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国際著作権訴訟の原則:裁判はどこの国で開かれ、どの国の法律が適用されるのか?

Randから一言:最近、SEOmozのチームに仲間入りしたサラ・バードは法律家で、検索と技術に対して情熱を抱いている。サラがチームに加わったおかげで、社内にお抱え弁護士ができただけでなく(資金調達を進めて成長を続けていた時期を通じて、その存在が非常に貴重であることはすでに証明済みだ)、検索と法律が交差する分野に非常に生き生きとした探求的な知性を生かせるようになった。SEOmozで初めての「弁護士先生」をいっしょに温かく迎えてほしい。


SEOmozの読者に気に入ってもらえるといいんだけど。私は、SEOやSEMに関係するすべてのことを扱う法律関係の情報源よ。

ワシントン大学ロースクールを卒業して、この3年間はいろんな難しい訴訟を扱ってきた。最近、SEOやSEMのコミュニティに専門知識を提供しないかとSEOmozから声がかかり、やる気満々でありがたくお誘いに乗ったわけ。

法的助言を与えることはできないけれど、法律に関する情報を提供することはできる。SEO・SEM業界に影響する法的問題や動向に関するブログを書くことによって、SEOmozの守備範囲を広げ、もっと役に立つサイトにするのが私の目標。そのうち参考のために、契約書のサンプルや使用停止を求める文書、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づく削除通知、免責事項を紹介するつもり。著作権や公正使用、商標、プライバシー、契約、知的財産関係の国際条約ネットの中立性、ライセンス契約といったテーマに関するQ&A形式のブログ投稿も週1回公開する予定よ。

繰り返し言っておいたほうがいいわね。これは法的助言じゃない。法的助言は、特定の事実に対して弁護士が法を適用する場合を指すの。法的助言がほしいなら、資格のある弁護士と連絡を取るよう勧める。でも、このブログ投稿は、よくある法律の落とし穴を避けたり、どの段階で法的助言を求める必要があるかを判断したりするのに役立つと思う。

私は法律家としての見解を示すから、解決を迫られている法律上の問題を抱えている人は、ドンドン質問をしてちょうだい。法律は、SEOおよびSEMの多くの分野に絡んでくるものだから、コミュニティが関心を抱いて重要視している問題を教えてもらえると助かるわ。遠慮なくここにコメントを書き込んだり、私に直接電子メールを送ったりしてほしい。一緒に取り組むのを楽しみにしているわ。さあ始めましょう!


第1回のQ&Aの投稿として、Distilledのウィル・クリッチロー氏からの質問に答えるわね。クリッチロー氏は、米国の著作権法と国際法が複雑に絡み合う分野で仕事に取り組んできた人なの。もっと詳しく言うと、クリッチロー氏からこんな質問が届いたわ。

  • 著作権侵害訴訟の審問がどこで行われるか、世界中の関係者が絡む著作権侵害にどこの国の法律が適用されるか、どうやって判断するのですか? サーバーの位置から判断するのですか? それともブロガーが住んでいる場所? 著作権の保持者がいる所?
  • 米国のブロガーが主に英国の視聴者に向けて書き込みをしている場合、米国の「フェアユース(公正使用)」の法的定義を採用できますか?
  • 英国のブロガーが主に英国の視聴者に向けて書き込みをしている場合、米国の「フェアユース」の法的定義を採用できますか?
注:著作権がどういうもので、なぜ重要なのかもわからない読者向けに、週1回のQ&Aの投稿と、できれば「著作権ガイド」で、もっと基本的な問題に取り組んでいくつもりよ。だから、法に関係する初歩的な質問をするのをためらったりしないで。

クリッチロー氏のこの質問はとても難しいわ。簡単に答えると(読者のみんなも簡単な答えがいいと思う)、「それは状況による」よ(弁護士に500ドル払ってもこう言われるわ)。

よく聞いて。この種の話を聞くのは退屈で死にそうな気分になるかもしれないけど、将来、この投稿のおかげで刑務所に入らずに済む可能性だってあるのよ。少なくとも、下に書いた2、3の重要な法律用語と法の原則を覚えておけば、次回のSEOおよびSEM関係のイベントでインパクトを与える発言ができるわ。

