Googleアナリティクスを時間帯・曜日別で分析。カスタムレポート活用事例
今回は「カスタムレポート」の最後として、標準のレポートでは見ることのできないディメンションを利用したカスタムレポートの話をしていこう。具体的には次の2つだ。
- 月、週、日、時間別に複数の指標を一度に表示する(1月度/2月度/3月度 など)
- 同じ時間帯や曜日を束ねて傾向を知る(月曜/火曜/水曜 など)
なお今回紹介するカスタムレポートは、クリックすることで自分のGoogleアナリティクスのビューに取り込めるボタンを記事後半に用意している。また、カスタムレポートを扱う際の落とし穴、注意すべき点についても解説する。
- エクスプローラ形式のカスタムレポート(前々回)
- フラットテーブル形式のカスタムレポート(前回)
- 標準にはないディメンションを利用したカスタムレポート(今回)
- 月別、週別など時系列で複数の指標を一度に表示して推移を見る
- 同じ時間帯や曜日を束ねて傾向を知る
超便利レポート例1時系列(月別など)で指標を一覧するレポートを作成する
1つ目のカスタムレポートは、時系列で複数の指標を一度に表示するレポートだ。時系列に整理された状態で複数指標を一括ダウンロードできるので、各指標別の時系列グラフを一気に作成したい場合などに重宝するだろう。
標準のレポートでは時系列のディメンションを表示することはできないが、カスタムレポートなら専用のディメンションがある。それを利用すれば、「月」「週」「日」「時間」という4つの時間の粒度で、複数の指標を一度に表示するレポートを作成できる。なお、紹介しているレポートは記事後半のボタンからダウンロードできる。
「月(年間)」ディメンションで各種数値を一覧するカスタムレポート
図2は[ユーザー]>[概要]レポートで表示される7指標(図2赤枠部分)を月単位にまとめて時系列で並べた(図2青枠部分)カスタムレポートの表示例だ。月単位に集計するディメンションは「月(年間)」を利用する(図2緑枠部分)。
ただし、初期状態では表を月順に並べてくれない。一番左に表示している指標(図2だと「ユーザー」)の多い順に並んでいるからだ(標準のレポートと同様)。このレポートなら年月の順で見たいだろうから、ディメンション(図2だと「月(年間)」)の列(図2緑枠部分)をクリックして並べ替えよう。列見出しを2回クリックすれば、図2のように201701(2017年1月)から昇順に並べられる(図2青枠部分、図2黒枠部分)。
この状態でエクスポート(図3赤枠部分)すれば、エクセルなどで開いて時系列の折れ線グラフなどの作成もやりやすいだろう。
また毎回この並べ替えを行うのは面倒なので、並べ替えの作業後に「保存」(図3青枠部分)をクリックして、並び順を覚えたままで「保存済みレポート」に格納しておくのもよいだろう。なお「保存」機能と「保存済みレポート」については、過去の連載を参照してほしい。
週、日、時間別にドリルダウンもできる
図2はこのカスタムレポートの一面だけを紹介したものだ。このカスタムレポートはあとでダウンロードしていただくとして、このレポートの全体像を説明しよう。
このカスタムレポートは「月単位」などと名付けた4つのレポートタブで構成されている(図4赤枠部分)。これらはすべてエクスプローラ形式で作成しており、より粒度の細かいディメンションへとドリルダウン可能な形式に作成してある。たとえば「月単位」レポートタブだと、「月別→日別→時間別」と順にドリルダウンしていけるように設計してある。
各レポートタブでは、それぞれ複数の指標グループを選択できるようにしてある(図4青枠部分)。ここですべての設定状態を細かく説明することはしないが、興味のある方は、ダウンロードしたカスタムレポートを開き、「編集」(図3緑枠部分)をクリックして設定内容を確認していただきたい。
ここでは時系列単位で利用可能なディメンション名とその値の表示形式を紹介しておこう。これら以外にもISO規格の「年」や「週」といったディメンションも指定できるが、細かい話なので省略させていただく。ただし「秒」単位のディメンションはGoogleアナリティクスには用意されていない。
