コンテンツマーケティング導入のための提案(初級編) #7
上司を説得できる企画資料の作り方講座
新入社員が覚えておくと仕事がうまくいく“通る企画書”の作り方
今回から3回にわたり、最近話題になっているコンテンツマーケティングを導入する際に必要な提案方法を紹介していく。コンテンツマーケティングの提案では、その重要性の認知に加え具体的なコンテンツ展開をイメージさせること、そして費用対効果の考え方を説明して説得する必要がある。
まず初級編では、上司に対して具体的な展開をイメージさせることを中心に解説し、中級編では費用対効果の考え方について説得する方法を紹介。最後の上級編では、実際にコンテンツを依頼する際に必要なクリエイティブディレクションについて紹介していく。
コンテンツマーケティングを実施するために
Webサイト上だけにかかわらず、コンテンツが最も重要な要素の1つであることは、ホームページができたころから言われ続けてきたことであったが、今から10年程前、米国でマーケティングロジックの1つとして本格的に研究されはじめてからは、“コンテンツマーケティング”といったマーケティングコミュニケーションの考え方として急速に広まってきた。
特に、ここ数年のSNSの普及でコンテンツの重要性を感じているWeb担当者が急増しているだろう。さらにGoogleのパンダアップデート以降、検索エンジンでの順位アップを主とした集客手法ではなく、質の良いコンテンツによる集客や見込み客の囲い込みが実現できる“コンテンツマーケティング”がブームとなり脚光を浴びている。
現在では、米国の最新“コンテンツマーケティング”事情を紹介する書籍などもいくつか出版されていたり、Web担当者フォーラムでも実践コラムが掲載されていたりする。探そうと思えば“コンテンツマーケティング”を知るための情報はたくさん存在する。
そうした情報を把握することで、“コンテンツマーケティング”の考え方、組織の作り方、KPI、海外や国内の最先端事例など、基本的な手法を知ることができる。ただ、リスティング広告のような直接的なプロモーションをメインに実施してきたWeb担当者の場合、自社で具体的なコンテンツアイデアをすぐにイメージするのは難しいものだ。
バナーやランディングページなどの商品・サービスの直接的な訴求に関する発想には慣れているが、“ユーザーが共感する”という、ある意味あいまいな発想をイメージする思考がとぎすまされていないためだろう。コンテンツが重要なことはわかるが、コンテンツによって顧客の心をつかむということがピンとこない、または、どのようなコンテンツを具体的に作ればいいかイメージできないというWeb担当者の声を聞いたことがある。
現に企業内でWeb担当者が“コンテンツマーケティング”を実施しようと企画書を作成したとしても、コストや社内体制の変更を含んだ提案の場合には、ROIが明確で売上に直結するプロモーションが重視され、“コンテンツマーケティング”の実施有無の決済を後回しにされるケースが多々ある。
私自身も数年前から企業に対してコンテンツマーケティングを提案しているが、当初は概念的なものだけを提案してもピンとくる担当者が少なく、重要だと理解はしてもらえるが、具体的な展開をイメージさせることができず、結果、ペンディングに終わるケースがあった。
今回はこうした体験を踏まえて、“コンテンツマーケティング”の重要性や具体性を理解してもらえるための企画書について紹介する。
書籍やWeb上で紹介されている“コンテンツマーケティング”の基礎
前述の通り、書籍やWeb上では、“コンテンツマーケティング”に関するハウツーが数多く紹介されている。大まかにまとめると下記のようなものだ。
- 目標設定
- 現状分析
- ペルソナ設定/購買ファネル
- KPIの設定
- コンテンツアイデア
- コンテンツマップやカレンダー作成
- チーム編成
- コンテンツ作成
- コミュニケーション運用
- 分析・改善
多少の違いはあるだろうが、実際する際の大枠は間違っていないだろう。こうした基本情報を整理することは、理論的な説明をするために重要な要素だ。
こうした基本を押さえたうえで、今回は資格取得やキャリアアップセミナーを行っている会社を例に説明する。上司を説得する際は、1枚の企画書では表現しきれないことも多いが、ここでは全体的な流れとキーとなるポイントを理解してほしい。
コンテンツマーケティング”で、上司を説得させるために一番重要なことは、
今後展開するコンテンツが今までのコンテンツとどう違うのか、具体的にそれがどんなコンテンツなのか
ということだ。上司にコンテンツをイメージさせて、「これならユーザーが興味を持つだろう」と理解してもらうことが一番のポイントである。もちろん、そのコンテンツを展開することで、アクセス数などのKPIが●●%上がるといった数値目標も必要だが、今回の初級編では、まず、上司にコンテンツを具体的にイメージしてもらい、そのコンテンツが良いコンテンツであり、これならうちのWebサイトも今までと違った展開になるだろうと思わせることを一番の目的とする。
上司がピンとこない企画書の例
まずは、「ダメな例」というよりは上司がピンとこない企画書の例を見てみよう。
全体的に流れとしては間違っていないのだが、企画書を読んだ後、この施策によって具体的にどのような成果が得られるのかが想像できないのが一番の問題だ。
「課題(背景)」と「目的」はともかく、「申し込みまでのファネル」のところでは、なぜコンテンツ掲載が優良顧客化につながるのかがわからない。もし、ここでファネルを入れる場合は、今までがどういう状況にあり、なぜコンテンツを提供することで優良顧客が増えるのかを説明する必要がある。
