ソーシャルメディア効果測定の“ホントに使えるエンゲージメント指標”はこれだ(マジで)
「あらゆるソーシャルメディアに共通する、測る価値のあるエンゲージメント指標がある」と言ったら、あなたはどう思うだろう? それは、「会話」「拡散」「称賛」「経済的価値」と、それぞれを異なるプラットフォームを比較するために相対化した指標だ。
この記事では、ソーシャルの取り組みを計測するためにMozが実際に使っているプロセスを順番に説明しながら、こうしたことを解説していく。
「ソーシャルメディアでの取り組みを効果測定することは、うんざりするような作業だ」――これは本音だ。
追跡すべき指標も、調べるべきデータも、大量にある。それなのに、自分のやっている仕事が組織に影響を与えているかどうかを実際に把握するとなると、少し厄介になってくる。
そんなことはないって? 確かに、フォロワーを追跡したり、トラフィックを送り込んでくるプラットフォームを特定したりするのは、簡単だ。
でも、自分たちが目標を達成しているかどうかはどうやって確かめればいいのだろう?
ソーシャルメディアが組織に与える影響をみんなに理解してもらうには、どうすればいいのだろう?
こういった種類の質問は、「自らの価値を証明」しようと躍起になっている人や、経営陣や他のチームメンバーらの関心をソーシャルに向けさせようとしている人からよく聞くものだ。人は物事を実行することにすぐ熱中してしまうので、やるべき理由を見定めて理解することを忘れがちだ。
この記事では、ソーシャルの取り組みを計測するためにMozが実際に使っているプロセスを順番に説明していく。私たちはこのプロセスを改善しようと不断の努力を続けていて、最近も新たな指標を追加して目標を若干変更したばかりだ。つまり、「1回やったら終わりで後は放置しておけばいい」というものではない。
ソーシャルメディアの目標
大切なのは、1つ1つの指標を詳しく見る前に、事業における目標を確認しておくことだ。Mozでは、組織全体でOKR(Objectives and Key Results:目標と主要な結果)システムを採用している。これは、全社員が物事を同じ方法で計測するとともに、全体的な目標を達成したりその目標に貢献したりすることを目指して、確実に一丸となって取り組むうえで役立つ。
ソーシャルメディアは「コンバージョンのじょうご」のかなり上部に位置する。そのため目標としては、「エンゲージメントやサイトへのトラフィックの増加」「コミュニティの拡大」「カスタマーサービスの向」上などを設定されることが多く、「売上高」や「登録者(フォロワー)数を増やすこと」にはそれほど注意が払われていない。
Mozは、以前から一貫して顧客やコミュニティを中心に考える企業であり続けている。だから、コミュニティチームはこれからも常にカスタマーサービスとコミュニティの拡大を引き続き重視するが、それに加えて、四半期ごとに会社全体としてマーケティングチームの目標達成を支援することにも注力している。
では、そうした目標の一例を見てみよう:
マーケティングの目標 ―― 「サイトへのトラフィック」「エンゲージメント」「サイトのファネルにおける顧客の流れ」を向上させること
主要な成果 ―― 第2四半期末までに、このサイトへのあらゆるトラフィックソースからの非広告トラフィックを25%増やすこと
ソーシャルのロードマップ ―― ソーシャルチャネルにおけるコミュニティへのエンゲージメントを5%増やし、それによってソーシャルからのトラフィックを15%増加させること
本当に測る価値のあるエンゲージメント指標
ここまでで、会社の目標を達成するためにソーシャルメディアをどのように利用すべきかを把握できただろう。
「エンゲージメント」がすばらしい目標なのは、「トラフィックの増加」「ブランド認知度の向上」、コミュニティメンバーとの交流、自らの意見の表明を通じて、ビジネスにインパクトを与えられるからだ。
しかし、「エンゲージメント」はフォロワー数のように単純に数字で表せるものではない。「ブランドとユーザーの相互交流」を指すときに好んで使うあいまいな言葉だ。しかも、ソーシャルチャネルはそれぞれまったく異なっているので、それぞれに対応するエンゲージメントも同じではない。
だから、こんな疑問が浮かんでくるだろう。
どうやってエンゲージメントを計測すればよいのだろうか?
情報をどのように集めたらよいのか?
そうした情報を入手するために、どのツールを使うべきなのか、それとも各ソーシャルメディアにアクセスする必要があるのか?
