キリン加藤美侑のデジタルマーケティングなう

乳酸菌市場が熱い! キリンのiMUSE(イミューズ)はなぜアンバサダープログラムを採用したのか?

ファンベースの施策であるアンバサダープログラム。その施策内容、効果測定の考え方について、実例を挙げて解説する

みなさん、元気ですかー? 冬の体調管理は大丈夫ですかー?

ここ数年、乳酸菌市場では、大手メーカーから相次いで新商品が発売され、市場も活性化し、乳酸菌への関心も高まっています。

プラズマ乳酸菌シリーズiMUSE(イミューズ)ではこのたび、ファンベース施策であるアンバサダープログラムを実践することにしました。

今回の記事では、なぜiMUSEでは、テレビCMだけではなく、アンバサダープログラムを実施することになったのか、その理由と施策内容、プログラムの効果測定の考え方について、お話ししたいと思います。

プラズマ乳酸菌シリーズiMUSEとはどういう商品か?

私がデジタルを中心としたコミュニケーションプランニングに携わっているiMUSEは、『i(私)』の中にあるチカラを『MUSE(女神)』が呼び覚まし、いつまでも輝いた人生をサポートするブランド、として誕生しました。飲み物だけでなく、ヨーグルトやサプリメントも展開しています。

なぜアンバサダープログラムを実施することにしたのか?

iMUSEでは、テレビCMや交通広告も実施していて、その上でアンバサダー施策も組み合わせたコミュニケーションプランニングをしています。それはなぜか。

iMUSEのように、日々の体調管理をしっかり行いたい、毎日元気に過ごしたい、という方に、おススメの商品は、実際に飲んだり食べたりしてはじめて、次も買おう! と継続、習慣化していただきたい商品なのです。ところが、企業側がいくら声を大にして「こんなにいいんですよ~!」「おすすめですよー!」といっても、なかなかお客様にその声は届かないのが現状です。

なぜなら、ネットなどから情報があまりにも多く流通するようになったため、情報の受け手が情報に対して非常にシビアになっているからです。つまり、誰もが自分の興味のあることだけ効率よく情報収集し、興味のない情報はスルー。

当然ですが、情報収集には生活者に選択権があるのです。

私たち企業側が発信する情報は、さまざまな情報のうちの1つに過ぎません。生活者のお友達の投稿、たとえば友人の結婚式、子どもが生まれた、今日のラーメン、週末のBBQ……といったような投稿と並ぶわけです。言わずもがな、ですよね(笑)。私たち企業のマーケターが伝えたい情報を届けるのは非常に難しいことがわかると思います。

そこで、今回はアンバサダープログラムを実践することにしました。アンバサダープログラムというのは、アンバサダー(コアファン)の育成と維持を図りつつ、アンバサダーを起点にして新たなファンを増やす施策です。

今回iMUSEが取り組んでいるアンバサダープログラムは、コミュニケーションデザイナーの佐藤尚之(さとなお)さんが提唱している「ファンベース」という考え方にもとづいています。ファンベースについては、詳しくは佐藤尚之さん著「ファンベース──支持され、愛され、長く売れ続けるために」をお読みいただければと思うのですが、簡単にいうと、ファンを大切にし、中長期的に売り上げやブランド・商品の価値を上げていくことです。マーケターの方でしたら、よなよなエールの超宴を中心とした取り組みやネスカフェアンバサダーの施策をご存じの方も多いのではないかと思います。

iMUSEでも友人・知人への推奨など信頼度の高い口コミを増やしていくことで、「身近な人が続けているのなら、私も試してみよう」という人を増やすアンバサダープログラムを実践することにした、というわけです。

具体的な施策は?

