デモアカウントで具体的に学ぶ! GA4におけるWebサイトとアプリの分析の違い
【この連載について】
この連載では、「1週間でGoogleアナリティクス4の基礎が学べる本」を執筆されているWeb解析士のみなさん(GA4アベンジャーズ)を中心に、初心者が引っかかりがちな疑問・トラブル解決の基礎知識から、知っておきたい役立ちノウハウ、解析の設定事例、個々の機能解説、最新のホットな話題までをお届けします。
今回は、メンバーズのデータアナリスト河村悠佳さんによる解説です。
【今回のポイント】
- Webサイトとアプリのユーザー行動の違いを知ろう
- アプリ分析で大事なポイントを知ろう
- 実際にデモアカウントで練習してみよう

Googleアナリティクス4(GA4)は、Webサイトとアプリのデータを横断的に分析できるプラットフォームとして登場しました。これまで別々に管理されていたWebとアプリのデータを「イベントベース」で統一的に扱えるのが大きな特徴ですが、実際の分析では「Web」と「アプリ」では見るべきポイントや注意点が異なります。
Webとアプリそれぞれのユーザー体験や行動特性を理解し、それに即した設計と分析視点を持つことが、GA4活用の鍵となります。
この記事では、Googleが提供するデモアカウントを活用し、GA4におけるWebサイトとアプリの分析の違いと、それぞれの分析で押さえるべきポイントについて解説します。
Webサイト vs アプリ:ユーザー行動の違い
Webサイト:セッションベースでファネルを重視
Webサイトの分析では、訪問ごとの行動を追跡する「セッション」を重視することが一般的です。たとえば、ECサイトであれば「商品ページ閲覧 → カート追加 → 購入」のように、コンバージョンまでのファネルを分析し、離脱ポイントを特定して改善を図ります。

アプリ:継続利用を前提としたエンゲージメント重視
一方で、アプリは「1回の利用で完結する」のではなく、「継続的に使ってもらうこと」が重要です。そのため、アプリ分析では「どれだけのユーザーが継続して利用しているか?」を中心に考えるべきです。

GA4を活用したアプリ分析のポイント
Webサイトとアプリのユーザー行動の違いから、アプリは「継続利用」が大事だということがわかりました。そのため、アプリを「ユーザーが長く使い続けてくれるサービス」にしていくことが大事で、そのためには、以下の指標や分析手法が重要になります。
1. アクティブユーザーのモニタリング
GA4では、「アクティブユーザー」が標準的な指標として用意されています。これは、過去1日(DAU)、7日(WAU)、28日(MAU)でアクティブだったユーザー数を計測するものです。
- DAU(Daily Active Users):日次のアクティブユーザー数
- WAU(Weekly Active Users):週次のアクティブユーザー数
- MAU(Monthly Active Users):月次のアクティブユーザー数
この3つを組み合わせることで、アプリの「定着度」を測ることができます。
2. リテンション(継続率)分析
アプリの成長には、インストール後の継続率が重要です。GA4の「ライフサイクル」レポートには、ユーザーのリテンション(継続率)を確認できる機能があります。
- 日次・週次・月次リテンションを確認し、「初回利用後どのくらいの期間ユーザーが残るのか?」を分析
- ユーザーの離脱タイミングを特定し、「なぜ離れてしまうのか?」の仮説を立てる
3. エンゲージメントの深掘り
アプリでは単なる訪問回数よりも、「どれだけアプリを使い込んでいるか」が重要です。GA4では、以下のような指標を活用できます。
- エンゲージメント時間:ユーザーがアプリ内でどれだけの時間を費やしたか
- スクリーンビュー:どの画面がよく閲覧されているか(Webのページビューに相当)
- イベントトラッキング:アプリ内での特定のアクション(ボタンタップ、動画視聴、フォーム送信など)
これらのデータを基に、アプリのどの機能がよく使われているのか、どこに改善の余地があるのかを分析できます。
4. プッシュ通知やアプリ内施策との連携
アプリの継続利用を促すには、プッシュ通知やアプリ内メッセージの活用が有効です。GA4では、他ツールと連携することで、以下のような施策の効果測定が可能になります。
- プッシュ通知経由のエンゲージメント分析
- 特定のキャンペーンがアプリの利用継続にどう影響を与えたかの評価
プッシュ通知が適切なタイミングで送られているか、ユーザーが嫌がるような頻度になっていないかなどをチェックしながら、最適な施策を設計しましょう。
GA4を活用したアプリ分析の練習方法
それでは、実際にデモアカウントを使用してアプリ分析を練習してみましょう。今回はGoogleが提供している「Flood-It!」というアプリのデータを計測しているGA4のデモアカウントを使用します。
参照元:Flood-It!

