同業他社・業界標準とのパフォーマンス比較を行えるGA4の新機能「ベンチマーク」を徹底解説!
【この連載について】
この連載では、「1週間でGoogleアナリティクス4の基礎が学べる本」を執筆されているウェブ解析士のみなさん(GA4アベンジャーズ)を中心に、初心者が引っかかりがちな疑問・トラブル解決の基礎知識から、知っておきたい役立ちノウハウ、解析の設定事例、個々の機能解説、最新のホットな話題までをお届けします。
今回は、ウェブ解析士マスター、UI/UXコンサルタント、アドプランナーと多彩な顔を持つ阿部大和さんによる解説です。
【今回のポイント】
- 新機能「ベンチマーク」で、自社と同業他社のパフォーマンスを比較できるように。
- ウェブサイトもアプリも比較可能。
- さまざまな指標で比較可能。
- たとえば、平均セッション時間や離脱率、エンゲージメント率などを業界標準と比較できる。
新たに追加された機能「ベンチマーク」により、エンゲージメント指標や新規ユーザー率、直帰率などのベンチマークデータを、業界他社・業界標準と比較できるため、戦略的な改善がより行いやすくなりました。自社の強み・弱みを具体的に把握し、競争力の向上や成果の拡大など改善策を講じるきっかけにしてください。
ベンチマークとは
「ベンチマーク」は、自社と同業他社のビジネス パフォーマンスを比較するのに役立つ機能で、ホーム画面の概要カードのみで確認できます。
Googleアナリティクスでは、幅広い業種の同業他社グループに基づくベンチマークがパーセンタイル(中央値、25パーセンタイル、75パーセンタイル)で示されます。同業他社グループを構成する企業は、セットアップ時に指定した業種と、プロパティのURLなどの情報から推測される追加のシグナルに基づいて決定されます。
参照[GA4] ベンチマーク - アナリティクス ヘルプ
https://support.google.com/analytics/answer/13771577?hl=ja
同業他社とのさまざまな比較が可能
ホーム画面の概要カードのみで詳細を深掘りするのは困難ですが、現時点で可能な分析方法を紹介します。同じ業界、地域、規模のウェブサイトやアプリのデータと比較することで、ユーザーの訪問数やエンゲージメントなどのパフォーマンスが業界平均とどの程度違うかを把握できます。
ホーム画面のグラフ右上アイコンをクリックすると、ベンチマーク対象の同業他社グループが確認できます。こちらの業種が想定と異なっていた場合は、表示されている業種欄をクリックして選択し直すことが可能です。
比較可能な指標
ディメンション | 指標 |
セッション | アクティブユーザーあたりのセッション数 |
エンゲージメントのあったセッション数(1アクティブユーザーあたり) | |
エンゲージメント率 | |
セッションキーイベントレート | |
直帰率 | |
平均セッション継続時間 | |
ページ/スクリーン | アクティブユーザーあたりのビュー |
セッションあたりのページビュー数 | |
ユーザー | DAU/MAU |
DAU/WAU | |
PMAU/DAU | |
PWAU/DAU | |
WAU/MAU | |
セッションあたりの平均エンゲージメント時間 | |
ユーザーキーイベントレート | |
初回購入者率 | |
新規ユーザーあたりのFTP | |
新規ユーザー率 | |
収益 | ARPPU |
ARPU | |
アクティブユーザーあたりの平均購入収益額 | |
購入による平均収益 | |
総広告収入(アクティブユーザーあたり) |
このなかから主要な比較分析方法を説明します。
エンゲージメントの指標
たとえば、平均セッション時間や離脱率、エンゲージメント率などの指標を業界の標準と比較し、自社のサイトやアプリのユーザーエンゲージメントが良好か、改善が必要か判断する材料にできます。画像のベンチマークデータを元に考察してみます。
エンゲージメントの指標は、以下のようになっています。
ベンチマークデータ
75パーセンタイル 0.84
同業他社の中央値 0.68
25パーセンタイル 0.52
それぞれ解説します。
1. 中央値(0.68)
同業他社の中央値が0.68であるということは、同業他社の中間的なパフォーマンスがこの値であることを意味しています。そのため、ほぼ半数の企業は0.68以上、もう半数は0.68未満のエンゲージメント指標を持っていると解釈できます。
2. 75パーセンタイル(0.84)
この値は上位25%のエンゲージメント指標が0.84以上であることを示しています。0.84を超えるエンゲージメント指標を達成している企業は比較的パフォーマンスが高いと考えられます。
3. 25パーセンタイル(0.52)
この値は下位25%に位置する企業のエンゲージメント指標が0.52以下であることを示しています。したがって、0.52未満の企業はエンゲージメントが比較的低い状態です。