私がもし、「実際には、あらゆるソーシャルネットワークは、同じエンゲージメントの指標を持っている(君のブログも含めて!)」と言ったらどうだろう? アビナッシュ・コーシック氏は数年前に投稿した記事で、最も優れたソーシャルメディアの指標とは、「会話」「拡散」「称賛」「経済的価値」であると主張している。
私たちは、自分たちのソーシャルサイトだけでなく、サイトのブログコーナーやその他のコーナーでのエンゲージメントにも、このエンゲージメント追跡の手法を実際に使用している。
それでは、異なるプラットフォームでこれらの指標がどのような意味を持つか、そして、なぜどれも同じだといえるのかを、説明していこう。
- 会話率 ―― 1投稿あたりの会話数に基づいているので、かなり単純な指標だ。Twitterではツイートに対する返信だ。PinterestとFacebookとInstagramでは、それぞれピン、写真、投稿に対するコメントを意味する。
- 拡散率 ―― ソーシャルメディアにおける投稿は、リツートや再共有によって拡散されていく。こうした機能はあらゆるネットワークで使える。この指標は、特定の投稿についてのリピン、リツート、再共有のことだ。
- 称賛率 ―― どのソーシャルネットワークでも、気に入った投稿に対して感謝や称賛の気持ちを表すための「簡単な」タッチポイントを設けている。Twitterでは「お気に入り」、Facebookでは「いいね!」、Google+では「+1」がそうだ。ブログでも(私たちのブログも含めて)サムアップや拍手のボタンが設置されている。そういうわけで、称賛率は、それぞれの投稿が受けた「いいね」の数に基づいている。
- 経済的価値 ―― 短期・長期の売り上げと削減できたコストの合計を意味する。正直に言うと、私たちは、コミュニティ側のものについてすべてうまく機能する経済的価値のインデックスをまだ見出していない。しかし今後数か月間にわたって、このインデックスを正しく設定することが重要課題になってくると思われる。
- 相対的エンゲージメント率 ―― これは、「1投稿あたり1フォロワー(ファン、サークルなど)あたりの、平均会話数」だ(これについて考えると、私は本当にめまいを起こしそうになる)。エンゲージメントのメトリックスをすべて集めたとしても、その数字がどんな意味を持つというのだろうか? Facebookの会話率とInstagramの会話率をどのように比較すればいいのか? そこで、こうした相対的な比率を見る必要が出てくるというわけだ。
上記のように考えれば、相対的エンゲージメント率を使ってさまざまなネットワークのフォロワー同士を比較できる。たとえば、FacebookとTwitter(またはPinterest、Google+、Instagramなど)は明らかに同じではないが、1フォロワーあたり1チャネルあたりのエンゲージメント率を測定できれば、その数字を改善するように取り組めばよいということになる。
こうすると、フォロワー数を増やしていけば、1フォロワーあたりのエンゲージメント率の維持(実はこれ自体が十分改善なのだが)や向上にも注力できる。
そうなれば、上司やクライアントに対して、「フォロワー数を増やしただけでなく、1フォロワーあたりのエンゲージメントを増やした」こともアピールできるというわけだ。
しかもこの段階になると、ソーシャルからのサイトへのトラフィックも、増えているはずだ。
まあ、これらの数字はロケット科学のように高度なものではないし、それほど苦労せずに求められる。つまり、算数レベルの計算だ。それでも、TrueSocialMetricsの優秀なスタッフが開発してくれたツールを使えば、これらの指標をとても簡単に計測できる。コーシック氏は、冒頭のほうで紹介した投稿で、このようなツールの開発を切望していた(しかも、彼らがツールの必要性を認めて実現してくれたのは、本当にありがたい!)。
追跡方法
前述のように、これらの数字を自分で入手して手作業で計算できるかもしれないが、あえて自分でやる必要はない。すべてを代行してくれるサービスをTrueSocialMetricsがすでに提供しているのだから。
最初のステップとして、TrueSocialMetricsにアクセスして無料のアカウントを登録しよう。無料プランでは12のソーシャルネットワークと連携でき、30日間のデータ履歴を残せる。個人的に気に入っている「Small」プランは月額わずか30ドルで、1年間のデータ履歴が残る。
登録したら、ブログを含む自分のソーシャルネットワークすべての接続設定を追加し、早速データの計算を始めよう。最初のダッシュボードは次のような画面になる。
