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「LINEヤフー株式会社」が発足、コマースカンパニーCEOは上級執行役員の秀誠氏

2 years 5ヶ月 ago

ヤフーやLINEなどが統合した新会社「LINEヤフー株式会社」が10月1日に発足した。ミッションは「『WOW』なライフプラットフォームを創り、日常に『!』を届ける。」。

ヤフーやLINEなどが統合した新会社「LINEヤフー株式会社」が10月1日に発足
「LINEヤフー株式会社」が10月1日に発足

「LINEヤフー株式会社」は、Zホールディングス(ZHD)を存続会社としてLINE、ヤフー、Z Entertainment、Zデータ、ZHDの5社が統合した新会社。

「LINEヤフー株式会社」
「LINEヤフー株式会社」のロゴ

従業員は連結で約2万8000人(2023年3月時点)、単独では1万人以上(2023年9月時点)、グループ会社数は124社(2023年8月時点)。ユーザー数は、グループ延べ利用者数で3.2億超、「Yahoo! JAPAN」は5430万(月間ログインユーザーID数)、LINEは1.99億(月間アクティブユーザー数)。

組織体制は、検索、コマース、ローカル・UGC、メディア、エンターテイメント、コミュニケーション、マーケティングソリューションという7つのカンパニー体制に移行。カンパニーCEOが事業領域の経営に権限と責任を持つ体制にする。

「LINEヤフー株式会社」の新体制について
「LINEヤフー株式会社」の新体制について(画像はIR資料からキャプチャ)

コマースカンパニーのCEOには秀誠氏が就いた。2002年ヤフー入社、2018年に執行役員コマースカンパニー事業推進室長、2022年には常務執行役員CEO事業推進室事業推進統括室長兼コマースグループ長。現在は一休の取締役会長で、LINEヤフーの上級執行役員コマースカンパニーCEO。

「LINEヤフー株式会社」の新体制について コマースカンパニーのCEOには秀誠
コマースカンパニーCEOの秀誠氏(画像は一休のWebサイトからキャプチャ)

今後、ヤフー会員とLINE会員のIDを連携し、将来的にはIDの統合も視野に入れている。LINEと「Yahoo!JAPAN」のID連携は2023年10月開始予定。連携後の会員はグループ横断の会員プログラム「LYPプレミアム」としてスタートし、2023年11月にプレミアム会員特典をアップグレードする。2024年中にはPayPayとのID連携も計画している。

Zホールディングスは2023年10月1日までに、LINEやヤフー、Z Entertainment、Zデータといった子会社を合併。合併後の社名はLINEヤフーに変更する
合併で実現すること(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)
瀧川 正実

ドコモ口座ドメインが失効、402万円で落札

2 years 5ヶ月 ago

NTTドコモが所有していたドメイン名「docomokouza.jp」が管理不備により失効し、オークションに掛けられた。NTTドコモが取り戻し、不正利用は防げたようだ。

ドコモ口座ドメイン名流出の背景 企業・政府におけるドメイン運用の課題 https://www.watch.impress.co.jp/docs/series/suzukij/1534421.html
「ドコモ口座」のドメイン、ドコモが取り戻す 出品の経緯をGMO含め聞いた
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2309/26/news117.html

noreply@blogger.com (Kenji)

「ヤフオク!」「PayPayフリマ」の「おてがる配送」、配送サービスの一部で送料値上げ

2 years 5ヶ月 ago

LINEヤフーは10月4日から、「ヤフオク!」「PayPayフリマ」で提供している配送サービス「おてがる配送」の一部料金を値上げする。

「おてがる配送」は、ヤマト運輸と日本郵便が提供する配送手段を「ヤフオク!」「PayPayフリマ」価格で利用できる配送サービス。ヤマト運輸の「おてがる配送(ヤマト運輸)」、日本郵便の「おてがる配送(日本郵便)」がある。

出品者が送料を負担する場合、「おてがる配送(ヤマト運輸)」の「ネコポス」は従来の175円(税込)は200円(税込)に、「おてがる配送(日本郵便)」の「ゆうパケット」は180円(税込)は205円(税込)、「ゆうパケットポスト」は175円(税込)から200円(税込)に値上げする。

LINEヤフーは10月4日から、「ヤフオク!」「PayPayフリマ」で提供している配送サービス「おてがる配送」の一部料金を値上げする
出品者が送料を負担する場合の「おてがる配送」新料金(画像は「ヤフオク!」のお知らせから編集部がキャプチャ)

落札者が送料を負担する場合、「おてがる配送(ヤマト運輸)」では「ネコポス」「宅急便コンパクト(EAZY)」「宅急便(EAZY)」の料金をすべて引き上げ。「おてがる配送(日本郵便)」では、「ゆうパケット」は210円(税込)から230円(税込)へ、「ゆうパケットポスト」は210円(税込)から230円(税込)に変更する。

LINEヤフーは10月4日から、「ヤフオク!」「PayPayフリマ」で提供している配送サービス「おてがる配送」の一部料金を値上げする
落札者が送料を負担する場合の「おてがる配送」新料金(画像は「ヤフオク!」のお知らせから編集部がキャプチャ)

なお、ヤマト運輸は10月1日以降、「ネコポス」のサービス提供を順次終了、新サービスの「クロネコゆうパケット」をリリースし、配送業務の委託先である日本郵便の配送網で荷物を届けると発表している。

LINEヤフーによると、「『おてがる配送(ヤマト運輸)』の『ネコポス』は10月1日以降も引き続き利用できる」とし、「ヤフオク!」「PayPayフリマ」への影響はないという。

瀧川 正実

商品ページ掲載文の作成、作業時間短縮――ネットショップ担当者のAI活用事例とは | EC×AIの未来

2 years 5ヶ月 ago
ネットショップ作成サービス「カラーミーショップ byGMOペパボ」の公式Webメディア『よむよむカラーミー』編集部が"AIとEC"について、ECビジネスに役立つ情報をお届けします【連載4回目】

近年、「ChatGPT」を始めとしたAI技術が注目を集めており、EC業界でも活用が期待されています。今回は、EC運営にAIツールを積極的に取り入れている2名のネットショップ担当者に、EC運営やプライベートのなかで「具体的にAIをどのように活用しているか」についてお話を伺いました。

「自然派きくち村(https://kikuchimura.jp/)」の事例

"畑からはじまる"商品づくりを理念として、農薬や肥料を一切使わない自然栽培によって育てられた米をはじめ、旬の野菜や果物、オリジナルの調味料、惣菜、スイーツなどを販売する「自然派きくち村」。

約500点ある商品ページでは、生産者の紹介や生産過程、おすすめの調理方法などを紹介しています。充実したコンテンツあふれるサイト運営に、どのようにAIを活用しているのか伺いました。

カラーミーショップ colorme よむよむカラーミー AI ネットショップのAI活用事例 自然派きくち村
米、野菜、果物などの販売を行っている「自然派きくち村」

GMOペパボ EC事業部 ECグループ プリンシパルディレクター 花田靖治(以下、花田):EC運営にAIをどのように活用していますか? またどんなツールを使っているか教えてください。

渡辺商店 自然派きくち村 Web管理担当 田上信一氏(以下、田上氏):「自然派きくち村」では、商品ページに商品の生産過程、生産者の想いを伝えるインタビューや写真を掲載しています。そのインタビュー記事を作るのに「ChatGPT」を使って想定質問や構成案を考えています。他に「Google Bard」なども併用しています。

花田:AIを活用して記事のアイデア出しをするんですね。AI活用でどのような変化がありましたか?

田上氏:AIを初めて使った時は期待していなかったのですが、AIの生成する文章が驚くほど丁寧で自然な表現だったことに驚きました。もちろん何度か手直しは必要ですが、構成などの案出し作業にはかなり役立っています。また、記事が完成した後の誤字・脱字チェック、査読も迅速に行えるようになりました。

花田:AIを活用することで作業時間の短縮になりましたか?

田上氏:構成案や完成記事の確認にかかる時間は大幅に短縮されています。コンテンツ制作のほか、食材の調理アイデアにも「ChatGPT」を活用しています

珍しい農作物も取り扱っているので、お客さまから「どうやって料理したらいいですか」という問い合わせをいただくこともあります。なので、できるだけ商品ページには食べ方のイメージや調理写真、アレンジ方法を掲載しています。その調理方法のアイデア出しにAIを活用しています

自社の加工場で調理を行っているため、具体的な料理の提案もスムーズに行えるようになりました。

カラーミーショップ colorme よむよむカラーミー AI ネットショップのAI活用事例 自然派きくち村 文章の作成
AIを活用して作成した調理法の一例

花田:AI利用でメリットがある一方、課題はありますか?

田上氏:課題もありますね。時折誤った情報を生成することがあるため、注意が必要です。たとえば「無農薬」「減農薬」「無化学肥料」「減化学肥料」という言葉を使った表示は、農林水産省によって禁止されています。そういった国ごとのルールを理解していないので、完成文にNG用語が使われていることがあります。国ごとに異なる文化や背景を学習し、適切なテキストを生成してくれるようになると、より一層EC運営にAIを活用できると考えています。

花田:ありがとうございます。AIの活用によってどのようにコンテンツが進化していくか、楽しみですね。

田上氏:こちらこそ、ありがとうございました。

「梅森陶器店(https://umeto-ki.shop-pro.jp/)」の事例

岩手県一関市において家族で営んでいる陶器店。日用食器から引出物や各種ギフト、業務用食器まで500点以上の商品を扱う陶器の専門店。

SNSを利用して集客を行っており、そのノウハウなどを「note」で発信。AIをはじめ新しいツールを積極的に利用しています。店主の梅森さんにお話をうかがいました。

カラーミーショップ colorme よむよむカラーミー AI ネットショップのAI活用事例 梅森陶器店
日用食器などをはじめ、500点以上の商品を扱う「梅森陶器店」

花田:EC運営においてAIを利用しているシーンはありますか?

梅森陶器 代表取締役 梅森弘嗣氏(以下、梅森氏):新商品の商品説明文を作る際、特にテキストがうまく組めないときに「CahtGPT」を利用しています。箇条書きで商品の説明や特徴を書いて文章を生成しています。自分たちの言い回しとは違う雰囲気のものができあがるので、もちろん手直しが必要ですが、文章を整理する時に使っていますね。

花田:やはり手直しは必要ですよね。他にどのような点でAIを活用していますか?

梅森氏:インタビューや取材、寄稿、申請書の作成で文字数制限があるときに「200文字程度に要約して」といった使い方をします。

花田:たしかに文章の要約はAIの得意とするところだと思います。SNS文言の作成には使っていますか?

