【レポート】Web担当者Forumミーティング 2024 春

これってSEOのランキング要因? 気になる6つのトピックを鈴木謙一氏が解説

「海外SEO情報ブログ」を運営し、日本におけるSEOの第一人者とも言える鈴木謙一氏が「Web担当者Forum ミーティング 2024 春」に登壇。「E-E-A-T」「AI生成コンテンツ」など、Google検索とSEOの今を知ることができる6つのトピックについて語った。

連載「海外&国内SEO情報ウォッチ」でもおなじみ、日本で最も有名なSEOをテーマにした海外SEO情報ブログを2007年から運営している鈴木謙一氏が「Web担当者Forum ミーティング 2024 春」に登壇。「E-E-A-T」「AI生成コンテンツ」などGoogle検索とSEOの今を知ることができる6つのトピックについて語った。

海外SEO情報ブログ 鈴木謙一氏

これってランキング要因? 気になる6つのトピックを鈴木氏が解説

Google検索セントラル ヘルプ コミュニティで10年以上活動し、2024年1月にアジア太平洋地域初の「ダイヤモンド プロダクト エキスパート」に昇格するなど、日本におけるSEOの第一人者とも言える鈴木氏。海外のSEOカンファレンスにも登壇し、Googleスタッフとの交流も積極的に行う鈴木氏が、「これってランキング要因なの? どうなの?」と気になる6つのトピックについて公式サイトに掲載されている情報や、Googleスタッフから直接聞いた話を交えて解説した。

ランキング要因になる? ならない? 6つのトピック

トピック①E-E-A-T:E-E-A-Tスコアという指標は存在しないし、ランキング要因でもない

「E-E-A-T」とはExperience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trust(信頼)の4つの要素の頭文字をとった言葉で、一般にSEOにおいて重要と言われている。しかし、「Google検索セントラル」の「Googleが重要でないと考えること」で、「E-E-A-Tをランキング要因と考える」に対し「いいえ、そのようなことはありません」と表記されている。

E-E-A-Tはランキング要因ではないと言っています。SEOに携わっていると、E-E-A-Tは頻繁に聞きますよね? E-E-A-Tスコアを上げて、評価をあげなきゃと考えがちになりますが、E-E-A-Tはランキング要因ではないです(鈴木氏)

Googleの公式のアカウントとして、Danny Sullivan氏がXで運用している「Google SearchLiaison」でも2024年2月に以下のように語っている。

E-E-A-Tスコアという指標は使用していない。そういったものは存在せず、ランキング要因でもない。評価者(品質をチェックする人)は E-E-A-Tスコアをページに割り当ててはいない。E-E-A-Tの評価がランキングに直接影響することもない(Danny Sullivan氏)

つまり、Googleのアルゴリズムに組み込まれたプログラムがE-E-A-T を判断し、数値化してサイトを評価しているわけではない。E-E-A-Tは、世界中に存在する「品質評価者」と呼ばれる“人”が、サイトの品質を判断する時に基準とする“概念”であり、「人のための概念」だ。

では、E-E-A-Tの評価を上げるにはどうしたらよいのか。E-E-A-Tの評価を高める要素として、専門家による執筆や監修や、著者情報、記事公開日やサイトの運営者情報が重要だと耳にした方は多いだろう。ただ、どれもGoogleのランキング要因ではない。単純にこれらを記載すればサイトの評価が上がるわけではない。

E-E-A-Tの評価を高める要素……?

