いちばんやさしいLINE ビジネスコネクトの教本 [Web担特別公開版]

LINEからの反響数は毎月900~1000件、成約率も良好──大東建託のLINE ビジネスコネクト事例

実店舗への送客が最大の目的ですが、会話ベースのコミュニケーションで純粋想起の向上を狙っています

この記事は、書籍『いちばんやさしいLINE ビジネスコネクトの教本』の一部をWeb担向けに特別に公開しているものです。

この記事では、書籍の第3章「カスタマーサポート」レッスン17「有人対応で部屋探し需要を逃さない──大東建託株式会社の事例」の内容をお届けします。

大東建託では、LINE ビジネスコネクトを通じた友だちからの問い合わせにオペレーターが対応しています。実店舗への送客が最大の目的ですが、部屋探しの需要が顕在化していない潜在顧客も多いため、会話ベースのコミュニケーションで純粋想起の向上を狙っています。

運用の背景と目的

大東建託株式会社では「メインターゲット層の20代~30代を含めた若年層にメッセージを伝えるにはどうすればいいのか」「大東建託を知ってもらえるにはどうすればいいのか」と考え、投資という意味合いも含めて、2014年3月にLINE公式アカウントの運用を開始しました。

しかし運用を行う中で、「月に数回のメッセージを一斉配信しているだけではDMと変わらないのではないか」との声が出てくるなど、獲得した友だちと双方向のコミュニケーションが取れないことに課題を感じるようになったといいます。このような背景があったため、LINE ビジネスコネクトのサービスがリリースされた直後に、まさに求めていたものと考え、利用を決定したということです。

部屋探しが必要なときに思い出してほしい

部屋探しの需要は、結婚や進学などの大きなライフステージの変化があった人であれば想定できます。しかし、一般的には「ふとしたニーズによってとっさに発生するもの」であるらしく、部屋探しをしているLINE友だちを特定し、その友だちだけに情報を配信することは非常に難しい、と担当の柿原康之氏(不動産マーケティング企画センター メディア戦略課)は言います。そこで重要になってくるのが純粋想起です。LINE ビジネスコネクトを活用した会話を通じて大東建託を知ってもらい、部屋探しの需要が発生したタイミングで大東建託のことを想起してもらう(思い出してもらう)ことが狙いです。「お部屋に関する問い合わせでなくてもいいので、『いいへやラビット』というキャラクターに気軽に話しかけてもらうことで、友だちとつながっていたいと考えています」(柿原氏)。

▶LINEを気軽に話しかけられる窓口に図表17-1

LINE は比較的購入につながりやすいプラットフォームですが、購入まで時間がかかる商材については、会話を通じて親近感を高める運用が大切ですね。

スタンプで友だちを獲得

友だち獲得の手段としては、これまで主にスタンプ施策を活用しています。繁忙期前にLINE上でアプローチできる友だちを増やす必要があるため、そのタイミングでスタンプなどの施策を行うことが多いとのことです。スタンプ施策は友だち獲得の効果が高いだけでなく、現場店舗の営業スタッフと部屋を探している顧客との会話のきっかけにもなり、コミュニケーションをスムーズにするという副次的なメリットもありました。特に女性がスタンプを好んで使ってくれるとのことです。「お部屋探しの主権者は、例えば新婚さんでいえば奥さまですので、その方々に気に入っていただけることが、弊社のインナーモチベーションにも大きく寄与しています」(柿原氏)。

今後も有効友だち数を増やし配信に触れてもらう中で、LINE ビジネスコネクトを通じて問い合わせをしてくれる友だちも増やしていく意向です。

▶主にスタンプで新規獲得を実施図表17-2

オペレーターならではのコミュニケーション

「お部屋探しサポートサービス」では、友だちから寄せられる問い合わせなどのメッセージにはコールセンターのオペレーターが対応し、LINE上での会話を通じたコミュニケーションを行っています。経験を積んだ担当者であれば、最大で14人くらいの友だちと同時に会話できるそうです。