梅森氏:SNSの文章には使わないですね。SNSの投稿は当店らしさのようなゆるい雰囲気を大事にしているので、自分の言葉で作っています。「ChatGPT」で作ったこともあるのですが、オススメ感が強い感じになってしまいました

あと、ネガティブワードの処理があまり上手くないと思っています。たとえば「薄くて綺麗な陶器」の投稿文を書くにあたって、「薄い分、強度は劣る」ということをしっかりお伝えしたいのですが、生成ワードに「薄い分こわれやすい」といった言葉を組み込んでも、どこか的を得ないぼかした表現で文章がまとめられることが多いように感じます。

実際に商品を「見る」「手に取る」ということができないECやSNSにおいては、的確で正直な表現でお伝えすることが大切だと思っているので、商品が持つ「短所」については特に自分の言葉・責任で表現するようにしています。

カラーミーショップ colorme よむよむカラーミー AI ネットショップのAI活用事例 梅森陶器店 SNSの文章には使用していない
「梅森陶器店」のInstagram。SNSの文章作成にはAIを使用せず、梅森氏が考えている

花田:梅森さんがプライベートでAIを活用しているシーンはありますか?

梅森氏:Canvaの「Magic Eraser」などを使ってみています。新しいツールはとにかく使うようにしています。元々好きということもありますし、かけられる広告費にも限りがあるので、新しいものはとにかく試して、合わなかったらやらないという感じですね。

花田:なるほど。貴重なお話をありがとうございました。AIを上手に活用して、効率的なテキスト生成と文章の整理を実現しているお話は非常に興味深いですね。今後の展開にも期待です。今日はありがとうございました。

梅森氏:どうもありがとうございました。

まとめ

今回、2人のネットショップ担当者にお話を伺いましたが、共通点として商品ページやテキストを主体としたコンテンツにAIを活用している点があげられます。

コンテンツのアイデア出し、たたき台としての文章作成・要約、誤字・脱字のチェックなど、今まで人が時間をかけていた部分の手助けとしてAIを上手く活用し、作業時間の短縮につなげています

また、両ショップさんとも、ただ単純にAIを使うのではなく「まず取り組んでみて、どこの作業にAIを活用させるか」をショップの個性に合わせて柔軟に対応している点が印象的でした。

EC運営にAI活用を検討している方は、ぜひ2つのショップさんの活用例を参考にしてみてください。

よむよむカラーミー

ファミリーマートが始める荷物の発送+受け取りができる自社運用のスマートロッカー「ファミロッカー」とは

2 years 5ヶ月 ago

ファミリーマートは10月から、荷物の発送・受け取りができる自社運用のスマートロッカー「ファミロッカー」を東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県650店舗に順次設置する。顧客の利便性向上や店舗の省力化における実証実験として展開する。

「ファミロッカー」は、レジに並ばなくても荷物の発送と受け取りができる自社運用のスマートロッカー。ECサイトで購入した商品の受け取り、フリマサイトで取引した商品の発送や受け取りなどを想定しており、顧客の利便性向上につながると見ている。

店舗スタッフの業務効率化も期待できる。従来、1件あたり数十秒かかっていたレジでの荷物の取り扱い業務がなくなり、顧客から預かった荷物を事務所やバックヤードで保管する必要もなくなる。

ファミリーマートは10月から、荷物の発送・受け取りができる自社運用のスマートロッカー「ファミロッカー」を東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県650店舗に順次設置
「ファミロッカー」のイメージ

EC市場の拡大やフリマサイトなどによる個人間取引の増加により、「ファミリーマート」店舗で取り扱う荷物は5年前に比べて約1.3倍に拡大、店舗従業員の作業負荷や荷物の保管場所に関する課題が顕在化してきた。将来的な人口減少による労働力不足も見込まれ、店舗運営における店舗従業員の業務負荷軽減や省力化対応が課題となっている。

こうした課題を解決するため、レジを通さずに荷物の発送と受け取りができる「ファミロッカー」の実証実験を始めることにした。

「ファミロッカー」にさまざまな荷物を集約することで配送を効率化。店舗業務の削減効果、顧客の利用実績、事業性を精査して本格展開の検討を進めていく。

瀧川 正実

10月1日スタートの「ステマ規制」がEC・D2C事業者に与える影響とは?「記事型広告」はオワコンに?

2 years 5ヶ月 ago
消費者庁は「ステルスマーケティング規制(ステマ規制)」を景品表示法の告示に指定し、10月1日に施行した。ステマ規制がEC・D2C事業者に与える影響について解説する

2023年10月1日から、景品表示法によるステルスマーケティング規制、いわゆる「ステマ規制」がスタートした。これまでステマを直接的に規制する手段はなかったが、ステマ規制のスタートにより、ステマそのものが“違法”となるため、EC・D2C事業者の広告・宣伝活動に与える影響は非常に大きい。

10月1日以降は、アフィリエイトやインフルエンサーマーケティング、レビュー活用などの施策において、より慎重な対応が求められるようになるだけでなく、第三者の体験談を装った「記事型広告」は“オワコン”と化す可能性が高い。「知らなかった」では済まされない、ステマ規制のポイントとEC・D2C事業者に与える影響を解説する。

「ステマ」が景表法の規制対象に

「ステルスマーケティング(ステマ)」とは、消費者に広告だとわからないように行ったり、隠したりする広告・宣伝のことである。

社員が第三者になりすまして自社商品の口コミを書いたり、インフルエンサーなどに報酬を提供していながら、宣伝であることを隠して自社商品に好意的な情報発信を依頼したりすることなどが「ステマ」にあたる

ステルスマーケティングに対する消費者の嫌悪感は年々高まっており、すでにステマは社会的に受け入れられない行為になっている。ほとんどのEC・D2C事業者が、ステマにならないよう慎重な広告・宣伝活動を行っている一方で、一部の悪質な事業者がステマを行っているケースがあり、これまではステマを直接的に規制する手段はなかった。

こうした状況を受けて、2022年12月27日に消費者庁が「ステルスマーケティングに関する検討会」を実施。ステマを「景品表示法における不当表示として規制することが妥当である」との報告書をまとめ、ステマが法律で規制されることが決まった。

どんなケースがステマに該当する? 2つの要件とは

ステマ規制 ステルスマーケティング 景品表示法 不当表示規制

2023年10月1日以降、ステルスマーケティングそのものが不当表示規制の対象(景品表示法で定める不当表示の「その他誤認されるおそれのある表示」に指定)となり、違反した場合は行政処分の対象となる。なお、ステマ規制の対象は商品・サービスを提供する事業者のみで、アフィリエイターやインフルエンサー、一般消費者は規制対象とならない。

ここで注意したいのは、施行以降に掲載された情報はもちろんのこと、それ以前に公開されたブログ記事やSNS投稿などもステマ規制の対象になるということだ。たとえ何年前のものでも、一般消費者が閲覧できるコンテンツはすべて規制対象となるため、過去にさかのぼって対応しなければならない事業者も多いのではないだろうか。

そこで気になるのが、「何がステマに該当するのか」ではないだろうか。消費者庁は、ステルスマーケティングを「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」としている。

消費者庁が2023年3月28日に決定した「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」によると、ステマにあたるかを判断する際は、次の2つの要件に該当するかどうかがポイントになる。

ステマ規制 ステルスマーケティング 景品表示法 不当表示規制 ステマに該当する2つの要件
  1. 事業者が自社の商品・サービスについて行う表示であること
  2. 事業者による表示であることを一般消費者が判別することが困難であること

これだけではよくわからないと思うので、2つの要件をより詳しく見ていこう。

要件①:事業者が自社の商品・サービスについて行う表示であること

前述の通り、ステマ規制の対象となるのは、「事業者が自社の商品・サービスについて行う表示であること」が前提となる。

消費者庁の運用基準によれば、社員が販売促進を目的に、一般消費者のフリをして自社商品の肯定的な口コミを投稿する行為は、当然ステルスマーケティングにあたる。また、販売を促進する立場にある社員が競合商品を中傷する口コミなどを投稿することもステマ規制の対象となる。

ここで気を付けたいのは、“社員によるやらせ口コミ”のようなわかりやすいものだけでなく、事業者が第三者に依頼・指示して表示させた場合も「事業者が行う表示」にあたるということだ。

つまり、事業者がアフィリエイターやインフルエンサー、一般消費者などにSNS投稿や口コミ投稿、ブログ記事の作成を依頼・指示した場合も「事業者が行う表示」と見なされるのである。

ステマ規制 ステルスマーケティング 景品表示法 不当表示規制 ステマ規制に該当する要件 事業者が行う表示とは

そのため、インフルエンサーなどの第三者に報酬を提供して、宣伝であることを隠して自社商品についての肯定的な口コミなどを投稿させた場合はステルスマーケティングにあたる。なお、ここで言う「報酬」は金銭だけでなく、物品の提供、イベント参加の権利なども含まれる。

ポイントは「事業者が表示内容の決定に関与したか」

要件①の「事業者が自社の商品・サービスについて行う表示であること」におけるポイントは、「事業者が表示内容の決定に関与」したかどうかである。

たとえば、インフルエンサーに商品を無償で提供するなどして、高評価の口コミ投稿を依頼した場合はステマと判断される恐れがある。ただし「こんな内容で投稿してほしい」など、事業者から投稿の内容に関する依頼や指示がなく、インフルエンサーや消費者が自分の正直な感想を自主的に投稿した場合は、原則としてステマにはあたらないとされる。

また、消費者に対して「○○という表現を入れてレビューを投稿してください」「星5つのレビューを投稿してくれた方には○○プレゼント」など、投稿の内容について指定したり、高評価の対価を提供したりした場合もステマに該当する可能性がある。

ステマ規制 ステルスマーケティング 景品表示法 不当表示規制 ステマ規制に該当する要件 NG事例

ただし、単に一般消費者にサンプルやプレゼントを提供した結果、消費者が自らの意思でその商品の口コミを投稿した場合は「事業者が行う表示」にはあたらず、ステマと見なされることはない。また、キャンペーンなどに応募するために、消費者が自分の意思でSNS投稿などを行う場合もステマにはならない。

ステマ規制 ステルスマーケティング 景品表示法 不当表示規制 ステマ規制に該当する要件 ステマにならないケース

ただ、消費者庁は「事業者が表示内容の決定に関与したか」どうかは、「事業者と第三者の関係性や客観的な状況を踏まえて総合的に判断する」としているため、明確な線引きは難しい。事業者が「表示内容の決定に関与」したつもりはなくても、「表示内容が第三者の自主的な意思によるもの」と認められないケースが出てくる可能性もある。

インフルエンサーマーケティングやギフティング、レビューキャンペーンなどの施策がよりデリケートなものになるのは間違いないだろう。

要件②:事業者による表示であることを一般消費者が判別することが困難であること

ステマ規制の対象となる要件の2つ目は、「事業者による表示であることを一般消費者が判別することが困難であること」である。

事業者がインフルエンサーに報酬や商品を提供して依頼した投稿であっても、投稿内容に「PR」「広告」「○○社から商品の提供を受けて投稿しています」などとわかりやすく表示されている場合は、ステルスマーケティングにはあたらない。当然、アフィリエイターが作成したコンテンツにも広告である旨を明確に表示する必要がある。

ただ、「PR」「広告」といった表記さえしておけばいいかというと必ずしもそうではなく、「広告」の表示があるものの、周囲の文字よりも小さくする、薄くする、大量のハッシュタグに埋もれさせているような場合はステマに該当する可能性がある

