GA4の離脱率の出し方とは? 数字のズレや項目の違いも解説
【この連載について】
この連載では、「1週間でGoogleアナリティクス4の基礎が学べる本」を執筆されているWeb解析士のみなさん(GA4アベンジャーズ)を中心に、初心者が引っかかりがちな疑問・トラブル解決の基礎知識から、知っておきたい役立ちノウハウ、解析の設定事例、個々の機能解説、最新のホットな話題までをお届けします。
今回は、フリーコンサルタント「デジタルドクター」としても活動する島田敬子さんによる解説です。
【以下の14のポイントでつまづきやすい!】
- 標準レポートとデータ探索は同じ指標の数字が微妙にずれることがある。どっちのレポートが正しいの?
- ページビューがない!
- ユーザー数がわかりづらい!
- エンゲージメント率と直帰率はどちらを見るべき?
- 離脱率はどこに表示される?
- 閲覧開始数とランディングページの違いは?
- セッションあたりの平均エンゲージメント時間と平均セッション継続時間、平均エンゲージメント時間の違いは?
- 探索レポートで「(not set)」が出るのはなぜ?
- データ探索での数値が思ったより少なく表示されている気がする
- 標準レポートでセグメントを使ってデータを確認したいがどのようにすればいい?
- 探索データを使えばすべてのディメンションと指標を使える?
- コンバージョンしたユーザーの経路を確認するには?
- ページ関連のディメンションが複雑でわかりづらい。それぞれの違いは何?
- カスタムイベントを設定したが、データに反映されない
Googleアナリティクス(UA:ユニバーサルアナリティクス)からGoogleアナリティクス4(GA4)に乗り換えず、いまだUAを使っているという人を見かけます。GA4設定がうまくできたのか自信がないという声もよくお聞きします。
前回の「ついに移行したGA4、初心者がつまずきやすい設定を徹底解説!【前編・チェックすべき9つのポイント】」では初心者がよくつまずいてしまう設定を解説しました。後編となる今回はGA4のレポートを見る際の注意点を解説します。
つまづきポイント1. 標準レポートとデータ探索で、同じ指標の数字が微妙にずれる
もとのデータは同じものを使っていますが、標準レポートと探索データはそれぞれ違う処理がされたデータを使います。そのため、数値に微妙な違いが生じるケースがあります。
このデータの違いを理解した上で、自社の評価をGA4で行う場合、どのレポートのどのデータを使用するのか決めておくことをおすすめします。同じ指標でも見るレポートが部署によって違っていると整合性がとれなくなる可能性があるためです。
標準レポートは、全体的な状況を確認するのに向いているので日々のWebサイトの確認などに使い、探索レポートは深掘りしたいときに使うのがおすすめです。
つまづきポイント2. ページビューがない!
ページビューは表示回数という表示になりました。 表示回数は表示されたWebページまたはアプリのスクリーン画面の総数です。同じページ(スクリーン)が繰り返し表示された場合も集計されます。
つまづきポイント3. ユーザー数がわかりづらい!
UAとはユーザー定義が変わっているので、GA4のユーザー定義を改めて確認しましょう。
アクティブ ユーザー数 | サイトまたはアプリを利用したユーザーの数。
※1:エンゲージメント セッションとは下記のいずれかを満たすセッションのこと GA4で「ユーザー」とはアクティブ ユーザー数のことを言います。 |
---|---|
総ユーザー数 | サイトまたはアプリでイベントが記録されたユーザーの合計数。 |
新規ユーザー数 | 初めてサイトを利用またはアプリを起動したユーザーの数。 |
リピーター数 | 過去に少なくとも1回以上セッションを開始したことがあるユーザーの数。 |
つまづきポイント4. エンゲージメント率と直帰率はどちらを見るべき?
