O2O×ソーシャルメディアで全国1万店舗へ集客する、ローソン8つの活用事例
LINEやTwitter、Facebookなど、多くのソーシャルメディアを活用してさまざまなプロモーションを仕掛け、話題を集めているローソン。同社のO2Oマーケティングはどのように設計し、展開されているのだろうか。ローソンの白井明子氏が、同社のソーシャルメディアへの対応とO2O施策について語った。
社内や店舗クルーと共有できるキャラクターで
ソーシャルメディアを活用
Web広告委員会の第7回月例セミナーの第一部では、2012年の第10回Webクリエーション・アウォードWeb人大賞を受賞したローソンの白井明子氏が同社のO2O施策について解説を行った。また、第二部ではad:tech New Yorkとad:tech TOKYOに参加したメンバーによって、米国と日本のデジタルマーケティングの違いが熱く語られた。
まず第一部にはローソンの白井明子氏が登壇し、ローソンのO2O施策についての事例を紹介した。ローソンは47都道府県、1万店舗以上を展開し、全店舗の1日あたりの来店者数は約1000万人にも上る、国内屈指のコンビニエンスストア。
ソーシャルメディアを先進的に活用する企業としても注目されており、2010年4月から開始したTwitterをはじめ、25媒体ものSNSを活用。各公式アカウントの会員総計は約540万アカウントで、約433万人がLINE、約39万人がFacebook、約22万人がTwitterとなっている(2012年11月現在)。また、2012年9月のアジャイルメディア・ネットワークが調査した「第4回ソーシャルメディア活用企業調査」では1位を獲得している。
公式アカウントでは、ローソンでアルバイトする20歳大学生をモデルとした「ローソンクルー♪あきこちゃん」をキャラクターとして立て、各SNSで統一してコミュニケーションを取っている(ニコニコ動画のみ「あきこロイドちゃん」というキャラクターを使用)。キャラクターを使うことのメリットについて白井氏は、以下の5つのポイントを挙ている。
自社キャラクター活用のメリット
- 他の企業とのタイアップが容易
- 社内外でキャラクターを共有できる
4コマ漫画を制作して社内で閲覧することで、「あきこちゃん」のイメージを把握して共有できる - 情報伝播力の強さ
企業からの情報ではなく、知人からのおすすめというテイストのため、情報が伝わりやすい - 媒体特性に合わせた展開が可能
ボーカロイドなどの活用 - フランチャイズ店のオーナーやクルー(アルバイト)に愛される
あきこちゃんのキャラクター作りは、「みんなで作るソーシャルメディアアイドル」というコンセプトで進められた。企業のキャラクターとして押し付けるのではなく、始めは後姿1枚のイラストを示して、イラストSNSの「pixiv」で正面からのイラストを公募し、続いて声で遊ぶコミュニティ「koebu」で声優を決定したという。
「ネット上のイラストレーターや声優の卵など、クリエイターを目指す人を巻き込んで一緒にキャラクターを作ってきた
」と話す白井氏。ローソンでは、その後もオリジナルボーカロイドのあきこロイドちゃんを使って「からあげクン」の歌企画やオリジナルPVの公募などもニコニコ動画(niconico)で行っている。
12部署が協力し、ソーシャルメディアを組織的に運用
「ローソンのソーシャルメディア運用体制については、Web担当者フォーラムの漫画で紹介されているので参照してほしい
」と話す白井氏は、関連する12部署が一同に集まったミーティングを週1回、1時間行い、メールマガジンの校正フローを活用してソーシャルメディアの原稿とスケジューリングをまとめ、システマチックに運用していることを明かす。
Twitterでは1日に最大7~8回、会議で決められた情報(原稿)のすべてを流しているが、これはフロー型メディアのため、情報量が多くてもフォロー解除をされにくいと考えているためだという。一方、Facebookではユーザーのタイムラインを企業情報で溢れさせないように、流す情報を絞るなど、媒体特性に合わせて情報発信している。また、いいね! やRTのランキングを定期的に各商品担当者へフィードバックし、商品開発のヒントなどにも活用しているようだ。
ソーシャルメディアの効果測定としては、ソーシャルメディア経由でのローソンのホームページへの流入数、公式アカウントからのリーチ数、顧客の声を収集分析して商品開発・改善するCGM(Consumer Generated Merchandising)という考え方での効果、クーポン活用時の併売率・併売単価を見ている。