また、動画コンテンツの場合は、中間や最後にのみ広告の表示をしている場合もステマと見なされる恐れがある

ステマ規制 ステルスマーケティング 景品表示法 不当表示規制 ステマ規制に該当する要件 NGになるケース

最近はインフルエンサーマーケティングに力を入れているEC・D2C事業者が増えているが、悪意がなくても一歩間違えればステマと判断されてしまう可能性がある。

アフィリエイトやインフルエンサーマーケティングを行っているEC・D2C事業者がステマリスクを排除しようと思うと、今まで以上にアフィリエイターやインフルエンサーが作成したコンテンツの内容チェックや管理に手間をかけなければならなくなるだろう。

「記事型広告モデル」は終焉をむかえるのか

もう1つ、ステマ規制で大きな影響を受けると考えられるのが「記事型広告」だ。

近年のEC・D2C業界では、化粧品や健康食品などを中心に、一見すると個人のブログ記事や中立メディアの記事に見える記事型広告が多く見受けられた。

ブログ記事風のサイトで「この美容液を使ったら肌がきれいになった。シミが気になる人にオススメ」などと発信して消費者の興味を引き、「購入はこちら」などのボタンを押すと、事業者のECサイトやランディングページに遷移するという仕組みである。

ステマ規制 ステルスマーケティング 景品表示法 不当表示規制 記事小型広告の流れについて

記事型広告は「実際には広告であるにもかかわらずそうは見えない(第三者の感想のように見える)」ことから重宝されてきたが、消費者庁の運用基準を踏まえると、2023年10月1日以降、いま世の中に氾濫している記事型広告の多くが「ステマ」と判断される可能性が高いだろう。

ステマが問題になっているのは、事業者が広告であることを隠して商品やサービスの宣伝をすると、消費者が合理的な購入判断ができなくなるからだ。こうした背景を考えると、記事型広告の性質そのものが“ステマ的”であると言える。

「広告」である旨を明確に表示すればステマにはならないので、すべての記事型広告がただちに「ステマ」と見なされるわけではない。

しかし、消費者庁は運用基準で「文章の冒頭に『広告』と記載しているにもかかわらず、文中に『これは第三者として感想を記載しています』と事業者の表示であるかどうかがわかりにくい表示をする」ことを「一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていない」例としてあげている。

ステマ規制 ステルスマーケティング 景品表示法 不当表示規制 記事小型広告 NGのケース

ステマ規制がスタートすると、第三者の体験談を装う形での記事型広告は非常にリスクが高いため、記事型広告は事実上“オワコン”化する可能性が高い。

今後、EC・D2C事業者は記事型広告をやめて、消費者に明らかに「広告」とわかる、自社制作のストレートなランディングページで勝負していくべきだろう。

ステマ規制でフェアな競争が促される面も

ステマ規制は、間違いなくEC・D2C事業者の広告・宣伝活動に大きな影響を与える。特に、インフルエンサーやアフィリエイト、レビュー活用などを行う際は、今まで以上に慎重な運用が求められるようになるだろう。

従来とまったく同じ形で広告・宣伝活動ができなくなる事業者も多いと思うが、一方でステマ規制によって事業者間のフェアな競争が促されるというプラス面もある。

これまでも、コンプライアンスやレピュテーションリスクに配慮しているEC・D2C事業者はステマを避けるような策を取ってきたはずだ。ところが、ステマを法律で直接規制する手立てがなかった以上、コンプライアンス意識の低い事業者は、景表法の優良誤認表示や有利誤認表示に該当しない限りは何でもできてしまっていたのが実情だ。

良識あるEC・D2C事業者にとっても、EC・D2C業界の未来にとっても、ステマ規制によって悪質な事業者が排除されるのは良いことである。今後、すべてのEC・D2C事業者は、広告なら「広告」と明確にわかるような形で、正々堂々と勝負するようにしてほしい。

加藤 公一 レオ

【海外&国内SEO情報ウォッチ】

2 years 6ヶ月 ago
Web担当者Forum の連載コーナー「海外&国内SEO情報ウォッチ」を更新。グーグルの「コアアップデート」「ヘルプフル コンテンツ アップデート」に関する2つの情報をピックアップしてお届けする。
Kenichi Suzuki

電通と博報堂、グーグルとMMMガイドブックを作成

2 years 6ヶ月 ago

電通デジタルと博報堂DYメディアパートナーズはそれぞれ、グーグルとMarketing Mix Modeling(MMM)についてのガイドブックを作成して公開した。

電通グループとグーグルによるMMMガイドブック
https://www.dentsudigital.co.jp/downloads/mmm-guidebook
博報堂DYグループとグーグルによるMMMガイドブック
https://www.hakuhodody-media.co.jp/aaas/news/mmmguidebook.html

マーケティング投資対効果の把握で今再注目のMMM、正しく使うには導入時の選定がカギ
https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/data-and-measurement/marketing-mix-models-guide/

MMMについては、グーグルは過去にニールセン・メディア・ジャパンらと日本マーケティング・ミックス・コンソーシアムを立ち上げ、ホワイトペーパーを発行している。
https://blog.netadreport.com/2020/12/blog-post_8.html

noreply@blogger.com (Kenji)

アマゾンジャパンが災害支援物資の保管・配送拠点「Disaster Relief Hub」を相模原市に設置

2 years 6ヶ月 ago

アマゾンジャパンは9月28日、神奈川県相模原市のAmazonフルフィルメントセンター内に災害支援物資の保管・配送拠点「Disaster Relief Hub」を開設した。兵庫県尼崎市のフルフィルメントセンターに続いて国内2拠点目で、東日本エリアでは初。

「Disaster Relief Hub」は災害支援の専門団体である公益社団法人Civic Force、災害被災地や紛争地での人道支援などを手がける特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン、相模原市役所など地域コミュニティとの連携で運用する。

アマゾンジャパンは9月28日、神奈川県相模原市のAmazonフルフィルメントセンター内に災害支援物資の保管・配送拠点「Disaster Relief Hub」を開設
災害支援物資を保管・配送する「Disaster Relief Hub」

支援物資は、被災者からニーズが高かった物資を中心に選定。モバイルバッテリーやドライシャンプーなど約50種類、合計約1万5000点の生活必需品を保管する。

大規模自然災害が発生した場合、72時間以内に被災地へ支援物資を配送する。「Disaster Relief Hub」はアマゾンジャパンの配送・物流オペレーションと連携、パートナー団体からの情報をベースに支援の必要性を判断し、支援物資の迅速な配送を実現する。

アマゾンジャパンは、日本全国25か所以上のフルフィルメントセンターと50か所以上のデリバリーステーションのネットワークを活用、支援物資を配送するとしている。

「Disaster Relief Hub」は、Amazonのグローバルな災害支援プログラム。トルコ・シリア大地震、オーストラリアにおける森林火災、ハワイ・マウイ島での山火事など、自然災害の影響を受けたコミュニティを支援するため、世界中で110件以上、2300万アイテムを超える支援物資を寄付したという。

日本では8月、台風6号(カーヌン)通過後の沖縄県において、がれきが散乱した市街地やビーチの清掃活動を支援するため、支援物資を届けた。

瀧川 正実

ファーマフーズがダイセルのヘルスケア通信販売事業を承継/日本郵便が始めた「ぽすちょこ便」とは【ネッ担アクセスランキング】 | 週間人気記事ランキング

2 years 6ヶ月 ago
2023年9月22日~2023年9月28日にアクセス数の多かった記事のランキングを発表! 見逃している人気記事はありませんか?
  1. 通販売上約600億円のファーマフーズ、ダイセルのヘルスケア通信販売事業を承継

    ファーマフーズの2023年7月期における通信販売によるBtoC事業の売上高は、前期比15.2%増の597億8800万円。ダイセルのヘルスケア通信販売事業を承継することで通販事業を強化する

    2023/9/25
  2. 日本郵便が始めた地域内の流通をサポートする配送サービス「ぽすちょこ便」とは

    「ぽすちょこ便」は、地域内で“ちょこっと運んでほしい”といった利用者ニーズに応える配送サービス。オペレーションの簡素化、郵便車両の空きスペース活用で、配送料は290円(税込)に抑えている

    2023/9/26
  3. JR東日本の新幹線荷物輸送トライアル、東京駅で過去最大の約200箱を荷下ろし。新たな物流インフラの構築へ

    JR東日本グループが実証実験を続けている新幹線荷物輸送。2023年9月は東京‐長野間をトライアルの対象とし、約700箱の荷物輸送を行う

    2023/9/26
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    調査結果によると、通販で化粧品・スキンケア商品を購入するときの情報収集はWebやSNSが大半を占めている。また、長年愛用するブランドがある人も多い。調査結果から消費者心理に迫る

    2023/9/27
     
  5. 越境ECのビィ・フォアード、売上高が初の1000億円突破(2023年6月期)

    ビィ・フォアードは中古車やオートパーツなどの越境ECサイト「BEFORWARD.JP」を運営する企業。中古車や中古パーツの販売、海外輸出代行サービスを展開する

    2023/9/25
     
  6. AI時代のECってどうなる? 説明文作成は当たり前、注文も「Alexa」などの音声アシスタントが行うはず【ネッ担まとめ】

    ネットショップ担当者が読んでおくべき2023年9月18日~9月24日のニュース

    2023/9/26
     
  7. ECとブランドサイトを統合した三陽商会の狙いは? メディアコマース化+OMO推進をめざすEC戦略

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    藤田遥

    カリモク家具に学ぶ消費者に支持される秘訣。「商品力」「ブランド作り」「EC活用」「UGCマーケ」にあり

    2 years 6ヶ月 ago
    2020年に自社ECサイトを開設したカリモク家具。ブランド戦略、ECを開始した背景、UGCマーケティングの効果について、営業推進部統括常務取締役の山田郁二氏と新市場営業部主任の鈴木里紗氏が解説する
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    創業は1940年、一貫して“木”の仕事を手がけてきた国内有数の家具メーカーであるカリモク家具。時代とともに変化する消費者ニーズに寄り添いながら生産・販売してきた高品質の家具は、多くの消費者の心を引きつけている。

    デジタル化推進の一環として、2020年に自社ECサイト「【公式】カリモク家具オンラインショップ」を開設。ECのコンセプト「便利な買い物体験」を強化するため、現在はInstagramやYouTubeを活用したUGCマーケティングに力を入れている。メーカーとしてECにどう取り組んでいるのか、そしてUGCがもたらした効果とは――。

    多くのファンに長く愛され続けるカリモク家具のブランド戦略とその取り組みを、営業推進部統括常務取締役の山田郁二氏と新市場営業部主任の鈴木里紗氏に取材した。

    カリモク家具 営業推進部統括常務取締役の山田郁二氏と新市場営業部主任の鈴木里紗氏

    支持される圧倒的な理由は、品質。「カリモク家具は長持ちする」

    「カリモクの家具は長持ちする」。カリモク家具が消費者から支持される家具ブランドへと成長した最大の要因は高い品質力にある。

    世界中を見ても、家具メーカーのほとんどが「板材は材木屋」「それを切って加工するのがメーカー」という分業体制を敷くが、カリモク家具では木材の乾燥から家具製造までを一気通貫で手がける。これが、「カリモクの家具は長持ちする」と好評を得られる高い品質の秘訣(ひけつ)だ。

