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質の高いコンテンツを効率よく生産するための戦略とワークフロー(前編:コンテンツ戦略とプランニングツール)

「質の高いコンテンツを極める」にはどうすればいいのだろうか
この記事の内容はすべて筆者自身の見解であり(ありそうもないことだが、筆者が催眠状態にある場合を除く)、Mozの見解を反映しているとは限らない。

「質の高いコンテンツを極める」にはどうすればいいのだろうか。それなりの規模で、コンテンツの質を確保し、測定可能な成果を生み出す方法を伝えること――これが僕個人の小さな目標にしてきたことだ。この記事では、現実にユーザーが求めていて、僕たちがビジネスの目標を達成できる助けになるものを、どのように生み出せるかについて解説しよう

多くのカンファレンスに講演者として招かれるという幸運に恵まれている者として、僕は、特に依頼でもない限り、プレゼンテーションの使い回しはしないことを誇りにしている(つまり、コンテンツの使い回しはしないということだ)。

しかし、SEOに携わる人にとって、コンテンツの「質」と「規模」という2つの概念の間には、常に大きな断絶がある。ある意味これももっともだ。というのも、2011年まではコンテンツの質がオーガニック検索のパフォーマンスに影響することはさほどなかったからだ。

しかし、今は「ポスト・パンダ」の時代だ。グーグルは、FUD(Fear, Uncertainty and Doubt:大衆の「恐怖、不安、疑念」をあおるネガティブキャンペーンのような手法)とアルゴリズムの改良を組み合わせて、「SEOのためだけに作られたページ」を実質的に葬り去った。

このことについて、僕個人としては、僕たちの仕事のステップアップにつながって、より質の高いウェブ体験を提供する機会が得られるので、とてもいいことだと思っている。

「質の高いコンテンツを極める」という僕のプレゼンテーションは、コンテンツの質と規模を解説することを目的としている。

これがスライドだ。僕はこれを何回もプレゼンするなかで、僕自身のクライアントの仕事で出会った新しいツールを基にしたものや、業界内部で注目されたものを追加しながら、多くの改良を重ねてきた。だからバージョン1.4なのだ。今回はスライドを1枚ずつ説明することはせず、重要なポイントを含むものだけを取り上げる。

だれもが「コンテンツ」を話題にしている

コンテンツマーケティングの話題は、ここ2年で異常なほどの盛り上がりに達した。

コンテンツマーケティングソフトウェア企業(CompendiumやEloquaなど)は、数億ドルで買収された。より小さなツールを手がける企業(Contentlyなど)は数回の資金調達ラウンドを実施しており、僕自身も含め、周囲のマーケターたちはこぞって「コンテンツは王様」というフレーズを唱えている。

それもそのはずだ。マーケターの92%がコンテンツマーケティングを手がけていて、B2Bマーケターの58%(B2Cマーケターの60%)は2014年のコンテンツマーケティング予算を増やす計画だという驚くべき統計さえ報じられている!

検索連動型広告は1000ドルあたり9人の見込み客を(広告を出稿している限り)獲得するが、コンテンツマーケティングならば最終的に1000ドルあたり31人の見込み客を獲得できるほど費用対効果が高くなる(Eloquaの調査資料より)。

では、なぜコンテンツマーケティングがそれほどの特効薬とされているのだろうか? そして、実際には昔から行われてきているコンテンツマーケティングがなぜ、新しいものとして再び話題になっているのだろうか?

理由は簡単で、コンテンツマーケティングという考え方が非常にうまく受け入れられるからだ。すばらしい成果を出している人もいるようだし。

コンテンツマーケティングのROI(投資利益率)に関する合同調査(EloquaとKapostによる)では、「最も効率的なデジタルマーケティングチャネル」だと考えられているリスティング広告と、コンテンツマーケティングを比較している。

調査では、有料検索からのトラフィック量とCPL(Cost Per Lead:リードあたりの獲得コスト)、ひいてはROIは、予算が同じままなら時間が経っても同じままだと結論付けた。それに対して、コンテンツマーケティングのCPLは時間の経過とともにはっきりと減少する。なぜなら、コンテンツは、継続的に投資をすれば複数のチャネルからトラフィックを生み出し続けるブランド資産だからだ。

コンテンツマーケティングは、マーケティングという観点から、こういう成果が期待されているのだ。

そのためマーケターは大量のトラフィックやリンク、「いいね!」を獲得したいと思っているが、実際のところ、ユーザーの反応は次のようになる。

「Meh」は無関心(別に、どうでもいい)気持ちを表す

コンテンツを公開したとしよう。共有はされず、「いいね!」もクリックしてもらえず、トラフィックはいったんは上昇しても後は急降下する。先の長い勝負なのだからと考えて根気よく続けるものの、数か月が数四半期になり、数四半期が数年になっても、反応はいっこうに変わらない。

