精度の高い配信をアンケートで実現――キリンのLINE ビジネスコネクト事例
この記事は、書籍『いちばんやさしいLINE ビジネスコネクトの教本』の一部をWeb担向けに特別に公開しているものです。
この記事では、書籍の第3章「One to One配信」レッスン16「精度の高い配信をアンケートで実現――キリン株式会社の事例」の内容をお届けします。
キリンでは商品情報を主にキャンペーンと絡めて消費者に届けており、キャンペーン応募時に聴取した年齢に応じてアルコール商品の情報を配信しています。ID連携を行わなくても、アンケートで友だちを理解することで、One to One配信が可能になる点がポイントです。
運用の背景と目的
キリン株式会社では主に若年層のリーチ拡大という目的からLINE公式アカウントの運用を開始しました。マスメディアでアプローチできない消費者にデジタル領域でリーチしたいという流れがあり、その中でも特に若年層の利用者が多いプラットフォームとしてLINEを採用しました。当初は、一斉配信のみが可能であったこと、および若年層がメインターゲットであったことから、キリンビバレッジ商品(ソフトドリンク)の紹介を主に行っていました。
ただ、運用を行い友だち数が増えていくにつれ、キリンビールやメルシャンなども含めたキリン全体に還元できるような運用を検討していきました。そこで、20歳以上の友だちを特定した上でアルコールの情報を配信するために、LINE ビジネスコネクトの導入を決定しました。導入に際して、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)が提供するDialogOneを活用しています。
成人限定でアルコール商品の情報を配信
友だち全体に対する一斉配信ではソフトドリンクの情報を、LINE ビジネスコネクトによるOne to One配信では主にアルコールの情報を配信しています。
まずは獲得した友だちに全体に、ソフトドリンクのプレゼントなどのキャンペーンを実施します。キャンペーンの応募条件として年齢(生年月日)を聴取し、これをもとに20歳以上の友だちにアルコール商品の情報を配信していく、というのが基本的な流れです。
アルコールブランドの担当者からは、「LINE ビジネスコネクトで配信してほしい」というリクエストが多く寄せられており、それらを整理しながら友だちに届けています。女性向けの商材であれば女性のみに配信するなど、キャンペーン応募時に聴取した情報をもとに配信も行っています。
あまり時間をかけず、簡単に回答できるアンケートを準備しましょう。キリンのアンケートは10 秒で完了するため、回答してくれるユーザーも多いようですね。
ID連携をしないOne to One配信の効果
アンケートやクイズに基づいた配信
キャンペーンに応募してくれた友だちのLINEアカウントと、応募時に実施したアンケートの回答を紐付けることで、LINE ビジネスコネクトでメッセージの出し分けを行っており、友だちの属性に応じたOne to One配信の有効性を強く感じています。
また、そのほかにもLINE ビジネスコネクトで配信可能な友だちを増やす施策を行っており、トーク画面での会話形式で実施したクイズでは、会話の途中にアンケートを入れることで、これまでアンケートに回答してもらえなかった友だちからも聴取することができました。
圧倒的な反応率
One to One配信に対する友だちの反応は、メールマガジンと比べても格段に良いとのことです。
「LINEは日常的に利用されるアプリなので、反応率はいいですね。反応率でいえば、いまの日本のメディアの中では圧倒的ではないでしょうか」(CSV本部デジタルマーケティング部 野際陽介氏)。
ゆくゆくは数百万人規模の友だちに対するOne toOne配信を目指していますが、これは利用者の多いLINEだからこその目標といえるでしょう。
アンケートによる情報取得
友だちの情報は、主にキャンペーン応募時など、複数回のアンケートで聴取しています。まずは最初のアンケートで性別、生年月日、都道府県、アルコール情報希望の有無といった必ず聞きたい項目を聴取し、その上で、一度回答してくれた友だちにはさらに深いコミュニケーションを取るためのアンケートを行っています。例えば普段飲んでいるブランドや外飲みで飲んでいるブランドなど、かなり多くの情報が聴取できています。これらのデータは、One to One配信に活用するだけでなく、消費者分析用のデータとしても活用しているとのことです。
