ほとんど知られていない「Amazon ログイン&ペイメント」導入の仕方とその詳細
この記事は、姉妹サイトネットショップ担当者フォーラムで公開された記事をWeb担当者Forumに転載したものです。
自社ECサイトで「Amazon.co.jp」のアカウント情報を使って配送先指定やクレジットカード決済などができる「Amazon ログイン&ペイメント」。その導入先として「劇団四季」「出前館」のサービス系サイトが導入パートナーとなったことが5月11日に明らかになったが、中堅・中小企業を含めた他の自社ECサイトも導入できるようになることは知られていない。EC構築支援のプラットフォーム「FutureShop2」を提供するフューチャーショップが「Amazon ログイン&ペイメント」を実装し、9月1日にオプションサービスとして提供を始めるのだ。
「Amazon ログイン&ペイメント」の仕組みと特徴
「Amazon ログイン&ペイメント」は、米国Amazonが先行し、欧州などで提供している「Login and Pay with Amazon(ログイン アンド ペイ ウィズ アマゾン)」の日本版。2013年にアメリカでスタートし、2014年にはイギリス・ドイツ・インドでもサービス提供を始めている。日本は5か国目。
大きな特徴として、「Amazon ログイン&ペイメント」を導入したECサイトでは、「Amazon.co.jp」のアカウントでログインすることができ、そのアカウントで登録している配送先住所やクレジットカード情報などを利用できることがあげられる。
多くの消費者が利用する「Amazon.co.jp」のアカウントで、「Amazon ログイン&ペイメント」を導入したECサイトで消費者は商品購入できるようになるということ。カートの離脱率を下げ、コンバージョン率の向上、新規会員登録促進につなげることができるようになる。
ビジネスシーンに関する「Amazon ログイン&ペイメント」の紹介動画
消費者向けの「Amazon ログイン&ペイメント」の紹介動画
【「Amazonログイン&ペイメント」に関するサイト】
利用者情報は自社ECサイト側で通常通り管理することが可能
この仕組みをECプラットフォームとしては日本で初めて実装するのがフューチャーショップ。EC構築支援のプラットフォーム「FutureShop2」を利用する1900店超の店舗が、オプションとして利用できるようになる。サービス提供は9月1日を予定しており、先行して7月1日から利用の受け付けを始める。
「Amazon ログイン&ペイメント」の外部提供に合わせたシステムをフューチャーショップが開発。「FutureShop2」のプラットフォームを利用して構築したECサイトにおいて、「Amazon.co.jp」のIDとパスワード情報を使って消費者がログインし、その情報を外部企業(買い物をしている自社ECサイト)への提供を許可することで、会員情報やアドレス帳に登録された届け先リストなどを呼び出すことができるようにする。
フューチャーショップの星野裕子社長は導入メリットを次の3点にまとめた。
導入メリット
- Amazonアカウントでログインできるので新たなアカウントを作成したり、パスワードを覚える必要がない
- Amazonアカウントで登録された会員情報および送付先情報(アドレス帳)を活用できるので購入時に必要な情報入力が圧倒的に少なくなる
- Amazonの決済システムを利用できる(クレジットカード番号入力の必要なし)
この導入メリットが自社ECサイトにどのような効果をもたらすのか? それは、注文完了での時間が圧倒的に短縮し、カート放棄率の改善、コンバージョン率の向上が期待できるようになると考えられる。
消費者は「Amazonログイン&ペイメント」導入店舗において、Amazonの登録情報を使ってサイトにログインできるようになる。ログインしたまま、そのECサイトで決済できるようになることは自社ECサイトにとり、利便性の向上につながる。
「Amazonログイン&ペイメント」はログインにとどまらずそのまま決済まで行うことが可能。一見簡単なように見えるこの仕組みだが、OpenIDでのログインだけでは実現することは難しいとされる。他の事業者のOpenIDなどが提供できない“ネット上の買い物に関する情報”、つまり、小売事業者であるAmazonだからこそ保持している送付先住所といった個人情報情報を、外部企業は活用できるように設計しているためだ。
また、「Amazon.co.jp」が提供するペイメントサービスを利用することは、セキュアな環境の担保、初回購入時のユーザーの不安を取り除くことになるので、信頼性・安心感の提供につながる。個人情報の入力の手間がなくなることは、初回購入時の不安の取り除きなどに寄与する可能性が高い。
「Amazonログイン&ペイメント」を使った顧客情報は従来通り、自社ECサイトの顧客情報として活用できるのも特徴だ。「Amazonログイン&ペイメント」を利用して会員登録や決済をした会員情報および購入情報は、自社ECサイト側で通常どおり管理することが可能。メールマーケティングやクーポン、ポイントプログラムなどの販促活動に利用できる。フューチャーショップの星野裕子社長は次のように説明する。
購入手続き以降の画面遷移や決済手続きフェーズで、他サイトに移動するサービスはこれまでにもありました。
しかし、今回の実装では導入している自社ECサイトから他サイトに移動することなく手続きが完了し、シームレスな環境が用意できることも特長的。
さらに、「Amazonログイン&ペイメント」経由で登録した会員情報や購入情報は、自社ECサイト側で通常通り管理でき、販促活動に活用できる。店舗側にとっても、消費者側にとってもいいことずくめです。
「Amazonログイン&ペイメント」は、すでに開始されているアメリカなどでは、導入効果としてコンバージョン率が34%アップした事例や、顧客単価が30%向上した事例がある。