    「板という漢字は“木”が“反る”と書くように、木表と木裏の水分量が間違うと反ってしまうほど、木は乾燥技術を要する材料」(山田氏)。木の水分量を徹底して管理し、品質の高い家具を製造するカリモク家具の物作りのこだわりの一端を見てみよう。

    丸太から製材したときの水分量は約60%と言われる木を、8か月間ほどかけて約20%にまで乾燥させる。カリモク家具の家具に使う木材は、そこからさらに4~5か月かけて人工乾燥炉でゆっくりと8%になるまで乾燥。高度な乾燥技術を持つ熟練の職人がその工程に携わる

    カリモク家具は木材の乾燥から家具の製造まで一貫して手がける
    カリモク家具は木材の乾燥から家具の製造まで一貫して手がける

    手間をかけても材料作りから手がけていることがカリモク家具の最大のこだわりであり、そのこだわりに引きつけられた“カリモクファン”を生んでいる。

    世界にも類を見ないというカリモク家具の生産体制(写真はカリモク家具から提供)
    世界にも類を見ないというカリモク家具の生産体制(写真はカリモク家具から提供)

    「長持ちする」を裏付ける要因にはもう1つある。パーツ交換や修理メンテナンスに対応する体制を整えていることだ。全国の営業所に修理スタッフを配置しているほか、工場でも修理に対応。ホームページでも修理代金の無料見積もりを案内しており、顧客からメールで送られてきた画像をもとにおおよその予算を返答し、納得の上で修理に対応している。

    先代の社員たちが1980年代に作った社史「カリモクグループのあゆみ」のなかに、「家具作りという大変な仕事をしてしまった」と嘆いた創業者・加藤正平の言葉が記されている。家具は車や家と同じく、耐久性のある消費財なので修理をしなければならないし、そうしなければお客さまに迷惑をかけてしまう。だから、商品を売ったことが、本当の意味で商品をお客さまに売り渡したことにならない――と。

    しかし、買っていただいたお客さまに、しっかりと修理メンテナンスを提供できる体制を整えていることが、今では「丈夫で長く使えるね」というお喜びの声につながっている

    カリモク家具 営業推進部統括常務取締役 山田郁二氏
    カリモク家具 営業推進部統括常務取締役 山田郁二氏

    コロナ禍に入った2020年以降、修理のニーズは以前よりも増したという。家具の修理は手間がかかるため、新品を買った方が安く済むケースが少なくない。それでも修理を望む顧客は、「祖父母が使っていたから残したい」「初任給で買ったから大事に使いたい」など、家具に特別な思い出や気持ちを抱いている。

    家具の修理は「安いからうれしい」ではなく、「よみがえってうれしい」と思われることが大切であり、それが感謝の声としてカリモク家具に多く寄せられているという。

    大量生産から“多品種少量生産”にシフト。消費者ニーズに合わせた家具作りとは?

    時代の流れとともに家具業界を取り巻く環境は変化しているが、「一番大きいのは、消費者が家具に求めることが変わったこと」(山田氏)。たとえば、婚礼家具もその1つ。昔は結婚の際に、新婦がタンスや鏡台などの家具一式を持って嫁ぐ風習があったが、今は女性の社会進出が進み環境は一変。独身時代から1人暮らしを始めるなど、結婚前からすでに家具を揃えられており、婚礼調度としての購入はなくなった。

    また、クローゼットや吊り棚など、家具があらかじめ備え付けられている住宅が増えたことで、家具業界では、タンスやロッカーなど収納家具を指す「箱物家具」の生産が急激に縮小。一方、和風住宅の床座から洋風住宅の椅子座に変わったことで、椅子やテーブルといった「脚物家具」が人々の暮らしに浸透し、需要のある家具の種類も変化した。

    「脚物家具」の需要が高くなった (写真はカリモク家具のショールーム。カリモク家具から提供)
    カリモク家具のショールームで展示する「脚物家具」(カリモク家具から提供)

    バブル崩壊後は家具店が減少したほか、1990年代頃からはグローバル化が加速するなかで、家具店が海外メーカーから家具を仕入れる動きが進んだ。国内の家具メーカーも、生き残った家具店からの取引高が制限されるようになり、大きな打撃を受けることとなった。

    家具店に商品を置いてもらえなくなると、消費者に商品を見てもらえる機会がなくなってしまう――。カリモク家具はこの状況を打開するため、90年代中盤以降、ショールーム開設へ資金を投じるようになった。同時に、住宅メーカーや地場工務店など、従来の家具店や百貨店以外の営業ルートも開拓し、「実物の家具はショールームに行けば見られる」という形で商品を紹介してもらう場面を増やしてきた。

    カリモク家具は全国26か所でショールームを展開している(写真はカリモク家具から提供)
    カリモク家具は全国26か所でショールームを展開している(写真はカリモク家具から提供)

    営業だけでなく、製品の作り方までも見直したカリモク家具。理由は、消費者が既製品では満足しなくなってきたからだという。

    海外に出かける消費者が増え、さまざまな場所で家具を見た消費者の目が肥えてきていた。そうすると、インテリアコーディネートやライフスタイルといった視点も重視されるようになり、「ただ座れればいいわけではない。自分の好きなカラーの椅子やソファを探したい」というニーズが高まった。

    そこで、当社はカスタムオーダーの仕組みを取り入れることにした。海外メーカーや、製造から小売まで手がけるSPA(製造小売)に対抗するには、もっとお客さまの近くで細やかなおもてなしができるメーカーでなければいけない。ショールームもカスタムオーダーも、すべてはお客さまに喜んでいただくための取り組みだった。また、それらが流通にもご支持されるはず。(山田氏)

    カリモク家具の従来の家具作りは大量生産が中心。だが、樹種、塗装の色、張地の素材・色、サイズなどを選べるカスタムオーダーを取り入れたことで、多品種少量生産に切り替えた

    1人の顧客に対してオリジナルの家具を1つ作るこのモデルが、90年代後半から現在まで続いている。その結果、約40万品番もの製品が作れる、世界的にもまれな「邸別生産型」の体制を生んだ。

    「邸別生産型」とは、お客さまからご注文を頂き、その仕様で1点1点、生産する方法。いわゆるオーダー生産だ。だが、邸別生産はコストがかかり、価格も高くなってしまう。そこで量産で生産する工程と、個別で生産する工程を組み合わせ、最適化を図るなど、現在も日々改善を重ねているという。

    カスタムオーダーでは顧客ごとの細かな要望に応える(写真はカリモク家具から提供)
    カスタムオーダーでは顧客ごとの細かな要望に応える(写真はカリモク家具から提供)

    バブル崩壊前の1980年代は、団塊世代による住宅の一次取得時期であり、加えて大家族から核家族化へシフトしていたため、新築の住宅件数は年間170万戸もあったと言われる。家を新築すれば家具を購入される機会も増える上、ベッドは1人1台、ソファは各家庭に1台とすると、世帯数が増えるほど家具の需要も増えることになる。そうした状況下では、ある程度サイズや価格帯を意識していれば需要が見つかり、細かなターゲティングをせずとも、メーカー側からのプロダクトアウトで事業が成立しやすかった。

    しかし、現在は年間の新築件数が85万戸程度にまで減少。さらに、人々のこだわりがファッションから食事、次いで家具・インテリアへと、衣食住の全般に広がったことから、家具業界も細かなニーズに応える姿勢が求められるようになったという。

    デジタル化がメーカーの認知拡大施策を後押し

    カリモク家具はITへの投資が早い段階から行われており、1990年代から営業担当に1人1台端末を貸与するなど、社内のデジタルインフラの整備を進めていた。それでも、メーカーの立場として、対消費者の顧客接点や接客などに与えるデジタル化のインパクトは大きかったようだ。

    商品購入に至るまでは、消費者がどこかで認知し、興味関心を持ち、比較検討をして、購入――というプロセスがあるが、アナログの時代はリアルの接触機会に投資しなければ、最初の認知にすらたどり着けなかった。デジタル化が進み、スマホやSNSの拡大も拍車をかけ、アナログやリアルでの接点がなかった消費者にも認知されるチャンスが一気に広がった。ただし、「デジタルの時代であっても、購入いただいたお客さまのフォローアップがさらなる認知のためには不可欠」(山田氏)と言う。

    2022年に当社がショールームに訪れたお客さまを対象に行ったアンケート調査によると、「家具について何で調べているか」は1位が検索エンジンだった。しかし、「カリモク家具を何で知ったか」では口コミが1位だった。

    アンケートに回答いただいたのが“ショールームに来訪いただいたユーザー”ということを差し引いても、友人や親がカリモク家具を使っているなど、WOM(Word of Mouth。口コミのこと)がやはり重要だと再認識した。

    これまでに買ってくださったお客さまが、次の新しいお客さまにちゃんと情報を届けて認知につなげていただいていることがわかっているので、お客さまのフォローアップを徹底することが大事だ。(山田氏)

    カリモク家具 visumo

    デジタル化以前であれば、認知・興味関心の部分は家具店が役割を担い、比較検討の部分は価格やアフターサービスなど、メーカーが役割を担っていた。デジタル化が進んだ現在は、認知の段階からメーカーも活動できるようになったことが大きな変化となっている。

    自社ECサイト開設、狙いはコロナ禍の苦境の打開

    2020年、コロナ禍の影響によって取引先店舗や自社ショールームが閉館や休業をせざるを得なくなった。カリモク家具はユーザー接点を保つため、自社ECサイトの開設に踏み切り、顧客とのリレーションを試みた

    ただ、ECサイトの開設には社内から半信半疑の声は少なくなかったという。リアルとECの対立が課題となっていることが多いように、カリモク家具にとっても既存の営業ルートから見るとECの販路は競合になると考えられたためだ。

    自社ECサイト開設の責任者として白羽の矢が立ったのが山田氏。カリモク家具は2018年にAmazonとベンダー契約し、Amazonでの商品販売を開始しているが、そのときに陣頭で指揮を執ったのが山田氏だったからだ。

    当時も「Amazon=値引き販売」というイメージが持たれており、既存営業ルートから反対の声があがったが、Amazon側から「価値販売で家具のトップメーカーの商品をそろえたい」という意向を受けていたため、社内の説得に成功し、Amazonでの販売を始めることができた。

    Amazonでの販売に至った背景には、認知拡大の意味合いが大きかった。以前は家具店がお客さまをお店に呼び込む力が強く、カリモク家具の認知活動もしていただけていたが、大手以外の家具店は、昔に比べるとどうしてもその力が弱まってしまっている。私は当初、認知力の弱まりをずっと危惧していた。

    2002年に立ち上げたブランド「カリモク60(ロクマル)」(1960年代から作り続けている製品と、当時生産されていた商品を復刻し再編集したブランド)も認知に課題を抱えており、社内から合意を得て販売したところ、すぐに良い結果につながった。

    Amazonでの取り組みが認知活動となったのか、数値で測ることは難しいが、その年から「カリモク60」の業績は右肩上がりで推移している。(山田氏)

