マーケターが育休で実感した、生活者に情報を届けることの難しさ
みなさまご無沙汰しております! キリンの加藤です。
約1年、産休・育休でお休みをいただき、今春復職しました。今月より、連載再開させていただきます! あらためてどうぞよろしくお願いいたします。
さて、産休・育休の1年間、どう過ごしていたかというと、完全にマーケティングから離れた生活を送っていました。
新卒で就職してからこれまでの間、ずっと仕事としてマーケティングに携わってきましたが、とても貴重な1年間、仕事としての「マーケティング」から全く離れ、いち消費者として暮らしてみた、というわけです。
しかし皮肉なことに、マーケティングを実施する視点から離れて生活してみたことで、自分がそれまで当たり前だと思っていたことが、じつは全然当たり前ではなかったことに気づき、とても驚きました。
単純に「30代・女性」や「子供1人の母親」といった性別・年齢・属性でくくったコミュニケーション設計では、情報を受け取る側には情報が届いていないのです。
”まったく”受け取ってもらっていないと断言してもいい!
では、マーケターが届けたい情報は、どうすれば届いてほしい人の心に刺さるのか、なぜOne to Oneマーケティングに力を入れなければいけないのか。それらについて考えたことを、今回ご紹介したいと思います。
情報を届けるのは想像以上に難しい!
私が一番「はっ!」としたのは、生活者に情報を届けるのは、想像していた以上に難しい! ということです。
「いやいや、いまさら! そんなこと知ってるよ」と思いますよね? 私もそう思っていました。
しかし、身をもって体験してみると、その難しさは、私の想像を遥かに超えたものだったのです。
多種多様なメディアに情報が溢れている現在、生活者に適切なタイミングで、適切な情報を届けることは、きわめて難しくなった
生活者は、自分の好きなタイミングで、欲しい情報だけを取るようになった
よく耳にしていたこれらの状況は、実際にその通りでした。
私たちマーケッターが「届けたい!」と思っている情報を、受け取ってほしいユーザーにきちんと届けられるチャンスは、思っていた以上に少ないんです。
本当に少ない。
たとえば、30代女性をターゲットとした商品の場合だと、
- 30代女性はInstagram見るよね!
- じゃあInstagramっぽいクリエイティブで広告出そう!
というプランニングや、
- スマホでニュースメディア見るよね!
- ニュースメディアに動画広告出そう!
みたいなプランニングって、わりとありがちだと思うんです。
でも、当たり前の話ですが、同じ「30代」「女性」であっても、1人ひとり状況が違います。
マーケティングやデジタル業界に携わっていないママ友だけでも、
- メインの情報源はテレビで、SNSはすきま時間にTwitterを眺める人
- 毎日子供が起きる前に、スマホでニュースサイトとInstagramをチェックする人
- 昼間はLINEのやりとりだけで、寝る前にオンラインショッピングを欠かさない人
などさまざま。
マーケターの視点から言えば、情報を届けるチャネルとタイミングが、ユーザーが情報を取得するタイミングやタッチポイントから外れてしまうと、要る要らない以前に、その視界に入ることすらありません。
セグメントは「属性」から「興味関心」「One to One」へ
もちろんタイミング・タッチポイントだけではなく、ユーザーのライフステージや生活環境が変化することで、欲しい情報の内容や質が変わるために、結果として届けたい人に届かなくなってしまう場合もあります。
こういう場合に、「30代・女性」とひとくくりにするのではなく、状況に応じてパーソナライズした情報の配信が重要になってくるのです。
私自身は「30代・女性」ですが、産前は、ファッション、グルメ、釣りといったどちらかと言えば趣味の情報を求めることが多かったので、バナー広告やリコメンドされるニュース記事、コンテンツ、送られてくるメルマガなども、そういう内容のものが多かったです。
ところが、産後は当然ながら、それまでまったく興味関心のなかった子育てや紙おむつ、ミルクなどの情報を、猛烈に集めるようになりました。
そうすると、だんだんと出てくるバナー広告もプッシュされるコンテンツ、届くメルマガもそれに沿った内容にガラリと変わったのです。
デジタルマーケターなので、仕組みとしてもちろん知っていたのですが、自分自身が1ユーザーとして体験してみると、その正確さに正直驚きました。
生活者の状況は、1人ひとり異なっていて、日々細かく変化しています。だからこそ、One to Oneマーケティングによって、最適なタイミング・タッチポイント・メッセージでコミュニケーション取る必要がある。それにはデジタルが不可欠です。
デジタルの利点は、リアルタイムかつ定量的に生活者の行動や趣味嗜好を分析・判別して、それに応じたコミュニケーション施策が取れることですよね。
生活者も欲しい情報を、好きなタイミングと手法で簡単に受け取れることを求めています。
データをうまく活用すれば、生活者それぞれが欲しいと思っている情報を、欲しいと思っている瞬間に、ピンポイントで届けたり、コミュニケーションを取ったりすることができる。これって実はすごいことですよね。
マーケティングを実行するという立場から離れ、純粋に情報を受け取る側の立場になってみたことで、改めてデジタルマーケティングの可能性・未来を感じました。
実はキリンでも、2015年に構築したプライベートDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)によって、オンライン・オフラインを問わず、顧客のさまざまなデータを蓄積しています。さらには、自社保有のデータだけではなく、調査会社のパネルや、テレビメーカーが保有する視聴データなど、外部のDMPと連携し、顧客と長期的で良好な関係を構築することを目指しています。
このコラムでは、これらのデータを活用して、どのようにお客様とコミュニケーションしていくのかの方法や考え方、そして具体例が必要な場合は、私の関わっている商品ブランドを例にしながら、事例やノウハウなどを発信していく予定です。
引き続きご愛読くださいますよう、よろしくお願いします。
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