ディメンション名 | 表示形式 | 表示例 | 意味 |
---|---|---|---|
年 | YYYY | 2017 | 2017年 |
月(年間) | YYYYMM | 201710 | 2017年10月 |
週(年間) | YYYYWW | 201701 | 2017年1月1日~1月7日 |
日付 | YYYYMMDD | 20170101 | 2017年1月1日 |
時間帯 | YYYYMMDDHH | 2017010100 | 2017年1月1日0時台(24時間表記) |
分 | mm | 10 | 10分台 |
超便利レポート例2同じ時間帯や曜日を束ねるレポートを作成する
2つ目のカスタムレポートは、曜日別あるいは時間帯別、そして曜日別時間帯別に複数の指標をまとめたレポートの例だ。複数の日の時間帯別データをまとめたり、複数の週の同じ曜日のデータをまとめたりすることのできるレポートは、標準のレポートでは唯一[集客]>[AdWords]>[時間帯]レポートで提供されている(図6赤枠部分、図7)。
なおAdWordsレポートの詳細は連載の過去の記事で確認していただきたい。
ただ、[集客]>[AdWords]>[時間帯]レポートは、AdWords広告からの訪問だけのデータになるため、サイト訪問全体のデータで同様の見方をすることは標準のレポートではできない(下記図8は別にして)。そこでサイト訪問全体のデータでも曜日別や時間帯別でまとめて見ることのできるカスタムレポートが有効になるわけだ。
また、「ホーム」画面(図8赤枠部分)の「時間帯別ユーザー数」カード(図8青枠部分)でも時間帯別の訪問データを確認できるが、こうした簡易表示ではなくもっと一般的に使ってみたいだろう。そこでカスタムレポートの出番になるわけだ。
同じ時間帯や曜日を束ねるカスタムレポート
図9は一番細かい「曜日別・時間帯別」のカスタムレポート表示例だ。例1と同様に時間帯と曜日がきれいに並ぶようにするには、まず「時」(図9赤枠部分)で昇順に並べ替えをしておき、その後に「曜日」(図9青枠部分)で並べ替えをして、エクスポートするなどするとよいだろう。
このカスタムレポートもあとでダウンロードしていただくとして、レポートの全体像を説明する。レポートタブは5つあるが、左の3つ(図10赤枠部分)がエクスプローラ形式で右の2つ(図10青枠部分)がフラットテーブル形式で作成してあり、それぞれに複数の指標グループが設定されている(図10緑枠部分)。こちらも設定内容の詳細が気になる人は「編集」ボタンから確認してほしい。
このカスタムレポートも、例1と同様にエクセルで図8のようなマトリクス形式で集計し、数字を表示してまとめると見やすいだろう。
このレポートで利用したディメンションは次のとおりだ。
ディメンション名 | 意味 | 表示例 | 表示例の意味 |
---|---|---|---|
曜日の名前 | 曜日の英語名 | Monday | 月曜日 |
曜日 | 曜日を表す数字(0~6) | 0 | 日曜日 |
時 | 時間帯(00~23) | 23 | 23時台 |
2つのカスタムレポートのダウンロード手順
ここまでで紹介した2つのカスタムレポートを自分のGoogleアナリティクスのビューでも使いたい場合は、次のボタンをクリックして取り込んでほしい。
ボタンをクリックすると図11のような画面が表示される。
「ビューを選択」のプルダウン(図11赤枠部分)をクリックし取り込みたいビューを選択し(1つしか選択できない)、「作成」ボタン(図11青枠部分)をクリックして自分のビューのカスタムレポートに取り込もう。
カスタムレポートの名前を変えたければ、「ビューを選択」プルダウンの下のテキストボックス(図11緑枠部分)に表示されている名称を変更しよう。
なおソート作業などを施した状態の「保存したレポート」の設定を共有することはできないので、頻繁にこのカスタムレポートを利用する方は、上記のボタンからカスタムレポートを自身のGoogleアナリティクスのビューに取り込んだうえで、ソート作業などを各レポートタブや指標グループなどで作業した後に「保存」機能を利用するとよいだろう。