    業績が堅調に推移しているブランド「カリモク60」
    業績が堅調に推移しているブランド「カリモク60」

    全国26か所のショールームでは、購入後の消費者をしっかりとサポートする体制も整えているため、「消費者に認知さえしてもらえればあとは強い」という自負がある。Amazonとの取引開始以降の結果を見ても、デジタルの活用が認知と興味関心の可能性を広げると見込まれるため、コロナ禍の苦境も自社ECサイトが打開策になると期待したようだ。

    わずか3か月で「【公式】カリモク家具オンラインショップ」をオープン

    国内が本格的なコロナ禍に突入してからの2か月間、カリモク家具では対面を必要とする既存営業活動が制限された。そんななか、2020年4月に自社ECサイトの開設を命ぜられた山田氏は、半年後のオープンをめざそうとしたが、会社側の要求はもっと早い時期でのオープンだった。

    Amazonで販売しているとは言え、自ら販売するセラーではなく、Amazonに商品を預けて販売してもらうベンダー契約のため、ECサイト運営の経験はない。山田氏は当時を「まるで出口の見えないトンネルのなかに入ったようだった」と振り返る。山田氏はとにかく関係各所に協力を呼びかけたという。

    幸いにも、Amazonと取引をしてきた2年間で作成した商品情報や画像データが豊富にあった。それらを活用し、わずか3か月後の2020年7月に、「便利な買い物体験」をコンセプトとした「【公式】カリモク家具オンラインショップ」を開設した。まずは急務で開設したECサイトのため、その後も肉付けや手直しを継続的に行っている。

    カリモク家具の自社ECサイトトップページ
    カリモク家具の自社ECサイトトップページ

    ECで価格を担保。家具業界全体の価格保持に貢献

    かつての高度経済成長期とは異なり、現在の家具業界は、薄利多売では事業継続のための適正な利益は得られない。ECだけでなく実店舗も同様という。値引きをすると経営が厳しくなるのは取引先の家具店も同じだ。カリモク家具のECは、自社ECサイトとAmazonの双方とも定価売価で販売し、価格信頼性を担保している。

    自社ECとAmazonで定価販売していれば、家具店はその定価売価を顧客に提示できる。たとえば、従来は2割引で販売していた家具店が、1割引や5%引程度の割引率でとどめることができるようになる――といったように、うまくカリモク家具の自社ECサイトを利用する家具店も現れている。ECが取引先の家具店の競合になるのではなく、価格信頼性を内外に広く告知する役目を果たしているようだ。

    また、自社ECサイトを開設したことにより、消費者のなかには、メーカーによるサポートが受けられることを優先に考えて「定価でもメーカーから直接購入したい」という層が一定数いることがわかったという。

    事業者側はマーケティング戦略の指針として「製品(Product」)「価格(Price)」「流通(Place)」「販促(Promotion)」の“4P”を見るが、これに対して顧客側は「顧客価値(Customer Value)」「経費(Cost)」「顧客利便性(Convenience)」「コミュニケーション(Communication)」の“4C”を重視する。Priceではなく、「定価でもいいから、買って失敗したくない」というCostを重視する顧客のニーズにメーカーの公式ECサイトがマッチしているという。

    カリモク家具は、そのニーズに細やかに対応していくことがメーカーの責務だと捉えている。

    Amazonと自社ECにおけるニーズの違いとは?

    自社ECサイトを運営するうちに、同じ定価売価であっても、Amazonと自社ECでは顧客のニーズが異なることに気づいたという。自社ECはカスタムオーダーに対応するため、注文から商品配達まで最短1か月、通常では1か月半ほどを要するが、顧客もそれに納得した上で注文している。一方のAmazonは即納のニーズが高く、倉庫に在庫を持ってすぐ届けることが重視される傾向が高い。

    カスタムオーダーという長所を裏返せば、「ベッドが壊れたので寝られない。すぐに欲しい」といった即納希望の顧客への対応が難しい。自社ECでも、カスタムオーダーへの対応だけでなく、納期のニーズにも応えられる体制作りが課題の1つにあがっているという。

    このほか、自社ECはまるで店舗のように、マンツーマンのコンサルティングやアドバイスが求められやすいことも、Amazonとの大きな違い。ショールームでのリアル接客が、EC上ではチャットボットやメールなどのデジタルに置き換わっているようなものなので、メーカーの自社ECは安心感や適切なアドバイスと接客スキルが必須となる。

    自社ECでは接客目的でチャットボットも展開している
    自社ECでは接客目的でチャットボットも展開している

    自社ECでは来訪した顧客に接客して商品を勧め、ECサイト上には掲載していない商品も販売できる仕組みを構築しているため、リアルな接客業に極めて近い。アドバイスや接客を求める顧客に、EC上でも商品をイメージしてもらいやすくなるコンテンツをより一層増やしていきたいと考えている。

    ブランドを再認識。収益につながるブランディングに注力

    多くの消費者から支持されてきた理由として「商品力」「変化対応」「デジタル推進」を解説してきたが、「ブランド力」もカリモク家具の成長を語る上で欠かせない大きな要素だ。ブランディングを意識し始めたのは2000年頃。バブル崩壊後から続く値引き合戦の影響が大きかったという。

    バブル崩壊前までは、家具店や百貨店が「カリモク家具はきちんとしたブランドですよ」と消費者に勧めてくれていたため、自分たちはれっきとした家具ブランドだという意識が強く持てていた。

    しかし、バブル崩壊後は小売店が安価な家具を仕入れるようになり、しまいにはカリモク家具のシールをあえて剥がして商品を展示する小売店まで現れた。その理由は、「カリモク家具だということがわかると、他店の同じ商品と販売価格を比べられて値引き合戦になるから」。ブランドを隠して売らなければいけない現実に、ショックは大きかったという。

    そんなときに偶然、「Kチェア」(カリモク家具が自社製品として1962年に開発した椅子)がロングライフデザイン活動家のナガオカケンメイ氏の目に留まり、ナガオカ氏とともに山田氏が統括する形で新ブランド「カリモク60」を立ち上げ、事業化することとなった。

    それまではなんとなく、カリモク家具そのものがブランドになっているイメージだったが、「カリモク60」をきっかけに、再度ブランドについて考え直すようになった。独自性、差別化、違いを生めば、ブランドを指名買いしていただけるようになる。ブランドが回り回って収益に影響するということを、強烈に実感するようになり、国内林業に貢献するブランド「カリモクケーススタディ」や「カリモクニュースタンダード」なども立ち上げた。

    お客さまに私たちの取り組みを認識していただくためのブランディング活動に今、力を入れているところだ。ブランドプロミスを果たすことで、支持していただいているお客さまの期待にしっかり応えていきたい。(山田氏)

    40年以上にわたり家具業界に携わってきた山田氏は、「家具のマーケットは、果物にたとえると昔は大玉スイカだったが、今はブドウの房のようなもの」と話す。昔は、家具を大量生産して大量に販売しているカリモク家具という大玉スイカを、皆で切って食べていた。それが今ではブドウのように、細分化したマーケットのパイの商品をたくさん実にしなければ事業が成立しづらくなっているということだ。

    「ロングライフデザインの『カリモク60』だね」「『カリモクニュースタンダード』は森林保全に貢献しているブランドだね」と消費者に認識されるように、明確なコンセプトを持ってターゲティングに挑まなければ、ブランディングが確立できない時代になっているという。

    森林保全につながる製品づくりを行うブランド「カリモクニュースタンダード」
    森林保全につながる製品づくりを行うブランド「カリモクニュースタンダード」

    SNSやYouTubeでUGCマーケ推進

    今日のブランディングに欠かせないプロモーションとしてあげられるSNS。カリモク家具は自社ECサイトを立ち上げた2020年からInstagramを強化した。もちろん、カリモク家具のブランディング活動の一環だ。

    現在はInstagram、YouTubeを中心にSNS発信に取り組んでおり、「ほかのSNSも試したが、家具・インテリアという商品特性上、テキスト主体よりビジュアルで見せられるInstagramの方がブランディングに向いている」(山田氏)と実感している。

    YouTubeの「カリモク家具 公式 YouTubeチャンネル」は、ハウツー動画も配信。カリモク家具での購入を促すというよりも、家具選びの方法や配置の仕方など、購入時の初期疑問を解決するコンテンツという位置づけ。また、YouTube動画は自社ECサイトにも掲載し、自社ECサイトではYouTube動画の内容に関連する商品を組み合わせて紹介している。

    カリモク家具 公式 YouTubeチャンネル

    Instagramは、カリモク家具のコーポレートアカウント以外に、「カリモク家具ショールーム」と「カリモク60」の2つのアカウントも追加。来訪者の目的にあわせ商品の魅力や使用シーンが伝わる画像を投稿。また、顧客が自身のInstagramに投稿したカリモク家具の画像を、許諾を得た上でInstagram(カリモク家具ショールームのアカウント)に掲載し、それをさらに自社ECサイトに転載して、画像と関連する商品も合わせて紹介している。

    「カリモク家具ショールーム」のインスタグラムアカウント
    「カリモク家具ショールーム」のInstagramアカウント

    自社ECサイトのコンセプト「便利な買い物体験」に沿うためには、顧客が知りたい情報を提供できるUGC(ユーザー生成コンテンツ)の取り組みが必然的に重要だった。カリモク家具では、このようなSNSを活用したUGCマーケティングを進めるため、visumoが提供するビジュアルマーケティングプラットフォーム「visumo social」を導入。「visumo」を活用することでUGCを充実させることができ、担当者による運用の作業負担も少ないまま自社ECサイトのコンテンツ拡充が図ることができているという。

    <PR>カリモク家具が導入した「visumo」の詳細は画像をクリック
    <PR>カリモク家具が導入した「visumo」の詳細は画像をクリック

    ECの運営メンバーは営業出身者ばかりのため、ECサイト運営のノウハウや経験が充分でなく、サイトでやりたいことが発生するたびに、専門業者に依頼しなければならなかった。しかし、「visumo」の導入により、サイト構築の専門的な知識を要さずとも、YouTubeで撮影した動画やInstagramの画像をサイト上で簡単に実装できるようになった。

    一般的には新たなツールを導入すると業務が煩雑になり、混乱しがちだが、導入に際する作業はほぼ発生しなかった上、日々の更新作業も楽に運用できている。また、「visumo」は何をどの時期に変更したかをスムーズに引き継げる機能もあるため、複数人での管理にも向いていると思う。

    カリモク家具 新市場営業部主任 鈴木里紗氏
    カリモク家具 新市場営業部主任 鈴木里紗氏

    このほか、「visumo」は顧客の投稿した画像をサイトで掲載する際に、利用許諾を得る機能を搭載しているが、「この機能が新たなユーザーコミュニケーションの形も提供してくれている」(山田氏)と評価する。

    カリモク家具による「visumo」の活用例
    カリモク家具による「visumo」の活用例

    素敵な投稿をしていただいたお客さまには、「visumo」を使ってカリモク家具から掲載の許諾を取る連絡をしているが、「掲載していいですか?」と聞くと、ほぼすべてのお客さまが自分の投稿が掲載されることを喜んでくださっている。「visumo」を導入していなければ、こうしたお客様とのコミュニケーションは生まれなかったかもしれない。