コミュニケーションのトーンをそろえるために、20代半ばの女性というペルソナを設定し、少々厚めのマニュアルをもとにしたコミュニケーションを行っています。例えば「物件に関する具体的な問い合わせには回答しない」というルールもあります。不動産では同じ条件の物件がひとつしかなく、状況は現場の営業活動に伴い刻々と変化するためで、オペレーターが確認できる内容が最新とは限らないため、物件に関する質問はすべて現場の営業に連絡することになっています。

オペレーターの細やかな対応が大東建託のLINEアカウントの特徴であり、この点には今後もこだわっていきたいとのことです。「不動産はお客さまが求めている条件を100%満たす物件は絶対にありません。そこをうまくマッチングさせていく必要があるので、人がしっかりとコミュニケーションすべきと考えています」(柿原氏)。

想定以上の利用者増に伴い24時間対応に

2015年5月11日にLINE ビジネスコネクトを開始して以来、2016年3月31日までに約160万人もの友だちから問い合わせを受けることができました。中には何度も話しかけてくれる友だちも多く、「こんなに利用してもらえるなんて思っていなかった」(柿原氏)といいます。

この増加する利用者の利便性を高めるために、サービス対応時間を徐々に拡大し、2016年1月からは24時間365日体制での対応を開始しました。「いい部屋ネット」Webサイトへのアクセスは夜間に最も伸びるというデータもあり、LINEでも夜間対応をしっかり行うことにしたとのことです。このサービス対応時間変更は新たなサービス開発にも寄与しています。大東建託は2016年4月13日からアポイント調整や物件紹介などを24時間対応で行う「ネット店舗」サービスを開始しましたが、その背景には、LINE ビジネスコネクトで友だちと24時間コミュニケーションできるようになったことで増した、店舗アポ取りなどへのリアルタイム対応の需要があったということです。

顕在顧客にはフォローも実施

現在はメールも活用していますが、顧客とのコミュニケーション手法は有効友だちに対するLINEの一斉配信を主軸に考えています。メールと同じ内容のキャンペーンの情報を送った場合、クリック率はメールの4倍程度と非常に高いそうです。

LINE ビジネスコネクトを通じた友だちとの会話は、コールセンターのCRMシステムを転用して管理しており、その内容をもとに、フォローメッセージの配信も行っています。例えば、LINE上で問い合わせを受けた友だちに対して、1カ月程度あとに「その後どうですか?」といった内容のメッセージを送っていますが、「ちゃんと覚えていてくれたんですね!」といった好意的な声が多いとのことです。しつこい追跡メッセージは避けるべきですが、適度なフォローは友だちとの関係性構築にも有効だといえるでしょう。「『どんなことでもどうぞ』なんて、LINEなら送れても、メールだとなかなか送れませんから」(柿原氏)。気軽に話しかけやすいLINEの特性を感じているとのことです。

ワンポイントLINEでの会話対応時間の推移

「お部屋探しサービス」の対応時間は、3段階で変更してきました。LINE ビジネスコネクト開始当初(2015年5月11日)は平日10:00~19:00の対応でしたが、約3カ月後の8月7日には対応時間を8:00~24:00に拡大し、土日対応もスタートさせました。そして2016年1月3日からは、24時365日対応に移行しています。

LINEの「反響」経由は成約率も高い

部屋を探している人や引っ越しを前提としている人からの問い合わせを、大東建託では「反響」と呼んでいます。対応の結果、名前や連絡先などの情報を知ることができた顧客候補です。

LINEの運用ではこの反響数と反響単価(反響を獲得するためのコスト)をKPIに設定し、毎日数値を確認し、その結果を一斉配信の画像や投稿文、友だちとの個別の会話内容などの、通常運用の改善につなげています。

LINE ビジネスコネクトを通じた平均的な反響数は毎月900~1000件程度で推移しており、1日30件強の問い合わせが寄せられている計算になります。

こうしたLINE上での反響経由で店舗を訪問したユーザーは、他社不動産サイト経由のユーザーよりも成約率が高いというデータも出ています。そもそも大東建託に興味を持っている友だちからの指名反響が多いため当然の結果だともいえますが、逆にこのように関与度の高い多くの友だちとつながれる場として、LINEを活用する意味は大きいともいえるでしょう。

