[特集]日本のWeb担当者
年間の予算は50万円以下が71%、悩みは人材と予算
TEXT:インプレスR&D インターネットメディア総合研究所、編集部
Web担当者にとって、他社がどのようにしているのかまず気になるのは予算だろう。ウェブサイトを稼働させるためのレンタルサーバーをはじめ、サイトの制作や更新に必要なコスト、アクセス解析やマーケティングの費用など、お金の状況をみてみよう。
さらに、サイトはテーブルレイアウトなのかCSSデザインなのか、どれぐらいの頻度でサイトを更新しているのも調べてみた。そして、何よりも大切な「サイトの用途」には何を設定していて、どんな指標で効果測定しているのかなどの調査結果も明らかにする。
予算は運用に必要な最低限のライン
ウェブサイトの年間の予算(制作・運用のコスト)を図1に示した。この金額にはWeb担当者の人件費は含まれていない。残念ながら、「10万円未満」が37%、「50万円未満」が35%と、年間の予算が50万円未満の企業が多くを占めている。
当然のことながら、会社規模が大きいほど予算は大きくなる傾向にある。図2は雇用者数規模ごとに予算をみたものだが、1~9人の小規模な企業では、「10万円未満」が48%、「50万円未満」が38%と、50万円未満の企業が85%を占めているが、規模が大きくなるほどその比率は低下し、5000人以上の企業では50万円未満の比率は29%まで下がる(この規模で50万円未満しか予算を持っていない企業が29%もあると考えるべきなのかもしれないが)。1000~4999人の企業では100万円以上の企業が47%と約半数を占め、5000人以上の企業では100万円以上の企業が63%、「1億円以上」の年間コストをかけている企業も18%存在している。
では、その予算をどのような使途に使っているのだろうか。図3をみると、「インフラ(レンタルサーバーなど)」が最も多く33%、次いで「制作費」の26%、「管理・運用費」の21%となっている。
これらの項目はサイトの運用に最低限必要なものであり、マーケティングのような「攻め」の使途には10%しか予算が割かれていないのは残念なことだといえる。本来ならば、キーワード広告などでは費用対効果を確保していれば、在庫が不足しない範囲内で広告費を増やせば増やすだけ利益を確保できることになるはずだ。そういった性質の予算を、レンタルサーバーのような月額固定のものと同じように扱ってしまっているならば問題だろう。
とはいえ、費用対効果を確保するには、適切な効果測定、つまりアクセス解析が必要になる。しかし、アクセス解析の4.5%も、たとえば全体で100万円の年間予算を持っていた場合、月額で3,750円しか使えないことになる。
来年度の予算増加見込みは21%
来年度のウェブサイト予算が今年度と比べてどう変わるかに関しては、「今年度並み」と回答した企業が62%と多くを占めているのだが、「減少の予定」の7%を「増加の予定」の21%が上回っており、全体的には増加する企業がやや多いといえる(図4)。
別の設問では、ウェブサイトが「効果がある」と回答した企業が52%、「効果がない」と回答した企業が8.5%だったことを考えると、予算を増やす企業がさらに多くても不思議ではないと思われる。
次年度にウェブサイトの予算が増加すると回答した企業にその増加比率を聞いたのが図5だ。その増加比率は「20~30%」増やす企業が40%と最も高く、予算が倍以上となる「100%以上」増やす企業が29%と続く。やや増加する企業と大きく増加する企業に二分されているといえる。
図6は、逆に次年度のウェブサイト予算が減少すると回答した企業にその減少比率を聞いた結果だ。今年の半額以下を予定している「-50%以上」が51%と半数を占めている。次いで「-20~30%未満」と2割~3割ほど減少させる企業が27%となっている。ただし、予算が減少する企業数が少ないため、「-50%以上」減少する企業は増減含めた全体のなかでの比率でいうと3%に過ぎない。
未だ42%がテーブルレイアウト
SEO効果やコンテンツ更新時のコストを考えると、イマドキのウェブサイトはテーブルレイアウトではなく、スタイルシートでデザインしたいところだが、実際はどうなのだろうか(図7)。
「テーブルレイアウトHTML」が43%と最も多く、次いで「テーブルレイアウトHTML+CSS」の22%となった。「フルCSS」は5%にとどまっている。現状では、まだまだテーブルレイアウトHTMLが主流であり、スタイルシートは少しずつ取り入れている状態だといえる。
実際のところ、「FLASHなどのRIA(リッチインターネットアプリケーション)」が9%もあり、「フルCSS」よりも多いのは印象的だ。
45%が更新は1か月に1回以下
では、ウェブサイトのコンテンツはどれぐらいの頻度で更新しているのだろうか(図8)。
ウェブサイトの更新頻度は、月1回未満となる「それ以下」が32%と最も高く、次いで「月に数回」が19%、「月に1回」が13%となる。会社情報や製品情報が中心のサイトではそれほど頻繁に更新することもないのかもしれない。昨今の企業ウェブサイトはメディア化が進んでいるといわれるが、1日に1回以上なども含めて週に1回以上更新する企業を併せても32%。3分の2の企業が月に数回以下の低い更新頻度でしかない。Web担当者の数も足りておらず、かつ予算も潤沢に使えるわけもなければ、こういった更新頻度になってしまうのは仕方がないのかもしれない。
目的の設定されていないウェブサイト?