著作権関連の国際法のようなものはない

まず、著作権関連の国際法のようなものはないの。あら、いやだ。これじゃあ、あんまりね。国際法がない代わりに、さまざまな国際条約や連盟、会議があるわけ。こうした国際条約や会議がなかったら、著作権保持者は外国で権利を行使する方法がなくなってしまう。

国際的な取引が増加し、知的所有権の重要性が高まっているので、世界のほとんどの国が条約を結んだり、連盟や会議に参加したりしている。頑張り屋さんのために、国名と各国が締結・参加している著作権関係のさまざまな条約や会議をまとめたリスト(PDFファイル)にリンクを張っておくわね。

たとえば、米国は以下の条約を結んでいる。

  • 国際輸出信用保険機構(ベルンユニオン)
  • ベルヌ条約パリ改正条約
  • 北米自由貿易協定(NAFTA)
  • 万国著作権条約(UCC)
  • UCCパリ改正条約
  • WIPO著作権条約
  • WIPO実演・レコード条約

……などなど。

これらの条約には、さまざまなレベルの著作権保護や司法の管轄権に関するルールがあることが多い。これが、クリッチロー氏の質問への答えが「状況による」という簡単なものになる理由の1つ。答を言い渋っているわけではないの。

国際著作権があまりに複雑だと思われないように、一般原則と傾向をちょっと教えておくわね。それから、いくつかの曲解を紹介して、あなたが新たにつけた自信を粉々に打ち砕くことにする。おもしろそうでしょ?

私が関係する国際著作権訴訟の審問はどこで行われるのか?

非常に一般的な話をすれば、国際的な要素がある著作権侵害訴訟(「国際著作権訴訟」と私は呼んでいるわ)は、著作権侵害が行われた場所で起こされる。弁護士はこの原則を著作権法の「属地主義」と呼んでいる。もちろん、これでは、疑問がわいてくるわね。「インターネット上の著作権侵害に対処する場合、著作権侵害が起きた場所をどうやって判断するのか?」って。

世界中の裁判所は、哲学者が心と体の問題に取り組むのと同じように、この問題に取り組んでいる。

著作権侵害が起きた場所はサーバーの場所によって決まるのか? 著作権侵害と認めた人物の居住地? 著作権保持者の居住地? 被告の居住地はどこ? 著作権侵害で被害を被った場所はどうなるのか?

この問題に取り組んだ後、大半の国のほとんどの裁判所は、単純に1つの要素を基準とする方法を採用するのをあきらめた。事はそれほど単純じゃないからね。代わりに裁判官は、やりたいようにやっている。つまり、すべての要素を検討して、本能的直感の命じるままに動いているの。ポッター・スチュワート判事の有名なハードコアポルノの定義――「見ればわかる」――と似たようなものね。

インターネット上で起きた著作権侵害の場所を判断するのは難しいけれど、世界中の裁判所の見解が一致していることもある。

まず、著作権を侵害しているコンテンツの掲載サイトをA国で見ることができるという事実だけでは、A国の管轄にはならない。A国のそのサイトから本や楽曲といった著作権を侵害しているコンテンツを購入できる場合は、話は違ってくるかもしれない。

次に、サーバーがB国にあるという事実だけでは、B国の管轄にはならない。接続されている範囲がごく限られている場合は、管轄権を確立するには不十分なの。

考慮すべき要因がたくさんあるので、国際著作権訴訟の審問がどこで行われるかの判断には正解が複数あるかもしれない。国際市場では、2か国以上に審問の管轄権があるケースがますます一般的になってきているの。

たとえば、著作権保持者と著作権侵害者は英国に住んでいるけれど、著作権を侵害しているウェブサイトがターゲットにしている市場とホストサーバーがロシアにあるとしましょう。

その場合、どちらの国も問題に大きく関係しているので、訴訟は英国かロシアのどちらかで起こされる可能性がある。

答えが「すべて」になりうる複数選択式の質問は嫌い?

裁判所はどの国の法を適用するのか?

