アクセス解析ツールを導入して成功するための企画書/上司を説得できる企画資料の作り方講座#4
上司を説得できる企画資料の作り方講座
新入社員が覚えておくと仕事がうまくいく“通る企画書”の作り方
アクセス解析とは
Web担当者の方々に対して、今さら“アクセス解析とは”というのを説明するのもどうかと思うが、これが結構理解されていない方が多いので改めて説明させていただく。
ほぼすべてのWeb担当者が「アクセス解析は重要だ
」と言っているが、アクセス解析を十分に活用してWebサイトを運用・改善している方に会うことは非常に少ない。
アクセス解析ツールは、文字どおりWebサイトに対して、さまざまな視点からのデータを抽出してそのデータ解析するものである。しかし現状は、ツールから出されるデータをレポートにすることだけに終始している担当者が少なくない。
私個人としては、アクセス解析ツールからボタン1つで抽出されるデータは“集計”と呼んでいる。集計すること自体にはあまり意味はなく、そのデータを読み取って、それがどういった状況にあり、何か起こっているのかを把握するのが“解析”または“分析”だと考えている。また、その解析から課題をピックアップして改善策を実施することで、本当のアクセス解析の意味が出てくることを忘れてはいけない。
アクセス解析導入を提案する意義
アクセス解析を導入することは非常に意味のあることであり、Webサイトを改善するためには必要不可欠である。フリーのツールだとしてもそれを活用することでWebサイトの多くの課題を改善することが可能である。アクセス解析に関しては多くの書籍が販売されていて、それを読んで「うーん、なるほど」と思う方も少なくないだろう。
しかし、実際にはそれを実践している人はそれほど多くない。なぜだろうか。
私が考えるに、
↓
課題抽出
↓
課題解決の施策を実施
↓
検証
といった手順を行い、データを検証している人が少ないだろうと感じるからだ。
この作業は思ったよりも根気が必要な作業であり、課題解決だと思われる施策を行ったとしても必ず改善に至るというものでもない。そうした場合に、日々の業務に追われ、ついこの根気のいる作業を断念している方が多いのではないだろうか。
言っておくが、アクセス解析は、Webサイト運営において必要不可欠なことであり、多くのことを解決できるものであるということは断言しておく。逆に言うと、アクセス解析なしではWebサイトの改善はありえない、とうくらいに考えた方がいいということだ。なので、アクセス解析はぜひ提案して十分に活用してほしい。
ダメな企画書例
では、まずはダメな企画書の例を見てもらおう。
おそらくこうした企画は、アクセス解析が重要らしいと聞きつけた担当者が書く企画だ。「今までデータ分析をしてこなかったが、これからは○○のデータを分析できるようになる」という企画だ。
Webサイトの改善を目的としているところは良いのだが……
ただ、アクセス解析でできることをクローズアップしただけのものであり、それによりなにが改善できるのかがまったくわからない。月次のレポート提出はわかるのだが、レポートを提出することでなにがどうなるのかがわからない。
私が上司で、アクセス解析を行いたいと思っているとしても、この企画書でGOを出すことはできない。担当者がアクセス解析の意味を理解していないのは明確だからだ。
費用をかけてアクセス解析を導入するのならば、担当者がそれによりどのようなことを改善できるか理解していない限り、費用をかける意味がない。
アクセス解析に関するROIの考え方
単にアクセス解析ツールを導入するだけではROIはとれない。アクセス解析ツールは販売促進のためのものではなく、データを集計するためのものだからだ。だから、導入すること自体には意味はなく、導入した後にどういった行動をとるかが重要なのである。
ダメな企画書で足りない構成要素
まずは課題の具体化が必要だ。アクセス解析をしていないことで何が起こっているのかを書く。それがわかれば目的も自然と書くことができるだろう。
課題に対応したアクセス解析の分析項目も重要だが、Webサイトでアクセス解析ツールの比較などを調べてみても、基本的な分析項目はどのツールも大きく異なるものではない(もちろんアクセス解析を駆使している担当者には結構重要だが、ここではアクセス解析の初心者を対象としている)。重要なのは、それに対してどういった施策や対策を行うかだ。今までアクセス解析をしていなかったWebサイトにアクセス解析を導入することのROI(費用対効果)を数値で出すことは、不可能ではないものの非常に困難である。であれば、導入することでどういった課題が抽出され、どういったことが改善されるかを明確にすることで、上司を納得させるべきだ。
企画書に必要な要素としては次のようなものがある。
- 具体的な課題と目標
- 課題を抽出するための分析項目
- 課題克服(改善)のための方法、施策内容、期待される効果
- 導入を検討しているルーツ比較
- 導入後どうしていくかの具体的な進め方
アクセス解析で改善する基本的なポイント
自社Webサイトのページビュー数やユニークユーザー数を他社と比べてもあまり意味がない。他社よりも多いか少ないかがわかるだけである。
それよりも、まず自社サイトの現状を把握して、その現状を改善する施策を行い、施策を実施した結果としてどうなるかが最も重要なことである。
ということで、アクセス解析で見るべきポイントをいくつか挙げてみよう。
- ページビュー数