なぜ、企業コンテンツマーケティングは映画のようにうまくいかないのだろうか? 理由を説明しよう。

ごく単純なことだ。だれもが欲しがり関心を持つような、便利で役立つコンテンツを作っていないからだ。これは非常にまずい。毎日毎日、膨大な数にのぼるコンテンツマーケティングの素晴らしい実例と注目度を競っているとなると特に、あなたのひどいコンテンツをシェアしたりリンクを張ったりするのはだれだって恥ずかしくてできない。

それからもちろん、バイラルメディアの存在もある。あなたはBuzzFeedのような「注目を集めるため」だけに存在するメディアとも競争しているのだ。

2014年、出来の悪いコンテンツに弁解の余地はない

ホームレス風の男が手に持っているボードにはこう書かれている「食べ物をくれれば、デザインします」

一昔前、SEO担当者として僕たちは、アーティクル・スピニングを行ったり、製品の説明文の作成をAmazon Mechanical Turk(人力の作業をオンラインで依頼できるクラウドソーシングサービス)に外注したりしていた。あなたが、そうした時代を懐かしむのは良いが、実際にはそんな時代はすでに終わったのだ。

ただし、僕たちにとって幸いなことに、「ポスト・パンダ」の時代は、従来のジャーナリズムが寿命を終えようとしているときに始まったため、グラフィックデザイナーの数に比べ、活躍できるクリエイティブなポジションのほうが少ない現状がある。

僕たちは今、次から次へとサイトが生まれる市場の時代にいる。

マーケターは、プロジェクトのメンバーとして、ライター、グラフィックデザイナー、デベロッパー、そしてデータサイエンティストさえも自ら選び、彼らのポートフォリオやレビューを土台にしてプロジェクトに取り組むことができる。市場は競争を生み出すので、予想をはるかに下回るレートで質の高い仕事をしてもらえる。

とはいえ僕は、カンファレンスのたびに、次のような質問をよく耳にする。

活気のないニッチ市場に向けたコンテンツはどう作ったらいいのか?

コンテンツのアイデアはどうやったら思い付くのか?

これには当惑させられる。世の中にはかつてないほどたくさんのデータがあるのに。2011年のIBMの調査によると、僕たちは毎日250京バイトのデータを生み出しているという。

ここから言えることは、次の3つだ。

  • この数字にはゼロが一体いくつあるのか僕にはわからない。

  • これは2011年のことだ。

  • 最も大切なこと。この大量のデータの大部分は、考えられるほぼすべての概念に関する人々の態度、関心、意見を表したものだということだ。

つまり、あなたが欲しいデータが見つからないなどという状況は、めったにないはずなのだ。もしピッタリのものが見つからなくても、まったく新しいコンテンツのアイデアを見つけるためのプラットフォームはたくさんある。

ではなぜコンテンツマーケティングが失敗するのか?

結局のところ問題は、話題になるほどのコンテンツのアイデアやプロデューサーが揃っているかどうかなどということではない。

問題はいつだって、あなたがマーケターとしてクリエイティブかどうかなのだ。あなたがクリエイティブであれば、こういったものをオーディエンスにとって便利で役に立つ楽しい形や、自らのビジネスの目標を達成する助けもなる形で活用できるはずだろう。

だが、これこそが問題なのだ。多くのSEO担当者や量産タイプのマーケターにとって、質の高いコンテンツを作ることは未知の領域だ

データ使いのプロや戦術の魔術師だった僕たちは、一夜にして低コストのクリエイティブ・エージェンシーになってしまった。僕たちは、失敗する前に手を打つという姿勢で突き進んできたし、コンテンツマーケティングの「まず作って、公開し、様子を見て、改良する」という精神もこの延長線上にある。結果として、僕たちは多くの有益なステップを省いている。

コンテンツマーケティングを行うマーケターが失敗するのは、「コンテンツ戦略」と「コンテンツマーケティング」を混同しているからだ。戦略なしにコンテンツを作り、失敗するマーケターは後を絶たない。

「コンテンツ戦略」と「コンテンツマーケティング」という用語が同じ意味で使われるのをよく目にする。Content Marketing Instituteのジョー・ピュリッジ氏でさえ、著書『エピック・コンテンツマーケティング』では、「コンテンツ戦略」に言及している箇所で、「コンテンツマーケティング」と同義だと同氏が考える用語を大量に使っている。