こう言うと、法律家以外の大勢の人たちは驚くけれど、裁判所が外国の法を適用することがときどきあるの。そうしたくはないんだけど、特定の状況下ではそうするわけ。

裁判所はなぜ外国の法を適用すると思う? 契約の当事者双方が特定の裁判地にすることで事前に合意に達することがときにはある。

たとえば、アブル社が、法や裁判地の選択についても盛り込まれたライセンス契約をブルータス社と結ぶとしましょう。紛争が起きた場合には英国の法を採用して解決し、英国で訴訟を起こすという内容の契約に各当事者が同意する。

本拠地は、アブル社が英国(だから、裁判地も英国)で、ブルータス社がブラジル。

ブルータス社がライセンス契約の範囲を超えると、アブル社は英国で訴訟を起こすことができ、英国の法が適用される。事前に契約を結んでいなければ、アブル社はブラジルで訴訟を起こさないといけなくて、ブラジルの著作権法が適用されるかもしれない。

事前に契約を結んでいなければ(実際、そういうケースが多いんだけど)、裁判所はたいてい自国の法律を適用する。もっと正確に言えば、裁判所は、著作権侵害が起きた国の法を適用する。管轄についてさっき言った理由から、たいていの場合、著作権侵害が起きた国で裁判が行われるの。

でも、いつもそうとはかぎらない。世界各国の弁護士が著作権法の「域外適用」にずっと右往左往しているわ。

たとえば、「ロンドン・フィルム・プロダクションズ対インターコンチネンタル・コミュニケーションズ訴訟」580 F.Supp. 47(1984年)では、原告側が英国企業で、被告側は米国企業だった。著作権侵害が起きたのはチリなどの南米諸国。

どこの国の裁判所で審問が行われたと思う? 米国の連邦裁判所よ。著作権侵害は他の国で起きたけれど、審問の実施を正当化するくらい、紛争の原因である事実に米国が関与していると裁判所は判断したの。こうして米国の連邦裁判所裁判官は、他の南米諸国数か国の法を適用しなければならない立場に置かれた。

通常なら裁判所にとってはおもしろくない話だけれど、米連邦裁判所が納得する代案では、原告が南米の各国で訴訟を起こさなければならなかった。そんなことをすれば途方もない資源の無駄になるわ。だから、すべての要因を考慮した上で、米連邦裁判所は、自らが審問を行う管轄権を保有し、著作権侵害が実際に起きたかどうか判断するのに適切な他国の法を適用することに決めたの。

ロンドン・フィルム・プロダクションズ訴訟は、管轄権を持った裁判所が他国の法を適用した例よ。著作権侵害が起きた場所は、どの国の法を適用するかを判断する上でもっとも強力な要因の1つなの。

ヒュー・グリフィス被告の教訓的な話も、著作権侵害が起きた国で判決が下されなかった国際著作権訴訟の例。でもこの訴訟は、著作権侵害が起きた国の法も適用されなかったから、ロンドン・フィルム・プロダクションズ訴訟どころではないの。

米国に一度も足を踏み入れたことのないオーストラリア国民のグリフィス被告は、米国で著作権が取得されたソフトウェアの海賊版をオーストラリア人が利用できるようにした容疑で、オーストラリアから米国に引き渡された。

さっき話した傾向と法則に基づくと、この状況では、オーストラリアの裁判所に管轄権があり、オーストラリアの法が適用されるはず。たしかに、それも1つの選択肢だった。でも、実際には、グリフィス被告は米国に引き渡され、米国の著作権法を侵害した容疑について罪を認めたの。

この訴訟のポイントは何かしら? 著作権侵害が起きた国で審問が行われ、その国の法が適用されると言われるけれど、ロンドン・フィルム・プロダクションズやヒュー・グリフィス被告の話からわかるように、必ずそうなるとは限らないということよ。

でも「内国民待遇の原則」によって法の選定が決まるんじゃ?

