SEO対策の予算をゲットできる企画書/上司を説得できる企画資料の作り方講座#2
上司を説得できる企画資料の作り方講座
新入社員が覚えておくと仕事がうまくいく“通る企画書”の作り方
“SEO神話”に要注意
検索エンジンまわりのプロモーションが主流となって数年が経っている。かなり詳しい人もいれば、何となくしかわからない人もいると思う。今回は、SEOに関してあまり詳しくない方々(または何となく理解しているがまだ自社のサイトなどで実施したことがない方々)を対象にして説明する。
企画書の話をする前に確認しておきたいことがある。SEOを行っている企業の業績が良いと聞き、SEOを実施すればWebサイトの課題のほとんどが解決すると勘違いしている方が未だ多いように感じる。私はそういった考え方を“SEO神話”と呼んでいる。SEOは万能ではない。まず、SEOとは何なのか、基本的なことを再度認識しておく必要がある。
SEOの目的は上位表示することではない!
SEOとは、検索エンジンでの検索結果で自社Webサイトを上位表示することが最終目的ではない。検索エンジン向けの対策を行って、最終的に自社Webサイトへの“集客”を実現するための施策である。もし、自社Webサイトが業界内である程度の知名度があり、アクセスもそこそこあって、目的が売上アップだというのであれば、コンバージョンアップのための施策やプロモーションによる売上強化など、SEO以外にやることがあるはずである。もちろん、集客を強化することで、コンバージョンが増えることもあるので予算がある場合にはSEOを同時に実施してもいいかもしれない。
ただ、SEOは、Webサイトをオープンしたのはいいが1年前とアクセス数がほとんど伸びていない場合や、プロモーション用のWebサイトを新たに作ってそこにユーザーを集めたい場合などに、最も有効な手段だと考えるべきである。
ダメな企画書例
では、まずはダメな企画書の例を見てもらおう。
今回はダメな企画というよりは要素が不足している企画である。SEOの手法が他の手法と比べすぐれていることと競合他社がSEO導入をしていることを強調している。要素としてまったく必要ないわけではないが、数値的な現状分析や根拠がないので上司を説得できる可能性は低いだろう。
競合もほとんど導入している
だから導入が必要
という提案では、導入した後の効果がまったく見えてこない。
競合他社がやっているものをすぐに導入するような会社であればいいかもしれないが、私が上司なら、部下にまず「導入したらどうなるのか」と聞くだろう。もし、このような企画書を作ってしまった方がいたら、その不足している企画書に加えて、後に示す良い企画書例のようなページを加えるみるのもいいかもしれない。
企画を考える前にこれだけはやっておこう
前回でも説明したが、まず必要なのは現状分析である。ここでは例として、花を中心に贈答用の商品を販売している自社ECサイトに関する企画だとする。月間セッション数が10,000前後で、1年前と比べてほとんど上昇していないという課題があるとする。
実店舗での展開がメインとなって、ECサイトにあまりパワーを入れられない会社などが多く抱える問題だが、まずは、検索エンジンを経由してWebサイトに適切なユーザーが訪れているかどうかを調べてみよう。
これに関しては2種類の指標で見ることができる。1つは、アクセス解析で検索エンジンからの流入率を見ること。Google Analyticsであれば、メニューの[トラフィック]から「検索エンジン経由」「参照サイト経由」「ノーリファラー」の円グラフが表示されるのでそれぞれの流入率が一目でわかると思う。おおよその判断であるが、他のプロモーション(アフェリエイト、メルマガなど)をほとんど実施していない企業で、検索エンジン経由の流入率が10%以下の場合は、SEO対策の余地が十分にあると考えていいだろう。
もう1つは、対象ユーザーが検索すると思われるキーワードで実際に検索してみて、自社のWebサイトがどれくらいの順位になっているかを見ることだ。たとえば、
- ギフト
- カタログ ギフト
- 母の日 贈物
- フラワー ギフト
- ギフト 販売
など、考えつくキーワードで、自社Webサイトの順位を並べてみよう。調べたキーワードの順位の多くが2桁台だった場合は、SEO施策をするべきだ。
キーワードと月間検索数
ここで注意しなければならないことがある。実際に人々が検索しているキーワードは何かを見極めることだ。SEOはキーワードを決めてそのキーワードで検索した際にWebサイトの順位を上げる対策のため、キーワードの選定は重要になる。適当にキーワードを決めても、選んだキーワードで検索する人がほとんどいない場合は、その対策にビジネス上の意味はない。集客につながらないからだ。