「Amazon ログイン&ペイメント」を導入したパートナー企業の、導入前後の数か月でのコンバージョンレート(カートに商品を入れた後の成約率)比較を見てみる。
- THE CLYMB → 10%UP
- ting → 22%UP
- Peach Dish → 23%UP
- ALLSAINTS → 34%UP
インテリア雑貨などの「cymax」では、3人に2人が、「Amazonアカウント」のID・パスワード、住所情報を利用して会員登録しているという。
ちなみに、フューチャーショップが「Amazon ログイン&ペイメント」を競合のプラットフォームに先駆けて導入できたのは、Amazonが開拓したいEC企業の層とマッチしたからとみられる。
独自ドメインサイトが抱える課題を解消できる“自社EC革命”の始まり
フューチャーショップは、「FutureShop2」の稼働店舗で月間訪問者数5万人以上のECサイト中10店舗を無作為に抽出し調査を行ったところ、商品をカートに入れたものの、決済完了までたどり着かないカート放棄率が平均66.17%を示していた。
その理由として星野社長があげたのが次の2点。
- 購入手続き画面に進んだ後、注文者の情報や送付先情報の入力の煩雑さで購買意欲が削がれてしまう
- 決済時のクレジットカード情報入力時の不安
上記2点に加え、スマートフォンでの購入率が30%を超えるECサイトも多く、住所などの入力時の手間によるカート放棄率は、自社ECサイトを運営する企業にとって大きな課題となっていた。
「Amazon ログイン&ペイメント」はこうした自社ECサイトが抱える課題の解決につながる有効なソリューションとなりそう。「出前館」などのように直接自社のECサイトに導入するには、新たな開発などが必要となる。カート部分を実装のために開発し直すといったことが発生するためだ。
こうしたことは、開発者を抱えていない企業にとりコストも労力もかかるため、すぐに対応することは難しい。だが、フューチャーショップのような「Amazon ログイン&ペイメント」を実装したプラットフォームを利用すれば、中小企業でも簡単に利用できるようになる。
1900店舗超のEC実施企業が「Amazon ログイン&ペイメント」を利用できる状況になるフューチャーショップの星野社長は「Amazonのこのサービスは、EC業界に大きな変革をもたらすようになると思った」と説明。次のような想いを述べている。
すでにEコマース自体はコモディティ化しています。というより、世の中はコモディティだらけといっても過言ではないでしょう。商品の機能的価値で優位性を保ち、利益を生み続けることは正直難しい時代。一時はいいかもしれないが、すぐに競合が出現し、瞬く間に機能的な優位性は失われ、広告などのマーケティングコストは肥大化する割には価格競争で利益を確保しにくくなっています。
皮肉にも、インターネットという、まさに、Eコマースが存在する土台によって、より一層サイクルが速まったとも言えます。競合との差別化という相対的な価値ではなく、お客さまにとっての絶対的な存在意義から選ばれるショップにならなければ、疲弊していく可能性が高くなっていくでしょう。
それに対応するには、やはりモール出店だけではなく、自社の理念やブランドを表現する自社Eコマースが必要です。これからは、「モノを売る」ことから「コトを売る」「体験を売る」「アイデンティティを売る」という、もう一段階上のステージで、新しいEコマースの世界が広がっていくと感じています。オムニチャネルもその手段の1つだと考えています。
この先どんどん、人々にとってネットショッピングというものが特別なものではなくなっていくでしょう。「雑誌を見てスマホで調べる」「友達が持っているモノをスマホで調べる」「テレビを見ていて気になるモノをスマホで調べる」「SNSでのクチコミをみてサイトにアクセスする」……など、衝動的でエモーショナルな瞬間を作り出すことさえできれば、いつでもその瞬間に商品にたどり着いてもらえるのが今の時代です。
しかし、その瞬間に消費者を商品購入へつなげることは、自社ECサイトには大きな壁がありました。それは、消費者が買い物意欲最高潮の最中、煩雑な購入手続きである個人情報等の入力作業が発生し、「楽しくて心地よいショッピング体験」の邪魔をしてしまっていたのです。そこで興ざめしてしまい、テンションを維持できなくなり、カート放棄になってしまうケースが多かったのです。
しかし、その壁を「Amazon ログイン&ペイメント」で取り除くことができるようになるでしょう。これこそ、自社ECサイトは、もう一段階上のステージで、新しいEコマースの世界を提供できる大きな一歩になると考えています。自社ECサイトが盛り上がることで、EC企業側がもっと主体的にEC市場を牽引していく時代になるはずです。
「Amazon ログイン&ペイメント」の導入は、オムニチャネルを進めるEC企業を後押しする効果もありそうだ。
たとえば、フューチャーショップのユーザーであるDIY商材のECを手がける株式会社大都さまは、実店舗(体験型DIYショップDIY FACTORY)にある商品を試すことができるサービスを展開しています。来店者に対し、ドリルなどの大きく重い商品は、その場でネットでの購入をお薦めしています。
しかし、ユーザーは情報登録などが手間となり、購入に至らないケースがあると聞いています。しかし、「Amazon ログイン&ペイメント」を導入した「FutureShop2」では、初回の購入時でも最短3クリックで商品購入ができるようになります(ログイン&情報提供に関する許諾&注文確定クリック)。オムニチャネル戦略を加速するお手伝いができる強力なツールになるはずです。
オリジナル記事はこちら:ほとんど知られていない「Amazon ログイン&ペイメント」導入の仕方とその詳細(2015/05/12)
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