著作権侵害と法の対立について独自に研究している人なら、「内国民待遇の原則」によってどこの国の法が適用されるかが決まると読んだかも知れない。でも、これはよくある、単純化しすぎている例の1つよ。騙されちゃいけないわ。

ベルヌ条約は、たぶん著作権に関する優れた国際条約なんだけど、その中で、司法制度では海外の著作権保持者は現地の著作権保持者と同じ待遇を受けると取り決められている。つまり、米国人がドイツで著作権侵害訴訟を起こすことは可能で、その場合、その米国人にはドイツ国民と同じ権利を与えなければならないの。

内国民待遇の原則により、ドイツで訴訟を起こした外国人にドイツの著作権法が適用されるように思えるでしょ? でも、さっき話した理由から、裁判を行う国が外国の法を適用することがときどきある。申し立てによって、「内国民待遇」がドイツ法の下でのドイツ国民と同じ権利を与えたり、米国法の下でのドイツ国民と同じ権利を与えたりする。

この話の教訓は、裁判所の場所と「内国民待遇の原則」によって法の選択が決まるわけではないということ。

同じ申し立てで2つの国で訴訟が起こされ、各国の裁判所が訴訟に対する管轄権を主張した場合はどうなるのか?

これまで書いたことに全部目を通して、すっかり頭が混乱しているとしても、それはあなただけじゃないわ。弁護士と裁判官がしょっちゅうこうした問題を複雑にしているんだから。

管轄権と法の選択の問題は、多くの異なる要因を考慮する必要があり、理性的な人間が集まって同じ要因を見ても、違う結論に達することがよくあるの。結局のところ、異なる2国の裁判所の両方に審問を行う正当な理由があることも十分考えられる。こういう場合、相手側の弁護士よりも優秀な超一流の弁護団を雇うことが大事になるの。

たとえば、あなたが米国民で、何かすばらしいものを書いて著作権を保持しているとしましょう。米国国籍もあるブルータス社がその作品のフランス語版のパロディーを作ったとする。ブルータス社は、フランスにあるサーバーを使って、フランスの多くの視聴者にパロディーを提供している。

あなたの弁護士は、「著作権侵害が起きた場所」がフランスで、フランスの法が米国の法よりも訴訟に有利である十分な論拠があるので、フランスで訴訟を起こすよう勧める。これは、フランス人の方が著作権を保護する強力な「著作者人格権」があり、「公正使用」の定義がはるかに狭いからで、あなたの申し立てを擁護する可能性があるからなの。

あなたがフランスで訴訟を起こした後、ブルータス社は一流の弁護士を雇って、当事者双方の本拠地である米国で審問を行うのが最上の策だとフランスの裁判所を説得しようとする。

ブルータス社には、フランスに管轄権があるという主張に反論する十分な動機がある。ブルータス社は、訴訟を米連邦裁判所に持ち込めば、米国の法を適用するよう裁判官を説得できるかもしれない。米国の著作権法は、著作権のある作品をパロディー化する権利を含めて、「公正使用」の定義がかなり緩い。だから、被告は訴訟を米国に持ち込むことができれば、勝訴するチャンスが大きくなる。

原告はフランスで訴訟を行いたいけれど、被告にとっては米国で審問が行われるほうがいい。現実にこうした状況になることがあり、どちらの裁判所も、訴訟の各当事者と大きく関わっていて管轄権を行使できるので、実際のところ、どちらに転ぶかわからない。

これで、世界中の弁護士や裁判官と同じくらい混乱したんじゃない?

読者のみんな、大丈夫よ。これを読んだら、弁護士と法律家のブロガーが、あなたの国際著作権訴訟に対していつも「状況による」と回答して、問題をわかりにくくしているように思える理由がわかるから。管轄権と法の対立に関する質問への正しい答は1つじゃない。法律は、技術が発達した後に、すごい勢いでその変化に対応しようとし続けている。

これから、国際著作権の問題についてたいていの人よりも詳しくなれるわ。たぶん、今はまだ混乱してるでしょう。でもできれば、自分が混乱している理由と、それが自分のせいではないことがわかってほしい。世界中のすべての弁護士と裁判官が、いまだにこの問題に苦労しているんだから。

この分野の法整備が続くのに合わせて、最新情報を伝えるわね。

最後に一言。著作権問題に苦労しているなら、資格のある弁護士に必ず相談して。私の投稿は、個別の法的助言の代わりじゃないから。

投稿を読んでくれてありがとう。では。サラ。

追伸:忘れないで! 特定の投稿に関する質問やコメントだけでなく、検索業界の法的問題をテーマに(できれば)毎週公開するこのブログ投稿に役立つ法律関係の質問なら、何でも歓迎よ。

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