリティクス「セグメント」機能徹底解説講座(4時間)
4つの講座の案内へのリンクがあるページを紹介しておこう。
- Googleアナリティクスのセミナー・研修
http://xfusion.jp/train.html
筆者の定期訪問コンサルティングも紹介しておこう。費用は5万円/月。月1回(2時間)の訪問で何を質問していただいても構わない。時間はコストだ。情報の検索に延々と時間をかけるくらいなら、お金で解決する方法もあるということだ。
- Googleアナリティクスの導入・分析サービスサービスの詳細と費用
http://xfusion.jp/report.html
ありがとうございました
他の連載も含め、10年近くWeb担当者Forumで連載をさせていただきました。
1つでも何か皆さんのお役に立つ情報があればということで続けてまいりましたが、今後のGoogleアナリティクスを中心とした情報提供の活動は、上記宣伝させていただいたメルマガ/有料講座/コンサルティングだけに集約してまいります。
週刊で10年もの長い間、よく続いたものだと思います。読者の皆さん、Web担当者Forum編集部の皆さん、グーグルをはじめGoogleアナリティクスにかかわるさまざまな会社の方々に支えられて続けることができました。
ありがとうございました。
📝筆者が継続的に主催している講座群(Google アナリティクス中心)に興味がある方はこちらをご確認ください。
http://xfusion.jp/train.html
コメント
たくさん学ばせていただきました
たくさん学ばせていただきました、10年もの間ありがとうございました!