いちばんやさしいLINE ビジネスコネクトの教本 [Web担特別公開版]

LINE経由でピザの受注、売上は半年で2億円超──ドミノ・ピザのLINE ビジネスコネクト事例

LINE上で手軽にピザが注文できるサービスが好調で、売上は開始半年で2億円を突破しました

この記事は、書籍『いちばんやさしいLINE ビジネスコネクトの教本』の一部をWeb担向けに特別に公開しているものです。

この記事では、書籍の第3章「LINE上でのサービス提供」レッスン22「ピザの受注経路としてLINEを活用──株式会社ドミノ・ピザ ジャパンの事例」の内容をお届けします。

ドミノ・ピザ ジャパンはLINEを販売チャネルと位置づけてLINE ビジネスコネクトを採用。LINE上で手軽にピザが注文できるサービスが好調で、売上は開始半年で2億円を突破しました。ユーザーの要望に向き合いながら、サービス改善を追求しています。

運用の背景と目的

株式会社ドミノ・ピザ ジャパンは、LINEのアクティブユーザーの多さと生活インフラとしての位置づけに魅力を感じていたことに加え、「最新テクノロジーを導入する企業」のイメージ強化という理由もあり、LINEにはずっと興味を持っていたといいます。しかし一斉配信による情報発信の場ではなく、LINEからスムーズにピザの購入まで行ってもらえる販売チャネルとして利用したいという考えがあったため、LINE公式アカウントの開設までには至っていませんでした。2014年2月に、一人ひとりとやりとりできる機能を持つLINE ビジネスコネクトがLINEより発表されます。その発表の際に紹介された利用イメージが、まさに「宅配ピザの注文」の事例であり、相性の良さを確信できたようです。そして、ドミノ・ピザの日本上陸30周年(国内1号店のオープンから30年)となる2015年9月に、LINE ビジネスコネクトを活用した新しいサービスをローンチしました。サービスはユーザーに好評で、開始4カ月後の2015年1月にはLINE経由の売上が1億円、3月には2億円を超えるなど、順調な運用効果が見られます。

LINEからピザを注文する仕組み

注文の準備として、友だちにはLINEアカウントとドミノ・ピザの会員情報をID連携してもらいます。

注文を開始するには、リッチメニューにある「ドミノ簡単注文」というボタンをタップすると、注文用のURLがメッセージで送付されます。そのURLから注文画面に移動し、注文するピザを選択すれば、すぐに注文できる仕組みです。

▶トーク画面から簡単にピザの注文ができる図表22-1

商品選択から注文までがLINE の画面上で完結するようなサービス体験が基本になっていますね。

Webで接触できなかった新規顧客にリーチ

担当の廣田耕一氏(マーケティング部WEBマーケティング課シニアスペシャリスト)によれば、開始当初はLINEでの注文は「ドミノ・ピザのWebオンライン注文に慣れた既存顧客」と「Webで接触できていなかったLINE上だけの新規顧客」が半々と想定していました。しかしふたを開けてみるとLINEからの新規顧客が7~8割を占め、さらにこれら新規顧客の多くがその後も継続的に注文してくれているそうです。「(ほぼ)LINEしか使っていないユーザー」が確実に存在しているのではないかと廣田氏は分析しています。このようなユーザーはインターネットの利用頻度が低く、Webサイト上の施策はなかなかリーチしません。しかし毎日利用しているLINE上であれば、ドミノ・ピザの存在に気づいてくれる可能性は高いでしょう。「LINEは本当に生活の基盤なんでしょうね。(それまで接触できていなかった層にリーチできる)新しいチャネルという感覚を持っており、チャレンジしていく価値があるという気はします」(廣田氏)。

LINE を「当たり前の場」として使う人にとっては、企業と友だちになる、ピザを注文する、というアクションがつながりやすいのかもしれません。

ワンポイントLINE上で完結する設計の有効性

LINE公式アカウントを運用してきた中で、廣田氏はLINE上で完結する内容であるほどユーザーには響きやすいと感じているそうです。「例えばインセンティブについても、LINEで使える何かのほうがユーザーのモチベーションは高いと思います」(廣田氏)。また、サービスの設計においてもLINEの中で完結するほうが、ユーザーの参加を促しやすいと想定されます。このような考えもあり、ドミノ・ピザでは、LINEからの注文限定で利用できる割引クーポンの配信をしたりと、「LINE上で実際にサービスを利用してくれる友だち」に向けたコミュニケーションを大切にしています。ただし、一斉配信で情報を届けられる友だち数を増やすよりも、まずはできる限りドミノ・ピザを好きな人とつながっていくことを優先したいと考えているため、いまのところスタンプを活用した友だち獲得策は行っていないとのことです。

