衣袋教授の新・Googleアナリティクス入門講座

【誤解多発!】GA「新規とリピーター」の定義と、ユーザーを分析する方法[第14回]

Googleアナリティクスでのレポート名「新規・リピーター」の意味を正しく理解できていますか?「新規・リピーター」の本当の意味は「新規ユーザー・リピートユーザー」ではないんです! その他にも「returning visitor」「new visitor」といった指標の違いや、どんな定義で用いられているのかをわかりやすく解説していきます。

「セッション」や「ユーザー」に続き、Googleアナリティクスによるアクセス解析の基本的な用語について解説していく。今回は「新規とリピーター」について解説する。これも誤解が多い代表的な用語だ。よく使うことになるので、正しい定義をしっかりと押さえておこう。

この記事で学べること:
  • 「新規とリピーター」の本当の意味を理解する
  • 新規とリピーターをレポートで確認する

「新規」と「リピーター」はユーザーのことではない

「新規」「リピーター」といえば、普通は「新規ユーザー」と「リピートユーザー」のことだと思うだろう。しかし、Googleアナリティクスの「新規」「リピーター」ではユーザー数をカウントしているわけではない。ユーザー数ではなく、初回訪問セッション数と2回目以降の訪問セッション数をカウントしているのだ。何を言っているのかさっぱりわからない? 何の話をしているのか、画面を見ながら確認していこう。

[新規とリピーター]レポートの数字を確認する

Googleアナリティクスのレポートでこの「新規」と「リピーター」は、[ユーザー]>[行動]>[新規とリピーター]レポートで確認できる。

レポート名は「新規とリピーター」(図1赤枠部分)だが、厳密にいうとレポート内では「ユーザータイプ」(図1青枠部分)というディメンションで、それぞれ「New Visitor」が新規、「Returning Visitor」がリピーターに該当する

どちらも「Visitor」と書いてあるので、「ユーザーをカウントしているはずだ」と思うだろう。しかしそこが誤解のもとだ。

図1:[ユーザー]>[行動]>[新規とリピーター]レポート
図1:[ユーザー]>[行動]>[新規とリピーター]レポート

ディメンション名が「ユーザータイプ」なので(図1青枠部分)、いかにもユーザーを分類していそうだが、右にある数字をご覧いただきたい。一番上の行は、サイト全体のセッション(訪問数)が3,344であることを示している(図1黒枠部分)。

一方その下の2行を確認すると、「New Visitor」が2,017セッション、「Returning Visitor」が1,327セッションとなっており、この2つを合計すると全体のセッション数の3,344と合致することがわかるだろう。

つまり、この「New Visitor」と「Returning Visitor」は、ユーザーの数ではなくセッションの数を数えたものなのだ。もう少し正確にいうと「初回訪問」と「2回目以降の訪問」の数を指している

これまでの連載でユーザー数セッション数について解説したが、この2つは異なるものだ。もしユーザー数とセッション数をはき違えているならば、大きな誤解が生まれかねない。

英語でも「New Visitor」「Returning Visitor」と「人」を意識させる表記になっているし、日本語でも「リピーター」といえば普通は「人」を指す言葉だ。しかし、実際にGoogleアナリティクスが表示しているのは「人」ではなく「セッション」の情報なのだ。

セグメント機能の表記も混乱に拍車をかけている

さらにセグメント機能(ほかの記事で詳しく解説する)に標準で用意されているセグメントの名前も「新規ユーザー」(図2赤枠部分)と「リピーター」(図2青枠部分)となっており、こちらも混乱に拍車をかける表現になっている。新規の方は「新規ユーザー」と断言してしまっている。

図2:セグメント機能を起動した画面
図2:セグメント機能を起動した画面

もともとの英語表現もひどいし、日本語訳も困ったものだ。セグメント機能における「新規ユーザー」と「リピーター」も、ユーザーの区分ではなく「初回訪問」セッションと「2回目以降の訪問」セッションを絞り込むセグメントだということに注意していただきたい。

「新規」と「リピーター」の定義は?

