予算200万円から始めるOne to Oneマーケティング

Facebookのターゲティングクーポンで潜在顧客をねらい打ち!

O2O施策の主流であるクーポン配信サービスが熱い。今回は低コストで潜在顧客にターゲティングできるFaceookクーポンに注目
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200万円から始めるOne to Oneマーケティング 連載アイコン

「One to Oneマーケティング」といえば、1990年代から2000年代初頭にCRMの取り組みとともに注目されたキーワードで、顧客データベースとの連携や営業部門の巻き込みなど、大がかりなプロジェクトが想起されがちだ。

しかし、スマートフォンやソーシャルメディアの普及、EC購入の増加など、企業と消費者の接点は以前にも増してデジタル化が進んでいる。顧客一人ひとりのニーズに合わせた個別対応によって売上増加を目指すOne to Oneマーケティングへの期待は、今でも大きいはずだ。

そこで本連載では、予算200万円からトライアルとして実行できるOne to Oneマーケティングのアイデアを紹介し、スモールスタートの可能性を探っていく。

第1回のテーマは、最近注目を集める「O2O」(オーツ―オー)について考えてみよう。

選択肢は多いが普及はこれから
――ソーシャルメディアやスマートフォンを利用したクーポンO2O

O2O

O2Oは「Online to Offline」の略で「On2Off」と表現されることもある。

ネット上(オンライン)から、ネット外の実地(オフライン)での行動へと促す施策のことや、オンラインでの情報接触行動をもってオフラインでの購買行動に影響を与えるような施策のことを指す。

用語集:O2O

O2Oは、オンライン上の顧客を実際の店舗に誘導し、店舗での実購買につなげようという試みだ。さまざまな施策が行われているが、オンラインで割引クーポンを配布して店舗での購買にインセンティブを与える「クーポン店舗誘導型O2O」が代表的だ。

もっとも有名な成功事例は、ローソンが展開したO2Oクーポンだろう。ソーシャルメディアを使って「からあげクン」の半額クーポン30万枚をわずか17時間で配布し、6万個の販売につながった。

このようにクーポンを使ってO2O施策を実現するプラットフォームは、2012年から多くの事業者がサービスを開始したり拡充したりしている

iPhoneでは、iOS6(2012年9月)から「Passbook」が搭載され、チケットサービスなどに主軸を置いたクーポン/チケットソリューションが可能になった。Googleも「Googleオファー」というクーポンサービスを2011年から米国で開始し、検索連動型広告からスマートフォンアプリへのクーポン保存と利用をシームレス化している。

このような新しいサービスは、一部の企業による先進的な取り組みがメディアで取り上げられはするものの、まだまだ一般的とはいえない。

LINEでもクーポンを展開するローソン
LINEでもクーポンを展開するローソン

LINEに関しては、国内ユーザー数が4700万人(2013年8月時点)を突破するなど消費者への浸透は群を抜いており、多くのユーザーへのクーポン配信プラットフォームとして注目されている。ただし、企業向けアカウントでは、友だち10万人に対して月2回の配信を行うと、年間で600万円以上の利用料がかかる。軽い気持ちで始められる金額ではなく、予算の確保やROIの測定などにも気をかける必要があるだろう。そんな中で注目したいのが「Facebookクーポン」だ。

Facebookは国内ユーザー数が減少傾向との報道もあるが、依然として1300万人以上のユーザーがおり、多くの企業が公式アカウントを開設してフォロワーを集めている。そのクーポン配信機能がFacebookクーポンだが、実はこの1年で仕様が大きく変わっている。

有料化、条件緩和、機能追加……変化するFacebookクーポンに注目

Facebookクーポン
Facebookクーポン

Facebookクーポンは、2012年秋に現在の名称となり(ベータ版時の名称は「チェックインクーポン」)、クーポン配信が有料になった(それまではタイムライン上に無料で配信できた)。同時に、これまでクーポン機能の利用には400以上の「いいね!」が必要条件だったが、100以上で使えるようになった。

また、以前はオンライン上でのクーポン配信のみだったが、バーコードやQRコードを利用したクーポン配信もサポートするようになった。さらに、通常のプロモーテッドポストとは異なり、オーディエンスにファンやファンの友達に限定して配信できなくなる仕様変更も行われた。