    また、メーカーや販売店が情報を発信してユーザーがキャッチする時代から変化し、近年はユーザー同士での情報交換が当然になった。「visumo」を通じて、こうしたユーザー同士のコミュニケーションができる場も用意することができていると感じる。(山田氏)

    カリモク家具 visumo

    利用許諾の連絡をした顧客からは、「両親が使っていた家具を張り替えたもの」や「子どもが小さい頃に購入した」など、百人百様のエピソードがコメントで寄せられている。顧客の画像をECサイトで掲載した後も、顧客がその画面のスクリーンショット撮って「カリモク家具のオンラインショップにいろいろなオシャレな写真が載っているので、ぜひ見てください」といったコメントを添えて再度SNSで発信してくれるケースも多く、UGCがECサイトの認知拡大にも貢献しているようだ。

    また、許諾を得た顧客には、後日DMでインタビューを行っている。その家具を選んだ理由や生活に起きた変化などを聞き、YouTubeコンテンツ「徹底解説シリーズ」の話題として活用しているという。

    UGCがページセッション、滞在時間、買い回りアップに貢献

    UGCマーケティングに取り組み始めてから、サイトの滞在時間や回遊性などが格段に向上し、売り上げにも良い影響が表れているという。

    「visumo」を活用したコンテンツを閲覧した場合と閲覧していない場合のページセッション数を比較すると、2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日)は閲覧した場合の方が約2.4倍も多く、2023年4月~7月度は前年同期と比べるとさらに約2.5倍に伸長。平均サイト滞在時間も、2022年度は約3.4倍、2023年度の同期間では約3.6倍に伸びるなど、「visumo」の導入は効果てきめんと言える。

    また、「visumo」コンテンツを閲覧した顧客は関連商品を合わせて購入するケースが多く、平均購入単価も高い傾向にある。「visumo」コンテンツ閲覧ユーザーの2022年度(2022年4月~2023年3月)における平均客単価は、すべてのサイト訪問者と比べて1.19倍、閲覧していない場合と比べると1.29倍。2023年4月~7月度と前年同期で比較すると、すべてのサイト訪問者比で1.25倍、非閲覧者比で1.34倍だ。

    自社ECサイトのページセッション数やサイト滞在時間を伸ばす目的で特集ページを作成したりもするが、このような数字はなかなか出せるものではないので、継続的に実績を出している「visumo」にはとても助けられている

    お客さまは「実際にこの家具を家に置いたらどうなるか?」「ほかの色だとどうだろう?」といった疑問を持っていて、ほかのお客さまのリアルなコーディネートへの関心が高いことが、こうした数字からよく伺える。セッション数や滞在時間は、ページに対する検索エンジンからの評価にもつながると考えられるため、SEO対策の面でも期待が大きい。(鈴木氏)

    カリモク家具 visumo

    「visumo」は導入サイトの効果を最大化するため、担当者が親身に進捗確認や相談に対応しており、こうしたサポートも鈴木氏は高く評価している。

    カリモク家具は導入直後に、UGCをまとめたコンテンツをサイトに掲載していたが、visumoから商品ページにユーザーの画像を載せる“逆引き機能”を活用するよう提案を受けたという。一度サイトへタグを設置すれば、visumoの管理画面の操作でUGC画像へ商品を紐づけるだけで、その商品ページに表示させることができる機能だ。これにより、表示回数は増加。こうした的確なアドバイスで「visumo」の効果が日々高められているという。

    UGC収集につながる重要ポイントはカリモク家具へのプライオリティ

    UGCを集めると、顧客が家具をどうコーディネートしているのか、他社製品とどうジョイントしているのかといった、顧客のリアルな暮らしが見えるようになり、メーカーにとっての開発の大きな武器にもなったという。カリモク家具では、UGCで収集した顧客の声を、商品の開発チームや生産工場のメンバーにも共有している。こうしたメンバーは実際に顧客の声を聞く機会が少ないため、顧客からの喜びの声が、メンバーの喜びや、士気向上につながっている。UGCという財産を、今後は商品開発にも生かしていきたい考えだ。

    また、UGCはカリモク家具のブランディングの成果であり、より良いブランディングの一助にもなると山田氏は話す。

    家具作りを始めて60年、お客さまを裏切らない品質を提供してきたことで、お客さまは当社に対するプライオリティを持ってくださっている。その結果、購入いただいたお客さまに投稿していただく比率が高まり、それを見ていただける機会も増えているのだと思う。

    日経BPコンサルティングが年に一度発表する「ブランド・ジャパン」において、カリモク家具は約20年にわたり家具・寝具の分野でノミネートされ続けている。消費者のコメントで最も多い「品質」「デザイン」のワードに次いで、「使っている」「使用している」という声が多く寄せられている。(山田氏)

    「便利な買い物体験」を高めるため、顧客がストレスなく欲しい情報を得られるようにしようと始めたUGCマーケティング。実際に、収益につながる数値が出ているほか、ファン化や商品開発のヒントなど、数値で表せない面でも効果が見えている

    ただ、UGCがほかのユーザーの認知・興味関心を喚起し、そこからECサイトやショールームに訪れれば比較検討・購入にもつながっていくように、与える影響や効果は広範囲にわたるため、カリモク家具は会社全体としてUGCで何か1つのKPIを設定しようとはしてはいない。「それぞれの立場で見ている数値や目標は変わるので、そこにUGCを生かしていくことが大事だ」(山田氏)と考えている。

    近年は“木”の仕事全般に対応する家具作り60余年のカリモク家具とは

    カリモク家具は、木材商を営む家に生まれた加藤正平氏が、1940年に木材加工業として愛知県で創業。加藤氏は当初は、県内や東海地区の企業からの下請けを手がけていたが、下請け業は事業の浮き沈みが激しかったことから「いずれは自社ブランドを立ち上げたい」という夢を持つようになっていたという。

    下請け時代、東京の家具メーカーから、対米輸出用の家具の木工の下請けを依頼され、これをきっかけに家具作りを開始。当時、日本国内の暮らしは加速度的に近代化が進んでおり、「住まいも洋風住宅に変わっていくだろう」と考えた加藤正平氏は、人々のより良い住まいと暮らしを支える家具作りをめざして、1962年に自社商品の家具「Kチェア」の生産を始めた。「Kチェア」は今も生産を続けており、現在展開しているブランド「カリモク60」の原型にもなっている。

    カリモク家具が1962年から生産を始めた「Kチェア」
    カリモク家具が1962年から生産を始めた「Kチェア」

    ただ、家具業界の歴史は古く、当時のカリモク家具は後発メーカーの立場だった。問屋を介すと、販売店で商品を取り扱ってもらえないこともしばしばあったため、工場勤務の人員も営業に回り、家具店や百貨店に足しげく通いながら、メーカー卸として現在の業態を確立してきたという。

    近年は、もう一度原点に立ち返るという意味を込め、家具だけでなく木でできる仕事全般を手がける方針としており、異業種とのOEMによる取り組みを強化。たとえば、「樹木との共生」をテーマにした資生堂のスキンケアブランド「BAUM(バウム)」の木のパッケージにカリモク家具の木の端材を活用したり、仏壇・仏具のはせがわとともに、部屋のテイストや家具ともコーディネートしやすい「リビングルーム仏壇」を開発したりと、家具以外のOEMも積極的に行うビジネスモデルをとっている。

    パッケージにカリモク家具の木の端材を活用した資生堂のスキンケアブランド「BAUM」
    パッケージにカリモク家具の木の端材を活用した資生堂のスキンケアブランド「BAUM」
    仏壇・仏具のはせがわと共同開発した「リビングルーム仏壇」
    仏壇・仏具のはせがわと共同開発した「リビングルーム仏壇」
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    朝比美帆
    吉田 浩章

    LTVを高める「広告」と「物流」戦略について学べるオンラインセミナー【10/17開催】

    2 years 6ヶ月 ago

    スクロール360、アナグラム、シッピーノは10月17日(火)に、オンラインセミナー「LTVを高める『広告』と『物流』戦略」を開催する。

    ▼「LTVを高める『広告』と『物流』戦略」(10/17開催)

    スクロール360 シッピーノ アナグラム セミナー LTVを高める「広告」と「物流」戦略

    「LTV」「リピート率」の向上をメインテーマに、通販事業者が今すぐ取り組みたい「物流」と「広告戦略」について、事例を交えながら解説する。

    登壇者&テーマ

    テーマ:広告施策で叶えるLTV改善! 4ステップで解説

    • 自社製品が「最善の解決策」と伝わるコミュニケーションの設計とは
    • 「解約される理由」をあえてLPに書こう
    • 「広告ごとのLTV」を可視化すべき理由
    • リピートなど「CVの後の指標」を広告施策に反映する方法論

    登壇者:アナグラム マネージャー 小山 純弥氏

    アナグラム マネージャー 小山 純弥氏
    東京大学在学時より、インターネット広告代理店にてリスティング広告の分析・運用を経験。 2014年8月よりアナグラムに参画。健康食品などの単品通販、アパレル、求人、士業、BtoBなど多岐にわたる商材の広告に携わり事業拡大に貢献し、マネージャーとしては社内の人材育成や教育も担当。

    テーマ:LTVを最大化する「次世代CRM物流」~生き残るために必要な「EC物流戦略」のすべてを大公開!~

    • 次世代CRM物流とは
    • LTVを底上げする、成功企業具体的事例
    • 物流で叶える、リアルOnetoOneマーケティング
    • 物流代行サービス「ライトプラン」について

    登壇者:スクロール360 取締役 高山 隆司氏

    スクロール360 取締役 高山 隆司氏
    1981年にスクロール(旧社名ムトウ)入社以来、42年にわたり通販の実戦を経験。2008年、他社のネット通販企業をサポートするスクロール360の設立に参画。以後、200社を超えるネット通販企業の立ち上げ、コンサルティング、物流受託を統括。著書に『ネット通販は物流が決め手!』『EC通販で勝つBPO活用術』(いずれもダイヤモンド社)がある。

    こんな方にオススメ

    • ブランド・プロダクトをマネジメントしている
    • 健康食品やコスメなどの、リピート単品通販を運営している
    • リピート率の改善に悩んでいるECストア担当者
    • ユーザーの「満足度」を引き上げたいECストア担当者
    • 顔の見えない顧客との効果的なコミュニケーション、実現方法がわからない
    • 物流コスト高騰への対応を悩んでいる

    開催概要

    • イベント名:LTVを高める「広告」と「物流」戦略
    • 日時:2023年10月17日(火)15:00~17:00
    • 会場:オンライン(Zoomを利用予定)
    • 参加費:無料(事前申し込み必要)
    • 主催:シッピーノ、アナグラム、スクロール360
    • 備考:広告代理店、支援会社の関係者はセミナーの視聴不可
    • 詳細と申し込みhttps://seminar.shippinno.net/20231017
    藤田遥

