GA4「探索レポート」で分析するポイント! 3つの基本の使い方を徹底解説
【この連載について】
この連載では、「1週間でGoogleアナリティクス4の基礎が学べる本」を執筆されているウェブ解析士のみなさん(GA4アベンジャーズ)を中心に、初心者が引っかかりがちな疑問・トラブル解決の基礎知識から、知っておきたい役立ちノウハウ、解析の設定事例、個々の機能解説、最新のホットな話題までをお届けします。
今回は、メンバーズのデータアドベンチャーカンパニーに所属するデータアナリスト河村悠佳さんによる解説です。
【今回のポイント】
- 課題/疑問点→仮説→検証→改善までの一連の流れをとることが探索活用のコツ!
- 分析の目的に合った探索の手法を使う
- クロス集計を使いこなそう
- しきい値に注意する
- セグメントを理解する
GA4から「探索」が使えるようになりました。しかし、イマイチ使いこなせなかったり、どんなときに使えば良いのかよくわからなかったりすることもあるのではないでしょうか。GA4はUAとは異なる点も多く、レポートと探索が分かれていたり、UI画面も変わっていたりと、複雑で手が出せないという方もいらっしゃると思います。
GA4で何が知りたいのか・何を分析したいのか、その「目的」を明確にして探索を活用しましょう。その「目的」が明確であれば、どのテンプレート・ディメンション・指標・セグメントを使うべきか決定できます。
GA4の「探索」では7つの手法でレポート作成が可能
レポート作成の自由度が高い「探索」はGA4から新たに使えるようになった機能です。以下の7つの手法からレポートを作成できるようになりました。
- 自由形式(表やグラフが選択できる)
- 目標到達プロセスデータ探索
- 経路データ探索
- セグメントの重複
- ユーザーエクスプローラ
- コホートデータ探索
- ユーザーのライフタイム
いきなり手当たり次第に探索を使おうとするのではなく、以下のようなステップを踏んで探索を活用し分析を進めるようにしましょう。
- レポートの定点観測や日々の業務のなかで、Webサイト・アプリに対して課題や疑問点が生じる。
- その課題や疑問点が起きている原因について「仮説」を立てる。
- その「仮説」を検証する → 探索の機能を活用する。
- 「仮説」が検証結果から当たっているようであれば報告や改善を行い、違った場合は他の「仮説」を考えて検証していく。
探索の代表的な3手法を解説
ここからは「探索」の7手法のうち、よく使う手法である「自由形式」「経路データ探索」「セグメントの重複」の3つについて、どのように活用するかを解説します。
今回は仮定の課題を設定して、仮説を立て検証を行っていくという方法をとり、探索の使い方・データの見方を解説していきたいと思います。
- (1)自由形式
- (2)経路データ探索
- (3)セグメントの重複
(1)自由形式
まずは「自由形式」の使い方について解説します。
自由形式は、UAのレポーティング形式としてもよく見られる「クロス集計形式」のレポートが作成できます。
ここでは以下の課題を仮定し、仮説を立て、検証方法を決めていきます。
↓
仮説:mobileだと見づらいページがあるのではないか
検証:mobileでの訪問と直帰の状況を確認する(他デバイスとの比較もする)
それではレポートを作成して検証を行っていきましょう。まずは、ホーム画面から「探索」を選択します。
探索のページに移動します。「新しいデータ探索を開始する」から「自由形式」を選択します。
「自由形式」のページに移動します。最初は以下の画像のように、デフォルトで行・列・値が設定されていますが、これらを使いたいディメンションや指標に設定し直してクロス集計表を作成していきます。
変数メニューの「ディメンション」の隣にある+ボタンを押して、使用したいディメンションを選択します。
今回使いたいディメンションは、「デバイスカテゴリ」「ページタイトル」です。「デバイスカテゴリ」はすでにディメンションの欄にあるので「ページタイトル」を追加する必要があります。「ディメンションを検索」の欄で検索するか、下部の「ページ/スクリーン」のアコーディオン表示のメニューから「ページタイトル」にチェックをつけて、右上の「インポート」を選択します。
これで、変数メニューの「ディメンション」の欄に「ページタイトル」が追加されました。
同じやり方で「指標」も追加できます。今回は、「mobileだと見づらいページがあるのではないか」という仮説を検証するために「mobileでの訪問と直帰の状況を確認する」という検証を行いたいので、使用する指標は「セッション」と「直帰率」になります。ディメンションのインポート方法と同様の手順で「セッション」と「直帰率」をインポートしましょう。インポートしたディメンションと指標を、行・列・値に設定すると、以下のようなクロス集計表が完成します。
完成した表をもとに、先ほど設定した仮説「mobileだと見づらいページがあるのではないか」を検証していきます。
この結果からは、「Bページはmobileからのセッションが多いが、desktopと比較するとmobileのほうが直帰率が高い傾向にある」と読み取れます。仮説のように、Bページがmobileからだと見づらい可能性が高いことが探索での検証結果からわかったため、Bページのmobileページを改善しようという次のアクションを考えられるでしょう。
いままでのUAだと、クロス集計表の形が決まっていましたが、GA4からは自分でクロス集計の行・列・値を決めて表を作っていく必要があります。クロス集計表を作成する際のポイントは、「かけ合わせて確認したいディメンション(行・列)とそれらのディメンションごとに見たい指標(値)を決める」を意識して作成することです。
また、UAではセカンダリディメンションを設定できましたが、GA4では「行」にディメンションを2つまで、「列」にディメンションを5つまで設定できるため、行と列にディメンションを複数設定して確認できます。こちらも上手に活用しましょう。
確認したいディメンションや指標を選ぶためには、GA4で何が知りたいのか・何を分析したいのかを明確にして探索を活用しましょう。探索を使う「目的」が明確であれば、どのディメンション・指標を使うべきか自然と決められます。まずは、探索を使う「目的」を明確にするところから取り組み、探索を使っていきましょう!