これには到底納得できない。僕と同意見の人は、にもたくさんいる。

「コンテンツ戦略」と「コンテンツマーケティング」の2つの領域の違いについては、クリスティーナ・ハルボーソン氏の著書『Content Strategy for the Web』から2点を引用して簡単に説明しよう。同氏は次のように説明している。

コンテンツ戦略とは、「組織全体で共有される、コンテンツの作成、配信、統制を主導する一連の目標、指針、成功指標」である。

コンテンツマーケティングとは、「マルチチャネルのカスタムパブリッシング」である。

これについて少し詳しく見ていこう。あなたにインフォグラフィックのアイデアがあって、それを作成して公開したとすれば、あなたはコンテンツマーケティングを行ったことになる。

しかし、あなたが次のようなことを行っていなければ、そこにコンテンツ戦略が欠けているといえる。

  • オーディエンスやビジネス目標、コンテンツを評価する指標を認識して理解する
  • ターゲットとするオーディエンスにとって便利で役立つコンテンツを作る
  • メタデータやCMSの要件を練る
  • ブランドメッセージングのアーキテクチャ(メッセージの内容と論調)の向上または維持を行う
  • 作業プロセスを開発してインフォグラフィックの作成、公開、メンテナンスに向けたリソースを特定する

コンテンツ戦略は、質の高いコンテンツを実現させるための解決策だ

僕はコンテンツ戦略を、デジタルマーケティングキャンペーンのOSと考えたい。同様に、ソーシャルメディア戦略はチャネルに特化したコンテンツ戦略そのものだと考えている。

dopeDataのエリン・シーメ氏によるこのコンテンツライフサイクルのイメージを見ると、コンテンツ戦略がいかに運用されていくかが実にうまく表されているが、この後のワークフローの項で、さらにわかりやすく説明しよう。

「コンテンツ戦略」とは、「だれに対して」「何を」「いつ」「なぜ」「どう」提供するのかを理解し、コンテンツの「作成」「維持」「プロモーション」のシステムと手順とワークフローを確立すること。このプロセスを確立することで、我々はコンテンツに「オーディエンス」「ワークフロー」「ガバナンス」を備えさせている。

さらに、質の高いコンテンツをそれなりの規模で作成する際にまず頭に入れておくべきことが、他にもいくつかある。

  • コンテンツの種類を多様化する

    コンテンツマーケティングにおいても、使用できるのはどんなコンテンツかという点について、考えの枠を広げなければならない。

    コンテンツマーケティングが話題になると、たいていは、まずブログ投稿、ホワイトペーパー、インフォグラフィック、ビデオを使うと決めつけ、それで終わりになってしまう。

    この画像に示されているのはすべてがコンテンツだ。大きなタイプのコンテンツに力を注いで、その力をもっと小さな、使いやすいタイプのコンテンツで再利用しよう。たとえば、MozConというイベントは、ブログ投稿、SlideShareのスライド、ビデオ、データ、ミーム、インフォグラフィック、ユーザー生成型コンテンツ、報道記事、アニメーション、そして場合によっては製品やツールにも応用可能な巨大なコンテンツだ。

    ブログ投稿やホワイトペーパー、インフォグラフィック、ビデオなどに決めてしまう前に、一呼吸置いて、オーディエンスはどんなタイプのコンテンツを好むのかを考えよう。あなたの分野でコンテンツの「紫の牛」(セス・ゴーディン氏が著書『「紫の牛」を売れ!』の中で提唱した、「常識破り」な存在)になるには、どうしたらいいか考えてみよう。

  • ROIに重点を置く

    作成するコンテンツによって何か大きな変化が生まれるのでなければ、それは時間の無駄だ。

    最近、コンテンツマーケティングは直接的な効果を求めるものではなく、ブランディングの取り組みだと語る人が非常に多く目につくようになった。皮肉屋の僕には、これは要するにディスプレイ広告ほど成果が出ないコンテンツマーケティングを今後も続けていくのを正当化したいがための言い訳にみえる。

    本当のところ、僕たちはマーケターであり、僕たちのコンテンツは純粋にユーザーのためだけに作られるわけではない。僕たちは、説得力のある投資対効果検討書を作成し、うまく機能するモデルに基づいてコンテンツを構築しなければならない。

    僕が2012年に作成したMozConのスライドは、狙いをはっきりさせて、コンテンツによる強力な売り込みを実現するためのツールやヒント、戦術を数多く盛り込んでいる。この記事ではさらに、コンテンツの成功を予測する公式についても紹介するつもりだ。