LINEの反響単価は繁忙期に下がる

LINEの反響単価はWeb広告などと比較しても同等かそれ以下で、Web広告の効率を上回ることもあるそうです。さらに興味深いことに、Web広告とLINE ビジネスコネクトでは反響単価が正反対になる傾向があるといいます。不動産の繁忙期である1~3月は多くの企業が大量にWeb広告を出稿するため、出稿費は高くなり、Web広告の反響単価も高くなります。一方で部屋探しの需要が高まり、LINEを通じた「お部屋探しサポートサービス」では顕在層からの問い合わせが増えるため、LINEの反響単価はWeb広告よりも安くなります。逆に閑散期にはWeb広告の出稿費が抑えられるのに対し、急いで部屋を探したい顕在層も少なくなるため、LINEのほうが反響単価が高くなることもあります。

もっとも、閑散期にはオペレーター人数の調整によるコスト抑制も可能になるため、両者の差がさほど開くことはないそうです。このように他メディアや他施策との傾向の違いを把握しておくことで、よりコスト効率のいい運用につなげることも可能でしょう。

▶Web広告とLINEの反響単価の違い図表17-3

友だちの反応をもとにアポイント方法を変更

LINE上のお問い合わせから店舗への送客につなげる場合には、店舗の担当者とのアポイント調整を行うために、友だちの名前のみを聞くという運用をしています。店舗での本人確認のための情報なので、本名である必要もなく、それ以外の個人情報は店舗で営業担当と会ったときに教えてもらうようにしています。

「実は、最初のうちはお客さまの連絡先を全部教えてくださいと、LINE上で無理に情報を聞こうとしていました」(柿原氏)。しかし、多くの友だちからメッセージで個人情報を送ることに対する不安の声が寄せられたため、現在の運用に変更したそうです。コミュニケーションに完全な正解はありません。重要なのは、コミュニケーションを行ってくれる友だちの声をしっかりと聞きながら運用を改善していくことです。

LINEから営業担当者への引き継ぎに課題

課題を感じている点として、LINEと営業担当者との連携があげられます。LINE ビジネスコネクトで問い合わせをしてくれた友だちとLINE上で会話を行うのはコールセンターのオペレーターであって、営業担当者ではないため、その友だちが部屋探し顕在層であってもLINE上では物件紹介などのやりとりを行えません。物件の詳細情報についてはLINE上で営業担当者とアポイントを調整し来店してもらうか、営業担当者からメールや電話で連絡しているのが現状なのです。この課題を解決するために、コミュニケーションをLINEの中でスムーズに完結できるようにしたいと考えているとのことです。全国に約1,400人いる不動産仲介営業者の一人ひとりがLINE上での友だち(特に顕在層)とオペレーターのコミュニケーションを引き継ぎ、LINE ビジネスコネクトを通じたアプローチを直接行える仕組みの整備を目指しています。

現場の営業担当とスムーズに接続できれば、LINE ビジネスコネクトを活用する意義がますます高まりますね。

  • 著者: 豊田義和/荒川夏実(株式会社トライバルメディアハウス) 著
  • 発行: 株式会社インプレス
  • ISBN: 9784844380856
  • 価格: 1,780円+税

いちばんやさしいLINE ビジネスコネクトの教本
~人気講師が教える双方向マーケティング実践

企業のLINE利用が進化する初の解説書

LINEを使ったOne to Oneマーケティングの実践方法が、先行企業の導入事例から学べる解説書。

LINEの企業向けサービス「LINE ビジネスコネクト」は、いまやメールに代わるインフラとなったLINEを使って、顧客との双方向コミュニケーションやLINE上でのサービス提供を可能にする仕組みです。

11社への取材をもとに、目的別の利用イメージや運用の全体像を解説。導入前の検討から導入後の効果測定まで、企業と顧客を結ぶために役立つノウハウが満載です。

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