一斉配信で2種類の情報をプッシュ

一斉配信では、LINEの友だちに対して2種類の内容を提供しています。主に力を入れて配信をしているのが「LINE上での注文限定のオファー」です。

LINE上での気軽な注文を後押しする目的で、月1~2回配信しており、LINE上での注文限定で受けることができる特典をお届けしています。新商品ピザの割引やドリンクプレゼントなどのさまざまなな特典は、友だちの反応や会話ログを確認しながら企画しているとのことです。

もうひとつは「Webサイトへの誘導を目的としたオファー」です。新商品やキャンペーンを紹介し、ドミノ・ピザのWebサイト上で注文してもらう流れを想定しています。LINEからの注文を基本に据えつつ、これまで通り公式サイトから注文したいという顧客にもしっかりと対応したいという意図があります。

▶LINE限定クーポンとWeb誘導用バナー図表22-3

一斉配信とOne to One配信によるコストの違い

LINE ビジネスコネクトを活用すれば、購入履歴などの情報をもとに分類した友だちに対するOne to One配信も可能ですが、現状ドミノ・ピザでは一斉配信のみを利用しています。廣田氏は理由として「規模感」をあげます。「いまの弊社の友だち数やID連携数でいうと、そこまで細かくセグメントしてバリューが出せるかは検討が必要だと思います」(廣田氏)。

前提として一斉配信とOne to One配信には費用体系の違いがあります。一斉配信はLINE公式アカウントに紐付く配信であり、一定回数が定額のアカウント費用に含まれています。このアカウント費用は友だち数と一斉配信回数によって決められており、一斉配信は規定回数内であれば追加費用は発生しません。

一方、One to One配信(個別配信)はLINE ビジネスコネクトの機能であり、配信数による従量課金という体系になっています。もちろん獲得した友だちが増加すれば、個別配信のほうが費用効率が良くなるケースもあるでしょう。ドミノ・ピザでも、例えばヘビーユーザーのみをターゲットとしたメッセージを配信するなどの施策は検討していきたいとのことです。

One to One 配信は従量課金ですが、ターゲットが明確な場合には大きな効果を発揮するでしょう。

ユーザーの声を改善に反映

ユーザーの反応や声をもとにしたPDCAには力を入れています。LINEでは配信内容に対し返信をするユーザーが一定数存在するため、その会話の記録を分析することで、ユーザーのニーズを把握し、注文メニューの更新や、配信内容などに反映させています。またコールセンターに入ってくる声やSNS上の声も見ながら、改善のジャッジをしているそうです。

例えばLINEで注文できるピザのメニューは、ユーザーの声により大きく変わったといいます。サービス開始当初は、LINE上で手軽に注文できるという体験を重視し、メニューをピザとサイドメニューそれぞれ10種類程度に絞っていました。メニュー選択に悩む時間やスクロールにかかる時間などが、「簡単注文」という方向からずれてしまう懸念があったからです。しかし、サービスを開始してみると、ユーザーからは「欲しいメニューがない」「もっとメニューを増やしてほしい」という声が多かったため、LINEで注文できるメニューを増やしていきました。

▶ユーザーの声をくむPDCAの体制図表22-4

運用の手応えと今後の展望

現在、ドミノ・ピザの売り上げ全体の半分以上を、オンライン注文が占めているといいます。その中で、LINEの「ドミノ簡単注文」経由の売上は、2015年9月の開始から半年後の2016年3月に2億円を超えた段階です。「LINEが占める規模感はまだ小さいですが、投資に見合う効果はあると思っています。

テクノロジー活用のPRにもなっていると思いますし、新しいお客さまがそのチャネルから獲得でき、定期的にご注文していただけています」(廣田氏)。

今後もLINE ビジネスコネクトを活用して「手軽にピザを注文できる場」を充実させながら、「最新テクノロジーを活用している会社」というイメージも広めていきたいとのことです。すでにLINE PAYでの決済は採用しており、これからもLINEでより簡単に注文できるような機能を積極的に検討していくとのことです。

LINE ビジネスコネクトは「発想勝負じゃないでしょうか」と廣田氏は言います。「LINE上でユーザーがどのような活動をしているのかを考え、その中で違和感なく使ってもらえるようなサービスをどのように提供できるかが非常に重要だと思います」(廣田氏)。

新しいユーザー層にリーチできたLINE でも、「いかにお客さまがわかりやすく、手軽にピザを注文できるか」という基本方針は変わらないということですね。

  • 著者: 豊田義和/荒川夏実(株式会社トライバルメディアハウス) 著
  • 発行: 株式会社インプレス
  • ISBN: 9784844380856
  • 価格: 1,780円+税

いちばんやさしいLINE ビジネスコネクトの教本
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企業のLINE利用が進化する初の解説書

LINEを使ったOne to Oneマーケティングの実践方法が、先行企業の導入事例から学べる解説書。

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11社への取材をもとに、目的別の利用イメージや運用の全体像を解説。導入前の検討から導入後の効果測定まで、企業と顧客を結ぶために役立つノウハウが満載です。

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