GA4におけるエンゲージメントは、ユーザーとWebサイト(アプリ)との関係性を表します。このユーザー行動を計測し、「ユーザーにとって有用なページになっているか」を分析する1つの指標がエンゲージメント率です。すべてのセッションのうちエンゲージメントセッションの割合をエンゲージメント率と呼びます。
エンゲージメント セッションは下記のいずれかが発生したセッションと定義しています。
(1)10秒(変更可)を超えて継続したセッション
(2)コンバージョンイベントが発生したセッション
(3)2回以上のページビュー(スクリーン ビュー)が発生したセッション
直帰とは、上記を満たさなかったセッションです。すべてのセッションからエンゲージントセッションを引いた割合を直帰率と呼びます。つまりエンゲージメント率の逆数です。標準レポートにはエンゲージメントに関連する指標はデフォルトで表示されますが、直帰率はレポートをカスタマイズしないと表示できません。また、エンゲージメントに関連した指標は「エンゲージのあったセッション数」や「ユーザー エンゲージメント」などデフォルトで複数ありますので分析はしやすいかもしれません。個人的にはエンゲージメントに他の指標を組み合わせることでユーザー行動をより理解しやすくなると思いますが、どちらに重きをおいて分析するかは企業や担当者の考え方によって異なるでしょう。
つまづきポイント5. 離脱率はどこに表示される?
GA4には離脱率という指標はありません。そのため「離脱率」を確認するには、「離脱数」と「セッション」を使い、スプレッドシートなどで計算する必要があります。
離脱率 = 期間中の離脱数 ÷ 期間中のセッション
UAで使っていたディメンションや指標でGA4ではなくなったものが多くあります。自社で使っていたものに変更がないか確認してみましょう。
つまづきポイント6. 閲覧開始数とランディングページの違いは?
閲覧開始数は探索データで利用が可能です。似ているようで大きな違いがあるので注意しましょう。
内容 | 要素 | |
---|---|---|
ランディングページ | ユーザーがWebサイトにアクセスしたときに表示される最初のページ | ディメンション |
閲覧開始数 | 特定のページ(スクリーン)から見始めた人の数 | 指標 |
つまづきポイント7. セッションあたりの平均エンゲージメント時間と平均セッション継続時間、平均エンゲージメント時間の違いは?
これらの違いは以下のとおりです。
指標 | 内容 |
---|---|
セッションあたりの平均エンゲージメント時間 | セッション1回あたりのユーザーがWebページ(スクリーン)を見ていた平均時間のこと |
平均セッション継続時間 | ユーザーのセッション時間の平均のこと |
平均エンゲージメント時間 | ユーザーがサイトを実際に見ていた平均時間のこと(標準レポートのみに表示) |
つまづきポイント8. 探索レポートで「(not set)」が出るのはなぜ?
[(not set)] とは、ディメンションの情報が得られていないときに表示されます。表示される理由は、ディメンションによって異なります。
ランディング ページの場合
セッションで「page_view」イベント以外が発生した場合、(たとえばclick後離脱など)本来表示する必要がないものですが、ランディング ページ ディメンションに「(not set)」と表示されることがあります。
セッションの参照元 / メディア ディメンションの場合
「session_start」 が発生していないセッションの「参照元 / メディア」は「(not set)」と表示されます。
他にもいろいろなケースがあるので、詳細はアナリティクスのヘルプページをご覧ください。
参照:[GA4] レポートに表示される「(not set)」という値の意味 - アナリティクス ヘルプ
つまづきポイント9. データ探索での数値が思ったより少なく表示されている気がする
UAと比べて数値が少ないと感じることがあったら、データのしきい値が適用されていないか確認してみましょう。データのしきい値は、個別ユーザーの身元を推測できないようにするために設けられています。なおこれはGoogleによって定義されているので、調整はできません。
しきい値が適用されるケース
Googleシグナルが有効になっていて、レポート識別子がデバイスID以外を選択している場合で、指定した期間のユーザー数が少ない場合に適用されることがあります。
しきい値が適用されないようにする
下記のような方法があります。
- 指定期間を長くしてユーザーを増やす。
- レポート識別子をデバイスIDに変更する
- Googleシグナルを無効にする。(データ収集に影響しますので対応は慎重に)
※大量のアクセスがある場合はサンプリングが発生し数値が少なくなっているケースもあります。
つまづきポイント10. 標準レポートでセグメントを使ってデータを確認したいがどのようにすればいい?
