キリン加藤美侑のデジタルマーケティングなう

キリンの目指す未来のカタチ? One to Oneマーケティングとは

生活者にOne to Oneで情報を届けるために、キリンはどのような取り組みを始めているのか?

長らくテレビCMなどを中心としたマスマーケティングが主流であった飲料業界。しかし近年、マスマーケティングだけで「認知を獲得する」という手法は限界が出てきたと感じています。

そう感じる理由の1つに、私自身が育休で「いかに生活者に情報を届けることが難しいのか」を体感したからです(詳しくは前回)。

そこでキリンでは、2014年にプライベートDMPを導入して、オンライン・オフラインを問わず、さまざまデータを蓄積し、顧客理解を深める取り組みをしています。そこで、今回はキリンで行っている取り組みを少しだけ紹介したいと思います。

かつてはテレビCMが一番効果的

BBQや海水浴、花火、お祭りなど、楽しいイベントが盛りだくさんだった夏もそろそろ終わり。にもかかわらず、今年はまだまだ例年以上に暑い日々が続いています。

「水分補給をお忘れなく! 熱中症には本当にご注意ください」キリン 加藤美侑さん

飲料やお菓子など、コンビニやスーパーなどさまざまな場所ですぐ購入することができ、高額な商品でない場合、商品を衝動的に買ってもらえるか、も大事な要素になってきます。

そのため、こうしたソフトドリンクやアルコール飲料のことはとにかく広く認知してもらうために、キリンをはじめとする飲料業界は、これまで、テレビCMを中心に利用するマスマーケティングを長らく続けてきました。

ソフトドリンクの種類もそれほど多くなく、テレビが娯楽の中心であった時代には、大勢の人に同じ広告を一度に見てもらえるマスマーケティングが一番効率的だったのです。

マスマーケティングの限界……でも効果がないわけじゃない!

しかし、ほとんどの人がスマホなど複数のデジタルデバイスを使いこなすことが日常となった今、生活者は、膨大な情報の中から、「自分のためになる情報」だけを選び出せるようになってきました。

“安ければいい”、“店頭で目立つものを買う”という時代から変化し、生活者は自分のライフスタイルや趣味嗜好に合わせて商品を購入するようになりました。

そのため、企業側の「こっちを向いて!」「この情報を知って!」という、無理やり振り向かせるような広告手法が通用しない人たちが徐々に増えつつあります。

老若男女問わずたくさんの人に向かって大きな声で商品を訴えて認知を獲得する、というやり方を基本とするマーケティング手法には限界が出てきた、ということです。

誤解がないように申し添えますが、テレビCMは効果がなくなった、と言っているわけではありません。

昔ほど、みんな同一の番組を見る、ということはなくなったため、以前ほど効率がよく、効果がある、とは言えなくなったということです。

しばしばデジタルマーケティングとマスマーケティングは対立構造で語られがちですが、届けたい相手によってはテレビCMの方が効くこともあります。届ける相手やシーンが違うので対立するものではありません

キリンが目指すマーケティングは「キリン主語からお客様主語へ」

そこでキリンでは、2014年、「キリン主語からお客様主語へ」を合言葉に、顧客中心主義のマーケティングコミュニケーションへの抜本的なシフトを始めました。そこで設立されたのが、現在私が所属しているデジタルマーケティング部です。

私たちが目指すのは、適切に情報を提供することで、長期的にお客様と良好な関係を持ち続けることです。

そのために必要なのは、本当の意味でお客様の役に立つこと。たとえば、

  • 暑い中、長い時間歩きっぱなしで駅に着いて(タイミング)
  • ベンチに座ってスマホ開いたSNSで(タッチポイント)
  • 水分摂取を促すような広告(メッセージ)

このようなコミュニケーションができれば、お客様が必要とする情報を適切に提供できるかもかもしれません。

誰だって、必要な情報だけを簡単に得たい

私自身も朝起きてから、

  • LINEをチェック
  • Twitter、Instagram、FacebookとSNS関連をひと通りチェック
  • 天気予報アプリで今日の天気をチェック
  • ニュースサイトへ移動
  • 時にはYouTubeで動画を見る……

という行動をとり、その中では数百の広告を目にしていると思います。でも記憶に残る広告っていったいいくつあるでしょうか? 今日一日を振り返っても1つ、2つあるかな、というぐらいです。

今の時代、生活はつねにメディアと接触でき、消化しきれない情報の中で生活しています。そんな中必要な情報だけを簡単に得たい、というのは当たり前のことですよね。自分にあった情報、自分に有益な情報、仲間との話題に必要なこと……。それをわざわざ探しにいかなくても提示されれば、企業の情報であれ、友人の情報であれ、受け入れられるのではないでしょうか。

「最終的に飲料を飲むのはリアル」だからデジタルとリアルをつなぐ

キリンは、1人ひとりのニーズや購買履歴に合わせて個別に最適化を行うOne to Oneマーケティングを推進するために、2015年にプライベートDMP(自社の顧客情報を活用するためのデータベースシステム)を導入し、オンライン・オフラインを問わず、お客様のさまざまなデータを蓄積し、お客様理解を深めてきました。

  • お客様が欲しい情報を、適切なタイミング、適切なタッチポイントで伝えること
  • お客様の行動・好みに合わせた継続コミュニケーションを行うこと

このようなことを目指しています。

ここで言うタッチポイントは、オンラインだけに限らず、テレビやオフラインイベントも含んでいます。

タッチポイントがオンラインであれ、オフラインであれ、最終的に飲料を買って飲む瞬間って、もちろんですがリアルですよね。そのためにデジタルマーケティング部では、デジタルとリアルをつなぐことを大切にしています。

たとえば、キリンビールの工場に見学に来て、「キリン最高!」となっていただいたお客様がいらっしゃっても、工場見学はほんのひとときです。キリンやキリンの商品に好意的な感情を抱かれたそのときだけでなく、もし工場見学の後、お礼のメッセージを受け取ったり、お家でできる美味しいビールの注ぎ方や、ビールに合うおつまみレシピなどの情報がタイムリーに紹介されたりしたら、お客様とキリンの距離は縮まって、キリンに対しての好意的な感情が持続しますよね。

ブランド単位を超えて、キリングループ全体のファンに

さらに、1人のお客様に複数のブランド体験の記憶を作っていただくことで、従来の商品単位、ブランド単位ではなく、キリンビバレッジやメルシャンといった各企業との絆も強くなり、よりキリングループ全体のファンになっていただければと思っています。

そのため、お客様の生活や感情の流れの妨げにならないタイミングで、より適切な情報をお届けするにはどうすれば良いか。そのために、お客様の行動データを蓄積・分析しています。といってもまだまだ手探りの状態ですが、テクノロジーやデータを活用したデジタルのチカラを活用して、生涯にわたるLTV(Life Time Valueの略で、顧客生涯価値)を向上させることを目指しています!

プライベートDMPその他のデータやツールを活用して、できるだけお客様にとって心地よいOne to Oneマーケティングができるように日々努力しています。

みなさんがどこかのタッチポイントで商品やブランドの広告を目にしたとき、

  • そのタイミングやタッチポイントは適切だったか
  • 情報の内容は興味・関心のあるものだったか
  • 表示される(広告の)頻度はウザくなかったか

など、気にしてみるとおもしろいですよ!

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