1. Flood-It!について
Flood-It!は、パズルゲームのアプリですが、プレイする際のユーザー行動がGA4で計測されています。実際にアプリでゲームをプレイすると、理解が深まるのでおすすめです。デモアカウントで分析の練習をする参考にしてください。

デモアカウントへのアクセス方法
まず、デモアカウントにアクセスする手順を確認しましょう。
1. Googleアカウントにログインします。
2. Googleアナリティクスデモアカウントのページにアクセスします。
3. ページ内のリンクから、「Googleアナリティクス4プロパティ:Flood-It!(アプリとWebのデータ)」のリンクをクリックします

4. 選択後、GA4の管理画面でデモアカウントのデータを閲覧できるようになります。
2. GA4におけるWebサイトとアプリの「ディメンション・イベント・指標」の違い
GA4の計測において、Webサイトとアプリではディメンション・イベント・指標に違いがあるので注意が必要です。
下記に特に注意が必要なWebサイトとアプリのディメンション・イベント・指標の違いについてまとめたので、アプリ分析の際に参考にしてください。
ディメンションの違い
Web | 画面についてのディメンションは「ページ」が付きます | 例)ページロケーション・ページタイトル・ページパス |
---|---|---|
アプリ | 画面についてのディメンションは「スクリーン」が付きます | 例)スクリーンクラス・スクリーン名 |
イベントと指標の違い
項目 | Webのイベント名 | WebのGA4上の指標 | アプリでのイベント名 | アプリでのGA4上の指標 |
---|---|---|---|---|
表示のイベント | page_view | 表示回数 | screen_view | 表示回数 |
初回のイベント | first_visit | 初回訪問 | first_open | 初回起動 |
購入のイベント | purchase | 購入 | in_app_purchase | 購入 |
3. アプリ分析を練習してみよう
それでは、デモアカウントを使用してアプリ分析を練習してみましょう。今回はアプリ分析でよく利用する「コホート分析」について解説します。
(1)まずは、「Flood-It !」の計測内容について理解を深める
2025年3月1日~3月31日のプラットフォーム別のアクティブユーザーを確認しました。Androidでこのアプリを利用するユーザーが多いようです。

また、発生しているイベントも確認しておくことで、このアプリで計測されているイベントを把握できます。Flood-It !の場合は「レベル」などのゲームに関するイベントが多く計測されていることがわかります。

なお、実務でアプリ分析をするときは「アプリ計測設計書(アプリをどのようにGA4で計測しているか・計測されているイベントが何かがわかる資料)」が必要です。アプリはWebサイトと違って、デベロッパーツールなどを使ってアプリのスクリーン名やGA4計測イベントを自分で確認する方法がありません。アプリ開発時や計測設計時に作成した資料をもとに分析するようにしましょう。
(2)コホート分析について
実際の操作の前に「コホート分析」について解説します。コホート分析とは、「同じタイミングで同じ行動をしたユーザーのグループ(コホート)」を追いかけ、一定期間にわたって行動変化や定着率を可視化する分析手法です。
GA4では探索レポートに「コホートデータ探索」というテンプレートがあるので、こちらを使用すれば簡単にコホート分析ができます。GA4におけるコホート分析の例として、初回起動日が同じユーザーのグループ(コホート)や、初回ログイン日が同じユーザーのグループ(コホート)を追いかけて定着率を確認できます。これにより、継続利用率やLTV(顧客生涯価値)の成長カーブを分析できます。
参照元:[GA4] コホートデータ探索
(3)探索を使ったコホート分析のやり方
今回は、アプリを初めて使ったユーザーのうち、何%が数日後にも再訪しているか(例:Day1・Day3・Day7の継続率)を分析します。手順は以下のとおりです。
1. 探索から「コホートデータ探索」のテンプレートを選択します