ターゲット設定の部分は、ターゲットのユーザー像(ペルソナ)のイメージを設定する場所だが、あまりにも漠然としていることと、ターゲットが分かれすぎていることで、どういったユーザーに対して注力するべきなのがわからない。「対象となるターゲット」という意味では理解できなくもないが、もっと対象を絞るべきであるし、性別と年齢だけでなく、対象ユーザーのもっと細かい属性やライフスタイルなども記載しないと、対象ユーザーが共感を持つコンテンツまでたどり着けない。
また、一番大事なコンテンツ内容に至っては、アイデアや方向性がないに等しい。ここがこの企画書の一番弱いところだ。そうしたことを考えると、やはり、この企画書だと弱いと感じるだろう。
上司が知りたいこと
上司が知りたいことは、ずばり、これから展開するのがどんなコンテンツで、今まで掲載してきたWebコンテンツとどれだけの違いがあるかだ。企業Webサイトを運営していれば、すでに何かしらのコンテンツを掲載しているはずなので、違いを説明できなければ説得は難しい。
もちろん、どれだけ効果があるかというのは上司の知りたいところではあるのだが、コンテンツマーケティングによって展開するコンテンツがイメージできなければ効果も想像できない。初めてコンテンツマーケティングを企画するならなおさらだ。まずは、コンテンツが具体的にどんな内容で、どれだけユーザーの共感を呼べるものなのか説得する。ただ、「良いコンテンツを作ります!」と言っても始まらない。
私自身がいつも感じていることだが、“コンテンツ”という表現は非常に広義であって曖昧だ。テレビやラジオであれば番組がコンテンツであるし、新聞・雑誌であれば記事や特集などがコンテンツとなる。自社のWebサイトであれば、テキスト、静止画、動画、アプリなど、サイト上にアップされているものがコンテンツそのものである。
つまり、コンテンツの良し悪しよりも、対象となるユーザーが興味・共感を持ったり必要としたりする情報か、そうでない情報かが重要になる。そして、上司には対象となるユーザーが興味・共感を持ったり必要としたりする情報とはどんな情報かを理解してもらうことが必要となる。
コンテンツ展開を説得できる企画書
では、上司を説得するための企画書は、具体的にどんなものだろうか。
「課題(背景)と目的」は簡潔に書く。そして、今回の目的は上司に具体的なコンテンツをイメージさせることなので、その前段階として、ターゲットの特徴をできるだけ具体的に見せ、そのターゲットが興味を持つコンテンツへとつなげることを重要視する。そして、展開後のKPIを合わせて記載する。できれば、コンテンツ以外の集客について記載するといいだろう。
この要素をベースに、良い企画書の例を見てみよう。
今回の企画書では、ターゲットを絞り、そのターゲットに対してどんなコンテンツを提供すると共感を得られるのか、ということを説明して説得できるかが重要となる。その場合、企画書にもある通り、ターゲットの属性や生活スタイルなどを記載し、そのターゲットが普段どんな情報を欲しがっているかを具体的に書く。そうすると、ターゲットが具体的に欲しがっている情報がそのままコンテンツとなるので、それを文章やコラムのタイトルにして具体的に示すことで、展開するコンテンツがイメージできる。
ここでは、ターゲットを「20代後半の上昇志向の強い総合職の女性」とした。勉強家でキャリアアップを目指しているため、スキルアップの方法、給与アップはどうしたら実現できるか、活躍している女性に関する情報などに興味があると考えられ、それぞれのニーズに対して展開するコンテンツのコンセプトを考える。「女性の活躍を応援・サポートするためのコンテンツ」として、それに関するコラムやニュースを展開することで、ターゲットに共感を得てもらう戦略だ。
上司の説得には、具体的にどんなコンテンツを作るのかイメージさせることが必要なので、本来はコンテンツのサンプルなども出した方がいいが、そこまでしなくとも、コンテンツのそれぞれのタイトルをきちんと考え、それが魅力的なものなら理解してもらえる。なので、ここで一番重要なのは、ターゲットの興味・関心とそれに対応するコンテンツのタイトルだ。ここがきちんとできていれば、上司を説得できるだろう。
KPIについては、掲載するページへのアクセスやユニークユーザー数、流入キーワードなどを見ることで、そのコンテンツに反響があったかどうかが判断できる。
集客施策と今後の展開
最後は、集客の強化についてだ。施策の成果をもとに、アクセス数の多いコンテンツを参考に今後のコンテンツ展開を考えることは当たり前だが、FacebookページなどSNSを活用している企業なら、コンテンツ掲載と同時にSNSを使って告知するなど、コンテンツのアピールが強力な集客手段になる。
今回は、“コンテンツマーケティング”に関しての重要性は理解しているが、具体的なコンテンツ展開がイメージできていない上司に対する企画書ということで、一番重要なターゲットとそのターゲットに提供するコンテンツの具体性を打ち出すことをメインに紹介した。
コンテンツが重要でなくなる時代は、おそらく来ないと思われるので、まずは上司を説得してコンテンツマーケティングにチャレンジしてもらいたい。
次回、中級編では費用対効果の考え方について説得する方法を紹介する。
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