カスタムレポートの落とし穴
カスタムレポートを総括するにあたって、最後に注意点を指摘しておきたい。カスタムレポートはディメンションと指標の組み合わせ、ディメンション同志の組み合わせの自由度が高いため、思わず調子に乗ってありったけのディメンションや指標を指定してしまいがちだ。しかし組み合わせ方によっては、想像した結果とまったく違うレポートができてしまう場合がある。レポート自体も見づらくなるので、横に長い10列を超えるようなレポートはなるべく作らない方がよいだろう。
具体的にはどのような組み合わせがまずいのかといえば、「ヒットベースのディメンションにセッションベースの指標を組み合わせてしまう場合」だ。この組み合わせを行う場合は注意が必要だ。よくやってしまいそうな典型的な例を挙げておく。
もし皆さんがすでにカスタムレポートを作成しているのであれば、すでにこのようなカスタムレポートを作成していないか確認していただきたい。図12の例でどこに論理矛盾があるか指摘できるだろうか?
論理矛盾の1つ目は、「ユーザー数がセッション数より大きい数字になっている」と読み取れるページが複数ある(図12赤枠部分)ところだ。常識的に考えてユーザー数<セッション数<ページビュー数にならないとおかしいはずだ。
つまり指標の「セッション」を該当のページのセッション数だと思って設定したのであれば、それとは違うものだということになる。ページ別のセッション数を見る指標としてふさわしいのは「ページ別訪問数」だ(図12青枠部分)。では、指標「セッション」とはいったい何を集計しているのかというと、実は「閲覧開始数」とほぼ同じものを集計しているのだ。図12緑枠部分をご覧いただければわかるとおり、これらのページでは両者の数字が完全に一致しているのがかわる。
論理矛盾の2つ目は、あるページでコンバージョン率が100%を超えている(図12黒枠部分)ところだ。ページ別の成果指標はセッションの成果指標である「コンバージョン率」ではなく「ページの価値」と組み合わせなくてはならない。特定のページを通過したセッションのコンバージョン率を知りたいのであれば、「特定のページ」を通過したセッションを抽出するセグメントを適用しよう。
カスタムレポートを作成するときに心がけていること
では、やってはいけない組み合わせを見極める簡単な方法はあるのだろうか。実は筆者もすべての組み合わせを試したわけではないし、見極めは結構難しい。
たとえば「ページ」ディメンションに、セッションベースの指標である「直帰率」「閲覧開始数」など、ページがセッションとどういう位置関係にあるかをカウントする指標の一部は正しく「ページ」にひも付いていたりもするから、一概にヒットベースのディメンションにセッションベースの指標を組み合わてはダメともいえないのだ。
ただ筆者は次のように考えてカスタムレポートを作成するように心がけている。自身でカスタムレポートを作る際の参考にしてほしい。
標準のレポートにないディメンションと指標の組み合わせはなるべく使わないこと
ディメンション同志の組み合わせは、標準のレポートのセカンダリディメンションで選択可能な組み合わせであっても、人が見てスパッと解釈できないディメンションは選択しないこと
どうしてもその組み合わせを試したい場合は、実際に設定して出てきた数値を見て、指標間の数字に矛盾がないか(図12の例でも説明したとおり、想定できる大小関係など)、その指標の数字が想定より異常に高い、あるいはすべてゼロのような不自然な数字になっていないか(図12のコンバージョン率の例など)を確認したうえで、慎重に運用を開始すること
このようにじゃじゃ馬のように少し扱いにくいカスタムレポートだが、この自由度が高いレポートをぜひ乗りこなして、素晴らしい分析ライフを享受していただきたい。
📝筆者が継続的に主催している講座群(Google アナリティクス中心)に興味がある方はこちらをご確認ください。
http://xfusion.jp/train.html
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