すでに「とりあえずサイトを作る」という時代ははるか昔に終わっている。企業がウェブサイトをもつならば、何のためのサイトなのかの目的設定は当然のことだ。「ウェブサイトの用途」という設問に対する回答(図9)では、「製品・サービス情報の掲載・告知」が66%、「会社概要の掲載・告知(地図含む)」が64%と、企業の基本的な情報の掲載が上位を占めている。しかし、この2つの用途、特に会社概要に関しては、目的が明確ではないという問題がある。
しかし、それよりも問題なのは、「明確に決まっていない」と「わからない」を合わせると10%にも上ることだ。目的なしに漠然と運用を続けるウェブサイトに、ましてやその運用に予算を費やすことに、Web担当者は疑問を抱かないのだろうか。
「製品・サービスの販売・予約受付(EC)」の35%、「製品・サービスの資料受付・キャンペーン」「製品・サービスのアフターケア・クレーム受付などの顧客対応窓口」の19%、「人材募集」の18%などは、販売/販促や見込みの客獲得、サポートなどの明確な目的に合致している用途だといえる。
コンバージョンによる効果測定指標がPVに迫る
ウェブサイトの目的が明確になっていたとしても、現状のウェブサイトでその目的をどの程度達成できているのかがわからなければ、Web担当者は自分の仕事が役に立っているのかどうか判断できないはずだ。そこで、ウェブサイトの効果をどんな指標で判断しているのかを調べた結果が図10だ。
古くからある「PV(ページビュー数)」が33%でトップではあるものの、「商品・サービスの販売額や成約数」が29%、「資料請求数」が15%など、コンバージョンを指標として採用している企業も比較的多いのは良い傾向だ。
とはいえ、「特にない」が34%と、3分の1の企業が特に明確な効果測定の指標をもっていないことは大きな問題だといえる。
売り上げへの直接効果やブランディングに効果アリ
現在感じているウェブサイトの効果(図11)では、「宣伝・広報効果、ブランド認知」と「売上に対する直接効果」が39%で最も高く、その他の効果より大きく抜きん出ている。
しかし、その一方で「わからない」が33%を占め、ウェブサイトの効果を感じていない企業も多いことがわかる。
サイト活用の障害は人材リソースの問題
少し視点を変えて、ウェブサイト活用の障害となっていることは何かを聞いてみた(図12)。
最も多かった「専任の人材を置く余裕がない」は53%と過半数であり、「担当者が不足している」の28%、「サーバーを運用できるノウハウをも持つ人材が社内にいない」の26%と合わせて人材に関する問題が上位3つを占めている。また、「予算が増えない、あるいはコスト削減が厳しい状況である」の25%が続いており、予算と人材が問題となっていることがわかる。
とはいえ、これらの問題の根底に流れるのは、20%が回答している「ウェブサイトの効果がわかりにくい」や、図9での「明確に決まっていない」「わからない」、図10での「効果測定指標は特にない」といったことなのではないだろうか。目的が明確でなかったり、現状で良い成果をあげているかどうかすら判断できなかったりなどの状態のプロジェクトに対して積極的に人材や予算をまわすことは考えにくいからだ。
- 調査対象:企業におけるウェブサイトの企画および制作・運用・管理、およびオンラインマーケティング担当者
- 対象地域:全国
- サンプリング:NTTレゾナント株式会社gooリサーチの保有するアンケートパネルからの条件抽出によるメール配信、アンケートサイトへの誘導
- 有効サンプル数:2154
- 調査期間:2007年4月18日(水)~5月2日(水)
本記事は、インプレスR&Dによる『インターネット利用動向調査報告書〈ウェブ担当者編〉2007』の資料を基にしている。同調査報告書は、「個人動向編」「企業動向編」「ウェブ担当者編」の3種類の調査による「インターネット利用動向調査」のうち、企業のウェブ担当者の利用動向をまとめたもの。
本記事で紹介した内容以外にも、ブログやSNSの利用、Web APIの利用、コンテンツ連動型広告やアフィリエイトの導入状況、B2C/B2Bの売り上げ比率、ドロップシッピングの利用状況、Web2.0に対する取り組みや売り上げ規模など、さまざまな設問や集計軸による詳細な集計結果が収録されている。
- 価格(税別):
- 書籍:98,000円
- PDF版(プリントアウト可):98,000円
- PDF版(プリントアウト不可):49,000円
- サイトライセンス利用期限1年):98,000円
- サイトライセンス利用期限なし):196,000円
- サイズ・判型:A4版
- ページ数:400P(仮)
- 調査・執筆:インプレスR&D インターネットメディア総合研究所
- 発行:株式会社インプレスR&D
- 発売:株式会社インプレスコミュニケーションズ
この利用動向調査報告書に関して、詳しくはhttp://www.impressrd.jp/iil/net07_webを参照。
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