でも、人間の評価者が見たときにこういった情報があったらどう思いますか。このサイト、信用できるよねって思いますよね? Googleには直接的な価値はないかもしれませんが、人間が見た状態でE-E-A-Tがあると思われるサイトづくりをする必要があります(鈴木氏)

GoogleはE-E-A-Tをスコアリングしていないが、さまざまなシグナルを用いて、「このサイトを上位表示したらユーザーにE-E-A-Tを感じてもらえる」と判断している。よって、サイトに記載する意味がまったくないというわけではない。

鈴木氏は「E-E-A-Tは、人間にとって意味があること。Googleを意識するのではなく、どんな状況で、どんなコンテンツを提示すればユーザーにサイトへの信頼や安心を感じてもらえるかを意識すべき」と述べた。参考サイトとして、ニューヨーク・タイムズがE-E-A-Tを意識して著者情報紹介ページを刷新したことを紹介し、「ぜひ著者情報の書き方の参考にしてほしい」と語った。

NYタイムズが著者情報ページを刷新

トピック②AI生成コンテンツ:重要なのは「E-E-A-T」「高品質」「オリジナル」を満たすこと

近年、急速に進化した生成AI。「記事を書く際、生成AIを活用している方?」という鈴木氏の質問に、セッション会場では10人以上の手があがった。鈴木氏が所属するFaber Companyでも、約1年前にChat GPT4で記事を書き、SEOにどう影響するか実験をした。その結果、いくつかのキーワードで上位表示に成功し、1年後の現在も順位を維持しているという。鈴木氏は「じゃあ、全部生成AIでコンテンツを作ればいいのではと思うかもしれませんが、そうはうまくいかないこともあります」と2つの事例を紹介した。

【事例①】

ChatGPTだけでコンテンツを作成していたところ、3つのサイトで突然順位が下がり、10位以下になった。それ以降、どんな記事も上位表示されなくなった。

【事例②】

あるドメイン名で自著の記事を公開する前に、Googleに存在を認識してもらうため、生成AIで作った記事を8本ほど掲載したら、手動ペナルティの通知が来た。

事例をみると、生成AIだけで記事を作成するのは「よくないこと」のように思われる。しかし、鈴木氏は次のように述べた。

上位表示できなくなったり、手動ペナルティを受けたりしたのは、生成AIを使って書いたからではなく、品質が低いスパムコンテンツだったり、自動生成ツールを使ったりしていたからだと思います。書き手は人でもAIでもいいです。

重要なのは、ユーザーがコンテンツに対してE-E-A-Tを感じられるか、高品質であるか、オリジナルであるかです。この3つを満たせば生成AIを使っても問題ありません。でも、生成AIだけに書かせて、この3つが満たせるでしょうか。なかなか難しいですよね? やっぱり人間の手が必要です(鈴木氏)

重要なのは「E-E-A-T」「高品質」「オリジナル」

人間であれば「E-E-A-T」「高品質」「オリジナル」の3つが備えられるというわけでもないので、人間が書いても、生成AIが書いてもこの3つを満たすことが重要だ。ただし、生成AIを使って記事を書く場合、公開前に人間によるレビュー(誤字脱字はもちろんファクトチェックを含む)を必ず、絶対に行うことと鈴木氏は強調した。

トピック③バックリンク:リンクの重要性は下がっているが、やはり重要

「SEOにバックリンクが効く」と聞いたことがある方は多いだろう。しかし、2024年4月にブルガリアで開催されたSEOカンファレンスで、Google 検索チームのアナリストであるGary Illyes氏は「ウェブページをランク付けするのに被リンクはほとんど必要ない。長年にわたり、被リンクの重要性を下げてきた」と発言している。

2023年の11月のシドニーで開催されたカンファレンスのQAセッションでも、鈴木氏は同氏から「リンクなんてなくても上位表示できる」と聞いたという。2022年10月に開催されたBrightonSEOカンファレンスで、現在検索チームのリーダーであるJohn Mueller氏が語った「ランキング要因としてのリンクの重要性はそのうち低下するだろう」との発言を体現したものとなっている。

トラフィックが激増した事例

では、SEOでリンクは考慮しなくてよいかというと「そんなことはない」と鈴木氏。鈴木氏は某カードゲームのアフィリエイトサイトが、それまでトラフィックがほぼ0だったのに、ある時からトラフィックが激増した例を紹介した。

トラフィック激増の理由は「中古ドメイン」だ。有名なアニメグッズ販売サイトの閉鎖に伴って手放された「中古ドメイン」を購入して、アフィリエイトサイトにして、アクセスを伸ばしたと推測される。いくつかのキーワードで上位表示されているという。鈴木氏は次のように分析する。