    Amazonプライムデー実施の認知度は6割以上。買ったもの1位は「日用品」、使用金額は「1万円前後」が最多

    2 years 6ヶ月 ago

    スマートフォン関連メディア「Appliv TOPICS」を運営するナイルが発表した「Amazonのビッグセール『Amazonプライムデー』に関する調査」によると、「Amazonプライムデー」の実施を「知っていた」のは64.6%、そのうち「Amazonプライムデー」で買い物をしたのは46.9%だった。

    調査対象は20~69歳の男女1625人。期間は2023年7月18日~7月25日。

    「Amazonプライムデー」実施の認知度は6割以上

    2023年7月11日~12日に「Amazonプライムデー」が実施されていたことを知っていたか質問したところ、「知っていた」は64.6%だった。

    「Amazonプライムデー開催の認知度」(n=1625、出典:ナイル)
    「Amazonプライムデー」開催の認知度(n=1625、出典:ナイル)

    「Amazonプライムデー」の実施を知っていたと回答した人に、「Amazonプライムデー」で買い物をしたか聞いたところ、「買い物をした」が46.9%、「買い物をしなかった」が52.8%で、買い物をしなかった人がわずかに多かった。

    「Amazonプライムデー」での買い物の有無(n=1050、出典:ナイル)
    「Amazonプライムデー」での買い物の有無(n=1050、出典:ナイル)

    「Amazonプライムデー」で買い物をしたと回答した人に購入した内容を聞いたところ、「日用品」が最も多く、次いで「食料品」「家電」だった。

    Amazon プライムデーで買ったものトップ10(n=492、出典:ナイル)
    「Amazonプライムデー」で購入したものトップ10(カッコ内は回答数、n=492、出典:ナイル)

    「家電」「パソコン・周辺機器」に続いて、5位にストリーミングデバイス「Fire TV」、6位にスマートスピーカー「Echo」がランクインした。

    「買い物をした」と回答した人に、使用した金額を質問したところ、未回答者を除く482人のうち、「1万~2万円未満」が最多の21.2%。次いで「5千~1万円未満」が20.1%だった。

    使用金額が「1万円未満」と回答したのは47.5%で、全体の約半数を占めた。「2万円以上」と回答したのは31.2%で、「10万円以上」という回答は2.9%だった。

    Amazonプライムデーで使用した金額(n=492、出典:ナイル)
    「Amazonプライムデー」で使用した金額(n=492、出典:ナイル)

    調査実施概要

    • 調査タイトル:「『Amazonプライムデー』に関する調査」
    • 調査方法:インターネット調査
    • 調査期間:2023年7月18日~7月25日
    • 調査委託先:ジャストシステム
    • 調査対象:20~69歳の男女
    • 有効回答:1625人(男性:800人、女性825人)、年齢は20~29歳:331人、30~39歳:331人、40~49歳:317人、50~59歳:316人、60~69歳:330人
    大村 麻里

    「洋服の青山」がバーチャル試着サービス、「オンライン上では商品の着用イメージがわきにくい」などの悩みを解決

    2 years 6ヶ月 ago

    青山商事は、公式ECサイト「洋服の青山」でバーチャル試着サービスの提供を始めた。「オンライン上では商品の着用イメージがわきにくい」「自分に似合うかわからない」といった顧客の悩みを解決する。

    青山商事 洋服の青山 バーチャル 試着 EC

    購入までのためらいを減らす

    青山商事はECユーザーが抱える以下のような悩みを解決するためバーチャル試着システムの導入を決めた。気になる商品を実際に試着しているような体験と位置付ける。

    • ECの利用者による「オンラインだと自分に似合うか不安」といった声
    • デザインやサイズ感など着用イメージがわきにくく購入をためらう
    • 購入後に想像と違って後悔

    顧客は専用アプリのインストールなしでスマホからバーチャル試着できる。身長などの入力情報を基に、商品のサイズ感を調整。動きに合わせて服の裾が揺れたり、自然でなめらかな動きを再現する。

    バーチャル試着の利用手順

    1. 撮影モードを選択
    2. 試着するアイテムを選択
    3. 任意で体型(身長・ウエスト・ヒップ)を設定
    4. スマホをセット
    5. カメラが起動する。全身を映す
    6. 360℃から試着姿を楽しむことができる。遠隔シャッターで動画や写真の撮影も可能
    バーチャル試着のチュートリアル画面
    バーチャル試着のチュートリアル画面

    バーチャル試着サービス第1弾の商品はEC限定販売のリバーシブルコート。対象商品は今後拡充する。

    1着のコートを裏返して着ることもできるリバーシブルコートを3種類展開。価格は税込1万4300円
    1着のコートを裏返して着ることもできるリバーシブルコートを3種類展開。価格は税込1万4300円

    バーチャル試着の提供スタートについて、青山商事EC事業部の担当者は次のようにコメントしている。

    オンラインショッピングは、手軽に購入できる便利さと、リアルな着用イメージを感じられない不安との隣り合わせであることが課題だった。「洋服の青山」オンラインストアでは、「自分に似合う」という気づきや喜びを感じられる新しい“体験”を届けるため、バーチャル試着サービスを開始することにした。

    お客さまのクローゼットにあるアイテムと照らしながらバーチャル試着をご利用いただき、ショッピングを楽しんでほしい。

    青山商事が導入したバーチャル試着システムは、Sally127(サリーワンツーセブン)が提供するバーチャル試着プラットフォーム。 導入企業は、試着タグをECサイトに埋め込み、Sally127に洋服のデジタル化を依頼することで導入できる。

    高野 真維

    進むEC化、紙媒体の発行部数減、原価高騰などにポートフォリオ経営で対応するベルーナの戦略とは【安野社長インタビュー】 | 通販新聞ダイジェスト

    2 years 6ヶ月 ago
    安野清社長へのインタビュー記事。用紙代の高騰などで紙媒体の発行部数を減らさざるを得なくなったベルーナだが、中長期の方針としては、連結で「売上高3000億円・営業利益300億円」という目標を掲げている

    ベルーナでは5月、2025年3月期を最終年度とする中期経営計画の数値目標を修正した。中計の見直しは昨年5月に続き2回目となる。主力のアパレル・雑貨事業が原材料高騰や印刷費・用紙代値上がりなどの影響を受け、減収となるのが修正の主な要因だ。同社では食品通販のグルメ事業や不動産関連のプロパティ事業など、好調事業を強化することで利益を確保する一方、シュリンクが懸念されるアパレル・雑貨事業においてはECへのシフトを図ることで、勝ち筋を見出す。

    ベルーナの安野清社長
    ベルーナの安野清社長

    アパレル・雑貨事業減収も他事業でカバー

    コロナ禍の客は新規定着ならず&紙媒体の印刷代高騰が影響

    最終年度となる25年3月期の連結売上高は2300億円、連結営業利益は170億円を目指す。23年3月期連結業績は、売上高が前期比3.5%減の2123億7600万円、営業利益が同18.9%減の112億1700万円だった。

    ベルーナの戦略 第5次経営計画(23/3期~25/3期)
    第5次経営計画(2023/3期~2025/3期、画像はネッ担編集部がIR資料からキャプチャして追加)

    安野清社長は「外部環境が変われば影響を受けるので、中計も見直すということになる。顧客数が減るアパレル・雑貨事業において売り上げを維持するのは難しいので、とにかく営業利益は確保しなければいけないということだ」と下方修正の理由を説明する。

    ベルーナ アパレル・雑貨事業の業績推移
    アパレル・雑貨事業の業績推移

    当初ベルーナでは、コロナ禍で獲得した新規顧客が定着し、コロナ禍後もアパレル・雑貨通販の規模を拡大させる目論見を抱いていた。ところが「好調だったがゆえに勘違いして強気の計画をつくってしまった。当初考えていたほどは顧客が定着してくれなかった」(安野社長)。

    追い打ちをかけたのが印刷費・用紙代の高騰。数年前に比べても、用紙代は30~40%値上がりしているという。加えて、製紙会社の設備廃棄・転用の問題で量を確保するのも難しい。カタログの発行部数は10~30%削減。さらに、媒体によっては発行回数を減らすことで対応している。

    通販会社は広告宣伝費のコントロールで利益が決まる売り上げを取ることを前提にしては会社が成り立たない。ただ、カタログ部数を大きく減らせば売り上げも大きく減るので、それができるのは会社としてパワーがあるかどうか。幸いにして当社はパワーがあるので、部数を減らしても他の事業でカバーすることが可能だ」(安野社長)。

    ベルーナの戦略
    アパレル・雑貨通販の稼働会員数推移(画像はネッ担編集部がIR資料からキャプチャして追加)

    ホテル事業などプロパティ事業は好調

    コロナ禍において通販事業は好調に推移していたものの、プロパティ事業における、ホテル事業に関しては大きな赤字を出していた。しかし、コロナ禍が明けホテルの稼働率が向上したことで、2023年3月期のプロパティ事業における営業利益は、前期比57.6%増の13億6600万円と好調に推移した。

    一方で、紙媒体への依存度が低い、化粧品事業のオージオなどは、用紙値上がりの影響はさほど受けなかった。「規模的にはアパレル・雑貨事業が大きいので、全社での売り上げは減っているが、バランスを調整すれば収益力は維持できる」(安野社長)。

    同社では、以前から「通信販売総合商社」を標ぼうし、経営の柱を何本も作る「ポートフォリオ経営」を推進してきた。それが功を奏したわけだ。とはいえ、国内における紙の生産量が増加に転じることは考えにくく、今後も用紙代は値上がりしていくことが予想される。輸入紙に頼るとしても、進行する円安が逆風となっている。

    ネットシフト、紙媒体の効果と削減リスク……抱えるジレンマ

    一層のシュリンクが懸念される中で、ベルーナでは紙媒体をどうするのか。安野社長は「ネットにシフトしていくしかないだろう。ただ、そっくりネットに移行するのは無理。例えば紙が100だとしたら、ECで20~30はカバーできたとしても、70~80はカバーできない」と明かす。

    千趣会やニッセンなど、カタログなど紙媒体の発行部数を大幅に減らし、ネットへのシフトを進めたカタログ通販会社はこれまでもあった。しかし、カタログを減らすことで大幅に顧客が減少する一方、ネットでの新規顧客獲得が思うようにいかず、会社の規模そのものが大きく縮小してしまった。

    カタログを見ながら通販サイトで購入している人は、カタログが送られて来なくなってもネットで買ってくれるが、その割合があまり大きくないカタログを送付したり、チラシを折り込んだりしないと、商品が出ていることに気づいてもらえない。自らネットで検索してくれるというわけではなく、かつそうした顧客の方が多数派だ」(安野社長)。

    一方で、競争が厳しいECの世界において、紙媒体経由売り上げの漸減を上回るペースで新規顧客を獲得するのも難しいのが実情。「ネットはどうしても価格訴求がメインになってしまう。よほどしっかり取り組まないと駄目だ」(同)。

    カタログや折込チラシの配布量は維持しなければいけない一方、用紙代の値上げに苦しめられるというジレンマに悩むベルーナ。果たして5年後・10年後のアパレル・雑貨事業の姿はどうなっているのか。