(2)経路データ探索
次に「経路データ探索」の使い方について解説します。「経路データ探索」では、特定のページを見た人・特定のイベントが発生した人が、そのページやイベントの前後でどのような動きをしているかを見られます。
ここでは以下の課題を仮定し、仮説を立て、検証方法を決めていきます。
↓
仮説:支払いページで懸念点が発生し先に進まずに別のページに移動しているのではないか
検証:支払いページからどのような回遊をしているか確認すること
それではレポートを作成して検証を行っていきます。探索のページの「新しいデータ探索を開始する」から「経路データ探索」を選択します。
「経路データ探索」をクリックすると以下のような表示に変わるので、右上の「最初からやり直す」を押して画面をリセットします。
リセットすると「始点」または「終点」を選択して経路を確認していけます。今回検証したい仮説は「支払いページで懸念点が発生し先に進まずに別のページに移動しているのではないか」ということなので、「始点」を支払いページに設定して確認していきます。
始点の「ノードをドロップするか選択してください」をクリックし、ページタイトルとスクリーン名を設定します。
「始点を選択」というメニューが出てくるので、「支払いページ」を選択します。候補にない場合は、「もっと読み込む」を押すか、右上の虫眼鏡のマークから検索して該当のページを選択しましょう。
始点が「支払いページ」となった経路データ探索のページに変わります。
今回はユーザーの動きを確認したいので、値を「イベント数」ではなく「総ユーザー数」に変更して確認します。また、最初はステップ1までしか表示されていませんが、ステップ2以降を確認したい場合は、続きが見たいページタイトル・スクリーン名をクリックすると次のステップが表示されます。
完成したレポートをもとに、先ほど設定した仮説「支払いページで懸念点が発生し先に進まずに別のページに移動しているのではないか」を検証しましょう。
購入完了に移っているユーザーも確認できますが、支払いページからAページに移っている回遊も確認できます。仮説のように、支払いページから先に進まずにAページに遷移していることが探索での検証結果からわかったので、「お支払いに進むまでのページに改善点や不足情報がないかを確認し、必要に応じてお支払いにしっかりと進んでもらえるようなページ構成や内容に改善する」という次のアクションを考えられます。
経路データ探索では適応できる指標やディメンションが限られており、アクティブユーザー数や総ユーザー数の指標を使用する場合、しきい値が適用されることがあるので注意しましょう。
先ほどのレポートの右上に三角の赤いマークが出ていますが、ここからサンプリングやしきい値が適用されているかを確認できます。
このしきい値は特に、ユーザー関連の指標で適用されることが多いため、ユーザー関連の指標を使う際はしきい値の適用に注意してレポート・探索の結果を確認しましょう。
(3)セグメントの重複
最後に「セグメントの重複」について解説します。セグメントは3つまで作成・選択でき、選択したセグメントの重なり具合を確認できます。
ここでは以下の課題を仮定し、仮説を立て、検証方法を決めていきます。
↓
仮説:そもそもAページとBページはモバイルトラフィックのユーザーと相性が悪いのではないか
検証:Aページ訪問ユーザー・Bページ訪問ユーザー・モバイルトラフィックユーザーの重複を確認する
それではレポートを作成して検証を行っていきたいと思います。探索のページの「新しいデータ探索を開始する」の横にある「テンプレートギャラリー」を選択します。
テンプレートギャラリーから「セグメントの重複」を選択します。
「セグメントの重複」のレポート画面が表示されます。
セグメントの作成方法
今回は、以下のようなセグメントを作成し、セグメントの重複を確認していきます。
- セグメント(1):Aページを訪問しているユーザーセグメント
- セグメント(2):Bページを訪問しているユーザーセグメント
- セグメント(3):デバイスカテゴリ=mobileのユーザーセグメント
モバイルトラフィックのセグメントはすでにデフォルトで作成されているので、「Aページを訪問しているユーザーセグメント」「Bページを訪問しているユーザーセグメント」を作る必要があります。今回は、例として「Aページを訪問しているユーザーセグメント」を作成していきます。
まずディメンションや指標の追加方法と同様に、「変数」メニューの「セグメント」の隣にある+ボタンを押して作成していきます。
