初代編集長ブログ―安田英久

「木こりのジレンマ」という寓話|斧を研ぐ時間がなぜ重要なのか?

木こり(樵)のジレンマは、効率の悪い仕事の例え話です。斧ではなくノコギリが使われるなど、さまざまなバリエーションはあるようですが、「目の前の仕事の手を休め、効率よく作業する工夫をすれば全体の効率が上がる」という意味です。Web担当者・マーケターの斧研ぎは「業務効率化」「成果改善の仕組み」「情報収集」がキーワード! 楽しく仕事をするために思考を転換しましょう。
Web担のなかの人

今日は、「忙しい」が口ぐせになっているWeb担当者・マーケターの「仕事の進め方」について。「木こりのジレンマ」という話しを聞いたことがあるでしょうか。

木こりのジレンマ

日々多忙で余裕がない「忙しい」が口癖になっているWeb担当者さんやマーケターさん、けっこう多いのではないでしょうか。

そんな方に知ってほしい、「木こりのジレンマ」という話があります。

オリジナルは不明なのですが、ビジネス業界でよく使われるたとえ話で、次のようなものです。

ある木こりが、がんばって木を切っている。

通りがかった旅人がその様子を眺めていたが、斧を振るう勢いのわりに、なかなか木が切れていない。

見ると木こりの使っている斧がこぼれしているようなので、旅人は言った。

「斧を研いだほうがいいのでは?」

すると、木こりは言った。

「わかっちゃいるんだけどね、木を切るのに忙しくて、それどころじゃないよ」

斧ではなくのこぎりのバージョンがあったり、2人の木こりがいて片方がしばしば座って休んでいるように見えて実は斧の手入れをしていたというバージョンがあったりと、同様の内容でいくつかのバリエーションがあるようです。

いずれにせよ、「目の前の作業をこなすのに精一杯で、それを効率良く進めるように工夫する余裕がない」様子を表した話ですね。

もちろん、この話が実際に伝えたいのは、「目の前の作業に夢中になりすぎるのではなく、いったんそれを止めて、効率良く進めるための工夫をすれば、同じ作業をもっと楽に進められるようになり、全体として時間あたりの効率が上がる」ということでしょう。

忙しすぎるあなた、斧の手入れをしていますか?

さて、Web担当者さん、あなたは木を切るのに夢中になって、斧を研ぐのを忘れてしまってはいないでしょうか。

日々の打ち合わせ、発注、チェックや更新の作業、データ分析、上司へのレポート作成などなどなど、やることは多いですよね。

また、時代にあわせてWebやデジタル広告でやることもどんどん増えているのに、なかなか人は増やしてもらえない。

気がつくと、がんばって木を切っている木こりのような状態に。

では、Web担当者さんやマーケターさんにとって「斧を研ぐ」とは、どういうものでしょうか

3種類あると思います。「業務効率化」「成果改善の仕組み」「情報収集」ですね。

業務効率化のための斧とぎ

業務効率化は、実はWeb担編集部のなかでもいろいろやってます。いわゆるワークフロー改善というやつですね。

CMSの機能としてHTMLやリンクの自動チェック機能を入れたり、よくあるミスは自動的に修正する仕組みを入れたり、日本語の校正チェック機能を入れたり。

アクセス解析関連も、可能な限りCMSと連携させたり、Googleスプレッドシートで自動的にレポートを生成したりと、「がんばって手を動かす」作業を減らすようにしています。

クライアント案件でも、よくある手戻りを防ぐために「案件のゴール」「ターゲットセグメント」「その人たちのニーズやペイン」といったキーとなる情報を明確化してドキュメントに残すといったことが重要です。

もっと言うと、PMBOKなどのプロジェクトマネジメント手法を参考にするだけでも、仕事の進め方が変わるはずです。

業務を効率化するための斧の研ぎ方としては、

  • 無駄な手作業をなくしたり
  • 人手でやることで生じるミスを防いだり
  • ワークフロー内のだれかが見落として時間がかかってしまうことを防いだり
  • そもそも決めておくべきことを定めたり

そうしたことができる点を見つけるのが一番です。

そして、その改善をツールやドキュメント化で進めるというわけです。

成果改善の仕組みのための斧とぎ

成果改善のためには、多くの場合ツールを導入したり、データ分析の仕組みを作ったりすることが多いと思います。

当然のことながら、そもそもコンバージョンが何かを設定して、それを測定できるようにするだけで、思い込みだけで施策を考えるのに比べて成果は伸ばしやすくなります。

最近では、サイト上でのユーザー行動の裏にある心理を把握するためにヒートマップを併用するのが必須になってきている感もあります。

また、悩んだり会議で議論したりする暇があれば、まずはA/Bテストを進めるというのが、成果を伸ばすには一番ですよね。

広告による集客なら、「昔から出稿していて成果が伸び悩んでいる」広告サービスをなんとかして改善するよりも、もっとターゲットユーザーが集まっている新しい広告サービスを試すだけでも変わったり。

成果改善の仕組みのための斧の研ぎ方としては、やはりアドテクを活用したり、データ分析の仕組みを導入するのが良さそうです。

今なら、AI系のサービスを使えば「ここをこうするとコンバージョンが増えますよ」とアドバイスをくれることもありますからね。

情報収集のための斧とぎ

実は前出の2つに関して、具体的に価値のある斧の研ぎ方を知るには、どんな手法や考え方があるのか、どんなツールやサービスが世の中にあるのかを知らなければいけません。

そのためにも、「適切に情報を集める」という行為が、実は斧を研ぐためには最も大切なのかもしれません。

いろんな経営者さんに話しを聞いても、優秀な人はやはり「本を読む」「他の経営者の話を聞く」ということを、日々続けています。

Web担当者さんやマーケターさんの業務だと、セミナーを通じて情報を得るというのもありますし、もちろんWeb担のようなメディアサイトの情報をチェックするのも、日々の斧のメインテナンスですよね。

斧を研いでいる間は木は切れない

ただし、最初の木こりと同様に「そんな暇はない」というのも、現実的にはあると思います。

そりゃそうですよね。やらなきゃいけないことはあるし、斧を研いでいる間は木を切れないわけですから。

実際のところ、私も意識して外のセミナーやイベントに行くたびに、メールや作業などが貯まって、仕事が遅れてしまいます。

ですので、すでに忙しくて手が回っていない状況でさらに斧を研ぐためには、どこかで無理をしなければいけないというのは、否定できません。1週間ほどいつもより早出したり長く残業したり。または、週末にゆったりせずにがんばってみたり。

そうでなければ、「何かをやめる」というのも手です。今やっている仕事(作業)に優先度を付けて、本当にやらないとまずいもの以外はいったん止めてしまうという、思い切った判断ですよね。

◇◇◇

もしあなたが、「斧を研がなければまずい」と気がついているのならば、どこかでエイヤっとがんばって何かを変えてみませんか? そうでなければ、時代の変化に追随しづらくなり、相対的な斧の刃こぼれはどんどん進んでいってしまうものですからね。

ちゃんと斧を研げば、今「忙しい」「大変だ」と思っている人も、もっと楽しく仕事をできるようになるんじゃないかと思います。

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