キーワードが(not provided)にならない? GAでは普通見られない特別なAdWordsレポート活用法[第39回]
今回も引き続きAdWordsセクションにあるレポートを紹介する。AdWordsセクションには、他のレポート群にはない広告特有の分析軸を持ったレポートがある。AdWordsと連携していないと、通常はGoogleアナリティクスでは見ることができない分析軸だ。
1つ目は、検索広告特有のキーワードの分類で見る分析軸だ。ここではAdWordsの設定上の「キーワード」と実際にユーザーが検索の際に入力した「検索クエリ」の違いを整理したうえで、「検索クエリ」に関係するいくつかのユニークな見方を紹介する。
2つ目は、時間帯や曜日別に数字を確認する分析軸だ。広告効果は、時間帯や曜日によって異なることが普通に考えられる。広告配信の最適化には非常に重要な分析だ。
- ここでしか見られない「検索クエリ」の分析方法を知る
- 広告特有の時間帯や曜日での分析軸を知る
「キーワード」を中心に広告の成果効率を見る
まずは1つ目の「キーワードで見る分析軸」について説明する。第28回の検索エンジンからの集客における検索キーワードの解説記事でも触れたが、「キーワード」と「検索クエリ」は、AdWordsセクションのレポートでも同様の言葉遣いなので、簡単におさらいしておこう。
前回AdWordsのアカウントの階層構造について解説したが、「キーワード」はAdWordsで広告の設定を行うときのキーワードのことだ。それに対して「検索クエリ」はユーザーが検索エンジンで実際に入力した検索語のことを指す。キーワードを部分一致やフレーズ一致などで登録している場合は、両者は必ずも同一ではない。
[集客]>[AdWords]セクションでは、「キーワード」レポート(図1赤枠部分)と「検索語句(検索クエリのこと)」レポート(図1青枠部分)が別に分けられている。
なお、「キーワード」レポートは第38回の「大ざっぱなレベルからドリルダウンして見る」見方の方が一般的だと思うので、ここでは「検索クエリ」を中心に解説する。
今や貴重な「検索クエリ」(実キーワード)情報をGoogleアナリティクスで確認できる
検索連動型広告であるAdWordsからの集客は、その「検索クエリ」情報を取得できる。グーグル検索の結果画面からサイトに訪問する際の検索クエリが取得できず、レポート上で「(not provided)」表記になっている現状で、検索連動型広告からの訪問だけとはいえ、ユーザーの検索クエリがわかるのは貴重な情報だ。
検索クエリを確認できるのは[集客]>[AdWords]>[検索語句]レポートだ(図2)。
プライマリディメンションは「検索クエリ」が選択されているので(図2赤枠部分)、検索エンジンで実際にユーザーが検索した検索クエリ(図2青枠部分)がその下に並んで表示される。これは「その検索クエリで表示された広告をクリックして訪れた訪問」であることを表している。
- どの検索クエリでのセッション(訪問数)が多いのか
- 質が高いユーザーを連れてきているのはどの検索クエリか
- どの検索クエリが成果に直結しているのか
上記のような視点で、ここでも検索クエリ別に「量」「質」「成果」の状況を一気通貫で確認しよう。
広告のマッチタイプ別、検索ワード数ごとに成果を比較できる
2つ目のプライマリディメンションである「クエリのマッチタイプ」を選択(図3赤枠部分)したレポートが図3だ。「クエリのマッチタイプ」の値には、「Exact match」「Phrase match」「Broad match」(図3青枠部分)などと表示されているのがわかる。
ここで詳しい説明は省くが、AdWordsのキーワードのマッチタイプとは、どのような検索語句で広告が掲載されるかを決めるための設定だ。それぞれ次のように対応している。広告効率が悪い、見直すべきマッチタイプはないだろうか?