1ページのみのサイトにもかかわらず、上位表示できている理由を考えると、やはりリンクです。そのドメインはさまざまな有名サイトからリンクがあり、過去に獲得したリンクの評価を引き継いでいるとしか思えない(鈴木氏)

Googleではスパムポリシーとして「期限切れのドメインの不正使用」を定めている。アルゴリズムで処理できるならポリシーに定める必要はないので、Googleはリンク評価の引き継ぎを完全には処理できていないと考えられる。

Googleウェブ検索のスパムに関するポリシー

鈴木氏が執筆した記事が上位表示された事例

鈴木氏は、「やはりリンクは重要。とはいえ、重要でない場合もある」と語り、鈴木氏が執筆した記事が、リンク数では絶対に負けるだろう日経や、ブルームバーグの記事よりも上位表示されていることを紹介した。

情報が最新であり、トピックオーソリティ(その分野に関して権威がある)の高い鈴木氏の記事の方が価値があると、Googleに判断されたわけだ。「新しいトピック、ニッチなトピックはバックリンクがなくても上位表示ができる。ただし、フレッシュさが重視されるため、上位表示される期間は短いかもしれない」と鈴木氏は分析する。

情報の新しさや、トピックオーソリティが重視される場合もある

トピック④ソーシャルシグナル:ランキングシグナルには利用されていない

SNSでの投稿数や、「いいね」の数、リポストの数、フォロワーの数など「ソーシャルシグナル」は、ランキングに影響するのだろうか? 鈴木氏は「Googleは利用していない」と断言し、その理由の1つとして信頼性に欠ける点をあげた。

SNSはbotを作って自分のサイトのコンテンツにコメントしまくる、お金を払ってフォロワーを増やしたり、リポストしてもらったりするなど、簡単に操作ができてしまう。また、「いいね」は「役に立つ」「読んだ」から押したのか、どういった意図で「いいね」したかがわからない。「感情がわからない状態でランキングに影響させるのは、危険」と鈴木氏。

ソーシャルシグナルがランキングシグナルとして利用されていない理由

ランキングシグナルに利用されていない2つ目の理由として、鈴木氏は「アクセス拒否」をあげた。鈴木氏はXのrobots.txtでBingbotがブロックされていることを示した。ブロックされているということは、BingはXの投稿を読み取ることができない。

Xのrobots.txtではBingbotがブロックされている

Twitterの頃にGoogleもブロックされていたことがあるという。「前触れなしに、アクセス拒否されるのがGoogleも怖いんですよね」と鈴木氏。現在、GoogleはAPIでXの投稿を入手できているが、今後何があるかわからない。ランキングに反映させるには不安定なので、Googleはソーシャルシグナルをランキングに利用していないという訳だ。

ランキングへの影響はないからSNSマーケをやらなくてよいということではないです。むしろ、取り組まなきゃダメです(鈴木氏)

SNSで影響力を持てば、間接的にサイトにもプラスになる。また、Googleがランキングに直接反映していないとしても、世の中のトレンドやホットなトピックを判断する際に活用している可能性はある。鈴木氏は「SNSはもちろん、ニュースレターやDMなど、SEOだけにこだわらず施策に取り組むことが大切」と語った。

トピック⑤Core Web Vitals:ランキングシグナルには影響なし。CWVはCV向上を目的に改善を

ページの読み込みパフォーマンスやインタラクティブ性、視覚的安定性に関する実際のユーザーエクスペリエンスを測定する一連の指標である「Core Web Vitals(コアウェブバイタル)」。2021年にGoogleが発表した「Webページ上でのユーザーエクスペリエンス(UX)を向上させるための重要な指標」となれば、SEOに影響すると考えるのが自然だろう。

しかし、Googleの検索チームのポッドキャストのエピソード71で、「多くの場合、そのような段階的な (Core Web Vitalsの)変更は検索結果にはほとんど反映されない」と語り、ランキングに使われていなかったから、ランキングシグナルを説明するドキュメントから削除したという。鈴木氏は「あれほど売り込んでおきながら、どういうことって思いますよね」と苦笑する。