    安野社長は「正直いってまだ分からない。踊り場に差し掛かっている中で、新たなアパレル・雑貨事業のステージを構築するために試行錯誤している段階だ。『このルートで行けばオアシスにたどり着く』というところまでは来ていない」と吐露する。

    急速な変化に対応するポートフォリオ経営

    こうした状況下で支えになるのが、同社が確立させたポートフォリオ経営だ。アパレル・雑貨事業が目減りする分を、グルメ事業・ホテル事業といった、好調な事業でカバーする。

    商品開発力を武器とするグルメ事業は大きな飛躍を見込む。23年3月期は323億600万円だが、28年3月期の売上高は542億円まで成長させる展望だ。特に伸びているおせち料理については、23年3月期に32万台を出荷。同社によれば、通販に限らずおせち料理の出荷量では業界で3~4位にあたるという。日本酒通販に関しても、調査会社の調べでは通販国内売上高が6年連続で1位だ。6月には、山梨県の酒造メーカー・谷櫻酒造を買収。安野社長は「製造から販売までを一気通貫で手掛けることで、新たなブランド価値を作っていきたい」と意気込む。

    アパレル事業EC化の構想、新たなチャレンジも

    成長事業が会社を支える中で、アパレル・雑貨事業ではECの強化を進めていく。安野社長は「ネット専業で100億円以上売り上げているブランドは少ない。当社としても1つのブランドの規模に固執するのではなく、30~40億円規模のネット専業ブランドを5個、10個と増やしていきたい」と構想を語る。

    60代以上の顧客が中心のブランドは紙媒体を中心に事業を進めていく一方、「ベルーナ」「ラナン」や「ジーラ」だけではなく、比較的最近立ち上げた「アロッタ」や「ヴィオラエヴィオラ」といった、30~40代向けネット専業ブランドにおいてECを強化。さらには、韓国テイストを取り入れた、20代向けネット専業ブランド「チャンミ」といった新たな挑戦にも取り組んでいる。安野社長は「勝ちパターンを一つずつ作っていくことが大事。今期中には勝ち筋を見出したい」と話す。

    そのためにも大事になってくるのがブランド力。「ネットは価格勝負という面が大きいが、価格が大差ないならブランド力が高い方が勝つ。ただ、ブランド力はすぐに高められるわけではないので、インフルエンサーやインスタグラムを積極的に活用していきたい」(安野社長)。7月には「ジーラ」のランジェリーブランドで初のアンバサダーを募集するといった取り組みも始めた。

    紙媒体の発行部数を減らさざるを得なくなったベルーナだが、中長期の方針としては、連結で「売上高3000億円・営業利益300億円」という目標を掲げて、ポートフォリオ経営の成熟を目指す。アパレル・雑貨事業の利益を維持しつつ、成長事業で稼ぎ、25年3月期には「営業利益200億円」へのめどをつけたい考えだ。

    ベルーナの戦略 経営方針について
    経営方針について(画像はネッ担編集部がIR資料からキャプチャして追加)

    ベルーナの安野清社長インタビュー

    ――2023年3月期を振り返って。

    コロナ禍で”巣ごもり需要”が発生し、通販市場全体にフォローの風が吹いた。ただ、去年はフォローがアゲインストへと変わってしまい、レスポンス率が悪化した。さらには、用紙代・印刷費が上がったり、中国から商品が入ってこなかったり、原材料費が高騰したりといった事態も起きた。甘くなかった1年という感じだ。

    ――当初はコロナ禍で獲得した新規顧客がかなり定着することを見込んでいた。

    非常に調子が良かったので、アパレル・雑貨通販においても強気の計画を立てたわけだが、そこは勘違いしてしまったということだ。追い打ちをかけたのが、印刷費と用紙代の高騰だ。当社は主力がカタログ通販なので、もろに影響を受けてしまい、中期経営計画の下方修正を余儀なくされた

    ――中計の下方修正は2回目だ。

    これだけ経費が上がってしまうと、これまでのようにカタログやチラシを発行するのは難しくなる。発行量を減らすとなれば、売り上げについては目標を下げざるを得ないので、営業利益は確保しようという方針に切り替えた

    ――カタログの発行部数はどの程度減らしているのか。

    10%減らした媒体もあれば、30%減らした媒体もある。また、発行回数を減らしている媒体もある

    通販会社は広告宣伝費のコントロールで利益が決まってくる。売り上げを前提として無理してはいけない。大事なのは売り上げを減らすだけのパワーが会社としてあるかどうか。

    ――目減り分は他の事業でカバーができる。

    全社で収益のバランスが取れればいい。用紙代値上げの影響を最も受けたアパレル・雑貨事業と、コロナ禍の終息で好調に転じたホテル事業の間でバランスを取れば、収益は確保できる。ただ、アパレル・雑貨事業の規模が大きいので、連結では減収となっている。

    ――原材料高騰や急激な円安なども逆風となっているが、一番影響が大きかったのは印刷・用紙代の値上げということか。

    やはりそこが一番大きい。用紙代に関しては30~40%は上がっている。また、製紙会社が紙の生産を減らしているので、紙の確保自体が難しくなっている。輸入紙もあるが、こちらも円安の影響が大きい。

    ――今後、紙媒体の発行をどうするかを考えないといけない。

    やはりネットへのシフトということになるだろう。ただ、今の顧客をそっくりネットにシフトさせるのは無理。もちろん頑張ってはいるが、紙媒体経由の売り上げが減っている分はカバーできていない。

    カタログを見ながら通販サイトで購入している顧客は、カタログが送られて来なくなってもネットで買ってくれるが、その割合があまり大きくない。カタログを送付したり、チラシを折り込んだりしないと、商品が出ていることに気づいてもらえない。自らネットで検索してくれるというわけではなく、かつそうした顧客の割合が大きいわけだ。アパレル・雑貨事業全体をカバーするには、今までの数倍のピッチでネットで大きくならないと厳しい。

    ※記事内容は紙面掲載時の情報です。
    ※画像、サイトURLなどをネットショップ担当者フォーラム編集部が追加している場合もあります。
    ※見出しはネットショップ担当者フォーラム編集部が編集している場合もあります。

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    通販新聞

    アマゾン、Prime Videoに広告挿入へ

    2 years 6ヶ月 ago

    アマゾンが「Prime Video」への広告挿入を開始する。2024年からアメリカなどの一部の国で開始し、対象国を広げていくが、2024年の計画に日本は含まれていないようだ。他社の類似サービスと比較して、挿入される広告は少量で限定的だという。アマゾンは、これまでもスポーツなどのライブ中継には広告を挿入している。

    https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2309/23/news051.html

    noreply@blogger.com (Kenji)

    【顧客満足度の高いECサイト】ヨドバシカメラが10年連続1位、ECモールでは「楽天市場」がトップ

    2 years 6ヶ月 ago

    公益財団法人日本生産性本部が9月26日に発表した、国内の企業やブランドを対象とした顧客満足度調査「2023年度 JCSI(日本版顧客満足度指数)第2回調査」によると、通信販売部門における顧客満足度スコアの1位は「ヨドバシ・ドット・コム」だった。通信販売部門において「ヨドバシ・ドット・コム」は10年連続1位。

    公益財団法人日本生産性本部が、国内の企業やブランドを対象とした顧客満足度調査「2023年度 JCSI(日本版顧客満足度指数)第2回調査」を実施(通信販売)
    顧客満足スコアのランキング推移

    通信販売の顧客満足度スコアは、「ヨドバシ・ドット・コム」が84.9と突出。2位から5位のスコアは78から79台で、大きく引き離している。2位以下は「オルビス」「ユニクロオンラインストア」「Joshin webショップ」「ファンケルオンライン」だった。

    「ヨドバシ・ドット・コム」は通信販売における6つの指標のうち、すべての指標でトップ。「顧客期待」「知覚品質」「顧客満足」の3指標ではオルビスが2位。「知覚価値」「ロイヤルティ」の2指標で「ユニクロオンラインストア」が2位。「推奨意向」では「ファンケルオンライン」が2位だった。

    公益財団法人日本生産性本部が、国内の企業やブランドを対象とした顧客満足度調査「2023年度 JCSI(日本版顧客満足度指数)第2回調査」を実施(通信販売)
    通信販売部門のランキング

    通信販売内サブカテゴリーにおける指標の順位

    ECモールでは「アマゾン」が3指標、「楽天市場」が2指標、「Yahoo!ショッピング」が1指標でそれぞれトップ。顧客満足度のスコアでは「楽天市場」が74でトップだった。

    テレビショッピング・カタログ通販では、千趣会の通販ブランド「ベルメゾン」が全6指標でトップ。「化粧品・健康食品」は「オルビス」が5指標で、「ファンケルオンライン」が1指標でトップだった。

    家電量販店では「ヨドバシ.com」が、衣料品店では「ユニクロオンラインストア」がともに全6指標でトップとなっている。

    公益財団法人日本生産性本部が、国内の企業やブランドを対象とした顧客満足度調査「2023年度 JCSI(日本版顧客満足度指数)第2回調査」を実施(通信販売)
    通信販売内サブカテゴリーにおける各指標1位のサイト

    調査企業・ブランドは、「ECモール」が「アマゾン」「Yahoo!ショッピング」「楽天市場」、「テレビショッピング・カタログ通販」は「セシール」「ベルーナ」「ベルメゾン」、「化粧品・健康食品」は「オルビス」「DHC公式オンラインショップ」「ファンケルオンライン」、「家電量販店」は「Joshin webショップ」「ビックカメラ.com」「ヨドバシ.com」、「衣料品店」は「ZOZOTOWN」「ユニクロオンラインストア」の全14サイト。

    JCSI 2023年度 第2回調査概要

    • 調査期間:2023年7月5~18日
    • 回答者数:2万801人
    • 調査方法:インターネット調査
    瀧川 正実

    髙島屋が商品購入型のクラウドファンディング事業をスタート

    2 years 6ヶ月 ago

    髙島屋は10月4日から、商品購入型のクラウドファンディング「髙島屋クラウドファンディング」を始める。

    髙島屋グループの取引先や教育機関などとのネットワーク、商品を発掘するMD力を活用。新たな発想で生まれた商品、生産者支援につながる商品など、社会的意義のある商品を提案するという。

    また、商品に携わる企画者や生産者の思い、商品作りの背景などをクラウドファンディングで紹介し、広く支援者を募っていく。

    髙島屋では2019年から、Webでの募金による寄付型クラウドファンディングを展開している。このほど髙島屋が独自運営するサイト「髙島屋クラウドファンディング」を開設。サイトを通じた商品の提案や寄付の募集にで、若年層を含めた新規顧客層との接点拡大にもつなげていく。

    髙島屋は10月4日から、商品購入型のクラウドファンディング「髙島屋クラウドファンディング」を始める
    独自運営するサイト「髙島屋クラウドファンディング」(画像はサイトからキャプチャ)

    「髙島屋クラウドファンディング」では、寄付型と商品購入型のクラウドファンディングを併せて展開する。

    第1弾は文化学園大学、キュアグループと協業。文化学園大学ファッション社会学科の学生たちが企画した「和紙100%のネクタイ」をクラウドファンディングで販売する。

    瀧川 正実

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