  • コンテンツをユーザージャーニーとKPI(重要業績評価指標)に合わせて位置づける

    ユーザージャーニーを把握し、それがどうコンテンツのタッチポイントに沿っているかを理解することが、成果の測定やコンバージョン促進にとってきわめて重要だ。

    ただし、何もかも同じ方法で評価しても意味はない。インフォグラフィックを売上で評価すれば、上司やクライアントをいたく失望させることになる。

    そうではなく、ユーザージャーニーの中で最も適切な段階にコンテンツを配することで、コンテンツといちばん関連性のあるKPIを判断しよう。

    たとえば、購入者向けのガイドなら売上に基づいて判断するのが理にかなっているし、インフォグラフィックならリンクと共有に基づいて判断するほうが理にかなっている。

コンテンツプラニングツール

コンテンツ戦略を立てる際、プロセスの合理化に役立つツールはたくさんある。なじみのツールもあると思われるので、ここでは、コンテンツ戦略の観点からユースケースを取り上げてみたい。

  • Screaming FrogURL Profiler

    コンテンツの監査を行う際は、サイトの全URLを詳細な一覧にする必要がある。Screaming FrogのSEO Spiderは、このためのクローリングツールとして僕が特に気に入っているツールだ。

    ただ、新たな選択肢としてURL Profilerも候補に上がっていて、可読性のスコア化や、uClassify APIを介したコンテンツ分類を考えると、コンテンツの監査に使うなら、僅差ながらこちらのほうに軍配が上がる。

    URL Profilerは、APIを介してリンクや共有の指標を取り出せるのだが、Screaming Frogが備えるSEO監査に特化した機能やユーザーインターフェイスには今一歩及ばない。

  • Mural.ly

    コンテンツのアイデアについて複数の人々と共同作業をする際、Mural.lyは仮想ホワイトボードとして機能し、付箋によるメモ書きやプロセスの視覚化など、さまざまな内蔵アセットを利用できる。さらに、ウェブや自分のマシンからアセットを取り込むこともできる。

    ドラッグ&ドロップのインターフェイスや、さまざまな種類の作業ボードを備えているため、だれもが非常に簡単にアイデアを出し合える。

    「ビジュアルにこだわる人のためのGoogle Docs」とのキャッチコピーは、Mural.lyの機能をとても簡潔に説明している。

  • Storyboard That

    ビデオやアニメのコンテンツを開発するときは、作成するものについてみんなが異なるイメージを抱いている場合が多々ある。ストーリーボードを作ると、関係者全員のイメージを統一できる。

    Storyboard Thatは、風景、図形、キャラクターなどのアセットに加えて、ドラッグ&ドロップのインターフェイスを備えており、きわめて簡単にストーリーをマンガ形式で見やすくまとめて、チームに伝えられる。

  • Balsamiq

    この人気の高いワイヤーフレーム作成プログラムを使うと、新しいサイトセクション、マイクロサイト、アプリケーション、インフォグラフィックなど、コンテンツのレイアウト表示がはるかに簡単になる。

    Balsamiqは、アイデアを視覚的に体験させてやりとりできる非常に効果的で迅速な方法の1つであり、コラボレーション機能が搭載されているため、どのように目的のものを構築するかについて驚くほど簡単にコンセンサスが得られる。

  • Gliffy

    GliffyはBalsamiqと非常によく似ているが、ワークフロー図の構築やプロセスの文書化に関するアセットも数多く用意されている。僕は、コンテンツのガバナンスモデルを支えるビジュアルを構築する際にこれを使っている。

  • Trello

    Trelloは、プロジェクト管理ツールとしてすでに高い人気を誇っているが、編集作業のスケジュール管理ツールとしても優れている。

    Trelloの「Power-Ups」機能をチェックしてみよう。カレンダー表示を利用できる。

すばらしいコンテンツは、構造もすばらしい

文字だけの文章ではなく、画像や箇条書きを使ったほうが滞在時間も多く、リンクも獲得できた(mozの記事より)。

僕が初めてMozに寄稿した記事を見てから、その後に書いたすべての記事を見てもらえば、レイアウトと構造に大きな違いがあるのがわかってもらえるだろう。

それは、当時MozのCMO(最高マーケティング責任者)を務めていたジェイミー・スティーブンから、比類なき存在であるサイラス・シェパードが書いたこの記事を読むよう勧められたからだ。この記事でサイラスは、同じ著者による、本来なら質に差がない2本の記事におけるパフォーマンスの違いを定量化して、構造が優れている記事は、文字が連なっているだけの記事を大きく凌駕することを証明している。

コンテンツ作成のためのスタイルガイドを確立することは、あらゆるコンテンツの構造が確実に同じベストプラクティスに従って均一に作られるようにするための重要なステップだ。

この記事は、前中後編の3回に分けてお届けする。次回は、コンテンツのアイデアと必要なデータを手に入れるためのツールやサービスを紹介する。続きを読む

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