HCD-Net通信
「人間中心設計 (HCD)」を効果的に導入できるよう、公の立場で研究や人材育成などの社会活動を行っていくNPO「人間中心設計推進機構(HCD-Net)」から、HCDやHCD-Netに関連する話題をお送りしていきます。
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Webサイトのユーザビリティでは第一印象と長期的実利用のどちらが重要か/HCD-Net通信 #23

第一印象(見かけのユーザビリティ)と長期的実利用のバランスをどう考えるべきなのだろうか
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今回は、Webサイトのユーザーエクスペリエンスについて、製品デザインやソフトウェアデザインと対照させて考察してみる。Webサイトのユーザビリティでは、第一印象(見かけのユーザビリティ)と長期的実利用のバランスをどう考えるべきなのだろうか。

ソフトウェアとハードウェアでは
設計プロセスが違えばユーザビリティも違う

プロダクト、といっても、ハードウェアプロダクトとソフトウェアプロダクトでは設計プロセスは異なっているし、ユーザビリティで重視すべき点も異なっている。

たとえばハードウェアの場合には、基本的に設計と製造の段階が区別されているが、ソフトウェアの場合には製造という段階が明確ではなく、設計イコール製造となっていることも多い。もちろん設計の段階では十分に手をいれていなかった例外処理などの細かい点に万全を期すのが製造段階の1つの特徴ではあるが、基本的な部分は設計段階でできあがってしまっている。設計段階でプロトタイピングを中心にしたために、ターゲット言語でコーディングされておらず、その書き換えを製造段階で行うというやり方もあったが、最近はそのあたりは設計段階のなかで、簡易なペーパープロトタイピングからターゲット言語でのコーディングに移行してしまうことも多いようである。

またハードウェアの場合には、型起こしをするためにコストがかかるなどの理由から、製造段階に入る前に、きちんとした設計を行っておく必要がある。ハードウェア製品の内部をのぞいてみると、ごくたまに設計後の対応としてジャンパー線でつないであるようなことがあるが、それは例外だといえよう。

このように、ハードウェアは製造の前にきちんきちんと設計を詰めておく必要があるが、ソフトウェアの場合、もちろん大きな手戻りが発生すると大変なことになるが、細かい点であればパッチを当てればそれで済むことが多い。

またソフトウェアの場合には、不具合があったり不足があったりした場合に、バージョンアップを行い、それをネットからユーザーにダウンロードしてもらうことができる。しかしハードウェアの場合、リコールなどが発生すると企業は多額の損失を被ることになるので、出荷前のチェックは非常に厳しいものになる(もちろんソフトウェアでも出荷検査は厳しいが)。

ソフトウェアでも無償のWebは利用方法に違いが出る

ハードウェアとソフトウェアにはこのような違いがあるのだが、同じソフトウェアでもアプリケーションソフトWebサイトのデザインではまた違いがある。

まず、アプリケーションの場合には、フリーソフトを除いて、購入費用を支払うのが普通である。しかしウェブの場合には、そのサイトが会員制になっていればユーザーは会費の支払いをすることになるが、基本的にほとんどのサイトはプロダクトとは違って無料でアクセスできる。もちろん、ユーザーが無料だと思っていても、アクセスされることによって企業側はそれなりのメリットを得ているし、それは大学のサイトや法人サイトなどでも似たようなものである。

この有償か無償かという点は、利用方法の違いを発生させている。

有償サイトであれば、通常、ユーザーは長期間にわたって、そのサイトにアクセスしてくるはずである。会費を払っているのにアクセスしないこともあるが、基本的には有償サイトであれば継続的な利用が行われるし、利用しなくなれば退会する、と考えるべきだろう。その点で、有償サイトについては継続的利用を促進するための対策が必要になる。もちろん無償サイトでも、大学のサイトなどは学生が継続的に利用するので、継続的な利用が前提となる。

ソフトウェアプロダクトの場合には初期費用を支払ったユーザーは、基本的にはそれを継続的に利用するが、よほど期待はずれだったり相性が悪かったりすれば、それを利用しなくなる。このように、有償であれば、プロダクトもサイトも常にユーザーの評価にさらされているため、そのユーザビリティの向上は必要条件になっている。言い換えれば、ユーザーとのインタラクションが継続的に発生するという形で長期的なユーザビリティが必要になるし、そうした形でユーザーエクスペリエンスが重要になる。

他方、無償サイトの場合には、ユーザーエクスペリエンスという点での違いがある。ユーザーは費用を支払っていないだけに、少しインタラクションをしただけで簡単に他のサイトに移動してしまう。いいかえれば、インタラクションの積み重ねという形でのユーザーエクスペリエンスが成立しにくいのだ。

Webでは見かけのユーザビリティが重要
ただし長期的実利用への配慮も併せて考慮しよう

このあたりについて、コンセントの長谷川さんと議論をしたことがあるが、彼が言うには、IA的な観点からすればプロダクトもウェブも、そのレイヤーの構成と各レイヤーのあり方には変わりがないだろうということだった。ただ、筆者には、基本的なところは共通しているとしても、ウェブの方がプロダクトより厳しい状況におかれており、特に表層レイヤーの視覚的印象やわかりやすさは、それが以前筆者の主張した「見かけのユーザビリティ(apparent usability)」という点で、ユーザーの選択に影響していると思える。

これは「ユーザーエクスペリエンス」を、

  • 消費者としての期待感
  • 入手時点でのインタラクションによる印象
  • ユーザーとしての長期的実利用にもとづく評価

の三要素から構成されると考えたとき、三番目が欠落していることになる。つまり無償サイトのユーザーエクスペリエンスは期待感と印象によって構成される傾向があると考えられる。その意味で、企業サイトや映画サイトなどが第一印象を魅力的にしようとする傾向を持っているのは納得できることだ。

ただ、注意しなければならないのは、最初のひと噛みを確保できたとしても、その後で継続的に噛み続けてもらうためには、やはり長期的実利用に配慮したデザインをしなければならない、という点だ。そう考えると、長谷川さんのいう「両者は基本的には同じもの」という主張も理解しやすい。

考えてみれば、プロダクトだって、見かけのユーザビリティが高くなければ最初のひと噛みは成立しないのだから。

※ノーマン『エモーショナルデザイン』の第一章に引用されている実験的研究にもとづいた概念である。言い換えるなら「使いやすそうに見えること」であり、デザイン美学とも関係している。ユーザーは、実質的な使いやすさ(inherent usability)よりも見かけのユーザビリティに惹かれてしまう傾向がある。なお、美学的な観点に関しては、イスラエルのNoam Tractinskyが継続して研究を続けている。
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