エンゲージメント指標が意味すること
当サイトのエンゲージメントのあったセッション数(1ユーザーあたり)は「0.86」でした。エンゲージメント指標が0.68の同業他社の中央値を上回り、上位25%の企業と同程度かそれ以上のパフォーマンスを誇ると考えられます。
新規ユーザー率
「新規ユーザー率」は、ショッピングやアパレル等の集客で重要な指標となります。競合他社と比較して新規ユーザー率の獲得が優れているか確認できます。
新規ユーザー率の指標は以下のようになっています。
サイトデータが78.5%
ベンチマークデータ
75パーセンタイル 95.4%
同業他社の中央値 88.5%
25パーセンタイル 76.9%
それぞれ解説します。
新規ユーザー率「78.5%」という数値と、それに対応するベンチマークデータ(75パーセンタイル、中央値、25パーセンタイル)は、サイトやアプリに訪れるユーザーがどれほど「新規」か、同業他社と比較した位置を示します。このデータを元に考察してみます。
1. 中央値(88.5%)
同業他社の新規ユーザー率の中央値が88.5%であることは、同業他社のほぼ半数は新規ユーザー率が88.5%以上であることを意味します。多くの同業他社が高い新規ユーザー率を持っていることがわかります。
2. 75パーセンタイル(95.4%)
上位25%の同業他社は新規ユーザー率が95.4%以上であり、この層はさらに高い割合の新規ユーザーを獲得しています。これを目指すことで、競争力のある新規ユーザー獲得が見込まれます。
3. 25パーセンタイル(76.9%)
下位25%の同業他社は新規ユーザー率が76.9%以下であり、比較的低い新規ユーザー率を示しています。
新規ユーザー率が意味すること
現在の新規ユーザー率「78.5%」は、業界中央値の88.5%よりも低く、25パーセンタイルよりわずかに高いです。同業他社の多くと比較して新規ユーザーの割合が少ないため、新規ユーザーの流入を強化するための施策を検討する必要があります。
広告やキャンペーンを通して新しいユーザーにアプローチすることがいいかもしれません。
直帰率
同業他社と直帰率を比較すると、1ページのみ閲覧してサイトを離れるユーザーの割合が高いことがわかります。
直帰率の指標は以下のとおりです。
ベンチマークデータ
75パーセンタイル 57.1%
同業他社の中央値 45.3%
25パーセンタイル 34.0%
直帰率39.3%という数値と、それに対応するベンチマークデータは、サイトやアプリの直帰率(ユーザーが最初のページを見てすぐに離脱する割合)が同業他社と比べてどの位置にあるかを示しています。このデータをもとに解説します。
1. 中央値(45.3%)
同業他社の直帰率の中央値が45.3%であるため、同業他社の約半数は直帰率が45.3%以上となっています。これが業界の平均的な直帰率と考えられます。
2. 75パーセンタイル(57.1%)
上位25%の企業は、直帰率が57.1%以上であり、これらは比較的高い直帰率を持っている企業といえます。この値に近いほど、訪問者がすぐにサイトを離れる傾向が強いことを示します。
3. 25パーセンタイル(34.0%)
下位25%の企業は直帰率が34.0%以下であり、業界全体で見ると直帰率が非常に低い層です。この水準にある企業は、ユーザーが多くのページを閲覧し、サイトに長く留まる傾向が強いと考えられます。
直帰率「39.3%」が意味すること
直帰率39.3%は、業界中央値の45.3%を下回っています。これはサイトやアプリの直帰率が平均よりも良好であり、ユーザーが一度訪問してすぐに離脱する割合が同業他社よりも低いことを示しています。
さらに下位25%の境界である34.0%に近く、業界内では比較的良好なパフォーマンスに位置しています。このため、ユーザーエンゲージメントやコンテンツの魅力がある程度高く、ユーザーが複数ページを閲覧する可能性が高いと考えられます。
一方で、直帰率がさらに低い34.0%(業界の下位25%)を目指すことで、より多くのユーザーに複数のページを閲覧してもらえます。まだまだ工夫や施策を検討する余地があり、エンゲージメントの向上が期待できます。魅力的なコンテンツ配置とナビゲーションの改善、ファーストビューの改善等が改善案として考えられるでしょう。
まとめ
新たに追加されたベンチマーク機能により、自社のパフォーマンスを同業他社と比較できるようになり、戦略的な改善の方向性が見えやすくなりました。エンゲージメント指標や新規ユーザー率、直帰率などのベンチマークデータを活用することで、自社の強み・弱みを具体的に把握し、改善策を講じるきっかけになります。業界平均や上位企業の数値を参考にしつつ、ユーザーエンゲージメントを高めるための施策を積極的に導入することで、競争力の向上や成果の拡大につなげましょう。
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