講座14 結局、効果は上がったの? 正しく調べる効果検証のポイント
文:芝野徹也 監修:紺野俊介((株式会社アイレップ))
数字に一喜一憂するのではなく
成果状況を比較検証する
講座13ではLPOの考え方を紹介したが、実はLPOを行うにあたって「結局、効果は上がったのか?」という検証の視点を持っておくことは、どのように施策を実施するのかと同じぐらい重要だ。
さまざまな理由から、予想以上に成果が上がる場合もあれば、逆に成果が下がってしまうこともありうる。これらの結果に一喜一憂するのではなく、なぜそのような結果になったのか仮説検証しながら、さらに改善余地を見出して完成度を高めることが、施策を成功させる確率を高め、継続的にキーワード広告で効果を上げていくためには重要なのだ。
特にLPOのように一定以上の変化をもたらすアクションを行う場合には、施策の実施前後の成果状況の比較検証を行うことをお勧めする。これによって、施策がポジティブに作用したのか、それともネガティブだったのかが検証できるからだ。
ただし、この比較検証を行う際には、正確な比較を実施するための準備作業が、LPOの開始前から始まっていることに、気を付ける必要がある。
比較検証で注目すべき指標は、
コンバージョン「数」でなく「率」
最も一般的な比較検証の考え方は、施策前後の一定期間を設定し、それぞれの期間で比較を行うというものだろう。たとえば4週間など、期間を区切って比較するのだ(表1)。
施策 | 開始日 | 終了日 | インプレッション | クリック | コンバージョン | CTR | CVR |
---|---|---|---|---|---|---|---|
実施前 | 2007. 08.01 | 2007. 08.28 | 110,000 | 3,300 | 50 | 3.0% | 1.5% |
実施後 | 2007. 08.29 | 2007. 09.25 | 137,500 | 4,125 | 62 | 3.0% | 1.5% |
こういった単純な期間の比較の際にも注意すべき点がある。この例では、実施後のほうがコンバージョン数が多くなっているので「施策の効果があった」と考えてしまいがちだが、それは正しい比較ではない。この場合、インプレッション数も増加しているため、コンバージョン数での比較は適切ではないのだ。このようにインプレッション数の増減が大きな影響を及ぼしてしまっている場合には、コンバージョン数ではなく、コンバージョン率で前後比較すべきだろう。
掲載状況が大きく変われば
ユーザーの質も変わる
LPOを行う場合、特に成果を上げたいメインとなるキーワードに対して行うことが一般的だ。そのため、LPOからのコンバージョン数を増やすためにLPO用のページを設置するのと同時に、入札を強化して掲載順位を上げることがよくある。
これは短期的な成果を高める施策として貢献することが予想されるが、1つ落とし穴がある。それは、一般的には順位を上げることによってクリック率が上がって、同じインプレッション数でもクリック数が増えるが、同時に、以前とは異なる性質のユーザーも誘導するようになる可能性がある点だ(表2)。
施策 | 開始日 | 終了日 | インプレッション | クリック | コンバージョン | CTR | CVR |
---|---|---|---|---|---|---|---|
実施前 | 2007. 09.01 | 2007. 09.28 | 125,000 | 2,500 | 38 | 2.0% | 1.5% |
実施後 | 2007. 09.29 | 2007. 10.26 | 131,250 | 6,563 | 79 | 5.0% | 1.2% |
この場合、異なる性質のユーザーが混入している分、コンバージョン率も従来と異なる傾向を示す。そのため、LPO以外の変動要因が加わってしまい、正確な比較ができなくなってしまうだろう。施策の効果を正しく判断するには、一度に行う変更は1つだけにするのが大切だ。この場合、入札強化の時期をずらして、「非LPO」「LPO」「LPO+入札強化」とそれぞれの期間で比較するのがいいだろう。
キーワードのマッチタイプにも注目
キーワードのモチベーションを考慮すると、完全一致と部分一致のインプレッションやクリックは区別して比較する必要がある。部分一致でのインプレッションは、LPOの想定としているモチベーションと異なる検索を含む場合があるため、必ずしも効果が上がるとは限らないからだ(表3)。
対象キーワード | マッチタイプ | 開始日 | 終了日 | インプレッション | クリック | コンバージョン | CTR | CVR |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
実施前 | 完全一致+部分一致 | 2007. 09.01 | 2007. 09.28 | 2,300,000 | 25,500 | 194 | 1.1% | 0.8% |
実施後 | 完全一致+部分一致 | 2007. 09.29 | 2007. 10.26 | 2,685,000 | 18,675 | 119 | 0.7% | 0.6% |
LPOの効果として比較する場合は、キーワードのマッチタイプを揃えて比較する必要がある(表4)。
対象キーワード | マッチタイプ | 開始日 | 終了日 | インプレッション | クリック | コンバージョン | CTR | CVR |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
実施前 | 完全一致 | 2007. 09.01 | 2007. 09.28 | 500,000 | 7,500 | 68 | 1.5% | 0.9% |