キーワードは多くの人が検索するものを選ぶというのが基本である(ただし、あまりに検索数が多いものはビッグワードと呼ばれ上位表示が非常に難しいのでその辺は考慮する必要がある)。各キーワードがどれぐらいの回数検索されているかについては、グーグルが無料で提供しているツールがあり、それを使うとだいたいの月間検索数がわかるので利用しみるといいだろう。
また、オーバーチュアのスポンサードサーチを利用しているのならば、1か月の予想検索数を表示してくれるツールも利用できる。
SEO導入の企画書を書く際にまず必要になる要素は、次のとおりだ。
- キーワードごとに
- 現在の順位
- 月間検索数
- アクセス解析のデータ
- 目標数値
- 施策
- コスト
便宜上、このコラムでは1枚で見せているが、複数ページで作成することでも全然構わない。
第1回でも説明したが、企画書に入れるべき一般的な要素は
- 現状分析
- 課題
- 数値目標
- 施策内容
- コスト
が基本となっていて、これが大幅に変わることはあまりないと思っていい。あとはその要素にどれだけ説得できる材料を入れられ、なおかつ、明確に表現できるかどうかにかかっている。
現状分析――上司を説得させるための見せ方1
今までのところをまとめて、「自社Webサイトが検索エンジンの対策をしていないために、どれくらいの集客対象を逃しているか」を数字で見せるのがいいだろう。想定されるキーワード、それぞれのキーワードの月間検索数、現在の順位を並べてみる(ヤフーとグーグルの両方の分があればより良い)。そして50位以内のキーワードの月間検索数合計を算出する(50位以下はほとんどクリックされないため集客対象とは考えない)。
そして、その横に、すべてのキーワードで50位以内に入った場合を仮定して、すべてのキーワードの月間検索数合計を算出して並べる。つまり、SEOを導入して選定したキーワードの順位を上げることで、今まで集客対象としていなかったユーザーを集客対象にできることとをわかりやすく見せるのである。
後に示す良い企画書の例では、「SEOによって集客対象が14.75倍も拡がること」をわかりやすく表現している。ただ、ここで勘違いしてないでいただきたいのが、クリック数やセッション数が14.75倍になるわけではないことだ。あくまでも集客対象が拡がるという説得のための見せ方だということを忘れないでほしい。
また、前述した「検索エンジンからの流入率」が低いことを証明するグラフなども要素としてはあるほうがいいだろう。
数値目標――上司を説得させるための見せ方2
集客を最終目的とする場合、SEO対策でどれくらいのアクセスを増やせるか数値で出すことは、業種やキーワードの性質、アクセスするユーザーの性質によって結構幅があるため、これが結構難しい。ただ、数値での指標がないと説得力に欠けるのでここは意地でも数値で出したいところだ。
例としてある1つの算出方法でやってみよう。米AOLが以前に公表した検索結果順位とクリック率の関係についてのデータを引っ張り出すのだ。
検索結果ページの2位:クリック率 6.48%
検索結果ページの3位:クリック率 4.63%
…(中略)…
検索結果ページの10位:クリック率 1.63%
となっている。あくまでも米AOLでのある時点でのデータだが、参考の指標にはなる。
選出したキーワードがすべて10位になると仮定して、選出したキーワードの月間検索数合計の1.63%を算出する。例では2,134となる。月間セッション数が約10,000なので、SEO施策によって増えるクリック数を足すと約1.2倍の12,000セッションとなる(クリック数とセッション数は若干異なるが、ここではほぼ同等と見ていいだろう)。これを目標としよう。
施策内容/コスト――上司を説得させるための見せ方3
SEO対策は大きく分けて2種類の方法がある。「外部施策」と「内部施策」だ。両方を適宜実施することが本当の意味で理想だが、コスト面や目的などによって使い分けるのもいいだろう。外部施策と内部施策の詳しい説明は、Web担や他のサイト、書籍で数多く説明されているので、ここでは詳しくは述べない。ただ、今回のように多くのキーワードを施策する必要がある場合は、まず内部施策をしっかり行い、その後、外部施策を取り入れていくのがいいだろう。施策内容とコストの部分はSEOを実施している企業にヒアリングを行い決めていってほしい。
SEOの予算をゲットできる良い企画書例
では、ここまでで述べたような要素をしっかりと入れた、良い企画書の例を見てみよう。
今回は、月間検索数、ランキング状況、検索エンジンからの流入率、自然検索における順位別のクリック数を用いて企画書を書いてみた。他にも、検索エンジンからの流入数を多くする見せ方や、流入キーワード数を多くする見せ方などいくつかの見せ方があるので、参考として見てもらいたい。
何度も言うが、どれだけ説得できる根拠を取り入れてそれを表現できるかが、上司を説得できるかどうかにかかってくることを忘れないでほしい。
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