「新規」と「リピーター」がセッションベースの数字だということはわかっていただけただろうか。ユーザーベースとセッションベースで一体何がどう違ってくるのかまだピンとこない人も多いと思うので、例を挙げて説明していこう。

図3はユーザーAとユーザーBが、計測対象サイトに訪れた訪問履歴だ。下に行くほど新しい訪問だと考えてほしい。

図3:ユーザーAとBの訪問履歴の例
図3:ユーザーAとBの訪問履歴の例

表を見ると、ユーザーAがこのサイトに初めて訪問したのは2月1日で、その日のうちにもう1回訪問し、さらに2月21日に1回訪問している。一方、ユーザーBがこのサイトに初めて訪問したのは1月5日で、2回目の訪問が2月1日、3回目の訪問が2月21日となっている。

2月の新規とリピーターはどうなる?

この例を前提に、集計対象期間が2月の月次(2月1日から28日)だとしよう(図4のオレンジ色で塗った部分)。この場合「新規(New Visitor)」と「リピーター(Returning Visitor)」はどの部分に該当し、集計するといくつになるだろうか?

図4:ユーザーAとBの初回訪問と2回目以降の訪問
図4:ユーザーAとBの初回訪問と2回目以降の訪問

ここでのポイントは、何をもって「新規(New Visitor)」としているのかということだ。Googleアナリティクスの「新規」とは、集計対象期間内の最初の訪問のことではなく、Googleアナリティクスで計測を始めてから現在までの期間中に、サイトを初めて訪問したときの訪問のことを指している。だから、冒頭で「初回訪問セッション」と表現したのだ。

これに対して「リピーター」は、同じく計測を始めてからの期間で2回目以降のサイトへの訪問のことを指している。冒頭では「2回目以降の訪問セッション」と表現した。もう少し言葉を足せば「通算で2回目以降の訪問セッション」とでも表現した方がわかりやすいだろうか。

今回の場合、集計期間にかかわらず、ユーザーAの「新規」とは2月1日の初回訪問のことで、ユーザーBの「新規」は1月5日の初回訪問となる。これは、図4で、赤枠で囲ったところが該当する。それ以外の訪問は全部2回目以降の訪問セッションということになる。

そのうえで、今度は集計期間が2月月次のデータについて見てみよう。ユーザーA、ユーザーBの2ユーザーは、2月に合計で5回訪問しているが、この5セッションのうち、「新規」はユーザーAの赤枠で囲った部分の1回だけなので、「新規」が1セッション、「リピーター」が4セッションとなるわけだ。

2月1日と2月21日の日次データはどうなる?

集計対象期間を変えて見てみよう。2月1日の1日だけの日次データではどうなるかというと、「新規」が1セッション、「リピーター」が2セッションとなる。ユーザーAは「新規」が1セッション(図4の赤枠部分)、「リピーター」が1セッション、ユーザーBは「リピーター」が1セッションとカウントされるからだ。

また、2月21日の1日だけの日次データは、「新規」が0セッション、「リピーター」が2セッションとなる。ユーザーAとユーザーBの1セッションずつは、ともに初回訪問セッションではないからだ。

厳密に用語を定義するなら、望ましい表記は?

「新規とリピーターはセッションを数えている」ということは納得できただろうか。文章で厳密に用語定義するなら、次のようになる。

  • New Visitor: 計測開始から数えて初回訪問したセッションが、集計対象期間内にあったセッションの数
  • Returning Visitor: 計測開始から数えて2回目以降のセッションが、集計対象期間内にあったセッションの数

筆者なら、レポート内で使う各用語の表現を次のように変えたいところだ。

「ユーザータイプ(英語表記はUser Type)」は、元の英語自体を修正した方がよい。「リピーター」は英語では「Repeat」ではなく「Return」と表現しているので、そこはうまく表現していると思う。しかし、和製英語の「リピーター」は英語の「Repeat」と「Return」のどちらにも取れる表現で、混乱の元になっている。さらに「セッション」も昔のように「訪問」に戻した方がよいだろう。

誤解がない日本語表記
  • 「新規とリピーター」(レポート名) → 「初回と2回目以降」
  • 「ユーザータイプ」 → 「訪問タイプ」
  • 「New Visitor」 → 「初回訪問」
  • 「Returning Visitor」 → 「2回目以降の訪問」
誤解がない英語表記
  • 「User Type」 → 「Session Type」
  • 「New Visitor」 → 「New Session」あるいは「First Session」
  • 「Returning Visitor」 → 「Returning Session」

わかりやすい短い表現と正確な定義を伝えることは両立しにくいが、「新規とリピーター」は間違いやすいものの代表格だ。正確に定義を理解してから分析を始めよう。

◇◇◇

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