実施後 | 完全一致 | 2007. 09.29 | 2007. 10.26 | 525,000 | 7,875 | 87 | 1.5% | 1.1% |
実施前 | 部分一致 | 2007. 09.01 | 2007. 09.28 | 1,800,000 | 18,000 | 126 | 1.0% | 0.7% |
実施後 | 部分一致 | 2007. 09.29 | 2007. 10.26 | 2,160,000 | 10,800 | 32 | 0.5% | 0.3% |
正確な比較検証を行うポイント
このように、LPOの成果を評価するためには、いくつかのポイントを揃えなければ、正確な測定とは言いがたい。比較検証を行う場合には、以下の観点で正確な比較が可能な条件が整えられているか、確認すべきだろう。
比較対象期間
対象とするビジネスモデルやキーワードによってこの期間は増減するが、一定量の比較検討に値するクリック数やコンバージョン数が蓄積できるだけの期間が必要だ。コンバージョンの発生件数がもともと少ないモデルの場合、ある程度長い期間で計測すべきだろう。比較対象期間の掲載方針
クリック率に影響する「どの程度の掲載順位で掲載するか」という観点はもちろんだが、比較する期間中は広告文の変更はしないなど、気を付けておきたい。ランディングページとの訴求を併せるなど、広告文変更の必要がある場合は、その点を留意して比較する必要がある。比較対象のキーワード
LPOの対象キーワードごとに比較することが重要だが、その場合にもマッチタイプを揃えた比較が必要である。また、対象キーワードが「デジタルカメラ」などであった場合、「デジタルカメラ 通販」「デジタルカメラ 格安」などの組み合わせ語の成果も併せて検証すべきだろう。単ワードと組み合わせ語では、それぞれLPOの影響が異なる傾向を示す場合があるためだ。その他
また、一方で検索トレンドが変更しない時期を選ぶべきである。一般的に、ゴールデンウィークやお盆休みの期間は検索が減少する傾向があるため、比較対象の期間のどちらかだけにこういった時期が含まれると、正しく比較できなくなってしまう。さらに、ランディングページへの変更時に媒体社による掲載審査が発生していないか確認すべき点である。キーワードや広告文によっては、掲載審査が発生したため、比較対象の期間がずれてしまうことなどがありえるため、注意が必要だ。
比較検証の精度を高めるLPOツール
前述のように、比較検証するにあたって揃えるべき条件のポイントが多いのが難しいところである。特に、同質なユーザーで比較するためには、季節要因をできるだけ排除できるように、比較期間の設定には注意が必要だろう。また、たとえ上記の条件をクリアしたとしても、競合他社も入札による掲載順位コントロールを含め、広告文やランディングページの変更を行っているため、厳密に言うと完全に同一条件下での比較はできないとも言える。
そこで、期間を分ける比較検証の代替案として考えられるのが、「同時期での並行配信による比較テスト」である。一般的には「A/Bテスト」と呼ばれるものだ。
広告のクリエイティブだけのA/Bテストならばスポンサードサーチやアドワーズ広告の管理画面に含まれる機能で行えるが、LPOまで含めたA/Bテストだとそうはいかない。そこで便利なのが、アクシイズの「CONDUCTOR LCO」のようなLPOツールだ。こういったツールを活用すると、同一時期の並行配信に加え、クリック率やコンバージョン率に合わせた配信比率の設定なども自動化でき、条件を揃えた比較検証とA/Bテストの効率アップが期待できるだろう(図1)。
複数の指標や導線の検証が大切
LPOの効果については、コンバージョンという指標だけでなく、複数の指標で効果検証を行い、LPO施行前と比べて何が変わったのかを検証することによって、さらに最適化のヒントを掴んでおくべきだろう。
ウェブ解析ツールなどによって、ユーザー行動を測定できるのであれば、コンバージョン率に加えて、「ランディングページの離脱率(=直帰率)」「ランディングページの滞在時間」「申し込みフォームへの到達率」「申し込みフォームの離脱率」などの指標を測定し、LPOの実施前後の導線がどのように変わったのか、どこまでユーザーを引き込めているのかを検証すべきだろう。
たとえばGoogle Analyticsならば「コンテンツ>サイト上のデータ表示」、Site Catalystならば「Click Map」、Visionalistならば「クリック・アット・グランス」といった機能で比較することにより、LPO施行前に想定しているとおりの導線で、ユーザーを各リンクに誘導できているのか一目瞭然となるだろう。もし、想定どおりの導線でないならば、ボタンの配置・配色を含めた全体のランディングページの構成を見直すことにより、効果をさらに上げることも期待できる。
- コンバージョン率
- ランディングページ離脱率(=直帰率)
- ランディングページ滞在時間
- 申し込みフォーム到達率
- 申し込みフォーム離脱率
- 各リンクへの導線
など
効果検証のサイクルを重ねることがLPO成功のカギ
講座13で述べたように、キーワード広告におけるランディングページは、本質的にコーポレートサイトなどの通常サイトとは作成のコンセプトが異なっており、キーワードによってモチベーションの想定できるユーザーに特化しているため、想定したユーザーに想定どおりの導線を提供できているかどうかという、シンプルな観点で検証が可能だ。分析をもとにLPOを行い、その結果を測定してページを改善するといったサイクルを重ねることが、LPO成功のカギとなるのだ。
比較検証は条件をそろえて行わなければ意味がない。
LPOツールや高機能ウェブ解析ツールを利用すればさらに効率アップ。
分析→施策→検証のサイクルを重ねて継続的に改善。
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