自社のWeb などで会員を持たないメーカーや、ID 連携にハードルを感じている企業にとって、キリンのLINE ビジネスコネクト活用は大いに参考になるのではないでしょうか。
ブロックの恐れよりもコミュニケーションを重視
アンケートに限らず、適度な配信頻度で友だちとコミュニケーションを取ることは非常に重要です。
ただし、ブロックされる機会を減らすために配信頻度を抑えるという考えに対しては否定的です。「ブロックされることを恐れて何もしなくなるというより、プッシュして、それでも(ブロックせずに)残ってくれる友だちとのコミュニケーションを密にしていくべきだと考えています」(野際氏)。
ユーザー規模の大きなLINEというプラットフォームだからという側面はありますが、「いつも楽しみにしてくれている友だちに何も届かなくなってしまうのは避けたほうがいいと思っています」とも語ってくれました。ブロックが増え、情報を届けられる有効友だち数が減少することはもちろん避けるべきなのですが、そこにとらわれすぎず、コミュニケーションを取りたい相手に対し、しっかりとアプローチしていくことが大切なのではないでしょうか。
ワンポイントLINEの「威力」を感じた瞬間
メッセージ配信ではなくLINEのタイムラインで商品紹介の投稿をした直後に、リンク先のECサイトでその商品が売り切れたことがあったそうです。
商品の魅力も影響しますが、そもそもそれだけ多くの友だちに見られているということでもあります。トークだけでなく、タイムラインでの普段のコミュニケーションも重要であり、おろそかにすべきではないといえるでしょう。
地域ごとの配信が商品にマッチ
ここで、アンケートで聴取した情報をもとにしたOne to One配信の例をご紹介します。キリンは2015年に、各地の風土や郷土に合わせた「一番搾り」を全国9工場で製造し、地域限定で発売しました。このとき、9工場の所在道県および東京都、大阪府を追加した、11の地域に住んでいる友だちに対してOne to One配信を行い、「地元うまれの一番搾り」を紹介しました。友だちの反応は非常に高く、「地元うまれの一番搾り」という商品の認知はもちろん、「自分の地元のビールが出たなら買いに行こう」というように自分ゴト化に成功しました。
このようなOne to One配信は、都道府県別に分けても一定の友だち数が見込めるからこそ意味を持ちます。LINEのユーザー規模があってこその施策といえるでしょう。
PDCAのポイント
「有効友だち」と「アルコールの情報を配信できる友だち(LINE ビジネスコネクトで深いコミュニケーションを取れる友だち)」を増やすことが最重要であり、まずはこれらの数値をKPIとして追いかけています。
投稿ごとのCTRも目標値として設定しており、そのパーセンテージを上げるためのPDCAを回しています。代理店(博報堂)とやりとりしながらクリエイティブの改善などに取り組んでいますが、運用するほどに効果は上がっており、その有効だったポイントを社内に横展開することで、アカウント全体の投稿クオリティを高めているとのことです。
今後は販促につながる活用も
今後は販促への活用にもトライしていきたいとのことです。LINE友だちとキリンとの関係を、オンラインだけでなくオフラインまでいかに発展させるかが重要だと考えており、「お客さまに商品を買いに行こうと思ってもらい、実際に店頭にまで足を運んでいただくという状態を作り出したい」(野際氏)と話してくれました。
すでにサイネージ自販機にLINEを連携させるなどの施策を行ってきましたが、そのほかのキリン社のタッチポイントとLINEをいかにつなげていくかという点も追求していくそうです。同時に、LINE ビジネスコネクトをクローズドキャンペーンのプラットフォームとして活用し、クーポン配信やマイレージキャンペーンなども行っていきたいとのことです。
「LINEを使い倒したい」
「LINE ビジネスコネクトにはすごく満足しています」と野際氏は言います。ただし、満足しきれているわけではないとも。それはキリンとしてまだまだやれることはあるという思いがあるからだそうです。「あとはいかにわれわれが使い倒すかというところに尽きるのかなと思っています。いろいろな機能を開放していただいているので、アイデアを掛け合わせながら、今後もさまざまなことにチャレンジしていきたいと思っています」(野際氏)。
One to One 配信にもさまざな手法が考えられることがおわかりいただけたのではないでしょうか。キリンのユニークな取り組みに今後も要注目です!
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