何てひどい数字! ただし、現時点ではデータの追跡を開始したばかりなので、次のステップではこれを少しはマシなものにしよう。
Mozでは、指標を週に1回取得し、月に1会はスタッフ全員にメールを送って前月の実績を知らせている。私たちは、このデータを示して変化の原因を明らかにするさまざまな方法を試してきた。
毎週月曜日の朝にミーガン・シングレーがTrueSocialMetricsにログインし、チャネルごとに前週の以下の数字を取得して、スプレッドシートに記入している。
- 投稿数
- 返信数
- 共有数/RT数
- お気に入り/いいね!/+1の数
- 会話率
- 拡散率
- 称賛率
- チャネルの成長
- 各チャネルからの訪問数
このやり方を私が気に入っているのは、これが単なるデータの記録であり、だれにでもできる点だ。だれか1人しかやり方を知らない手法というわけではなく、スプレッドシートに数字を追加するだけの単純な処理だ。追加したら、わかりやすくなるように少し加工して、チームのメンバーやクライアントに送ろう。
レポートの作り方
「データを手にすること」と「そのデータで何かをすること」は、まったく異なる。情報を活用して目標達成に役立てる必要があるのはもちろんだが、それだけでなく、常に日々の実績の投資利益率(ROI)を知りたい人もいる。
では、どうしたらこれらの指標を取得して、わかりやすい方法でチームに報告できるだろうか? この場合の「わかりやすい方法」とは、時間軸に沿った実績を示して、ソーシャルな視点から全員が状況を理解できるよう手助けすることだ。
コミュニティアクションプラン
私たちがまず実行したのは、目標達成までのどの位置にいるかを、いつでもすばやく簡単に確認できるコミュニティアクションプランだ。このアクションプランには、毎週の主要業績評価指標(KPI)、指標ごとの基準値、現在の期間の増加率、期間終了までの目標、その目標に対する現在の値が表示される。
毎週データを取得してスプレッドシートに入力すると、アクションプランは、目標に対して何%達成できているかを鮮やかに出してくれる。手品のようで、私のお気に入りだ。
私たちが使っている集計表は、ここでサンプルをダウンロードできる。
- ソーシャルメディアアクションプランのサンプル
Googleスプレッドシートとして提供しているので、メニューの[ファイル]>[形式を指定してダウンロード]でダウンロードするか、[ファイル]>[コピーを作成]で自分のGoogleドライブにコピーを保存する。
毎月のメール
この見やすいダッシュボードを確認するだけでなく、私たちはスタッフ全員に毎月メールを送って、過去半年間のエンゲージメント率やソーシャルチャネルからのトラフィックのほか、ソーシャルに限定されない他のいくつかのコミュニティ評価指標で私たちがチェックしているものを知らせている。
私たちはこのメールを、親しみを込めて「コミュニティクロニクル」と呼んでいる。
こんな感じのメールだ。
Facebookのエンゲージメントとトラフィックが大きく落ち込んでいるのに対し、Twitterが増加し続けていることに気付いただろうか? これは、Facebookがフィードのアルゴリズムを変更してからというもの数か月にわたって続いている傾向で、この変更のおかげで、表示されるブランドの近況アップデートも少なくなってしまっている。
だが、これこそ私たちが知りたい種類の傾向であり、知ることで対処もできるのだ。私たちはFacebookでのエンゲージメントを高めるさまざまな方法をテストしてきたし、わずかながら上昇傾向も見えてきた。当然ながら今後数か月間は、これらの数字をオーガニックな方法で回復できるかどうかや、ヤツに料金を支払わなければならなくなるかどうか、私たち全員で注意深く見ていくつもりだ!(ヤツとはもちろんFacebookのことだ)。
次にどうする?
そう、今度はあなたが行動を起こす番だ。データの取得は簡単な部分であり、大変なのはそれを使って何かをすること。傾向を読み解いて、いつ変更を加えるか、何がうまくいって、何がうまくいかないかを判断する必要があるだろう。
これは組織によって異なるので、あなたがアクションプランをどう設定するのか、そしてそれに他の指標を追加するのか、私はぜひ知りたい。
ソーシャルメディアは、上司や顧客に説明するのが難しいこともあるが、本来は難しくないはずだ。シンプルな言葉に置き換えて、時間をかけて追跡しよう。効果があったか教えてほしい!
ソーシャルもやってます!