- Exact match: 完全一致
- Phrase match: フレーズ一致
- Broad match: 部分一致
さらに、3つ目のプライマリディメンションである「クエリのワード数」を選択(図4赤枠部分)したレポートが図4だ。「クエリのワード数」の値は、「1」「2」「3」(図4青枠部分)などの数字が表示されている。これは「ユーザーがいくつの単語の組み合わせを検索クエリとして入力したのか」という単語数を表している。
たとえば「アクセス 解析」という検索クエリは、「アクセス」と「解析」の間にスペース文字が入っているので、2つの単語の組み合わせということで、「2」となる。
そして「1」「2」「3」(図4青枠部分)などの数字をクリックすると、実際のその単語数での検索クエリを表示してくれるので、ユーザーがどのような複合語で検索を試みているのかを見ることができる。
それぞれ、上位の検索クエリをさっと眺めてみよう。ユーザーの検索意図は読み取れるだろうか? また、ユーザーが意外な言葉の使い方をしてはないだろうか? もしAdWordsの広告配信を設定するときに想定していた検索意図とギャップがあり、その検索のセッションやコンバージョンがそれなりにあるようであれば、広告の配信設定の見直しに活用できる。
「時間帯」レポートで時間別の広告成果を見る
続いて、時間帯や曜日別に見る分析軸について紹介する。GoogleアナリティクスでAdWords広告について時間別に見ることができるのが[集客]>[AdWords]>[時間帯]レポートだ(図5赤枠部分)。
見た目は上部に折れ線グラフ(図6)、下部にデータ一覧表示部がある標準的なレポートだ。ただし上部の折れ線グラフは、集計対象期間(図6赤枠部分)全体を対象にして時間帯別に束ね直した24時間のグラフ(図6青枠部分)で表示されている。
比較するために、Googleアナリティクスの他のレポートを見てみよう。標準のレポートも、図7のような[ユーザー]>[概要]レポートなど一部のレポートでは時間別の粒度で表示できる。
図6と図7の違いがおわかりだろうか? 標準のレポートでは、グラフの表示単位で「時間別」を選択しても(図7赤枠部分)時間帯別に束ね直してくれるわけではなく、24時間×集計対象期間の日数分が横に並んで表示される。図7では集計対象期間が2日なので、48時間分のグラフが表示される(図7青枠部分)。つまり、標準のレポートで時間帯別に束ねるレポートは存在しないのだ。
AdWordsの「時間別」レポートに話を戻そう。「時間帯」レポートの「指標グループ」は、標準では「サマリー」が選択されているが、「利用状況」や「目標セット(目標が設定されている場合)」や「eコマース」も選択できる(図6緑枠部分)。標準の「サマリー」指標グループが選択されている状態の下部のデータ一覧表示部は図8のようなものだ。
表示されるディメンション名は「時」(図8赤枠部分)だ。これが時間帯を束ねて見るためのディメンションだ。その下に並ぶ「00」「01」「02」といった値(図8青枠部分)は、それぞれ「0時台」「1時台」「2時台」を意味するので、表示される値は最大で「00」から「23」までの24個だ。
「サマリー」指標グループでは、集客・行動・コンバージョンの3グループで9指標を確認できる(図8緑枠部分)。本連載でもくり返し話しているが、このレポートで時間帯ごとの「量」「質」「成果」を一気通貫で確認しよう。「量」「質」「成果」について詳しくは第35回で解説しているので確認してほしい。課題を発見したら、次のような施策につなげることができる。
- セッション(訪問)数の少ない曜日や時間帯の広告をやめる
- セッション(訪問)数は多いがユーザーの質が低い曜日や時間帯の広告をやめる
- ユーザーの質が高い、あるいは成果が高い曜日や時間帯の広告を増やす
時間別の集客量と成果効率を重ね合わせて見る
ただ、広告はやはり成果を中心に見たいだろう。そこで「量」と「成果」を対比して見やすい方法を紹介する。図7の折れ線グラフでは「時間帯別のAdWords広告からの集客量(訪問回数=セッション)」がわかるわけだが、時間帯によってその成果効率がどうなっているのかを重ね合わせて見てみよう。
折れ線グラフの左上部にある「指標を選択」(図9赤枠部分)をクリックすると、指標を選択できるプルダウン表示がされる。eコマース(購入商品や売上金額)の計測を行っているなら、「eコマースのコンバージョン率」(図9青枠部分)を選択しよう。
すると図10のように2つの指標を時間帯別に表示することができる。セッションのグラフに追加で「eコマースのコンバージョン率」(図10赤枠部分)の折れ線グラフが表示されるわけだ(図10青矢印部分)。この見方をすることで、たとえば「広告経由のセッション(訪問数)が多くても成果の効率(コンバージョン率)が低い時間帯は広告を止めてみようか」といった判断に利用できるわけだ。
eコマースの計測を行っていない場合は「コンバージョン率」か「目標n(nは数字の1から最大20まで存在する)のコンバージョン率」などを選択するとよいだろう。「コンバージョン率」は、複数の目標があった場合はすべてを足し合わせたコンバージョン率を意味する。「目標nのコンバージョン率」は、それぞれのコンバージョン率を表示したい場合に選択しよう。
「曜日」ディメンションで曜日別に広告の成果を見る
「時間帯」レポートの一覧表上部にあるプライマリディメンションで「曜日」を選択すると(図11赤枠部分)、集計対象期間全体を曜日別に束ねて集計してくれる。たとえば4週間=28日間を集計対象期間とした場合であれば、各曜日とも4日分を合算して月曜日はこう、火曜日はこうなどと集計してくれる。これにより、曜日ごとの広告のパフォーマンスを確認できる。
「曜日」ディメンションの値には0から6までの番号が表示されている(図11青枠部分)。これは、次のような対応になっている。
- 0: 日曜日
- 1: 月曜日
- 2: 火曜日
- 3: 水曜日
- 4: 木曜日
- 5: 金曜日
- 6: 土曜日
「そんな対応は覚えてられない!」という読者の方に、簡単な解決法を紹介しよう。図11の状態で、さらにセカンダリディメンションに「曜日の名前」を指定すれば(図12赤枠部分)、英語表記だが曜日名が表示されるようになる(図12青枠部分)。これなら間違うことはないだろう。
なお、図8と図11を見てもわかるとおり、「時」ディメンションの値(図8青枠部分)も「曜日」ディメンションの値(図11青枠部分)も青い文字でリンクになっている。
「時」ディメンションの値をクリックすれば、その時間帯に絞り込まれた曜日別データが、「曜日」ディメンションの値をクリックすれば、その曜日に絞り込まれた時間帯別データが表示される構造だ。曜日別、時間帯別という視点で広告配信に活用しよう。
📝筆者が継続的に主催している講座群(Google アナリティクス中心)に興味がある方はこちらをご確認ください。
http://xfusion.jp/train.html
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