Googleの検索チームのポッドキャスト

2023年11月に、Gary Illyes氏は「SEO目的なら、Core Web Vitalsを改善する必要はない。ランキンクグに与える影響はHTTPSよりもさらに弱い」と語っていたという。ただ、あくまでランキングを上げる目的であれば、の話だ。Core Web Vitalsは、UXを改善し、コンバージョンを高めるために重要な指標だ。

SEOに影響がなくても、コンバージョンが上がれば、売上も上がる。売上が上がったら何も文句はないと思いませんか? Core Web Vitalsはランキングを上げるためではなく、コンバージョンを上げるための指標だと覚えておいてください(鈴木氏)

トピック⑥ユーザー行動:検索結果のユーザー行動は活用されている

2023年10月にサンディエゴで開催されたBrightonSEOカンファレンスで、Danny Sullivan氏が「ユーザーのインタラクションシグナルを利用している」と明言している。鈴木氏は「新しい情報でもなく、Googlの『検索の仕組み』ページに書いてあります」と指摘する。

Googleの「検索の仕組み」にユーザーの
インタラクションデータを利用していることが書かれている

具体的には、新しい検索システムの導入前のテストで、ユーザー行動を見て、想定通りの検索結果になっているか、品質が保たれているかの判断などに活用しているという。鈴木氏によると、Gary Illyes氏は「検索結果のユーザーの動きはすべて記録している」と言っていたという。悪用の恐れがあるため、どんなデータをどのように使っているのか詳細な情報は公開されていないが、「少なくとも、検索結果のユーザー行動はみています。それが検索結果の評価や、改良に使われている」と鈴木氏。

検索結果のユーザー行動は利用されているが、サイト内の行動、Chromeのデータは使われているのだろうか。鈴木氏がGary Illyes氏に聞いたところ、「使っていない。リーガルチームが許可しない。Core Web VitalsでCrUXを利用するときもかなり大変だった」と答えたという。

一方、最近、Googleの検索システムのAPIと思われる内部ドキュメントが流出し、そのドキュメントには検索結果のユーザーのクリックデータやChromeのデータと関連していると思われるライブラリの記述があったという。

真偽や活用の範囲など、わからないことも多い。あくまでもGoogleが使っていると思われるものが出てきただけで、それが実際に検索結果に反映されているかは別問題。不確かな情報に振り回されないように(鈴木氏)

SEOの最終目的はユーザーの目的を達成すること。ユーザーとGoogleが喜ぶサイトを常に追求していこう

鈴木氏は最後に、ヒートマップ分析をもとにコンテンツ改善を行い、CTAのCTRが改善し、コンテンツを最後まで読んでもらえるようになった事例を紹介。改善前は28位だった表示順位が、徐々にランキングが上がり、1位になったという。UX改善が表示順位の上昇と因果関係があるかどうかは明らかではないが、そうした傾向があることを指摘した。

鈴木氏は次のように語り、セッションを締めくくった。

ランキングに影響するかにかかわらず、UX改善には積極的に取り組んでほしい。SEOの最終目的は上位表示ではなく、コンバージョン、つまりユーザーの目的を達成するために取り組むわけですよね。何がランキング要因であろうと、ユーザーとGoogleが喜ぶサイトを提供することが大切。

ユーザーが喜ぶサイトは、ユーザーにとって見やすく、使いやすく、友だち・家族に紹介したくなるサイト。Googleが喜ぶサイトは、クロールしやすく、インデックスしやすいサイトです。みなさんがやらなければいけないのは、ユーザーとGoogleが喜ぶサイトを常に追求することです(鈴木氏)

用語集
API / CTA / CTR / CV / E-E-A-T / SEO / SNS / UX / robots.txt / アフィリエイト / インデックス / クロール / コンバージョン / セッション / ドメイン名 / リンク / 被リンク
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