セグメントの新規作成メニューが出てくるので、「ユーザーセグメント」を選択します。
セグメント作成画面に移動します。「新しい条件を追加」を選択して、条件を設定していきます。
今回は「Aページを訪問しているユーザーセグメント」を作成するので、「ページ/スクリーン」の項目から「ページタイトル」を選択します。
次に、「フィルタを追加」を選択します。
ページタイトル=Aページとして「Aページを訪問しているユーザーセグメント」を設定したいので、「完全一致」と「Aページ」を選択します。
最後に「無題のセグメント」の欄をクリックし、セグメントの名称(Aページ訪問)を入力して「保存」します。
作成したセグメントがセグメントの欄に追加されていることを確認しましょう。
同様の手順で「Bページを訪問しているユーザーセグメント」を作成し、「セグメントの比較」の欄に「Aページ訪問」「Bページ訪問」「モバイルトラフィック」の3つのセグメントを設定して完成です。
完成したレポートをもとに、先ほど設定した仮説「そもそもAページとBページはモバイルトラフィックのユーザーと相性が悪いのではないか」を検証していきます。
この場合、Aページはほとんどがモバイルトラフィックだとわかりますが、一方でBページが半分ほどしかモバイルトラフィックと重なっていないこともわかります。この結果から、「AページがCVにつながっていないのは、モバイルから見づらいページになっている・ボトルネックがある」という次の仮説が立てられます。また、Bページについては、「想定しているモバイルユーザーが訪問できるような流入や回遊の流れになっていない」という次の仮説が立てられます。
このように、次に検証するべき仮説を立てれば、進むべき分析のステップが見えてきます。
セグメントは、条件を決めてデータをしぼりたいときに活用する機能です。GA4では、レポートではセグメントが適用できず、探索にはセグメントを適用できる点が特徴です。また、UAと比べて「イベントセグメント」が追加されています。「ユーザーセグメント」「セッションセグメント」「イベントセグメント」の差異を明確に把握してください。
1人のユーザーが以下の行動をとった場合を例に、各セグメントの違いを確認しましょう。
- セッション1:ページA閲覧 → ページB閲覧 → ページC閲覧
- セッション2:ページA閲覧 → ページC閲覧 → 商品購入
- セッション3:ページA閲覧 → ページC閲覧 → ページD閲覧
条件を「商品購入」とした場合、ページ表示回数の計算方法は3種類のセグメントごとに、以下のように変わります。
- (1)ユーザーセグメント:ページ表示回数=8
「商品購入」が発生したユーザーが対象になるため、対象ユーザーが閲覧したすべてのページが対象になり、すべてのページ表示回数がカウントされます。 - (2)セッションセグメント:ページ表示回数=2
「商品購入」が発生したセッションが対象になるため、対象セッションで閲覧されたページの表示回数のみがカウントされます。 - (3)イベントセグメント:ページ表示回数=0
「商品購入」というイベントのみに絞られページ表示回数は条件に入らないため、カウントされません。
セグメントを使用するときは、計算方法の違いに注意して作成するようにしましょう。セグメントの機能によって、条件をつけてデータを切ってみることで比較したり分類したりできるため、データから読み取れることが増えるため、ぜひご活用ください。
最後に
GA4からアクセス解析のレポーティングの形式が変わり、探索の機能が追加され、ディメンションや指標も変更・追加されました。そのため、UAのときと同じレポートを出せないことが多くて困ることもあると思います。そんなときこそ、改めてGA4で「何が知りたいのか」を明確にし、その目的を達成するレポートを探索で作れるようになることがGA4を使いこなすために大事なことです。
そして、課題→仮説→検証→改善までの一連の流れをとることで、データに基づいた改善を行っていきましょう。
データに基づいた改善行動は、データで効果検証ができるため、「自分たちのwebサイトやアプリがより良い方向に進んでいること」を客観的に計れる指針になっていきます。今回ご紹介した探索の機能やデータの見方を参考に、GA4のデータを「指針」の1つとして上手に活用していただければ幸いです。
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