これらの効果測定レポートは、週次および月次で経営層まで報告されており、白井氏はTwitterでの広告換算例として、1ツイートの平均クリックが約5,000以上あるため、クリック単価を100円と考えると約50万円の広告換算値となる例を示し、社内で効果を聞かれた時の指標としていると話した。
実店舗への集客を目標とした8つのO2O事例
ローソンのO2O施策の目的は、「ソーシャルメディア」「Ponta」「フラッシュマーケティング」「携帯キャリア」「アニメタイアップ」「ゲームデバイス/スマートフォン」などからオフラインの実店舗へ集客させることだ。そこでの強みとしては、Pontaポイント/サービスなどを景品化して割引やオリジナルコンテンツを提供することができ、全国1万店舗+海外店舗のインフラを持っていることであり、O2Oのゴールを白井氏は次のように述べる。
「ソーシャルメディアをみていたらローソンにたどりつきました」というコンセプトで、何気なくコミュニケーションしたら、何気なくローソンに来ていたということを考えています
1. ローソン独自のPassbookパスを提供
具体的なO2O事例としては、まずiOS 6対応の「Passbookパス」を独自に開発し、1週間で5万ダウンロードされた「からあげクン」クーポンと、2万ダウンロードを達成した三鷹の森美術館チケット引換券の事例が示された。ローソン独自のPassbookパスを提供することで、今後の更新時にプッシュ型のコミュニケーションでメッセージを送ったり、メーカーのサンプリングに活用したりできないか考えているという。
2. 累計100万枚以上のソーシャルメディアクーポンを配布し来店へ
ソーシャルメディアのクーポン活用では、2011年8月に各公式アカウントでソフトドリンクのクーポン情報を提供し、累計100万枚以上を配布して来店へとつなげている。また、同様に2012年8月には、LINE、Facebook、Twitter、mixi、mobage、GREEの6メディアでLチキ半額クーポンを配布している。
3. Facebookクーポンで785万にリーチ、利用者の併売率は7割以上
Facebookでは、投稿自体がクーポンになる広告サービス「Facebookクーポン(Facebook offers)」を展開し、約57万7,000人がからあげクンクーポンを取得した。クーポンを取得した人のタイムラインにも投稿が流れるため、リーチ数は785万に上り、その結果、「5,651いいね!」「シェア数2,061」「コメント数441」と、それまでの投稿で最高値を獲得することができ、1週間の期間中にFacebookページのファン数が約1万3,000人増えたという。また、Lチキ半額クーポン利用時の併売率は70%で、ROIも達成できていると白井氏は話す。
4. LINE限定クーポンの告知直後に来店、リアルなクチコミ派生に効果
LINEユーザーに対しては、オリジナルスタンプや限定クーポンを提供している。オリジナルスタンプとして、あきこちゃんとからあげクンのキャラクターを提供し、総利用回数が1,000万回以上とキャラクターの認知向上を実現している。スタンプを提供することで、100万人以上友達を増やすことができたという(2012年10月現在433万人)。
また、LINEの施策では、LINE cameraを使った「おもしろフォトコンテスト」も実施している。さらに、2012年8月にオープンした「LINEクーポン」にもいち早く参加し、自社のLINEアカウントの友達だけでなく、公式メニューのLINEクーポン利用者にもキャンペーンを広げるようにしている。
5. 日本企業初のFoursquare「パートナーバッジプロモーション(全世界展開)」を実施
Foursquareでは、米国法人と直接交渉し、APIを使った「LAWSON World Check-In」という「グローバルチェックインサイト」、日本企業としては初めての「パートナーバッジプロモーション(ローソンに3回チェックインでバッジを取得)」、国内限定でチェックインしたユーザー先着10万名にからあげクン半額券を提供する「ユニーク・クーポンコードキャンペーン」などを展開している。
6. Twitter×アニメ×イベントでムーブメントを起こす
