ECサイト初心者必見! 知らなきゃ損するGA4のeコマースデータ活用法
【この連載について】
この連載では、「1週間でGoogleアナリティクス4の基礎が学べる本」を執筆されているウェブ解析士のみなさん(GA4アベンジャーズ)を中心に、初心者が引っかかりがちな疑問・トラブル解決の基礎知識から、知っておきたい役立ちノウハウ、解析の設定事例、個々の機能解説、最新のホットな話題までをお届けします。
今回は、フリーコンサルタント「デジタルドクター」としても活動する島田敬子さんによる解説です。
【今回のポイント】
- GA4でeコマース分析をしたい場合、「イベント機能」を設定。
- 「eコマース設定」を行うとeコマース専用レポートが確認できるようになる。
- このレポートを使うと、購入に至るまでのユーザーの行動、購入商品の傾向やユーザー属性など、多角的な分析が可能。
GA4はユーザー行動を細かく分析できるツールです。そのため、ECサイトの改善にも力を発揮します。たとえば、あなたのECサイトの「カゴ落ち率」を知っていますか? 商品に関連したサイト内でのユーザー行動を知ることで、見えなかった問題点を把握し改善が可能になります。今回は、初心者向けにGA4のeコマース機能と活用法をご紹介します。
GA4で何ができる? ECサイト分析の基礎知識
たとえば「商品をショッピング カートに追加した」という行為は、GA4では計測が可能です。この数値がわかると実際の購入数から「カートに入れたが購入しなかった人の割合」いわゆる「カゴ落ち率」が計算できます。
この数値を初めてみた時、結構ショックを受ける方も多いのですが、7割以上が「カゴ落ちしている」ケースもあります。
このような現状がわかると
「なぜ決済までいかなかったのか?」という疑問が自然とでてきて、
「この説明がわかりづらかったから離脱につながったのか?」という仮説が生まれ、
「修正したらCVがあがるのか試してみよう」と改善施策へとつながっていきます。
GA4のeコマース機能を使うと、ECサイトでのユーザー行動をさまざまな角度から分析できるようになります。
たとえば、以下のような分析が可能です。
どのページで離脱が多いのか?
商品詳細を見た人の購入数は?
いっしょに購入されることが多い商品は何か?
カートに追加された商品は?
「新規購入」と「リピート購入」の流入経路は?
地域別の購入状況は?
このような分析をしたい場合、GA4では「イベント機能」を使います。では、実際にGA4のeコマースで計測可能なイベントを見ていきましょう。
GA4のeコマースのイベント
指標となるイベント(一例)
下記はeコマース用にGoogle側があらかじめ用意している、GA4の推奨イベントの一例です。実際、計測するには設定が必要になります。設定方法はお使いのカートシステムにより異なりますが、基本はデータレイヤーとGoogleタグマネージャーで行うのがおすすめです。今回は設定方法の説明については割愛します。
イベント名 | 測定するとわかるユーザー行動 |
---|---|
add_payment_info | ユーザーが購入手続きで支払い情報を送信した |
add_shipping_info | ユーザーが購入手続きで配送情報を送信した |
add_to_cart | ユーザーがショッピング カートに商品を追加した |
add_to_wishlist | ユーザーがあとで買うリストに商品を追加した |
begin_checkout | ユーザーが購入手続きを開始した |
purchase | ユーザーが購入手続きを完了した |
remove_from_cart | ユーザーがショッピング カートから商品を削除した |
view_cart | ユーザーがショッピング カートを表示した |
view_item | ユーザーが商品を閲覧した |
view_item_list | ユーザーが商品やサービスのリストを表示した |
ディメンションとなるイベント一例
また下記のようなeコマース商品に関する情報も設定が可能なので、上記指標と組み合わせるといろいろなことがわかります。ディメンションとは「○○別に見る」という分析軸のことです。
ディメンション | 概要 |
---|---|
アイテムのブランド | 販売している商品のブランド。 |
アイテムのカテゴリ | 販売している商品を分類した最初の階層カテゴリ。たとえば、「アパレル/メンズ/サマー/シャツ/Tシャツ」の場合、「アパレル」がアイテムのカテゴリになります。 |
アイテムのカテゴリ2 | 販売している商品を分類した2つ目の階層カテゴリ。たとえば、「アパレル/メンズ/サマー/シャツ/Tシャツ」の場合、「メンズ」がアイテムのカテゴリ2になります。 |
アイテムのカテゴリ3 | 販売する商品を分類した3つ目の階層カテゴリ。たとえば、「アパレル/メンズ/サマー/シャツ/Tシャツ」の場合、「サマー」がアイテムのカテゴリ3になります。 |
アイテムID | 販売している商品に指定するID。たとえば、IDとして「SKU_12345」などと設定できます。 |
アイテム名 | 販売している商品名など |
売上アップにつなげるeコマースレポート活用術
GA4のeコマース関連イベントを設定すると、eコマースに関する標準レポートやデータ探索レポートを確認できるようになります。eコマース イベントが送信されるとアナリティクスで認識され、ディメンション、指標、レポートが自動的に更新されます。
標準レポートでは【収益化】の項目にeコマース関連のレポートがあります。表示されるレポートは設定しているイベントにより異なりますが、下記のようなレポートが用意されています。