- ユニークユーザー数(もしくはセッション数)
- サイトの平均直帰率
- コンバージョン率
- コンバージョン数
- 流入キーワード
- 流入元ドメイン名
といったところだろう。
まずは、これらの数値を把握しよう。その後は、それらの値をどう改善していくかを考えて実践することである。実践の具体的な内容はこの記事の後半で書くが、これらのデータを深く掘り下げて、ページビュー数の増加、ユーザー数の増加、直帰率の減少、コンバージョン率やコンバージョン数の増加、検索エンジンからの流入率の増加など、さまざまな施策を行うことである。
そうしたことを企画書に盛り込むことが、上司を説得するために重要なのだ。
上司を説得させるための企画
これまでの内容を考慮した、良い企画書の例を見てみよう。
1枚にまとめる必要はないが、それぞれの要素とその重要性について理解してほしい。
課題は具体的な方がいい。現状でできていないことを書く。また、それに合わせた目的を記述する。必要な分析項目としては基本的なことがわかればいいが、それぞれどういった数値がでるのかは事前に担当者が把握しておくべきだろう。Webサイトで調べるのもいいが、実際にセミナーなどに行くと、どんなことができるかがよくわかるので、機会があれば参加するのがいいだろう。その方が説得力のある企画書を作れるようになるはずだ。
そして最も重要なのは、改善方法・施策と、そこから期待される効果だ。アクセス解析を導入することで何が起こるのか、これが企画を通せるかどうかのポイントなる。特に、コンバージョン率の改善や広告効果検証などは、売上に直結するため必ず盛り込むべきである。セミナーに行ったのなら、セミナーで紹介された事例などを紹介するともっといいだろう。
選定したアクセス解析ツールの比較は必要だが、上司を納得させるために導入後の進め方も忘れてはいけない。月次でアクセス解析の報告をすることはもちろんだが、併せて課題に対する改善策も実施して、それがどんな効果があったのかを翌月に報告することを記述する。効果があろうがなかろうが、それがあなたの会社のスキルとして蓄積されていくのだ。
アクセス解析と改善の具体的なアクションを考えよう
アクセス解析は、ページビュー数、ユニークユーザー数(もしくはセッション数)、サイトの平均直帰率、コンバージョン率などの基本的なデータを分析することでサイトの現状は把握できるが、プロモーションやサイト改善をしない状態であれば、毎月アクセス解析をしてもそんなに変化があるものでない。こうした結果を見て、定期的なレポートを断念する方がいるとも聞いたことがある。改善と検証をしていないからだ。
たとえば、次のようにするのだ。
トップページの直帰率が高いと感じた場合に、トップページだけデザイン構成を変えてみる。
コンバージョン(資料請求)率を高くするために、各サービスページの「資料請求ボタン」の色や大きさを変えてみる。グローバルナビゲーションにしか「資料請求ボタン」がなかったら、フッタ近くにも配置してみる。
バナー広告などを出稿する場合は、どの媒体に掲載した広告からどれだけのコンバージョンがあったかをレポートしておく。さらにはバナーの種類も複数作成しておき、どのバナーがどの媒体で効果があったかを把握して次回の広告出稿の参考にする。
こうした改善や工夫を行い、翌月の直帰率やコンバージョン率をアクセス解析で検証すれば、その改善が効果的だったかどうか判断できるはずだ。こうした改善と検証が大切なのである。何も改善しないのであればアクセス解析の導入は後回しにした方がいいかもしれない。
アクセス解析は基本項目の分析だけではない
上司に出す企画書の話題とは若干離れるが、アクセス解析についてもう少し書いておこう。
コンバージョン率やコンバージョン数、平均直帰率などの基本項目の分析は、初期段階の改善に対する施策を行うことはできるが、より多くの改善のためにはもっと細かい分析をやるべきだ。
しかし、どうすればもっと細かい分析ができるのかについては、「この項目とこの項目を分析するといい」と単純に教えられるものではない。アクセス解析ツールを駆使して、多方面からアクセスの状況を見て、課題の部分をより深く掘り下げていくことで、多くの課題や改善ポイントを見つけることができるのだ。これはアクセス解析ツールを使いこなすだけの能力がないとできないことだから、あなたのアクセス解析レベルがここまで成長すれば、私が上司だったらROIがとれたと考えるだろう。
具体的な分析と改善の例を挙げると、たとえば次のようなものだ。
コンバージョン(資料請求)したユーザーが通ったディレクトリやページをピックアップする。
導入事例のコンテンツを見たユーザーのコンバージョン率が突出しているとすると、導入事例コンテンツへの集客を多くすることでコンバージョン数が高くなる可能性があると考えられる。
- 具体的な手法としては、次のようなものが考えられる
- トップページで導入事例コンテンツを今以上にアピールして導線を確保する
- 導入事例コンテンツページへの直接流入(SEO、キーワード広告など)を施策する
これだけではないが、アクセス解析はやればやるだけ多くのことがわかり、改善点も無数に挙げることができるようになるものだ。
アクセス解析でもこれだけのことを理解できれば、月々数万円であれば、十分ROIがとれると考えるのは私だけではないだろう。
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