2. 「コホートへの登録条件」を選択します
「同じタイミングで同じ行動をしたユーザーのグループ(コホート)」に入れる条件を選択します。デフォルトでは「初回接触(ユーザー獲得日)」になっていますので、今回はそのままで大丈夫です。

登録条件は「事前定義」と「その他」から選択でき、「その他」の場合はイベント名で登録条件を指定することが可能です。


3. 「リピートの条件」を指定します。
「アプリに戻ってきた=リピートした」と判定する条件を指定します。デフォルトでは「すべてのイベント」になっています。このままでも良いですし、リピートしたと判定したい任意のイベント(例:screen_view、session_startなど)に変更しても良いです。

リピートの条件も「事前定義」と「その他」から選択でき、「その他」の場合はイベント名で登録条件を指定することが可能です。


4. 「コホートの粒度」を指定します
今回は「アプリを初めて使ったユーザーのうち、何%が数日後にも再訪しているか」を見たいので、コホートの粒度は「毎日」に変更します。

5. レポートの見方
行=コホート(例:3月1日初回利用)、列=経過日数(Day0・Day1・Day2…)と確認します。

「アプリを初めて使ったユーザーのうち、何%が数日後にも再訪しているか」について、2025年3月1日~3月31日のDay1・Day3・Day7継続率結果は「Day1:10.6%・Day3:4.6%・Day7:2.3%」となっています。翌日のリピート率が10%なのに対し、3日目や7日目にリピートする割合はどんどん下がっていました。
こうした分析の結果を受けて、以下の対処が考えられます。
【新規ユーザーのDay1継続率が低い場合】
オンボーディングやチュートリアルの導線に問題がある可能性があるので改善する
【特定週に登録したユーザーの継続率が高い場合】
その週に実施した広告施策やアプリ更新が有効だった可能性があるので再度実施を検討する
【3日目から特に継続率が低くなる場合】
初回利用開始から3日後にプッシュ通知を行うなど、3日目以降も継続してもらえるような施策を検討する
6. 補足
内訳の機能でプラットフォーム(Android / iOS)などのディメンションで分割して確認することも可能です。

7. まとめ
コホート分析は「その場での行動」ではなく、中長期でのユーザー関係性や価値の変化を測る上で非常に重要な手法です。アプリの成長において「継続率の把握と改善」は欠かせない視点なので、GA4の探索機能を活用して、定期的にコホートを追いかけることをおすすめします。
最後に
GA4は、「Webサイトとアプリをいっしょに分析できる」ことが注目されがちですが、“違いを理解した上で、どう使い分けるか”が本当の活用ポイントだと思います。
特に実務の現場では、Webサイトとアプリでユーザーが達成しようとしている目的も、遷移の流れも、接触タイミングも大きく異なります。そのため、同じイベント名や指標であっても、背景にある文脈やユーザーの動機はまったく違うことがあります。分析者には、こうした背景をふまえた上で、イベント設計・KPI設定・データ解釈を行うスキルが求められます。
この記事では、Googleのデモアカウントを活用しつつ、Webとアプリの違いを比較する視点をご紹介しました。まずは、デモアカウントを活用して練習することから始めてみることで、「GA4をどう使い分けるべきか」を実感できるはずです。
今後、Webとアプリの統合プロパティを活用する企業が増えるなかで、プラットフォームごとの分析力を持つことは、マーケティングやプロダクト改善において重要な競争力になります。
本記事が、その第一歩となれば幸いです。
ウェブ解析士協会のGA4講座のお知らせ
一般社団法人ウェブ解析士協会ではウェブ解析の初心者でもわかりやすい「Googleアナリティクス4講座」を開講しています。約3時間の講座でハンズオンでGA4を学ぶことができます。Googleアナリティクス4の導入からレポーティングまでを網羅した講座となります。GA4をいちから学んでみたい、体系的に学んでみたいという方はぜひお申し込みください。
ソーシャルもやってます!