「アンバサダー」は「インフルエンサー」とは異なります。拡散力の多い少ないではなく、いかに商品やブランドのことを好きでいてくれるのか、熱い想いがあるのか、という点が重要です。そのためiMUSEでは、SNSのフォロワー数などではなく、“とにかくめちゃくちゃiMUSEのことが好きな人”をアンバサダーと定義しています。

アンバサダーとして登録していただいた方には、「iMUSEへの熱い想いがあるか」を示してもらうためのミッションとして、iMUSEファンを増やす企画に参加していただき、すべてのミッションにクリアした方をファンイベントにご招待します。企画名は「iMUSEアンバサダー ミッションプログラム」。この企画では、アンバサダーの人が、自ら商品やブランドの推しポイントをSNSなどでいいやすいように工夫しています。

iMUSEアンバサダーは熱量の高い方を募集しています

ただ単におすすめポイントをSNSで投稿してもらうのは、アンバサダーのまわりのお友達(フォロワー)には伝わりにくいですよね。であれば、より伝わりやすいようにまたアンバサダーの方もおすすめしやすいように、画像選択型のしくみにしています。以下は、実際にアンバサダーの方がTwitterに投稿した例です。

アンバサダープログラムは、インフルエンサーマーケティングとは異なり、拡散力やリーチ、というのが目的ではありませんが、ファンの中だけで盛り上がるのが目的でもありません。ポイントは“Sell Through The Community ”

Sell Through The Communityのイメージ(小島英揮氏のプレゼン資料より許可を得て転載)

Sell Through The Communityは元AWSマーケティング統括の小島英揮さんが提唱されている考え方で、“ファンに売る”のではなく、“ファンを通して”購買につなげるという考え方です。そのため、ファンの中だけで閉じるのではなく、つねに外に発信しやすいきっかけを与えることを意識して施策を考える必要があります。

アンバサダーマーケティングのKPIは?

何をKPIにするか、これがむずかしい(笑)。正直まだ、「KPIはこれだっ!」という決め手となりそうな指標がありません。しかしながら、施策の前後でNPSのスコアがどう向上したのかは見ていくことにしています。一時的に上がったかどうかではなく、アンバサダー施策を続けていく中で定期的にNPSを見て、上昇のトレンドを示しているか、見ていく必要があると思います。一方、定性的な指標としては、どういったクチコミが増えたのかファンの方がブランドや商品を応援している発信をしているのか、を見ていくことが重要だと考えています。

ただし、短期施策ではないのですぐに効果が表れにくく、アンバサダーマーケティングは、従来のリーチ目的の施策と比べるととても効率が悪く見えます。そのため、よく聞かれるのが、「社内をどうやって通したんですか?」です(笑)。

大事なことは「クチコミで認知の露出を取ろうと考えるのではない」ということを理解してもらうことです。「新規顧客の獲得が目的で、リーチ重視のアプローチ」という従来の考え方とは違うので、マインドセットを変えることが必要です。先に述べたエンタメが過剰であるという外部環境、そしてクチコミが最強のメディアであること、そして短期/単発施策と組み合わせて提案しています。

また、決して短期/単発施策に意味がないわけではなく、役割が違うということを明確にしています。

iMUSEでは、TVCMも交通広告もデジタルの広告出稿もデジタルのキャンペーンも実施しています。そういったリーチ目的の短期/単発施策とあわせてファンベースの施策を実施することで、ファンからキャンペーンやTVCMについてSNSでシェアしてくれたり、まわりの友人におすすめしてくれたりと、キャンペーン効果を大きくしてくれる相乗効果があります。

ファンベース施策は試行錯誤中

ファンベースの施策は、どうしても社内の理解を得ることが難しい、という声をよく聴きます。実際に施策の承認を得る前段階として、まずは新規獲得のためのリーチ重視という従来の考え方を変える必要があります。少人数でもファンの方を見つけて実際に、コミュニケーションを取ってみる(座談会やファンイベントなど)のがいいかもしれません。そこで社内の偉い人(笑)も同席してもらうのが重要です。といっても私も試行錯誤中。一緒にがんばりましょう!

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