ここまでの話を聞いて「なんだ、有料になったのか。それなら無料でクーポン配信ができる他のサービスを探そう……」と思うかもしれない。実際、有料化されてからFacebookクーポンを止めた飲食店もあるようだ。

しかし、One to Oneマーケティングという観点から「自社の狙っているターゲット顧客にピンポイントでクーポンを届けたい!」と考える企業は、たとえ有料でもFacebookクーポンを試してみる意義は大きい。その理由は「配信対象を設定できる」からだ。

Facebookクーポンを試すべき理由は「ターゲットへのピンポイント配信」

Facebookクーポンを試すべき最大の理由は、地域や属性に応じて配信対象(オーディエンス)を選べるからだ。たとえば「東京23区在住の20代女性にのみ配信する」といった設定が簡単にできる。

Facebook広告配信画面
Facebook広告配信画面

実際のところは、単純な配信対象者の選定に過ぎない。クーポン配信時に選べる対象者(オーディエンス)は、地域、年齢層、性別だけだ。

しかし、クーポン配信事業者の立場に立ってみると、それは非常に重要な機能ではないだろうか。せっかくお金をかけてクーポンを配信し、商品の割り引きまでして店舗に呼ぶからには、自社にドンピシャのターゲットを呼び込みたいはずだ。そうであれば、年齢層、性別、居住地域でクーポンの配信先が選べるというのは非常に有効だ。

どのような商品やサービスであれ、年齢、性別、居住地域くらいの分類ではターゲット顧客を定めているだろうから、それをそのまま活用できる。配信は有料だが、広告費の無駄につながるリスクを減らせるのだ。

さらに興味深いのは、有料で配信したクーポンの投稿に対して、再度Facebookの広告を打てることだ。Facebookの広告は、年齢、属性、居住地域だけでなく、趣味や所属企業など非常に細かい設定で広告表示対象者を選ぶことができる。

たとえば、

  • エステが趣味で
  • 誕生日が1週間以内の
  • 東京在住の
  • 20代女性

に対して、「誕生日に自分へのご褒美エステ割引クーポン」といったクーポンを効率よく配布できるのだ。

対象者を細かく設定したうえでクーポンを配信し、自社のターゲット顧客を効率的に店舗へ誘導する。このように消費者をマスとして捉えるのでなく、認知・関心フェーズから対象者を選定することでOne to Oneマーケティングを達成できるのだ。

1ユーザー1円のコストで投稿と同じように社内担当者が手軽に作成

Facebookクーポンは、通常の投稿の延長線上で作成できる点も重要だ。Facebookページはすでに多くの企業が日常的に社内運用しており、わざわざ外部ベンダーに依頼しなくても自力で投稿できる

バーコードやQRコードを簡単にクーポンに掲載できる仕様も、O2Oに向けた施策として重要だ。店舗でバーコードを読み込むPOSシステムをすでに構築している企業であれば、それを店舗で読み込んで利用者数を基幹システム上で測定できる。

クーポン配信にかかる広告費用は、現在のところ1ユーザーへのリーチで1円程度だ。20万人にリーチするのであれば20万円程度と、手軽に始められる予算規模である点も魅力だろう。

潜在顧客に向けたシークレットセールを実現

既存顧客に向けた割引セールでは、「シークレットセール」と呼ばれる限られたロイヤル顧客だけを集めてのセールがよく行われる。そのシークレットセールを潜在顧客に対しても可能にしたのがFacebookクーポンであるといってもよい。

Facebookクーポンはまだ始まったばかりで、今後も機能の拡張が続いていくだろう。利用者の特定や費用対効果の測定、より細かい属性条件でのクーポン配信など、今後のO2O施策との連携は注目に値する。One to OneマーケティングとO2Oの連携として、ぜひスモールスタートで試すべき施策ではないだろうか。

◇◇◇

念のために最後に述べておくが、この記事ではFacebookクーポンを解説したが、本当に伝えたいことは、顧客一人ひとりのニーズに合わせてコミュニケーションする「One to Oneマーケティング」の大切さだ。

改めて、Facebookクーポンを「ソーシャルメディアマーケティング」ではなく「予算200万円から試せるOne to Oneマーケティング」の手段として見直してみてはどうだろうか。消費者をマスとして捉えるのでなく、認知・関心フェーズから対象者を絞り込めるターゲティング・セグメンテーションがOne to Oneマーケティング、ひいてはカスタマー・エクスペリエンスに有効なのがわかるのではないだろうか。

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