- 収益化の概要
- eコマースの購入数
- アプリ内購入
- 購入経路
- 決済経路
- プロモーションレポート
このなかで売り上げアップや改善に使えるレポートを2つご紹介します。
1. eコマースの購入数
ECサイトで販売している商品の詳細について確認できます。商品ページの改善のヒントにつながる情報が確認できます。
(1)閲覧されたアイテム数の推移:アイテム名別
商品のなかで閲覧回数の多い上位5商品の時系列推移グラフです。日別、週別、月別で閲覧数が確認ができます。
(2)閲覧されたアイテム数とカートに追加されたアイテム数:アイテム名別
青アイコンをマウスオーバーすると商品名、カートに追加されたアイテム数、閲覧されたアイテム数が確認できます。
(3)アイテム別データ
アイテム別の閲覧数、カートに追加された数、購入数、収益などが確認できます。アイテムだけでなく、上記ディメンションとなるイベント一例で説明した「ディメンションイベント」の「アイテムブランド」や「アイテムのカテゴリ」など、計測しているものは確認可能です。
活用ポイント
商品ごとの売上や人気度を簡単に確認できます。売れ筋商品を把握し、目立つ場所に配置したり、関連商品をいっしょに紹介するような施策が可能となります。また、「閲覧数は多いのに、カートに追加されない商品」の把握もできるので、改善に役立ちます。
不人気商品の分析も重要です。なぜ売れないのかを分析し、商品の改善やプロモーションの見直しにつなげましょう。
2. 購入経路
ECサイトへのアクセスから商品閲覧、カートへ追加し、購入に至るまでの一連のカスタマージャーニーを知ることができるレポートです。このレポートでは、ユーザーの離脱ポイントがわかるので、ページやフローの改善に役立ちます。
(1)ファネルデータ
購入までの各ステップで、遷移したユーザー数と離脱したユーザー数をビジュアル的に確認できるので直感的にユーザー動向を確認できます。このファネルはGoogleがあらかじめ設定したイベントに基づき出力されます。各ステップにどのイベントが対応しているのかは「ファネルのステップを表示」で確認できます。ちなみにファネルのステップや条件を変更することはできません。
(2)デバイスカテゴリ別ファネル詳細データ
デバイス別のファネルデータの詳細を確認できます。デバイスカテゴリ以外に、ブラウザ―別や地域別などのデータも確認できます。
離脱したユーザーの放棄率について
このケースを例に放棄率の見方を説明します。放棄率の4万、72.9%はそれぞれ(2)のデータ部分の数値から計算されています。4万は55,416人(セッションの開始ページでカウントされたユーザー数)から15,026人(商品を表示ページに進んだユーザー数)を引いた40,390人をキリのいい数字で表示しています。また、「2.商品を表示(ユーザー数)」に進んだユーザーの割合は(15,026人÷55416人)×100=27.1%なので放棄率は72.9%となります。
活用ポイント
このレポートから下記のような改善・対応を行うことが可能です。
●購入手続きの開始から購入までのステップでユーザー離脱が多いケースでは下記のような問題が発生している可能性を把握できます。
- 送料が高すぎる可能性は?
- 特定のボタンまたはリンクが機能していない可能性は?
- 希望の支払い方法がなかった可能性は?
- 入力項目に問題があった可能性は?
●カートに追加したが購入しなかったユーザーのオーディエンスを作成できます。このオーディエンスに対してGoogle広告などでアプローチを行うことが可能となります。
●このレポートからカゴ落ち率を計算できます。
このケースだとカゴ落ち率は77.8%。計算方法は下記の通りです。
- カートに商品を入れた人数-購入者数=購入せずにサイトを離脱した人数
- 購入せずにサイトを離脱した人数÷カートに商品を入れた人数×100=カゴ落ち率
- 974人-216人=758、758人÷974人×100=77.8となります。
注意事項
このレポートはデフォルトでは「クローズド ファネル」が使用されています。クローズド ファネルでは、ファネル内の各ステップを完了したユーザーのみのデータが表示されます。
ユーザーがプロセスをたどったと判定されるのは、指定の順序どおりにステップを踏んだ場合のみです。抜かしたステップがあるとカウント対象から外れます。
オープン型のファネルとは ステップの途中から開始したユーザーもすべてカウントします。オープン型ファネルを見たい場合は、クローズ型のファネルボタンを押してください。
まとめ
今回は初心者向けにECサイトでのGA4のeコマース機能とその活用法についてご紹介しました。
ECサイトでもGA4を使えば、ユーザー行動を詳細に分析できます。そうすることで、通常の販売活動では見えなかったデータなどから気付きを得るでしょう。そして、eコマース機能を活用することで購入経路、人気商品やユーザー属性などの多角的な分析が可能となります。
ECサイトでもGA4のeコマース機能を活用することで、通常の販売活動では見えなかったユーザー行動を把握できるようになり、多角的な分析が可能となります。また、データに基づいた新たな気付きを得ることで、改善施策の立案と継続的な実行が可能になります。
最初は少し難しく感じるかもしれませんが、少しずつ慣れていけば、きっと大きな成果につながるはずです。
この記事が、あなたのeコマースビジネスを成長させる一助になればうれしいです。今回は島田がお届けしました。
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