セグメントは、特定の商品を購入したユーザーや特定のページを訪れたユーザーなどを条件で抽出したグループを活用できる機能です。GA4ではこの機能は探索レポートのみで利用可能です。標準レポートでは直接のセグメント機能は提供されませんが、「比較」を用いることで、セグメントのような分析を行えます。「比較の対象を追加」ボタンを押し、比較の作成画面でディメンションと値を選ぶことで、特定の範囲での比較が可能です。
さらに、比較のなかでオーディエンスを選択すれば、セグメントとより近い分析が実現できます。このレポートを探索データへ移行することも可能です。ただし、サポートされていない指標やディメンションが比較に含まれる場合、それらは新たに作成されるセグメントからは除外されます。移行する際には、レポートの「比較」作成画面で「探索」ボタンをクリックします。
つまづきポイント11. 探索データを使えばすべてのディメンションと指標を使える?
GA4の探索データは非常に強力なツールですが、すべてのディメンションと指標を組み合わせて使えるわけではありません。たとえばGoogle広告のキャンペーン費用とイベントなど組み合わせられないものがあります。
ディメンションと指標の互換性がない場合は、該当ディメンションや指標はグレー表示になったり、空のレポートが表示されるか、あるいは「データがありません」「このセグメント、値、フィルタ、期間の組み合わせのデータはありません。」というメッセージが表示されます。
データ探索のテンプレートによっても使えるディメンションや指標は異なります。例として、経路データ探索はユーザー指標とイベント数指標にのみ対応しているなどの制限があります。
つまづきポイント12. コンバージョンしたユーザーの経路を確認するには?
経路データ探索を使用すると、ユーザーのサイト内での動きをツリーグラフとして視覚的に確認できます。これにより、ユーザーがどのようなページを経由してコンバージョンに至ったのか、またどのページがコンバージョンに貢献しているのかを理解できます。以下は終点にコンバージョンイベントを設定し、経路をさかのぼって確認した例です。
つまづきポイント13. ページ関連のディメンションが複雑でわかりづらい。それぞれの違いは何?
たとえばURLが「https://www.waca.associates/jp/」の場合、以下のようになります。
ディメンション | 内容 |
---|---|
ホスト名 | ドメイン部分のみを表示 |
ページパス+クエリ文字列 | ドメインを含まないドメイン以降のURLを表示(パラメータを含む) |
ページパスとスクリーンクラス | ドメインを含まないドメイン以降のURLを表示 |
ページロケーション | URLすべてを表示(パラメータを含む) |
ランディングページ +クエリ文字列 | 一番最初に訪れたページのドメイン以降のURLを表示 |
ページの参照元URL | サイト内・外を含めて1つ前のページのURL |
つまづきポイント14. カスタムイベントを設定したが、データに反映されない
GA4でカスタムイベント作成をした場合、実際のデータに反映されるまでに最大24時間のタイムラグが生じることがあります。すぐにイベントを確認したい場合は、リアルタイムレポートやデバッグView機能で確認が可能です。
まとめ
GA4の設定までは終えている企業が増えましたが、「相変わらずよくわからないからあまり活用していない」という声が多いのが現状です。GA4になったからこそ可視化されたことは多くあります。このツールを味方にできればユーザー理解はさらにすすみ、よりよいコンテンツを提供していけるようになります。いろいろ試してみてこのツールに慣れて行きましょう。そうすれば活用の幅はドンドン広がってきます。苦手意識を克服して活用していきましょう。
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