Twitterでは、「何味かわかるかな? からあげクン?味 ~怪盗シモーノからの挑戦状」というキャンペーンで作られた動画が、2012年下期のローソン公式アカウントのRTランキングで最も多い6,257RTを獲得しているという。
Twitterでバズ効果を狙ってO2Oを成功させるには、Twitterと相性の良いコンテンツに絞る必要があると白井氏は話す。特にソーシャルメディアとアニメーションの親和性が高いと考えているローソンでは、前述の怪盗シモーノからの挑戦状のキャンペーンも人気声優の下野紘氏を起用している。その他にも、コンビニのメインユーザーであるM1層に向けたアニメキャンペーンを展開しているという。
実際に、アニメ「けいおん!」とタイアップしたフェア期間中は、Twitter上で「ローソン」というキーワードが多数出現しており、キャンペーン初日だけでも1か月平均の約10倍出現している。また、2010年4月に行ったエヴァンゲリオンDVD発売キャンペーンでは、箱根仙石原店を「ローソン第3新東京市店」として、劇中に登場するエヴァンゲリオン初号機をAR技術でを出現させたが、ネットの情報だけで当初の予定を大幅に上回る来店者を集め、2日間でイベントを中止せざるを得なくなったという。
「相性が良いものを使うことでムーブメントが起きることがTwitterの強いところだと思う
」と話す白井氏は、ハッシュタグを使ってファンを集めることができることを示し、「ジョジョの奇妙な冒険」キャンペーンやローソンチケットとともに「大友克洋GENGA展」を展開したことを明かした。
7. mixi連携のソーシャルラジオ、クリスマスイベントを展開
mixiでは、2011年8月にソーシャルラジオ企画として、TOKYO FMの「SCHOOL OF LOCK」とタイアップした企画を展開。放送時間の22時からアクセスしたユーザーに先着で無料クーポンを提供し、累計送客数は42万人、期間中は毎日22時にmixiへのアクセスが急増したという。また、mixiクリスマスでもクーポンの提供を行っている。
8. niconico動画再生数10万回超、総来場者数4万人の
「からあげクン音頭」
動画共有サイトのniconicoについて白井氏は、「ソーシャルメディアの中で最も難しい媒体だが、最もおもしろい」と話す。実際の施策では、「からあげクン音頭」という曲を2012年バージョンにしてPVを作成し、「踊ってみた」カテゴリで踊り手を募集。人気の踊り手による動画を実店舗のPOS画面に流すという情報を、多くのフォロワーがいる踊り手がTwitterなどで拡散することによって、集客にも貢献できたという。
自社キャラクターの育成と自社メディア強化が今後の課題
これらのソーシャルメディアでのO2O施策を振り返って白井氏は、「これまでは、けいおん! やエヴァンゲリオンなどのキャラクターを使ったプロモーションが多かったが、やはり、そのコンテンツの強さに左右されてしまう
」と反省する。
一時的に成功しても継続性が少なく、自社キャラクターを育てなければならないというのだ。そのため、ローソン、ローソンチケット、HMVが共同で自社キャラクターの認知拡大とグループ資産を活用した「エンタメ360度」を目的とし、2012年12月12日に自社キャラクターのあきこロイドちゃんをCDデビューさせている。
また、O2Oの新たな試みとしてタニタとタイアップして歩数計を作り、歩数計のFeliCaリーダーを店頭端末のLoppiにかざすことで、タニタの「からだカルテ」でデータを管理できるキャンペーンも計画している。
最後に白井氏は、「ソーシャルメディアはフローメディアであるため、エンゲージメントがどこまでできているのか、自信のない部分もあった。今後は自社メディアを強化して集客を図り、CGM(Consumer Generated Merchandising)を進めることが必要
」だと話す。
あきこちゃんもその1つであり、従来から展開している、ローソンファンのモバイルサイト「謎のローソン部」や新たに始めたブログ「ローソンクルー♪ あきこちゃんのお兄ちゃんのラボブログ」などを充実させ、顧客の声を集めて商品開発や改善に役立てていくことが今後のローソンの課題となっている。
オリジナル記事はこちら:「O2O×ソーシャルメディアで全国1万店舗へ集客する、ローソン8つの活用事例」2012年11月27日開催 月例セミナーレポート(1)
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